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40話 初めてのバス旅行??

 翌朝になり、克己達は指定した場所に行く。


 バスはまだ来ていない。しかも品川は国枝も来ていなかった。


「克己様、今日はどんな乗り物に乗るのですか?」


 アルスはメモ帳を取り出し克己に確認する。自分は秘書なのだからと、必死に仕事を全うとするつもりだ。


「それはな、豪華サロンバス(トイレ付)定員42名乗り、正席41席+補助席1席、バスガイドというオプション付き! どうだ! 凄いだろ」


「克己様、確かに凄いかも知れませんが、私には想像ができません」


「そ、そうか……だとしたら何で聞いたの?」


 アルスは不思議そうに首を傾げながらメモをして、仕事しているぞ! というアピールしていたが、正直無駄な作業である。克己は後でちゃんと説明をした方が良いと感じながら周りを見渡す。


「克己様、まだ6時前ですよ? 約束の時間は6時半でしたよね?」


「あぁそうだよ、アルス。ちゃんとメモを取っていたようだね」


「勿論です!!」


 楽しそうに話すのが気に入らない皆は、ワザとアルスに打つかっていく。


「い、いった~! 何をするのよ!」


「「「「「「「うっさい!!」」」」」」」


 何をやっているのだかと、克己は思いながら見ていると、遠藤がやってきた。


「あれ? おはようございます。もう準備をしているんですか? 早くないですか? オーナー」


「あぁ、遠藤さんが来るからね。千春ちゃんはギリギリになるかもしれないね。いつものように」


「あはは……店長ですか……」


「まぁ、お店を見てもらったけど小さいお店でしょ? 遣り甲斐はなくなってしまったかな?」


「いえ、役職が役職で……責任感が非常に必要だと言う事が分かりましたので、あのくらいでも大きいかと……」


「大丈夫だよ、イザとなったらペルシアが何とかしてくれるから」


「ところでバイザーは?」


「今日は来ないよ」


「な、何故ですか?」


「必要がないからだよ。昨日購入した奴隷たちと魔物討伐に行くって、張り切って出かけて行ったよ」


「こんな早くからですか!」


「仕事を教えないといけないからな」


 遠藤は唖然として話を聞いていた。


 克己達が話しているとバスがやってくる。


「おお!! 凄いな……」


 ぷしゅー……っと、エアーが抜ける音を立てて車が止まり、バスの中から女性が降りてくる。


「えっと……あ、貴方が成田様ですか? 本日はご利用して頂きまして、ありがとうございます。株式会社原則自動車のバスガイドを務めさせて頂きます、新垣あらがきと言います。本日は静岡県の自衛隊基地にと言う事ですが正式な住所をどこになりますでしょうか?」


