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306話 石本の恋愛!!

 克己は久し振りに異世界Dにやって来て、街の様子を確認していると、石橋が克己に気が付いてやって来た。


「やあ、石橋さん。随分と賑やかな街になっているじゃん」


「会長夫人のお陰です。それで、今日はどうしたのですか?」


「核石について調べなきゃいけない物があってね。それに灰色の核石を貰えたら助かるんだけど……」


「小さいですが、灰色の核石はありますよ」


 石橋に保管場所を教えてもらい、克己は核石を保管している場所に行き、手頃な核石を何個か袋の中へ仕舞い、自分の家に戻って行くと、克己の家に石本がやって来ていた。


「どうしたんだ? あいつ」


 どうやら克己に用事が有るわけではなく、理恵に用があるらしく、石本はリビングで理恵と話をしていると、理恵が克己に気が付いて近寄ってきた。


「少しだけ相談に乗ってくれませんか?」


「何か問題でもあったの?」


「そうでは無いのですが、本人にとっては、大問題なんです」


 意味が分からない事を理恵に言われ、仕方なくリビングの椅子に腰掛ける。アルスたちも空いている席に座り石本を見つめるのだが、石本は緊張したような顔をして克己を見つめている。普段であれば、睨む様な目で見てくるのだが、今日に限ってはそうでは無いので皆が不思議そうな顔をしていた。


「それで、何の話をしていたの? 理恵」


「石本さん、克己さんに言わないと私は協力出来ないですよ!」


 協力という話だが、何を協力して欲しいと言ったのだろうか。


「か、会長! じ、じ、実は……」


 妙な緊張感が、部屋を包みだす。それほど大事な話なのだろうか。


「彼女が欲しいッス!」


 石本の言葉に全員が椅子からズリ落ちそうになった。


「石本の癖に女が欲しいって? ヴァッカじゃないの?」


 呆れたような声でルノールが辛辣なことを言う。だが、石本の言いたい気持ちも理解できる。克己も彼女がいない時期=年齢だった時があり、初めての彼女がノエルで、筆おろしをしたのもノエルだったからだ。


 克己の周りは女性で溢れているのはここ数年で、その殆どが奴隷である。


「お前の年収からしたら、女は近寄って来るんじゃないのか?」


 石本の年収は1,000万円を超えている。それだけ見合った仕事をしているし、異世界Dでも頑張っていたのを評価していたし、苦手だった英語や異世界語だって話せるようになっている。


「金で近寄ってくる奴等は信用できねーッス」


 確かに言いたいことは理解できる。


「高校は……男子校だったな。そう言えば……」


 しかも被災地だから、学校すらなくなっている。


「そんで、会長の奥さんに相談したんッス。あの、涼介さんも結婚できたのなら俺にもワンチャンあると思ったんッスよ、可愛い奥さん貰って羨ましいッス」


 何故、石本がここまで女性を意識しているのかというと、日本人社員で彼氏彼女が居ないのは石本だけで、他の人はしっかりと恋愛をしている。なんだかんだ、石橋も友人の紹介で恋人ができ、既に婚約までしている。しかし、涼介に対抗意識を持っても意味がないだろう。実際は女性にモテなかった訳ではなく、克己との相性を中心に女性を選んでいたので、彼女ができなかっただけである。


「同級生に頼めば? 族の中にレディースもあったんじゃねーの?」


「それなんスが、話が馬鹿すぎて合わないんすよ……」


 頭が悪いのはお前も一緒だと、ルノールが呟く様に言う。美少女に言われるほど、ダメージが大きいのは仕方がないだろう。


「理恵の知り合いは?」


 理恵に話を振るが、学生時代から生活困難で、それほど人付き合いが多い訳でもないし、自衛隊ではそう言った付き合い方はしていないようで、首を横に振る。


 アルスたちを見ると、絶対にこんな奴と付き合いたくはないと言った表情しているし、克己だって彼女等を手放すつもりはない。本当に可愛がっているし、しっかりと着実に愛を育んでいる。最近は、アルスとルノールだけではなく、ガルボも随分と甘えてくるようになって、昨晩も激しく愛を確かめ合った。


