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346話 許されないこと!!

 克己が異世界へ行けたのは、本当に偶然と言って良いだろう。偶然克己の家にワームホールが現れ、その中で克己が行き来することができた。


 そんなワームホールは、いつ閉じるのかは分かるはずなく、その事に気が付いた克己が、魔石(コア)を研究して自分の力でワームホールを開くことができるようになったのである。


 克己が旅へ出た際に扉が閉じていたのは、不安定のままで開いていた扉が自然に閉じただけであった。


 人工的に開いた扉には、克己の作成した機械が設置されているため閉じることがない。今回の扉は強制的に開いたものだが、克己の機械は直ぐに取り外されているため、扉が直ぐに閉まってしまう可能性が高い。


 その事に関しては克己だけしか知らないため、今回開いた扉は、永久に開いたままだと他の者たちは思っているのである。


 克己が行き来している扉が閉まって無いことから、各国の代表たちは閉まらないと思っているようだった。


「克己! 相手は各国の代表なんだぞ、何かあったらどうするつもりだ!!」


「自己責任ということは日本政府と約束してある、何かがあった場合、それは日本政府の責任だ。俺には関係のない話となっているから問題ない」


 何を言っても克己が取り合うつもりが無い事を理解した涼介は、慌てて的場に状況を説明しようとするのだが、克己の従者たちが取り押さえる。


「涼介さん、無駄ですよ。我々と対峙したら、どうなるのかは涼介さんが一番知っているはずです。それに、彼らには問題が起きてもらわないと、こちらが困ってしまうんですよ」


 耳元でノエルが囁く。


「な、何を考えてやがんだ!」


「我々の世界に必要がない人たちを減らすだけですよ」


 反対側の耳元でリーズが囁き、涼介は克己を見ると、普段は見せることのないほど冷たい目で扉の向こうへ入っていこうとしている者たちを見ていて、涼介は恐怖をおぼえた。


 各国の代表者たちが扉の中へ全員入って行くのを確認して、克己は的場に「何が起きても俺の責任じゃありませんからね」と、最終忠告して自分の家へ戻る。もちろん、涼介も連れて行かれ、扉の前には自衛隊や各局の代表した取材陣が群がっていた。


 克己は自分の家で、新しい異世界の中を中継しているTVを眺めており、涼介は克己の従者に囲まれてしまっているため、逃げる事ができない。


 できることならあの世界がどれほど危険なのかを的場に告げたいのだが、見張られているため何もすることが出来ず、克己同様にTVを眺めていた。


 興奮しながら各局のレポーターが喋っている中、克己は置き時計に目をやると「そろそろか……」と、一言呟く。すると、元気よく喋っていたレポーターの映像が途絶え、番組内は混乱のしたような雰囲気になってざわついていた。


「お、おい! 克己!!」


 突然のハプニングに涼介は直ぐに克己の仕業気が付き、克己の名前を叫ぶように呼ぶ。TVは相変わらずレポーターの名前などを呼んでいる。


「向こうでもパニックになっているんどろうな、先ほどから、街場さんから電話が鳴りまくっているよ……」


 呆れたような声で克己は言うが、新しい異世界は通常の銃火器どころかロケットランチャーなどの兵器も通用しない場所であり、現場はパニックどころの話ではないだろうし、しかも、通信が途絶えたという事は、扉が閉じたという事のだろう。


 克己は気怠そうにして電話に出ると、的場が叫び声に似た声で喋り始める。


『成田さん! 扉が急に閉じてしまったんです! 中には各国の代表者たちが閉じ込められている状態なんです! どうしてくれるんですか!』


「TVを観ていたので知っていますが、俺は何度も言いましたし、約束をしたはずですよ。救出するにも、こちらも準備が必要ですから一週間ほど時間をもらうしかないですね」


 冷たい表情で答える克己に、怒気を含めた声で的場が何かを言っているが、克己は話を終わらせるかのように電話を切り、椅子に深く座り込んで涼介を見る。


 涼介の首元には、刃で押さえられいて、涼介は動くことができない状態だった。


「お前が勝手な事をした結果が、この様な事になっているんだぜ、今後に関しては勝手なことをするんじゃない」


 克己が冷たい目で涼介を見つめながら言う。


「そ、それにしては、やり過ぎじゃないか?」


 涼介は首元にある刃を気にしながら言うと、克己は手で静止するような素振りをみせると、刃をしまわれる。


「おいおい、俺は国会でも言っているが、異世界(向こう)にも人が住んでいるんだ。そこを踏み荒らすのは略奪となんの違いがあるんだよ? お前が行った行為も何の違いがある? 俺はね、向こうの人とも仲良くしているんだ、そこを自分の土地と勘違いする奴は許さない。それが、いくらお前であってもだ!」


 強い口調で言うと、涼介は「分かったよ、悪かったって」と、反省しているかのように謝罪してきて、克己は深い溜め息を吐いたあと、的場たちがいる場所へ移動したのだった。


 アルスやハミルの魔法を使えば一瞬で新しい扉の場所へ行けるのだが、克己はわざとバスや電車などの交通機関を使って移動する。どうして魔法を使わないのか気になったのだが、これ以上、克己の機嫌を損ねる訳にはいかないため、涼介は黙ってついて行くのだった。

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