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347話 彼女の帰宅!!

 現場のある駅へ到着すると、克己が建てた扉周辺は騒然としており、克己は掻き分けようにしながら自衛隊が警備している金網の側へやってきて、中へ入ろうとして自衛隊員に止められた。


「いや、俺はここの関係者なんですけど?」


 中に入れてくれない自衛隊員に言うが、信用していないのか、どうしても中へ入れてくれない。


「いやいや、困ったね。中へ入れてくれないのなら対応することができないや」


 困っているような顔はしておらず、克己は諦めるようにして来た道を戻っていく。


 克己が家へ帰り着くと、的場から再び着信があり電話に出ると、どうして現場へ来てくれないのかと、叫び声にも似たような声で聞いてきたので、克己は自衛隊が中へ入らせてくれなかったと的場に言うと、的場から迎えを寄こすから家で待つようにと指示を受け、克己は面倒くさそうな声で了承するのだった。


 的場からの電話を切ってから数時間が過ぎ、インターフォンが押されたらしく音が鳴り響き、ガルボがインターフォンに出て対応すると、どうやら警察が迎えにやって来たらしく、現場の緊急性がよく分かる。


 玄関を開けると、警察は身分を知らせるため手帳を見せてきた。


「お巡りさんが何用ですか?」


 しらばっくれる克己。こんな嫌がらせをしなくとも良いのではないかと、涼介は思いながら眺めていると、警察は事情の説明を始めた。内容は的場からの指示だということだったが、車両は一台しかないため、克己は全員が行けないのなら行かないと言ってドアを閉めると、警察は応援を呼んだらしく、数台の車両がやって来て、全員が車に乗り込みサイレンを鳴らしながら現場へと向かう。


 魔法を使えば一瞬の場所が、警察車両で移動するため数時間もかかって到着すると、時間はすでに夜遅くであり、克己は人目も気にせず欠伸をする。


 的場が慌てて克己のところへやってきて、事情を再び説明してくるのだが、克己は聞いてなさそうな顔をしながら扉を見つめていた。


「早くどうにかして下さい! 向こうで何か起きたら、国際問題になってしまう」


 国としては国際問題を気にしているようだが、克己にしたらただの迷惑な話であり、気にした様子もなく欠伸をして扉の方へ歩いていく。


「なるほど、強制的に扉が閉まるとワイヤーなどが切断されてしまうのか」


 どうして中継が切れたのか少しだけ気になっていたらしく、取り敢えず状況把握から始めており、周囲からしたら早く扉を開けてもらい、向こうの状況を知りたいのであるが、克己とっては、そんな事は知ったことでは無い。


「俺が旅に出たあと、扉が閉まった事があったが、あれも偶然開いた扉が長い間開いていたのか。なるほどね~。時間が過ぎて時空が歪んで元に戻ったという訳か……」


 閉じられた扉を触りながら、閉まった原因に関して自分なりの持論を用いて、その持論に納得しており、何かをする様子はみせない。その様子を見ていた異世界省の職員が、急かすように扉を開けるよう言ってくる。


「閉まった原因を調べなきゃ、直ぐに閉まったら向こうへ行けないでしょ。慌てて開いて、トラブルが起きたら責任は誰が取るんですか!」


 実際のところ、中の様子はスマホで観ることができるが、それは誰にも教えていない。しかも、別の場所に扉を作ってあるため、直ぐに助けへ行くことができるが、それも内緒にしており、本当に嫌がらせをしているだけなのである。


 それに、各国の代表者たちに異世界が危険な場所だと理解させないと意味がないので、時間稼ぎする必要があるのだ。


 作業をしている振りをしながら、のんびりとスマホの画面で中の様子を眺めつつ、科学者たちがアタフタしているのをみながら、誰か扉を開けられそうな奴がいないか確認していたが、頭の固い科学者しかいないようで、これでは一生扉を開ける事はできないだろうと思いながら作業する振りをしていること四日が経ち、懐かしい声が聞こえて振り返る。


「ここに要人たちが閉じ込められているって場所?」


 高圧的な声で科学者たちに尋ねている女性がおり、克己はコイツまで呼び出したのかと思いながら立ち上がって、その女性の前に近づいた。


「現状はどうなっているんだい? 何かヒントくらい無いの? おや、君も来ていたのか……。日本から呼び戻されて来てみたら、何やら面白いことになっているじゃないか」


 彼女とは里理であり、少し楽しそうな表情を浮かべながら克己に話しかける。


「君はイギリスで子育てをしているんじゃなかったのか?」


 克己は少し睨むようにして里理を見つめる。


「あぁ、かっチャンが何処かへ行ってしまったからね。まぁ、戻ってきたのは知っていたが、向こうでの仕事もあったから、簡単には戻ってこれなかったが、今回は緊急という話で帰ってきたが、かっチャンがいるのなら、私の出番はないね。扉を開けるのは、かっチャンしかできないからね」


 里理はそう言って身を翻し、何処かへ行ってしまい、周囲が慌ただしくなっていた。


 何をしにここへやってきたのか、誰にも理解されずに立ち去ろうとする里理だが、科学者たちが必死に止めると、里理は深い溜め息を吐いて克己の方を見る。


 克己はトボけた顔をして、里理を見る。


「また国が何かやらかしたの? かっチャンなら直ぐに扉を開けれるでしょ、開けた張本人なんだから」


 里理の言葉に科学者たちは一斉に克己を見るのだが、克己は知らん顔しながら涼介の方を見ると、涼介は溜め息を吐きながら小さく手を上げると、里理は涼介を指差しながら大笑いしてしまう。


 扉が直ぐに開けることバラしやがったので、これ以上時間を引き伸ばすことができないため、克己は袋の中から入口君を取り出して扉に設置すると、消え失せていたワームホールが出来上がり、各国の代表者含めた自衛隊員たちは、慌てて異世界より地球へ急いで戻ってきて、救急車で運ばれていくのだった。

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