315話 武術大会!!
松田の件が片付きしばらくして、克己はパルコの街を歩いていると、国枝がいることに気が付いた。
「やあ、国枝君。久し振りだね、随分と稼いでいるようで何よりだよ」
「ようって、お前……何か若返っていないか?」
「気のせいだよ。最近良い化粧品でも使っているから、それのおかげかも知れないね。それで今日はどうしたのかな?」
克己が質問すると、特に何かが有って来た訳では無いらしく、たまには落ち着いて食事がしたかったとのことだった。
「向こうでは、そんなに落ち着いて食事が出来ないの?」
「物騒な出来事が多くてね。お前のところの社員が頑張ってくれているから、今日はゆっくりしようと言う話なったんだが、やはり余りゆっくりさせて貰えないらしく、これから戻るところよ」
「成る程ね。何かあったら連絡してくれれば、手助けに行くよ」
国枝と別れて家に帰ると、冒険者ギルドのリンダがやって来た。
「ちょっと、克己くんは居るの?」
玄関でリンダが大きな声で呼んできたので、克己は玄関へ向かった。
「はいはい、どうしたんですか?」
「ちょっと話があるんだけど、ギルドまで来てくれる?」
まるで連れ出されるようにして冒険者ギルドに到着すると、随分と中が騒がしいが、ギルドが騒がしいのはいつもなのだが、今回は少しだけ様子がおかしい。
「随分と騒がしいですが、何かあったんですか?」
喧騒としているギルドだが、それは掲示板に貼られた紙に人が群がっているからであり、克己はリンダに連れられてその掲示板に貼られている紙の場所に連れて行かれた。
「えーっと、何々……王都で武術大会?」
掲示板に貼られていたのは、王都で武術大会を行うので、街から必ず一人は参加するように記載されており、克己は頬を掻きながら、その内容を確認していると、冒険者限定と記載されてあり、奴隷は参加できないようだ。
「また、くだらないことを考えるオッサンだなぁ。それで、これがどうしたんですか」
「この街の代表として、克己くんに参加してもらう事になったから!」
一瞬だけ間が開いて、克己は嫌そうな声を上げるのだが、嫌だと言っても既に登録してあると言われてしまう。
「克己くんはこの街にいる唯一の男爵なんだよ! この街を納めているのは、克己くんだってことを忘れないでよね!」
たしかにこの街には爵位を持っている人がいない。と言うか、元々は居たのだが克己の功績が凄すぎて、街から逃げるように王都へ行ってしまい、街の責任者は克己となっているのである。
「その大会は明後日とか、急すぎませんか?」
「何を言っているの! 克己くんには、転移魔法を使える子がいるじゃない! 優勝しろとは言わないけど、多少は活躍してきてよ。この街は、世界一安全と言われている街で、それなりの実力者が居ないと困るのよ」
「いやいや、俺はできればそこまで表舞台に出たくないんですよ」
克己は困った様子で言うのだが、既にエントリー済みだと言われてしまったため、出るしかなかった。
当日は仮病でも使って休もうかと思ったのだが、理恵たちも応援する気満々で、当日の仮病など使えなかった。
応援してくるアルスやノエル、ハミル、リーズ、ガルボにルノールたちに加え、ライラやライさんも頑張るように言ってくるため、仕方がなく克己はハミルたちと共に王都へ行き、自分の屋敷へ向かうと随分と埃が溜まっており、応援のために付いて来たライラが腕まくりをして、大掃除を始める。
一人で掃除をさせる訳にもいかないので、全員がライラの仕事を手伝う。
大会当日になると、王都には沢山の人が集まってきて、王都にある克己の店は大繁盛している。
入った客は克己の味を盗もうとするのだが、食べただけで盗める味ではないため、何度も注文を繰り返すが新鮮な魚についてはどうやって仕入れているのかも分かっておらず、味を盗んで帰った者は誰一人としておらず、克己の奴隷だと知らずにスカウトするものや、金貨何枚で教えてくれるのかと聞いてくる者が居たらしいが、教えることはできないと言って断りを入れていたのだった。
大会当日になり、やる気を見せない克己だが、周りの熱量は異なっており、ノエルやリーズなどは、「克己様ならやってくれると信じてます!」と、人のことを何だと思っているのか分からない応援をしてくる。
「大会ルールとして、魔法の使用が許可されているんだが、武器に関して自作の武器は禁止されているんだよね。俺に対する挑戦なのかと思っちまうな」
どうやら王国騎士団も出場するらしく、有望そうな人がいたら、王国の騎士団にスカウトするのかも知れない。
先ずは予選からスタートするため、トーナメント表を観て自分の名前を探し、予選会場へ向かう。
筋肉だるまの人ばかりで、細い体をしているのは自分だけしかいないように見えるし、こんな中で勝ち残るのは大変だろう。
周りに人たちの方がレベルが高そうで、克己はそこそこの順位になれば許してくれるだろうと思いながら、予選がスタートする。
克己は危なげ無く、順調に勝ち星を上げていく。周りが油断しているのではないかと思っていた。




