表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
312/361

300話 最低限の譲歩!!

 国が抱える負債はとんでもない額となり、防衛費もあげる必要も出ているし、他にも復興支援金などで国は転覆寸前の状態となっていた。


 的場は必死になって克己と連絡を取ろうとしていたのだが、克己は話す価値はないと一蹴してしまい、話をすることができていない。


 涼介にも救いを求めているのだが、難しい話は自分に無理だと言って、克己が許可を出さなければ国とは、話す事ができないと言い、話し合いに応じることはしないと言い切り、八方塞がりの状態になっていた。


 海老名もどうにかして自分のミスを帳消しにしようと模索していたが、的場に余計な事をするなと言われているためどうにもできなかった。


 また、再びドラゴン騒ぎが起きないよう、自衛隊で異世界に行った者たちは何度も室内検査や、持ち物検査をされており、同じような事件が起きないように再教育を繰り返し行っていた。


 その頃、克己はと言うと、チェリーで魔王と話していた。


「お前の知り合いにMADな奴っているか?」


 克己はスペスルクスの街周辺に有った洞窟のことを思い出し、魔王に確認をしていた。


「いると言えば居ます。魔王の一人ですね。スペスルクスの大陸を支配している魔王で、魔物を改造していたり、拐った人間を研究したりしているのが趣味な奴ですが、本人は至って温厚な奴ですね」


「成る程ね。研究者の魔王ってやつか」


「平たく言えば、そうですね。私よりは弱い魔王ですよ」


 魔王よりも弱いやつだが、MADな魔王というのは少しだけ厄介だと思いながら、ジュースを飲み干す。


「わかった、そいつは洞窟で変な研究をしている可能性は有るのか?」


「城では情報が漏れるかも知れないので、洞窟を改造して研究をしている可能性は有りますね」


 確かに洞窟で研究をしたのであれば、情報が漏れる事は少ないかもしれないと克己が思っていると、海老名から電話が入り、克己は怪訝な顔をして電話に出た。


『もしもし……』


 電話越しの声は物凄く重い声で、相当参っているようにも感じ取れる。


「なんですか、海老名さん。俺は話す事はありませんよ」


『――どうしたら……どうしたら私は許されるのでしょうか」


「許されるとは、誰に対してですか?」


 少しだけ普段と様子がおかしい事に気が付き、克己はメモを取り出して、魔王に海老名がいる場所を特定させるよう命令する。


『……全ての人にです。的場さんや、被災した人など含めた人にです』


「そんなの俺が知るはずないでしょ。自分が招いた種なんですから……」


 場所を特定したらしく、魔王が住所を記載して、タブレットで住所の場所を調べると、どうやら海が近い場所に居るようだった。


『――死ねば全て許されますかね?』


 話が極端過ぎると思ったが、海老名の声や場所からして、あり得ない考えではないと一瞬だけ思い、嫌な予感がして魔王にお願いするようにメモして、海老名がいる場所にテレポートしてもらうと、海老名は防波堤の上で電話していた。


「あんたが死んで、何が解決できると思っているんだ?」


 電話を切り、直接海老名に語りかけると、海老名は驚いた顔をしていたが、物凄くやつれていた。


「全ては私が招いた種で、国をどん底に落として被災者まで作ってしまったんですよ。どうやって責任を取れば良いのですか!」


 救いを求めるような顔をして、海老名が言う。


「あんたはそう言っているけど、自分が冒した罪に対して誰かに謝罪をしたのか? 少なくとも、俺は謝罪の言葉をあんたから聞いたことはない。あんたは悲劇のヒロインを気取っているだけなんじゃないのか? あんたは的場さんに謝罪をしたのか? あんたは経済産業省に対して、謝罪をするよう動いていたのか? 俺は的場さん以外から謝罪の言葉を聞いていないない。そんな奴らに、誰が許せと言うんだよ。悪いことをしたと思うなら、最低限の謝罪はするべきだろ。被災した人などにも国は謝罪をしたのか? ただ、復興に力を入れると言っただけじゃないか。それで許されるなら、犯罪者は許されちまうだろ」


 冷たく突き放すように克己が言うと、海老名は悔しそうな顔をして克己を睨みつける。


「そんな顔ができるのなら、あんたは自分ができる仕事を探したらどうだ? こんな辺鄙な場所で、下らない事を考える暇があるのならばね……。行こうか、魔王」


 克己の言葉に頷いた魔王は、テレポートの魔法を使って海老名の前から姿を消した。


 海老名は事務所へ戻り、的場にこれまでの事を謝罪した。


「謝罪するのなら、自分がやるべき仕事をやってくれ!」


 的場は海老名の肩を叩いて、一服しに外へ向かう。海老名は経済産業省へ連絡して、検疫の失態について国民へ謝罪をするように働きかけると共に、外務省にも同じように謝罪するよう説得に紛争するのだった。


 しばらくして、政府が緊急記者会見を開き、各大臣たちが国民に謝罪の言葉を述べたが、その側には海老名が立っており、力強い顔で大臣たちの顔を見ていたのだった。


 それから数日後、的場から克己に電話が有り、政府の会合に参加するようお願いすると、克己はその話を受け入れて会合に参加することにした。


 会合が行われる日になり、お供に付いて来たのはアルスとルノールの二人。二人はリクルートスーツに身を包んでいるのだが、誰もが振り返り見とれてしまうほどの美しさで、言葉を失うが克己は理恵が選んだ普段着で会合に出席している。


 各大臣が苦虫を潰しているような顔をしながら克己を見つめているが、克己はそんな顔を無視しながら話の内容を聞いており、異世界担当大臣の伊勢場(いせば)が克己にどうにかして異世界の扉を開いてくれと言ってくる。


「別に扉を開くのは構わないが、検問や検閲、検疫は自衛隊の他にうちの人間も行うのと、武器に関してこちらは一切協力をしない。また、今回開かれる場所は以前のように安全な場所ではないので、全ての責任は政府が持ち、こちらは一切の協力をしないため、全て自分たちで解決をし、トラブルが発生した場合や、俺の機嫌を損ねた場合は、直ぐに武力を持って自衛隊を扉の外へ追い出し、扉は閉める。それで良いのなら、扉を開きますが、如何致しますか。もちろん、契約書と誓約書は俺が作成致します」


 最低限の譲歩と克己は言うと、政府は首を縦に振るしかできず、会合は終わりを迎えたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