「あ、どうも。成田です。今日は無理なお願いをして申し訳ありません……場所は富士山の麓にある火力演習所で、えっと……名前は東富士演習場だったっけ?」


「住所は分かりますか?」


「連れがもうそろそろ到着するので、それなら知っているかと……」


「わかりました。岸田池きしだいけさん、場所はこの後になるそうです」


「新垣ちゃん、さっきも言ったけど、後がないからね! 今日失敗したら……」


「が、頑張ります……!」


 克己は新垣が運転手と話している内容が少し気になったが、アルスが話しかけてきたので、そちらに顔を向ける。


「克己様、荷物は何が必要になられますか?」


「特に何か必要というわけではないから……別に構わないよ」


「よお! 克己! おはよう。今日は遅刻しないでちゃんと来たぞ!」


「お前は呼んでないよ。涼介」


「良いじゃんかよ……千春の魔法だって必要になるんだろ?」


「千春ちゃんは俺の店で働いているからな。来るのは当たり前だろ」


 バスの前でワイワイしていたら小春が眠そうな目でバスを見ていた。


「お姉ちゃん、これに乗るの? 馬車は?」


「これはバスという乗り物よ、馬よりも凄いのがあって、それで動いているんだって!」


「へ~、凄い生き物なんだね! 物凄く大きい!!」


「これは化け物ですね……」


 望も口をあんぐりしながらバスを眺めている。


「この間買い物に行った時だって走っていたでしょ……」


 呆れた声を出す千春だが、自分もバスには初めて乗るため、内心はワクワクしていた。


「克己、今度さぁ東京ネズミンランドへ行かないか? これで」


「どんな金持ちの所業だよ……」


 涼介の話に克己は呆れながら答える。


「そりゃいい考えだな、涼介。世間知らずのこいつらにゃ良い話だと思うぞ」


 国枝が克己の家から出てきて言う。後ろには二人の奴隷が大型バスを見ながら驚いていた。


「紀一様……これは……」


「大型の化け物馬車……」


 二人はそう呟きながらバスを触る。


「品川准尉はまだ到着してないのか?」


 国枝が克己に質問してくる。


「まだだね……あと10分あるから大丈夫でしょ? 一応時間に厳しい社会だから。だけど、遊園地に行くつもりはないよ」


 克己はそう言って全員をバスに乗せる。


「終わったら富士KUで遊んで帰るか?」


 涼介は遊んで帰ることをしつこく言ってくるが、遊ばないと克己は言ってバスに蹴り入れた。


「おお! 凄いな……かなりの設備が整っているじゃないか! トイレまで付いているとは……サービスエリアに行かなくて済むな!」


「コンビニで飲み物や食材を買って来れば楽しめるようにしてある」


「流石克己! 用意周到だな!」


 こんな話を涼介と克己は話しているが、岸田池にはたまったものではない。


「おいおい、休憩なしで運転するのかよ……。新垣ちゃん、上手く誘導してくれよ。最近は運転手を休ませないと言う事で労働基準局からお達しが来ているんだから」


「は、はい……が、頑張ります……」


「頑張るんじゃなくて、やるの! ったく……何で会社はこんな子を雇ったのかね……」


 新垣は落ち込み項垂れる。しかし、岸田池は言う。


「おいおい、シャッキとしろよ! 今日で最後になるかもしれないんだからよー。ったく……」


 まるで今日が最後のように話をする岸田池。新垣は泣きべそをかき、せっかくの化粧が落ちる。


「おい、自分の顔を確認しろよ、そんな顔で仕事するのか? あと、早く住所を聞いて来いよ!」


「……す、すいません」


 新垣は席をはずしてコンパクトで顔を確認すると、確かに化粧が崩れてしまっており、最悪な状態だった。


「は、早く直さないと……」


 新垣はバックから化粧道具を取り出し、化粧直しを始める。


 新垣が必死で直していると、車が一台止まった。


「遅れました……」


「おお、品川さん! 来なかったらお仕置きを考えていたところだよ」


「な、なんでお仕置きをされなきゃならないんですか!」


「俺があんな思いをしてまで品川さんを借りたからだよ。これで来なかったら本気で怒っていたね」


 品川は苦笑いをする。本当はブッチするつもりだったが、克己の事だから何かをするのではないかと思い、来たのであった。


「准尉、悪いが早く運転手に住所を教えてくれないか?」


 国枝が催促する。


「す、すいません、直ぐに場所を教えてきます」


 品川は運転手に住所を教えて、そこに向かってもらうことになり、運転手はエンジンをかけて発進の準備をする。


 新垣は急いでバスに乗り込み自分の顔を再度確認するが、あまり見られた顔ではなかった。だが、バスは出発する。


「え、えっと、ほ、本日は弊社のバスをご利用頂き誠にありがとうございます。本日、客室乗務員を務めさせて頂きます、私、新垣あらがき香奈枝かなえと、運転手の岸田池きしだいけみつるが安全運転でお客様を、楽しい旅へとお連れさせて頂きます」


 新垣の挨拶が終わると、サロンの真ん中に鎮座する克己が「拍手」と言って全員に拍手をさせていた。


 新垣は一礼をして「ありがとうございます」と言うと、自分の席に座った。


「バスガイドさん、高速道路に乗る前にコンビニへ寄ってもらっても宜しいですか?」


 克己が言うと、新垣は戸惑いながら返事をして岸田池に言うと、岸田池は嫌そうな顔をして返事をする。そしてマイクの電源を一旦オフにしてから文句の言葉を言う。


「本当なら今日はキャンセルになった時に非番になったはずなのによぉ……ついてないぜ、下手糞な客室乗務員と一緒だなんて……」


 その声は新垣までにしか聞こえていなく、新垣は顔を暗くする。


「克己様、今日もスーツではないといけない理由は何故ですか?」


 千春は克己に確認する。


「区別をつけるためだよ。千春ちゃんと遠藤さんは今日、社会見学へ行くからね。自分達は観光で来ているのではなく、仕事で来ていると言う事を理解してほしい」


「ですが、涼介様は克己差の護衛という名目ですが、私服なのは?」


「もともと護衛は必要ないからだよ。俺にはノエルやハミル、レミーにシェリーなどが護衛についてくれているからね。本来は彼女たちの役目だ。涼介が昨日、護衛をしてくれたのは、慣れてない日本でいきなり護衛をするのは厳しいし、都会の真ん中だと道すら彼女たちには分からない。その点、涼介は道を知っているから楽々と案内もできるし対応が楽だったというわけ」


「成る程……、そう言う事ですか……」


「そう言う事! 今日は一生懸命勉強して、一日でも早く立派な店長になってください。遠藤さんが支えてくれるから、幾ら失敗しても構わないし、幾ら無駄金を使用しても構いません。だけど、それを補うほどの勉強をしようね」


「は、はい! 頑張ります!」


 千春は元気いっぱい声を出し、返事をする。涼介は暇になったのか、新垣に言って、テレビを付けてもらうと、昨日の国会映像が流れていた。


 克己の独壇場映像となっており、癌那宇都の問題発言には触れず、どうやって調べたのか、克己の経歴を語り始める。しかも小中高で仲が良かったクラスメートというやつにインタビューをしているが、涼介と克己にはそんな奴の記憶はない。ましてや高校に至って、国枝すら知らないやつが出てきた。


