48話 バラエティー番組!!
連日の選挙活動が日本国中で行われる。その論点になるのは、やはり異世界についてだった。
マスコミも異世界については色々と議論を繰り広げている。しかし、マスコミは誰一人として異世界に行ったことが無いため、全てが憶測での話になっている。
どの政党が国を治めて、克己と交渉権を得るのか……そればかりが議論されている。また、どうやって調べたのか分からないが克己の生い立ちを報道していたり、友人と名乗る人物がマスコミのインタビューに答えていたりしていた。克己の家で暇を持て余している涼介と克己、それに小春や克己の奴隷たちはその番組を見ており、克己に真実を確認していた。
「ごめん、俺はこんな奴は知らない。涼介は知ってる?」
「知らん。克己はあんまり人と喋っている所を見たことが無い。学校では教科書をずっと持っていた記憶しかない……」
「それはお前が勉強できないから俺が教えてやったんだろ……」
周りは笑いながら話を聞いていた。
テレビを見ていると懐かしの小学校などが映し出され、当時の先生方がインタビューをされていた。
『成田氏はどういった方でしたか?』
『大人しかった記憶がありますね……』
テレビでは先生が無難に答えているが、涼介は不思議に思っていた。
「俺たちが卒業してから同窓会などは行われていなかったよな? 毎年何百人と入学してくるのにお前だけを覚えているのか?」
「たぶん……卒アルでも見て当時を思い出し、その時の記憶を思い出して話しているんじゃないか? だけど俺は先生とあまり話をしてないから、これ以上は答える事が出来ないと思うぞ」
「だよな、無難な回答出来りゃ十分だよな……」
涼介は納得し、再びテレビを見る。
『成田氏は中学校へと進学し……』
ナレーターは次々と話を進めていく。その中で一人の女性が写し出された。
『あなたが成田氏と交際されていた方ですか?』
『はい……』
克己は口に含んでいたお茶をノエルの顔面に吹きかけた。ノエルは無表情で克己を見つめる。克己は咽り、吹きかけた事をノエルに謝るが、ノエルは微笑み「光栄です……」と意味が分からないことを言って、タオルを取り出し顔を拭き始めた。そしてレミーに「暫く顔は洗わない……」と、変態発言をしてレミーは引いていた。
「ゲホゲホッ……ノエル、本当にすまない……!! だが……俺が交際していた? 涼介……訴えて良いのか? これ……」
「本当に交際して無かったのか? 確か、お前と噂になっていたのは事実だろ?」
「出鱈目だ! 俺にそんな余裕があったと思うか? 中学と言えば親が死んで一番忙しい時期だったぞ! それなのに恋愛なんかしている余裕はない!」
「ふ~ん、そうなんだ……てっきりお前が伊藤瑞枝と付き合っていたと思っていたが……」
「どうしてそうなるんだよ!」
「まぁ、話を聞いてみようぜ? ほら本人が説明しているだろ?」
『私が学校から帰るとき、声をかけてくれて……告白されました……』
克己は呆然として話を聞いているが、奴隷たち全員はこの女に殺意を抱く。
『積極的にデートに誘ってくれましたが私は塾などがあり……』
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 文化祭の買い出し当番が俺とこいつだったけど、こいつは忙しいから無理って言って帰った話だろ! 学校から帰るとき告白してきたのはこいつだ! 俺じゃない! ちなみにそれどころじゃないから断った!」
『では、自然と消滅をしてしまったのですか?』
『いえ……受験があり私の方から……彼は嫌だと言いましたが……』
「嘘だー!! それは逆だ!! 俺はしつこいからそう言ったんだ! ふざけるな!! テレビ局にクレームをつけてやる! それは何処の局だよ!! 訴えてやる!!」
克己は携帯を取り出し、電話をかける。
「もしもし! 今お宅の番組で俺の特番を流して……あ? 俺は成田克己だ!! 本人が直々にクレームを入れているんだよ! ふざけるな!」
克己はクレームをつけるがまったく相手にはされず、オペレーターは淡々と「担当にはそのように報告させていただきます」と言って、終始受け流されていた。
「お前じゃ話にならない! 上を出せ!!」
克己が怒鳴りながら言うがオペレーターは淡々と話をして電話が切られてしまった。
「ムキー!! 腹が立つ!! ふざけやがって!!」
