310話 エルフの秘薬!!
異世界省に呼ばれて、日本の経済もどうにかして欲しいと言われてしまった克己。
「しかしですね、異世界は危険すぎますよ?」
「それは他の国なども同じだろ」
危険だと促す克己に対し、宮沢大臣は地球でも危険な国はあると言ってくるので、日本人限定でパルコの街を旅行場所の対象にして、異世界人が日本旅行の許可を取り付けると、異世界人が日本へ旅行することができるが、必ずガイドが付いた旅行でなければならないと言うないようで克己は了承すると、異世界側は日本に良い印象が無いため、旅行者は貴族に限定されているのだが、日本人は遠くの海外よりも近くの異世界へ行く人が多く、パルコの街は日本人で溢れ返るのだが、土産屋以外の物に関しては、何が起きるのか分からないため全ての物が禁止されている。
帰国する際、自衛隊と克己の奴隷が厳しくチェックするため、検閲で没収される物が多く、その処分費は日本政府が支払わなければならないが自衛隊も街へ入って良いことになった。
そして、旅行に関しては自衛隊が対応するので、旅費は全て国の収益となり、経済は徐々に回復していく。
克己の奴隷に関しては、今回の件で許可を出す代わりに、自由に行き来することが許され、日本経済は更に回復の兆しが見られるのだった。
経済回復と危険は紙一重であることを知るのは、パルコの街にやって来た日本人が、油断してスリにあう被害が増大するの事であり、異世界では盗られる者が悪いと言われており、治安が良い日本と同じに考えないよう、注意喚起を異世界省が出すが、それでも減ることはなかった。スリからしたら、日本人は絶好の鴨であった。
それから暫くして、魔王から克己に提案というか幾つかの契約更新を行わないと言うので、克己は仕方がなく魔王城へ足を運び、話を聞くと魔物が人を食べる方が美味しいと気がついてしまったとのことで、パルコの街とオルベスク城を襲わなければ問題ないと克己が言い、魔王は再度パルコの街とオルベスク城以外は襲わないと契約を結び、克己はパルコの街へ帰る事になったのだが、克己の顔を覚えている魔物は、克己とそのお供に付いているノエルたちを襲うことはなかった。
再び魔物が街から居なくなった事で、街の人達は恐怖している人や、再び戦うことで稼げると思っている人がおり、誰も克己を責める人はおらず、むしろオルベスクについて考えてくれている人と思われるのであった。
魔物が街や人を襲うようになってから数ヶ月が過ぎ、ようやく克己と理恵の間に、元気な男の子が産まれる。
克己は喜び、魔王からも祝福の電報が届くという、異例の事態が起きていたが、そんな事は誰も気にしていなかった。
世界一安全な大陸だったオルベスクだったが、今となっては世界一危険な大陸と安全が保証されている街が在るということで、冒険者の数が増えているのだが、洞窟を司る魔王が今までの鬱憤を晴らすかのように、沢山の洞窟を作り上げ、冒険者は飽きることを知らないで色々な洞窟へチャレンジする一方で、魔物も日頃の鬱憤を晴らすかのように、克己の奴隷がいない街へ襲撃を掛けて、ある意味普通の日常が戻ってきたのである。
日本のドラゴン騒ぎによる三県が壊滅状態なったのだが、ようやく仮設住宅生活が終わりを迎え、日本の経済は順調に回復する中、就職難民者は相変わらず多く、日本政府としてもどうにかテコ入れを入れているのだが、企業が受け入れる事が難しい状態が続いている。
克己は一つの液体薬を眺めていると、理恵が気になったのか質問してきた。
「なんですか? その液体は……」
「旅をしていた時に、エルフの里が襲われていたので、救ったんだ。その時にエルフから貰った秘薬なんだけどね、当時はまだ飲むのは早いかなって思ったんだが、今では俺も30歳じゃん? だから、そろそろ秘薬を飲もうかなって思ってね」
「その、エルフの秘薬って、どのような効果有るんですか?」
小瓶に入っている液体は、どう見ても怪しい。
「飲めば分かるけど、若返りの薬って奴。一応、理恵の分も貰ってあるけど、まだ必要が無さそうだから、要らないでしょ?」
若返りの薬と言われても、信用できるはずがない。その様な眉唾物をどうして持っているのか、気になるのだが、本当に若返ると言っても、どれだけ若返るのかが分からないので、理恵は飲まないと言うと、克己は気にする様子もなく蓋を開けて、飲み干してしまったが、何かが起きるわかでもなく、理恵は偽物だったのだと思いながら子供が寝ている場所へ行ってしまう。
それから暫くして、お昼となったので理恵は克己を呼びに研究室へ入っていくと、克己の様子が少しおかしい。
本人は至って普通に作業をしているのだが、肌艶などが若返っているように見え、身長も少しだけ縮んだように感じる。まるで、10代前半のように見えた。
「どうしたの?」
声も少しだけ高いように感じ、理恵は固まってしまった。
「奥様、どうされたのですか?」
一緒に研究室で作業していたルノールが理恵に問いかけると、理恵は震えた指で克己を差す。
「あぁ、エルフの秘薬を飲んで、先程この姿に変わったんですよ。若い頃の姿も可愛いですよね!」
当たり前のようにルノールが言うと、理恵は克己の側に立ち、克己が立ち上がると、目線が理恵と変わらない位になっており、着ていた服などもダボダボで、ダイエットしたの? と、質問してもおかしくは無いだろうが、背が縮んでいるので仕方が無い。
「どうやら中学を卒業した位まで若返ったようだね。未成年に間違われないか、心配になるが仕方が無い。免許などでごまかすしかないだろうね」
誰がエルフの秘薬なんて物を信じるというのか、しかし、目の前にいるのは理恵が愛した男で、右腕には痛々しい傷が残っているため、本当に克己だと証明している。
何に驚いているのか分からないため、克己は首を傾げるのだった。