「涼介、お前……あいつを知っているか? 俺はお前としか殆ど話さなかった記憶があるんだが……」


「たぶん、隣のクラスだった奴じゃないか? 俺も知らん……。国枝、高校のときに出てきた、佐藤という奴を知っているか?」


「いや、俺はお前と同じクラスになった事がなかったからな……。俺は選択授業でお前と一緒になったくらいだろ? 確か」


 三人は首を傾げてニュースを聞いており、品川はニヤニヤしながら聞いていた。


「克己さん、学生の頃はおとなしかったんですね、その反動でこんな大人になってしまったのですね」


 品川が馬鹿にしたように言う。


「品川さん、俺はさっきの奴を知らないよ? まともに話を聞いちゃだめだよ。だけど、確かに学校では大人しくしていたな……。それは間違いないよ。バイトばっかりしていたからね……体力を回復させる場所と、温存するため、勉強をするためのところだったからね」


 克己は懐かしそうに話をする。


「そういう言えば克己、中学生のころ噂になっていた楢月とはどうだったんだ?」


 品川は涼介の話にピクっとして耳を傾ける。


「噂? 何の話だ? 知らないよ? 何の話? というか誰?」


「お、お前マジかよ……お前の机に手紙を入れたって噂になったろ……」


「知らん。記憶にない。もし、それが本当なら今頃、人生は変わっているんじゃないか?」


「そ、そうか……」


 涼介は呆れながら言う。品川はつまらない人生だと思いながら聞いていた。


 国枝はニュースを見ていると、異世界省について少しだけ触れていた。


「おいおい、誰だよ……トップシークレットを流したバカ野郎は……」


「どうしたの?」


「異世界省の話はトップシークレットになっているんだ。粛々と進められている話だぞ……こりゃ早めに話を進めないと……」


 国枝が呟くと、電話が鳴る。


「はい国枝です……はい……。はい、はい……はい……分かりました……本人に伝えます」


 国枝が電話を切り、溜め息を吐く。


「なんだって?」


「異世界省についてお前に話さないとな……本日政府が発表することが決まった」


「は? まずは中に入ることが先決で、俺との話合が必要じゃないのか?」


「そういう話だったはずだが……。昨日の件でお前が開放すると思い込んでいるのかもしれないな……」


「いやいや……明日話し合いをするが、俺は開放するとは一言も言ってないぞ! 先走りすぎだ……と、国枝君に言っても仕方ない。明日の話が楽しみだよ」


「准尉、明日もあなたが来ることが決まっています。マスコミが騒ぎますからね……」


「は、はい……」


 話の中に新垣が割り込んでくる。


「あ、あのぅ……コンビニに付きましたが……」


「あ、はい、直ぐ降ります」


 克己はそう言って、全員をバスから降ろして買い物をさせ、再び車に乗り込む。


 二時間くらいバスを走らせる。全員がワイワイと飲み食いをしており、楽しそうにしていた。


「あ、あの……どこかのパーキングエリアで一時休憩をさせてもらっても宜しいですか?」


「え? 俺たちは必要ないですけど……?」


「あ、あの、え……と、その……私達が……」


「克己、最近バスの事故が増えているだろ、だからこまめな休憩が必要なんだよ」


 国枝が教えてくれて、納得する。


「分かりました、適当な場所で休憩をしてください」


「あ、ありがとうございます!」


 新垣がホッとした表情で岸田池に説明をする。……が、岸田池は不貞腐れた声で新垣に言う。


「もっと早く言えよ……次まで30キロまであるじゃねーかよ……お前は新人かよ、一年目だったら分かるが、もう3年もこの業界に居るんだろ? センスがねーよ、お前」


 落ち込む新垣は自分の席に座り俯く。


 そんな中、克己が近く寄ってきて、新垣に話しかける。


「新垣さん、現地に到着したらかなりの時間を待って頂くことになりますが、大丈夫ですか?」


「あ、は、はい……それは大丈夫です……」


「すいません、本当ならどこか休憩ができる場所を提供できればよいのですが……なんせ普通では入れない場所で……先ほど確認したら、運転手さんとバスガイドさんは車から降りてはダメと言われてしまって……」


「おいおい、マジかよ……昼はどうすれば良いんだよ? 飯抜きはきついぞ……」


「すいません、運転手さん。昼は何か用意させますから……品川さん! 運転手さん達に昼飯を取らせることくらい可能か調べて!」


「それは大丈夫だと思いますが……しかし、降りて食べるのはできないかと思います」


 品川はそう言ってどこかに電話をかけ確認をとる。


 品川はメモを取り克己に渡し、話を続ける。


「お昼はこちらで準備することになりました。申し訳ありません」


「なら良いが……頼むぜ……。まったく……」


「いやぁ~本当に面目ない」


 克己はそう言って自分が座っていた席へと戻っていく。


 バスはパーキングへと入り、全員は一度外に出てお土産を確認したりとワイワイしていた。

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