克己は違う場所へと電話をかける。
「もしもし、丸本先生ですか! 成田です。……以前はお世話になりました。また……お願いがありお電話をさせて頂いたのですが……」
克己は弁護士に電話をかけて訴える事にしたようだった。
丸本弁護士は数時間後には告訴状を書いて提出し、警察は時の人が告訴をしているためすぐさま調査を始める。と言っても、テレビを見ていれば分かる通りなので直ぐに全てのテレビ局に捜査員が派遣されることとなった。
そして各局は克己に対する報道規制がかかり、選挙での議論は戦争について話を切り替える事しかでき無くなってしまったのである。これには各局も困ってしまい、克己に報道をさせて欲しいと問い合わせるしかなくなってしまったのだが、克己はまったく受け付ける事はしなかった。
お菓子を持って行ったり、お金で解決したりと試みるが克己は拒否をした。
しかし不思議な出来事が起きる。
とある局がやっている「町の不思議な家の正体を!」というバラエティー番組で、タレントが町の人にインタビューをして、不思議に思っている家にアポ無しで訪問するという番組企画があった。
そして、たまたま克己が住んでいる町の高校生がインタビューを受け、町の不思議を語る。
『この町では何か不思議に思っている家ってある?』
アイドルタレントが高校生に質問する。
『町の不思議? ……あ! ありますよ! 物凄く不思議な家があります! 何故かその家の周りにはバリケードがされているんです! 住宅街の一角なのに! その家って何だろうって思っていました!』
もちろん克己の家である。当時、自衛隊が設置したバリケードが残っているのであった。
『バリケード? なんか不思議な家だね! 猛獣でも住んでいるのかな?』
アイドルタレントは、お笑い芸人に言う。
『いやいや、日本じゃ猛獣は飼えないから!!』
笑いながらお笑い芸人は答える。
『じゃあ、どんな人がいるか調査をしてみましょう! まずは町の人に聞き込みです!!』
最近売れてきた春日部朱音は腕を上げてカメラに向かって言うと、プロデューサーは「はいカット!!」と言って、カメラを止める。
そして皆は町の人に聞き込みを開始するが、知らないと言うのと、近寄らない方が良いと言う人が多かった。克己が住んでいる家の近所にある洋服の黒山へとテレビクルー達は訪問し、驚愕の事実を知る事となる。
「プロデューサー、ヤバくないですか? その家って……成田克己の家っぽいですよ……局に問い合わせたら住所がビンゴしましたが……」
「だ、大丈夫だろ……一般人の高校生もいるんだし……最悪はお蔵入りさせれば良いだけだから。訪問するだけ訪問してみよう!」
まさかこの判断が大スクープとなる事になるとは……この時は誰も知る事はなかった。
一行はバリケードに囲まれた家の前に到着する。その家を抜かすと本当にただの住宅街であるが、一軒の家がその風景をぶち壊していた。
『じゃ、じゃあ……い、インターホンを鳴らしてみますよ……』
アイドルタレントはプロデューサーから説明を受けて顔が引き攣っており、緊張しているのが分かった。普段は緊張しているように見せる演技をしているが、今回に関しては冗談ではなく、本当に芸能界生命にかかわる危険性があるからだ。タレントたちは全員知っている。現在、克己が全ての局を訴えていることに……。知らないのは高校生だけであった……。
「ピンポーン……」インターホンを鳴らす。克己は金持ちのくせに、モニター付きインターホンではなく、普通の通話ができるインターホンであった。
『はい? 誰ですか?』
インターホンに出た人物……それはノエルであった。
『あ、私、町の不思議な家の正体をという番組をやっている黒川悟という物ですが……』
『町の……何? はい? ちょっとお待ちください……』
受話器が置かれたようで、通話が切れる。テレビクルー全員に緊張が走る。高校生はドキドキしているだけだった。
玄関が開き、だらしない恰好の克己が現れた。
「はい? どなたですか? ……あ……少しお待ちいただけますか……」
克己は顔を赤くして家へと戻り、全員に直ぐに着替えるように命令して、自分も着替えを行う。そして暫くして、もう一度玄関を開けた。
「は、はい……どうしました?」
克己は顔を赤くして聞くと、アイドルタレントが緊張した顔で説明をしてきた。
「あ、あの……じ、実はですね……」
