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345話 新しい世界!!

 面倒臭そうな表情をしながら克己は扉の中へ入っていくと、それに続くようにしてノエルたちも入っていくのだが、最後に入ろうとしたルノールが涼介の方を見て口を開いた。


「ボケっとしてないで早くついて来い。アンタの尻拭いで、克己様が新しい扉を開いたんでしょ!」


 相変わらず口が悪いと思いながら、涼介は肩を落として克己の開けた扉の中へ入っていくと、ありふれた風景で肩を透かした。


「先ずは生き物を探す必要があるが、探すのが大変なんだよなぁ……」


 面倒臭そうに辺りを見渡す涼介を尻目に、克己は周囲の空気を計測する機器を取り出して、体に害が無いか確認を始める。他の者たちは周囲の安全を確認していた。


「放射量も問題なし、空気も正常。ガルボ、そこらの地面に埋まっている鉱物を調べてくれるか? リーズは木々に情報収集をしてくれ」


 克己はいつものように指示を出すと、それぞれが言われたように作業を進める。その手際の良さに涼介は黙って見つめるしかできなかった。


「おい、英雄(ヒーロー)! お前は生き物を探して、近代兵器が通用するのか確認してこいよ」


 涼介だけには厳しい克己。それは仕方が無いことだが、あまり納得ができない涼介は、ブツブツと文句を垂れながら近場に居そうな生物を探し始める。


「克己様、土の成分ですが地球の土とほぼ同じ物だと判明いたしました」


 土を調べていたガルボが報告してくる。リーズも同じような内容で報告してきて、残りは涼介だけである。


 それから少しして涼介が戻ってきて、収穫は無かったことを告げて、克己たちは地球へ戻り新たな扉の入り口を作成し、同じような調査を何度も繰り返し、一日が終わる。


 翌日も同じことを繰り返し行い、危険な異世界を探すこと数日がたち、ようやく目的の異世界が発見できた。


「ようやく見つかったか、近代兵器の通用しない世界が。この部屋を案内すれば問題ないだろう。まぁ、鉱物に関しては地球の物とほとんど変わらないが、人らしき者もいないから相手は広大な土地を求めているようだからな」


「ここに街でも作るのか?」


 涼介が克己に訪ねる。どうやら銃火器が効かず慌てて逃げ惑い、ようやく克己が作った武器で始末することができたらしく、戻ってきた際克己に物凄く強い言葉で文句を言っていた。


「人類が居るような世界ではなく、危険な生物が住んでいる世界に誰が好きこのんで住もうと思うんだよ。お前が生活するのなら止めやしないがね」


 嫌味の如く涼介に言うと、両手を振りながら断りやがった。取り敢えず扉の外へ出てワームホールの数値を記録し、扉を閉めた。


「これからどうするんだ?」


 腕を組みながら涼介が質問してくる。


「的場さんに連絡をして、アメリカなどのお偉いさんを呼び、先ほどの異世界へ連れて行く。ただ、向こうで何が起きるのかは俺には一切関係のないという約束を結んで、異世界の危険性を肌で味わってもらい、この件から手を引いてもらうだけだ」


「そこらの動物らしき生き物も、銃火器が効かないんだぜ? 大丈夫なのか?」


「お前が原因でこのようになったんだから、本来であれば、お前が責任を取るのが当たり前なんだぞ。それに相手が欲しいのは膨大な資源と土地だけだ。危険な事は100も承知だろ」


 他国の危険なんて知ったことでは無いと言い捨てる克己の目は、普段以上に冷たく感じる。


 それから一週間が過ぎて、物々しい警備体制で各国の代表者たちが克己の用意した扉のところに集まっていて、その中には各国の取材陣もいる。


 一応、出入り口を警備しなければならないため、克己の従業員(奴隷)が警備しているが、各国の代表者たちにも自国のSPらしき人物がマークしているようであった。


「異世界への入り口ですが、状態が不安定のため、どのタイミングで閉じるか分かりません。そこに関しては俺に文句を言わないようお願いしますよ」


 各国の通訳に説明するよう克己がいうと、代表者たちは少し怪訝な顔をしたが、自衛隊たちが出入りしているのを見て問題なさそうだと思ったのだろう、笑みを浮かべるのだった。


「おいおい、克己。本当に大丈夫なのか?」


 少し心配そうに涼介が聞く。


「中に基地を作っているのは自衛隊だ。俺の従業員(奴隷)は誰一人として中にはいない。何が起ころうが、俺には関係のないよう各国と契約を結んであるから、責められる事もないし、基地を作り始めたのも数日前からだ。あとは日本が責任を持ってやるしかないだろし、扉を不安定に設定しているから、いつ扉が閉まるのかすら分からないので、長い間、向こうで活動するのは危険だということが分かるはずだ。しかも、あちらの世界では生き物に銃火器が通用しないし、原住民の姿もみえられなかったから、人を送り込んでも生きていける保証が無い。各国の代表者がどのくらい滞在するのかは知らんが、俺からしたら早く帰った方が身のためだろう」


 随分と他人事で言う克己。


「もしも扉が閉まった場合、どうするんだ?」


「知らん、俺には関係のない」


 バッサリと切り捨てるように克己は言うと、涼介が慌てて止めるかのようにして克己の前に立つ。


「おい、自衛隊は日本人だぞ! 残された人たちを切り捨てるつもりかよ!」


「お前が作った原因に、勝手に俺を巻き込んだんだろ。それに自衛隊員も少しずつ理解し始めてるよ、相手に銃弾が通用していないことにね。先ほど的場さんから連絡があり、どうすれば良いのかと聞かれた」


「それで、何かアドバイスをしたのか?」


「扉が閉まったら一週間だけ放置して、それから救出しに行くって言った」


 助けに行くつもりが無いように聞こえた涼介は、攻撃が効かないのに対してどうするつもりかを聞きたくて、改めて質問し直す。


「攻撃が効かないんだぞ、それについてはどうするんだよ!」


「知らねーよ。撤退でもすれば良いんじゃねーか?」


 相手は銃火器だけではなく、ロケットランチャーも通用しないし、爆弾だって驚かせる程度にしかならない。自分がやったことに対して涼介は頭を抱えたのだった。

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