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325話 ドラゴンバスターが見つかった!!

 渡された地図の場所は町外れにある屋敷で、かなり偉い貴族が住んでいるのではないかとの思わせる。


「ここが自警団の言っていた家? 本当に合っているの?」


 シェルが心配そうに聞いてくる。


「間違いねー。ここだ」


 そう言ってミシェルは玄関をノックしてみると、幼い少女がドアを開けた。


「お客様はドラゴンに関して話があると言っている方々ですか?」


 幼い少女が聞くと、既に話が通っている事にミシェルたちは驚きながらも返事をした。


「お待ちしておりました、中へどうぞ」


 そう言われ、ミシェルたちは中へ入っていくと、大広間のような場所に案内され、好きな場所に座るよう言われ、幼い少女は奥へ行ってしまった。


 少し待つと、わらわらと女性が集まりだし、自分たちを品定めするかのように見てくる。少しだけ気味が悪いと、ミシェルは思う。最後に現れたのは冴えない男爵の青年で、少しだけ気だるそうに椅子に座った。


「お待たせしました、話を聞いたところ自分たちの里に現れたドラゴンを退治して貰いたいとか……」


 冴えない男爵の青年が聞いてくる。この青年がドラゴンバスターと知り合いなのかと思いながら、改めて説明をする。


「成る程ね、どうやら君たちの里や近くの街を、餌場にしているようだね」


「頼む、ドラゴンバスターを紹介してくれ! あのドラゴンを追い払いたいんだ!」


 ミシェルが悲痛な声でお願いする。


「街はベイルライトで良いんだよね?」


 冴えない男爵の青年が聞いてくる。


「そうだって言ってるでしょ!」


 同じ話を何度もさせられているので、シェルが少しだけ苛立ちながら言う。


「黙れ、聞かれたことだけ答えろ!」


 貴族のお嬢さんらしき美しい女性が、睨みながら言うと、冴えない男爵の青年が注意する。


「こらこらルノール、もう少し優しい言葉遣いをしなさい」


「ですが、克己様に対する言葉遣いでは無いですよ」


「俺が気にしてないんだから、問題ないよ。ベイルライトの街か、一度だけ行ったことがあるが、アルスとハミルは覚えているか?」


「一応、記憶にありますしテレポートも可能です」


 克己様と呼ばれた青年が質問すると、美しい女性が答える。


「ならば、全員で出かける準備を始めろ。今回の獲物はトカゲ様だ」


 冴えない男爵だったはずなのに、今では何かしらの迫力を感じてしまい、言葉が出なくなる。


「今回、涼介さんはどうしますか?」


「放置。今はそれどころではないからね。今回は俺が相手をしてやるよ。さぁ、皆で祭りを楽しむために、さっさと終わらせるから準備をするんだ!」


 男爵の言葉に全員が返事をして、出かける準備を始める。


「ちょっ、ちょっと待ってくれ! ドラゴンバスターを紹介してくれるんじゃ……」


「探し人は俺だよ。俺がドラゴンバスターの成田克己だ」


 呆れた顔をするミシェルたち。いくら何でも、痩せて冴えない男爵がドラゴンバスターだと、誰もが信用するはずがない。


「おいおい、あんたの様な奴がドラゴンと戦うって? いくら何でも信用ができねーよ。遊び半分で言っている訳じゃなーんだぜ!」


「大丈夫ですよ。俺は何度もドラゴンと戦ってますし、その証拠としてこの腕があるんですから」


 右腕だけにしているアームカバーを取り外すと、目を背けたくなるほどの傷痕が残っており、どうして指が動いているのか不思議に感じるほどである。


「数年前に古代竜との戦いでついた傷ですが、これで信用しろと言われても難しいかな? でも、俺はドラゴンの魔王に喧嘩を売っているから、その情報も集めてる。もし、知っているのなら、教えて貰えるとありがたいかな」


 少し悲しそうな顔をしてアームカバーを付け直すと、皆が準備を終えたらしく集まる。


「では、ベイルライトの街へ行こうか。ハミル、頼むよ」


 成田克己という男が言うと、景色が一瞬にして変わり、随分とくたびれた街の前にやって来た。


「こ、ここは……」


 ミシェルたちの見覚えがある場所で、自分たちが居た里の近くだった。


「さて、トカゲ野郎を探す前に、あの花を焼き尽くしてしまおうか」


 成田克己が指差す美しい花だが、それはドラゴンを呼ぶ悪魔の花でもある。美しいものには棘が有るように、ドラゴンが好む花である。リーズの魔法で一箇所にまとまり、ハミルの魔法により、塵とかす。


「これで新しいドラゴンがやって来ることはないだろう。次はドラゴン討伐だが、何処からドラゴンがやって来るのか、分かるか?」


 何処からやって来るのかと聞かれても、相手は空を飛んでやってくるため、何処から来るのなんて分かるはずがない。


「相手は空を飛んでやって来るんだ! いる場所なんて分かると思うのかよ!」


 ミシェルは馬鹿にされている気がして、怒鳴って言う。


「方角とかあるでしょ。それも分からないのか、なら街で誰かに聞いたりして、調べたりしなきゃいけないね」


 冷静に成田克己が言うのが少しだけ納得が出来ないが、言っていることはまともなため、何かを言い返すことができず、まちへ向かう。


「ルノール、ノエル、アルスは怪我人の手当てを中心に行うこと、リーズは何時ものように頼むよ。ガルボとハミルは俺と一緒に怪我をしていない人に聞き込みをする。さぁ、皆で探すぞ!」


 手慣れたように成田克己という男は、皆に指示を出して動き出すミシェルたちはそれを見つめることしかできず、少しだけ力の差や、判断力などに違いを感じてしまった。


 本人が言うように、彼が本当にドラゴンバスターならば、本当にドラゴンを追い払ってくれるのかも知れない。ミシェルたちはそう思いながら成田克己という男の行動を見つめるのだった。

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