アイドルタレントはこの時の事を、こう語っている。「なぜ危険だと分かっているのにプロデューサーが話をしてくれないのだろうか!」と……。
「成る程、家の秘密ですか? バリケードに関しては、自衛隊がそのまま放置して帰ったからですね……。最低ですね」
「は、はぁ……そ、そうですね……」
「で? 他に知りたいことは?」
克己が言うと、再び全員に緊張が走る。
「い、家の……な、中なんて……」
「家の中ですか? ……入りたいですか? 普通の家ですよ? 見ての通り、普通の一軒家ですし……」
「そ、そうですよね……で、ですが、ここが異世界と繋がって……」
「そうですよ。上がります? 高校生が知りたいんですよね?」
ありえない回答が返ってきて、プロデューサーが直ぐに局に電話をかけ始める。
「い、良いのですか!!」
「汚いところで宜しければ……多分着替えも終わっているだろうし……」
克己は玄関を開けて、一行を中へと招き入れる。
「これがリビングです。特に普通ですよね? 多分……」
克己はそう言ってリビングを見せて、カメラは隅々まで撮影していく。
「この人たちは……」
黒川はビシっと立っているノエル達を見て克己に確認する。アルスだけレディーススーツを着ていた。
「あ、こいつらは俺の奴隷ですね……顔はモザイクをお願いしますね」
スタッフは直ぐにモザイク処理することを約束し、ノエル達はカメラに写された。
ここで高校生が克己に質問する。これはスタッフにはまったく予期していない出来事だった。
「ど、どうやって生計を立てているのですか?」
「生計? あぁ~、正直お金は沢山あるから仕事してない。普通に生活をしていても使いきれないほどの額があるからね」
スタッフと高校生は驚く。ここまで来たらどこまでも聞いてしまえとお笑い芸人が質問する。
「異世界なんて……案内をしてもらえません?」
「はい? ……まぁ……良いですけど……何もありませんよ? なぁ? お前達」
そう質問されると、ノエル達は頷き不思議そうな顔して克己の顔を見ていた。
「ほ、ほら、高校生たちも知りたいと思いますし……」
「成る程……知りたいの? 少ししか案内できませんけど……それで良ければ」
まさかの答えが返ってきた! 全員はそう思い、体中冷たい汗が噴き出てくる。
「あ、靴を持ってきてくださいね。じゃあ、こっちになりますので付いて来て下さい。ガルボ、レミー、監視をしろ。不自然な動きをしたら報告及び、拘束」
「「はい、克己様……」」
そのセリフに恐怖を覚えるスタッフ達だった。
克己の部屋にあるクローゼットが映し出されそうになると、克己はカメラを止めるように指示し、ハミルがカメラを預かる事になった。
「壊すんじゃないぞ、ハミル」
「承知致しました」
ハミルはそう答えるが、黒川はハミルのおっぱいが気になるようでガン見していた。
クローゼットを潜ると、ライラが克己の部屋を掃除しており、挨拶をする。
「お帰りなさいませ、克己様! この後のご予定は?」
「特にない、隣の店に行って食事をして帰るだけだ」
「かしこまりました」
ライラは一礼し、再び作業に戻る。その光景にお笑い芸人は質問する。
「あ、あの子はお手伝いさんですか?」
「奴隷」
スタッフ及びタレント達はブリザードに襲われた気分になる。
異世界側のリビングでは、ライが素振りをしていたが、克己に気が付き腕を止める。
「克己様、お帰りなさいませ……何かお飲み物を用意いたしますか?」
「ライさん、お疲れさま。特に必要はないよ。そのまま練習していて下さい」
「ありがたき幸せ……」
ライは一礼し、素振りを再開する。
「あ、あの人は……」
「奴隷」
何も言えなくなる。
遂に黒川達は異世界へとたどり着く。
「こ、これが異世界……」
クルー達はハミルからカメラを返してもらい、必死に撮影をする。
「高校生の諸君、これで納得できたかな? ここが異世界だよ。本当にあったでしょ? 世の中は不思議で一杯だね」
克己は笑いながら言うが、テレビスタッフ及び高校生達全員は驚きのあまりに声が出ない状態だった。
「じゃあ、異世界でどうやって生計を立てているか……それが気になるでしょ? 次はこっちに来てください」
克己は自分の店に案内すると、色々な種族のお客や店員がおり、再び全員は驚きを見せる。その中で一人の男性が克己に気が付き近寄る。
「あれ? 克己……こいつらは?」