「しかしなぁ……。お前の好みなんて知らねーし、興味すらない。どうしたもんかなぁ」


 少し考えながら石本を見ると、かなり真剣に悩んでいるらしい。


「俺ぁ、今まで彼女なんて居なかったッスから、どうやって女性と付き合って良いのかも、分かんねーッスよ」


 これ以上、こいつの話は聞きたくない。


「克己さん、何とかなりませんか?」


「なりません! だけれど、困っている奴を放っておけないよね。石本に聞くけど、お前は女を大事にすると約束できるか?」


 真剣な表情で克己が石本へ問い掛ける。それはかなりの圧力を掛ける様に言い、石本は冷や汗をかいていた。


「す、するッス! 一生を掛けて守り抜いていくッス!」


「なら、付いてこい。理恵も一緒に来る?」


 克己は立ち上がり、理恵に確認しながら出かける準備を始めるのだが、行く場所はあんまり皆を連れていきたい場所では無いため、ハミルとリーズの二人に付いて来て貰うことにすると、アルスとルノールが拗ねた顔をしていた。


 理恵と石本たちと行った場所は、奴隷商館である。石本の好みなんて知らないし、言うことを聞かせるとなると、この方が手っ取り早い。


 店の中へ入ると商人が慌ててやって来て、克己たちを特別な部屋へ連れて行く。石本は初めての奴隷商館に緊張しながら周りを確認しているのだが、理恵は平然としている。


「これはこれは、克己様……。この度はどの様な奴隷を、お求めになっているのでしょうか?」


「護衛剣士かな若い女性で、お金は高いので構いません」


「承知致しました……」


 商人はそう言って奥へ戻って行き、高級そうなソファーに理恵と座って話をしていたのだが、石本は緊張しているような顔をして、貧乏揺すりしている。


「お待たせ致しました。こちらへどうぞ……」


 奴隷商人が呼び、克己たちは奥の部屋に入っていくと、薄く透けているような服を着ている女性が、10人ほど並んでおり、商人は胡麻を擂る様に、手を揉んでいた。


「石本、好みを選べ。俺が金を出す。正直、お前が買えるだけの大白金貨じゃない」


 高い=姫レベルの女性が、できもしない護衛剣士を選択しただけで、レベルも低くて何もできない、ただの小娘である。


 石本は緊張しながら目利きをして、一人だけ選ぶ。石本が選んだ女性は、清楚で黒髪に胸は少し小振りの18歳に成ったばかりの少女。


「あ、全員購入しますんで、いつものように請求してもらって良いですか?」


「承知致しました」


 商人は嬉しそうにして、返事をした。


「取り敢えず、家に帰って服を着させるから、ハミル、頼むぞ。石本の奴隷ちゃんは、これを着させてくれる? あとはお前が教育しなきゃ駄目なのと絶対に、大切に扱うんだぞ。暴力なんて振るったりしたら、魔王の餌になると思え」


 ハミルは言われた通り、石本にあてがわれた奴隷を除き、克己が購入した奴隷を連れてテレポートしたが、石本は自分の奴隷を顔見しており、珍しく理恵が石本の頭を叩く。


「ジロジロ見過ぎです! 恥ずかしがっているではないですか!」


 苦笑いをしながら、克己は袋の中から取り出した服を石本の奴隷に渡し、少し大きいサイズになってしまうが、スニーカーを渡して履かせる。


「取り敢えず石本、日本へ連れて行き、服を購入して来い。名前はお前が考えた名前に変更して構わん。涼介だって、そうしたんだから。リーズ、嫌かもしれないが、服選びと作法などを教えてあげてくれるか?」


 リーズは優しく微笑み、石本の奴隷をして連れて行き、石本はその後ろを付いて行くのだが、石本はいきなりリーズにどやされるのだった。

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