326話 理津子の理想は!!
ドラゴンがいる場所はリーズの魔法と、聞き込みからある程度の場所が知ることができた。
「場所がある程度わかるのなら、そこへ行く方が手っ取り早いが、タイミング的に今日辺りやって来そうだな。待ち構えて仕留めるか……」
皆が戻り、皆が調べた内容を聞いて、状況を分析してミシェルに言う。
「どう、どうにかなるのか?」
「どうにかするために、俺がここにいる。それに、ここまで街をやってくれているんだ、仕返ししてやらにゃならんでしょ。追い払うのだったら簡単かも知れないが、それを許さん人が多かった。やり過ぎたんだよ、だから始末させてもらう」
克己は少しだけ含み笑いをして言っているが、ドラゴンをそんな簡単に仕留めることができるとしたら、それは伝説級の戦士だけだろう。ミシェルはそう思いながらドラゴンが来るのを待ち構える事になった。
夜になり、何処からか翼が羽ばたく音が聞こえる始めると、誰かがドラゴンがやって来たらと、叫び声に近い声で言い、克己たちはその音がする場所を確認してみると、確かにドラゴンがやって来ており、克己は袋の中からビームライフルを取り出して構えると、ドラゴン目掛けてトリガーを引く。
ライフルの先端が光ると、閃光がドラゴンの頭を貫通する。
「ウッし、狙い通り!」
飛行していたドラゴンは、羽ばたくのを忘れたのか、地面に下降していき、遂には大きな音を立てて墜落してしまう。
「コアはこちらで回収させて貰いますが、肉はそちらに譲りますね」
爽やかに言って克己たちはドラゴンが墜落した場所へ向かうと、ドラゴンは既に息絶えており、ミシェルたちは唖然としながらドラゴンの死骸を見ていると、克己たちは手慣れた様子でドラゴンの体からコアを取り出す。
あのドラゴンがたった一撃の閃光で、自分たちを苦しめた伝説級の魔獣を仕留めてしまった。
「あ、あんたは何者なんだよ……」
慄くようにしてミシェルが克己に聞くと、克己は少しだけ冷たい目をしてミシェルを見る。
「俺か? 俺はドラゴンの魔王に喧嘩を売る馬鹿なやつさ。奴について、何か知っていることがあるのなら、何時でも教えてくれるか。奴には借りが有るからね。じゃあ、そう言う事で俺たちはこれで失礼させてもらうよ。何かあったら、再びパルコの街へ来ると良い。俺たちは何時でも歓迎をするよ。皆、コアの回収は済んだらパルコの街へ帰るぞ」
ミシェルたちに挨拶して、克己たちはパルコの街へ戻っていく。
久し振りにドラゴンを相手にしたが、呆気なく倒すことができたことで、ドラゴンの魔王に対してどのように戦えるのかが視えてくるが、相手は魔王と名乗るのだけの力は持っている。
外は祭りの準備で賑わっているが、克己は新しく手に入ったコアの大きさや、前に日本で暴れたドラゴンのコアを使って研究を開始する。いつの日か、どこかで対峙するかも知れない、ドラゴンの魔王を仕留めるために……。
祭りの当日になり、相変わらずペルシアのクジ運は悪く、克己が100円均一で購入した物を販売して、最低限の利益を出す。
三日間の祭りが終わり、レストランにはギルドの関係者が予約しているため貸し切り状態となっており、随分と賑やかになっているが、この日くらい贅沢をしても良いだろうと言う話になり、全員がめかし込んで高級レストランを貸し切り、森田家と一緒に東京を一望できる眺めの良い場所で食事をする。
久し振りに家族が揃って食事をするのだが、理津子の機嫌が悪いようにみえる。
「理恵……俺は何か悪いことしたかな?」
重い空気の中で克己が理恵に耳打ちすると、理恵は苦笑いをして答える。
「アハハ……。その……まだ、素敵な男性が……ね」
確かに宏太は子供ができて結婚しているし、理恵も克己と結婚して男の子を出産している。雫は好きに生きているので論外だとしても、両親に会うと必ず聞かれる「いつ結婚するんだ」と……。理津子としても、素敵な人がいればすぐにでも結婚していると思っているが、そんな簡単に素敵な人が現れるはずがないし、成田克己という存在がネックになって、人付き合いが難しくなっている。
しかし、今日に限っては孫が二人もいる手前、両親は何も言ってこないのだが、姉としては妹や弟に先を越されるのは納得ができた事ではない。
せめて、恋人がいれば少しはマシだろうが、理津子の理想は涼介のように、危険が迫っている時に現れる英雄のような存在であるが、これを克己が聞いたら、センスが無いと言うだろう。
お食事会は無難なく終わり、克己はタクシーを拾って両親を家に送らせる。理津子は自分の足で帰るというので、言われた通りにした。
一応、森田家も公安と自衛隊の監視対象となっており、理津子も例外ではなかった。
宏太はタクシーで帰ることを選び、克己はハミルの魔法で家に帰る。魔法を使われると、公安と自衛隊は追うことができずに、苛立ちながら携帯のGPSでいる場所を探すが、異世界にある家に戻っているため、公安はそれ以上、追うことができず自衛隊に任せるしかなかったのである。