「ん? サボり魔の涼介じゃんか……人の店で何やってんだよ?」
「か、彼は……」
黒川が恐る恐る質問をする。
「彼にもモザイクをお願いします……というか店員もそうですし、客さんにもモザイクをお願いします」
涼介は少し驚いた顔をして克己を見る。
「テレビクルーじゃん! 珍しいな……」
克己は涼介をシカトして話を進める。
「彼は日本人ですよ、俺のボディーガードをしていますが役には立ちません……むしろ邪魔です」
克己が失礼な(自己紹介→紹介:自己紹介だと克己を紹介してしまうから)をする。
「な、ちゃんと(自己紹介→紹介)をしろよ! 俺は……モガモガ……」
克己が涼介の口を押さえる。
「馬鹿かお前は! ここで名乗ってどうすんだよ! お前の素性は知れちゃダメだろ! ボディーガードの意味がなくなる! ちょっとは考えろ馬鹿」
克己は頭を叩き、涼介は黙り込む。
『いらっしゃいませ~』
店員が接客を開始しようとすると、克己に気が付き膝を突き挨拶する。
「お帰りなさいませ、ご主人様……店長をお呼びいたしますか?」
「頼む、あ、バイザーも頼むよ」
「承知いたしました……」
尻尾が生えた女性は直ぐに事務所へと駆け込み、千春やペルシアを呼んでくる。
「呼んでまいりましたが、何分作業中なもので……」
「構わない、この人たちを席に案内して……奥にある特別席に」
「承知いたしました……」
克己は頭を店員の撫でてあげると、尻尾をブンブンと振って喜びを表すが、ノエル達はその尻尾を捕まえ握りしめる。
「キャイン!」
店員は驚きと痛みに声を上げ、克己はノエル達の頭に拳骨を落とす。
ノエル達は頭を押さえて蹲り、クルー達は他の店員に奥へと案内された。
「俺はこうやって異世界で仕事をしています。これで疑問は解けましたか? 店はそれなりに繁盛しており、店舗は本店のここを合わせて3店舗あります。拡大していく予定にはなっておりますが、まずは日本の方を片付けてからになりますね……」
克己が説明をしていると、スーツを着た千春とペルシア、遠藤、新垣がやってきた。
「あ、店長がやってきましたね……」
克己が言うと、カメラは千春を映そうとするが、涼介がそれを制止する。
「彼女らは一般人だよ、モザイクを入れて頂戴な!」
カメラマンはプロデューサーの顔を確認すると、頷きモザイクを入れた。
「い、いらっしゃいませ……。オーナー、お疲れ様です……」
「はい、お疲れさま。店長、彼らに食事を……副店長、そこに居る二人は高校生らしい……お店について説明をして下さい」
遠藤は店について説明を始めると、従業員全員が奴隷としり驚く。
「で、では……店長も副店長も奴隷なんですか?」
高校生が尋ねると、遠藤は返答に困り克己が答える。
「店長は俺の奴隷ではありませんが、奴隷ですね。ですが、飼い主が馬鹿なため……」
「涼介様は馬鹿ではありません!」
千春が克己に訂正を求める。
「そうだったね、大バカだったね……」
克己が訂正をして千春は納得する。涼介は納得するなよと思いつつそれ以上言うのを止める事にした。
「店長以外の三人は奴隷ではないよ。彼女ら二人は日本人。そして彼女は異世界人……あ、彼女だけはモザイクなしで構いません。一人くらいはちゃんと撮影しないと納得できないでしょうから……」
「何で私だけモザイクが無いにゃん?」
「お前が特別だからだよ」
「特別なら仕方ないにゃ、諦めるにゃ……」
ペルシアは尻尾を揺らしながら微笑む。特別と言われているだけで、特に何もなく騙されているとも知らずに……。
カメラマンはペルシアを足元から髪の先までしっかりと映し記録に残した。
「説明はこれくらいで大丈夫ですか? 多分、民間人でここに来たのはあなた方が初めてになります。放送に関しては一度内容を確認させてもらってから、放送をして良いかの判断をさせて頂きますのでよろしくお願いします」
克己が言い終えると、高校生が最後の質問をする。
「あ、あの……この店で雇われるとどうなるんですか? 日本のお金で支払われるのですか?」
それについてはペルシアが答える。
「選べるにゃ。好きな方を選んでもらう事になっているにゃ! 店長はこっちの通貨で、副店長とシステム室長の彼女は日本のお金を支払われているにゃ」
「わ、私達も就職できるのでしょうか……?」
ペルシアは克己の方を見てどう答えるか考えると、克己は頷きペルシアは答える。
「できるにゃ。オーナーのお眼鏡にかかれば働く事は可能にゃん! 一応社会保険や厚生年金もしっかり払っているにゃん! 税金に関してもしっかりしているにゃん、問題ないにゃ」
異世界住民のくせに日本のシステムを把握しているペルシアに驚くテレビクルー……ここで記念撮影を行い、異世界での撮影は無事に終了した。
最後に遠藤と新垣は黒川達にサインと握手をしてもらい、ミーハーのように喜んでいた。
千春に関しては理解できなかったが、遠藤たちが貰ったのでついでに貰っただけだった。
「涼介様、これにどんな意味があるのですか?」
「ないな……こいつが有名人だから、こいつに出会った証拠みたいなものだよ」
「なら、あとでゴミ箱へ処分しても……」
「問題ない」
千春はサイン色紙を袋の中に仕舞、サインの存在を忘れる事にした。
「千春、一応言っとくが……こいつらよりも克己の方が凄い存在なんだぞ? それだけは忘れるなよ」
「さ、流石です……そんなお方とご友人であられる涼介様はもっと凄いです!」
バカップルである。黒川と春日部が克己の前にやって来て喋りかける。
「あ、あの、成田さん……きょ、今日はありがとうございます……」
「いえいえ……高校生が知りたいっていうなら仕方ありませんよね。これが最初で最後だと思っていただければ……」
黒川は克己と握手して頭を下げ、春日部が克己の印象を話す。
「テレビで報道されているイメージとは全く違いますね……」
「どんなふうに報道されているかは正直あまり知りません。この間は、たまたまテレビを見たらそういう状況だっただけですからね。これで多少、俺っていう人間が分かるなら助かりますよ」
克己はそう言って日本の玄関まで案内し、家の前で最後の締めを行い撮影は完全に終わりを告げた。その後、黒川と春日部は電話番号を交換してほしいとお願いし、克己は快く電話番号を交換する。黒川と春日部は本当に教えて貰えるとは思ってもおらず興奮していた。克己はスタッフからテープを預かり、中身を確認して問題があってもお返しすると約束しクルーや高校生たちは帰って行った。
克己は直ぐにテープを確認するため再生したが、顔にはモザイクばかりで正直あまり面白くはなかった。なので、勝手に改変してやろうと考え、携帯を取り出して電話をかける。
「もしもし魔王さん?」
後日、テープがテレビ局に送られプロデューサーが確認すると、自分たちが撮影した以外にも何かが映っていることに気が付き、続きを確認する。
『あ・あ・あー撮れてるかな? まぁいいや、ダメでも。俺には関係ないし、どうでも良いし……。おい、確り映せよ!』
『分かってるよ!!』
克己の声のほかに誰かがいるようで声が入ってくる。
『私は今、異世界のとある場所に居ます!』
克己がワルノリして勝手に撮影しているようだった……しかし、プロデューサーが創造していた物の斜め上を突っ走る克己。撮影されている場所は禍々しい所で、正直不気味だった。
『おい克己! パルテックがお前を狙ってるぞ?』
カメラマンがそう言ってその生き物を映し出す。それは羽が生えたトカゲの化け物であり、口からは涎を垂らして克己を狙っていた。正直モザイクが必要だとプロデューサーは思うほどの化け物だと思っていたが、それ以上に驚く出来事が起こる。なんと、克己はパルテックを躊躇いなくレーザー銃で射殺する。プロデューサーは椅子から転げ落ち、腰を抜かすが再び画面チェックを行った。プロである……。
『こいつのコア、あんまりでかくないんだよな……』
克己はナイフを取り出し、解剖を始める。正直お茶の間に流せないグロさだった……プロデューサーは気分が悪くなりゴミ箱に下呂を吐き出す。モザイク確定か、編集の必要があると判断した。しかし、プロデューサーは内容確認を止めない。
『文句を言うのなら俺にくれよ! それだけで銅貨5枚になるんだから!』
『うるさい、変態野郎! 確りと(リアルティ→reality:リアリティー)のある番組にしてやるんだから、黙って映せよ!』
ありがた迷惑である。
『では、本日のゲスト宅へ行ってみましょう……!』
克己はお城のような場所にたどり着き、扉を強くノックする。
扉が開き、先ほど射殺された魔物と同タイプが扉を開け、プロデューサーは先ほどの光景が再び起きるのかと身を構えた。しかし、その身構えは気苦労に代わる。
『あ、克己様……お待ちしておりました!』
プロデューサーは声が出なかった……これを放送するには先ほどのグロいところも流さないといけないと思い、モザイクを入れるように紙に書く。
『どうぞこちらへ……』
魔物は克己とカメラマンを案内して一つの扉までたどり着く。
『では、ごゆるりと……』
先ほどの殺害は何だったのか不思議に思うプロデューサー。案内されている間、魔物と仲良く世間話をしていた。
魔物が扉を開くと、化け物が立っていた。誰がどう見ても化け物。手は4本、牙が生えており目は三つ。化け物以外に表せる言葉がなく、プロデューサーは画面上でも恐怖を覚える程の迫力があった。
『ワーハッハッハー!!! 良く来たな人間よ! 貴様の命もここまでだ!』
正に魔王! そう言った迫力があり、平伏したくなる気分になるプロデューサー。しかし、マイクのおもちゃを持つ克己は言う。
『あ、そう言うのは要らないから……』
『え? 要らないの? 恐がらせなくて良いの?』
化け物は拍子抜けした感じに喋り、側近かと思われる女魔物がテーブルと椅子を用意する。
『あ、どうも、いつもの悪いね~』
『いえいえ、今度お店に行っても宜しいですかね?』
『あ、どうぞどうぞ……。是非お待ちしていますよ』
側近の魔物とあり得ない話をしており、プロデューサーは呆気に取られる。
『おい、克己! 早く進行しろよ!』
『うるさいなぁ、人が営業しているのに! では、本日のゲストは魔王さんです! パチパチパチ……』
克己は拍手してカメラマンは魔王を映すが、先程の側近が魔王の後ろに回り込みカメラに写ろうとする。カメラマンは側近も入るように撮影し、克己のインタビューが始まる。
『魔王さん、今日はお時間を作っていただき感謝致します。それではインタビューをさせていただきますね! 魔王さんの好きな食べ物は何でしょうか?』
プロデューサーは雰囲気が凄いのに何気無い普通の質問だと思いながら見ていた。
『え? 克己さん、普通に答えて宜しいのですか?』
魔王の癖に敬語かよ! 誰もが思う事である。それはプロデューサーも同じだった。
『普通に答えて良いよ、好きな食べ物は何でしょうか?』
『人間の腸と脳ですね……。コクがあってまろやかなんですよ。是非、克己さんも如何ですか?』
『是非、お断りをさせていただきます……』
プロデューサーは何も言えなかった。
『次の質問です、趣味は何でしょうか?』
『人間の街を襲撃して拐ってくることですね。犯した後に食べる脳ミソは最高です』
『成る程、それはそれは……随分と魔王らしい趣味ですね! お食事の所を映させて頂いても宜しいですか?』
『恥ずかしいですね。ですが、克己さんのお願いなら聴かないといけません』
魔王は笑っているが、プロデューサーはドン引き状態である。ここでシーンが変わり、人間の死体が映し出される。お茶の間には出せないシーンだ。
『これはいつ頃仕留めた獲物ですか?』
『数時間前です。克己さんがお越しになると言う話だったので、北のジョボレット村を襲撃して来ました』
『おぉ! 殺し立てホヤホヤですね!』
共感して喜ぶところじゃねーと思うプロデューサー。
『では、どのように食事をするのでしょうか?』
『はい、普通に食べると骨が喉に引っ掛かり大変な思いをするので……』
魚じゃねーよ! と思いながら見ていた。もう何が来ても驚かないぞと思いながらプロデューサーは見ていた。しかし、それは無理な話である。
死体の顔面(目が垂れ落ちかかっている状態で、しかも子供)がドアップで映し出され、プロデューサーは椅子から転げ落ちる。プロデューサーは体勢を整え再び画面を確認する。
『ここの骨は爪で剥がして、こうやって啜って食べます。内蔵に関してはこのように引き千切り骨を出して吸い込み、咀嚼するんですよ』
クチャクチャしながら魔王は答える。顔は血で真っ赤になり克己の服に血が飛び散る。克己はマイクの玩具を魔王に投げつけた。
『おい、この野郎! 服に血が飛び散ったじゃねーか!』
『え? え? え?』
魔王は克己に蹴りを沢山くらい、ひたすら謝っている姿が映されていた。プロデューサーはオチがちゃんとあって良くできた作品として感心してテープは終わりを迎えたようだった。
克己からの手紙には放送しても良いと書かれてあり、プロデューサーは特番で放送をすることで、上に企画書を提出したのだった。




