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30話 王都へ向かう!!

 森田三曹と連携を取りながら宮川二尉はオークと戦っている。


 全員ビームサーベルを標準装備しているので魔物を倒すのは簡単になり、宮川二尉は魔物を倒して車に戻ってきた。


「怖かったー!」


 宮川二尉が車に戻ってきての第一声がそれだった。


「オークは見た目があれですからね……、そのうち慣れますよ。それよりも早く行かないと暗くなってしまいますよ?」


 克己はそう言いながら助手席から降りて後ろに回ると、ノエルが車から降りて助手席へと座り宮川二尉は少し緊張しながら運転しはじめる。


 後ろに移動した克己はシェリーに話しかける


「王都に屋敷を買おうかと思うだけど、どう思う?」


「克己様は男爵なのですから買った方が良いかと……、前に大白金貨を手に入れてますから結構いい家が買えると思いますよ」


「成る程……」


「そういえば克己様、王都と街では家の住み方が異なりますのを、ご存じでしょうか?」


「ん? それはどういう意味?」


「街では室名札を商業ギルドから貰って取り付ければ住む事ができるのはご存知ですよね?」


 克己は頷き、シェリーは続けて喋る。


「ですが、王都では家を商業ギルドで買わないといけないのです」


「それは何で?」


「それは……王都にはそれなりの身分を持った者が住んでいるためです。普通の街とは異なり家を移り住む人が少ないのです……。ですから、家を購入する必要があります」


 シェリーは嫌そうな顔をして話すのが克己は気になり質問をする。


「なんでシェリーは嫌そうな顔をするんだ?」


「……そこに住んでいるものは基本的に何もしない者ばかりなのです。私は一度、お父様にお話したことがあります。貢献できていない者の身分を剥奪した方が良いと……」


「その理由は?」


「だって! 爵位などは本来、国に対して貢献できたものに与えられる称号のような爵位なのです……。ですが、爵位を手に入れると国から……王宮から給付金が毎月出るようになり、人は堕落し働かなくなります……。おかしいではありませんか! 国のために……王宮のために、もっと貢献するために与えられる名誉なのです……ですが、そう考えるものは少なく……男爵までの爵位を手に入れると何もしない者が増えて、王宮近辺に住み着くのです……。本来であれば王宮の代わりに街を統治し、発展させるべきなのです!! それなのにお父様は一度与えてしまったから剥奪は難しいと言って何もしません……」


「ふ~ん、シェリーが国を統治したほうがこの国は良くなるんじゃないのか?」


「わ、私は……克己様に捧げられた身……本来であれば、克己様に慰み者として扱われてもおかしくはないのです……」


「そんなことはしないけどね。シェリーはそんな気持ちで俺の傍に要るの? 別に王宮に帰っても構わないよ? 俺は」


「い、嫌です!! 私はここが……克己様のお傍が心地よいのです……!」


「そっか……。ありがとう。シェリー」


 克己はシェリーの頭を撫でると、シェリーは顔を赤くしてそっぽを向いた。


「なら、この間手に入れた大白金貨が役に立ちそうだな……そこを自衛隊の基地にしても構わないんだよな?」


 克己が聞くと、シェリーは克己様に任せますと言って横を向く。恥ずかしくて克己の顔を見る事ができないでいた。


 伊藤二士は品川准尉と話をしていた。


「品川准尉、王都にもアンテナを設置するのですか?」


「それは……二尉と話をしないと何とも言えませんが……今の状態だとせめてアンテナくらいは設置しないと私達の存在意義が無いでしょうね……」


「ふ~ん、品川准尉の髪って長くて綺麗ですね」


「な、何を急に言ってるんですか? 二士……」


「自衛官になる前は何をやっていたのですか?」


 伊藤二士の質問は止まらない。


「ふ、普通のOLです」


「何を気に自衛官になろうと思ったのですか? OL? だったらかなりの決意が必要だったんじゃないんですか?」


「そりゃ……まぁ……会社で色々ありまして……心機一転するために入隊したんです。二士、この質問はいつまで続くんですか?」


「はぁ、凄いですね……かなり大変ですよね?」


 伊藤二士は品川准尉の質問を聞き流しさらに話を進める。


「まぁ、本当は広報部に居ましたからね……まさかこんな場所に来させられるとは思ってもみませんでしたよ……」


「後悔してますか?」


「別に……してません……」


 品川准尉は話を打ち切り宮川二尉の方へと向かう。


「二尉、王都に着いたらどうするんですか?」


「ん~、まずは克己さん次第になるな。手持ち金が少なく克己さんに頼らざる得ない状況だからな……」


「そ、そうですか……」


 品川准尉は克己の事が苦手で話しかけ辛かった。


「准尉、悪いが克己さんに聞いてくれ。もし聞いたら報告を頼む」


「え? あ……は、はい……」


 品川准尉は俯きながら返事をして後ろに下がり、克己の側へと向かうと、シェリーが微笑む。


「どうしたんですか? 品川さん」


 シェリーは品川准尉の落ち込んでいるような顔を見て、気になり話しかける。


「い、いえ……別に……」


 克己はノートPCで何か作業をしており、話し難い雰囲気だったので品川准尉は躊躇してしまう。


「私で良ければお話を聞きますが……」


 シェリーがもう一度確認すると、品川准尉は克己と話すよりはましかと思い、シェリーに話をすることにする。


 しかし、克己は二人の話に耳を傾けながらPC作業を行っていた。


「王都に到着したらどうするか、お話がしたかったのですが……」


「そうですか……先ほど克己様とお話をしていたのですが……お屋敷を購入するようですよ?」


「そ、そうですか……それだけしか仰っておりませんでしたか?」


 品川准尉はシェリーに確認しているが、克己はしっかりと聞いている。シェリーに言わなくても俺に話しかけりゃいいじゃん。と、思いながら克己は作業していた。


「ん~、自衛隊の皆さんのために購入するような話をしていましたが……」


 シェリーはぼかすような言い方で返答する。克己はシェリーがワザとそう言っているのに気が付き、心の中でいやらしい奴だな……と、思っていた。


「お屋敷を自衛隊のために購入ですか……」


「ここからは聞き耳を立てている克己様に聞いた方が早いのではないでしょうか?」


「分かっているなら早めに振れよ、話を……」


 克己はすぐさまシェリーにツッコミを入れると、シェリー舌を出してお道化ていた。


「き、聞いていたのですか……」


「最初っから話は聞いていたよ……シェリーじゃなくて俺に話をすれば良いじゃないか? その程度の話は」


「で、ですが……」


「いったいどうしたんだ? 准尉。前は威勢がよかったのに、今では怯えているように見えるぜ?」


「そ、そんなことは……」


「まぁいいけどね、で、王都に到着したらの話だよね? 商業ギルドに行って家を探し、家を確保する。その後は王宮へ行って王様の話を聞く……はずがない! まだ王宮にはいかないよ」


「な、何故ですか?」


「あの王様は困らせとけば良いんだよ、自分の娘を虫けらのように扱うなんて……そんな奴は後回し!! それに絶対に大した用事ではない!!」


 克己は高らかに言うとシェリーはパチパチパチ……と嬉しそうに拍手をしている。


 品川准尉はドン引きしてどうすればよいのか分からず、今の話を宮川二尉にすることにすると、宮川二尉は笑って話を聞いていた。


「品川さん、克己様にそろそろ街が見えてくる頃だとお伝えして頂いても宜しいでしょうか……」


 助手席に座っているノエルが品川准尉にお願いしてきたが、品川准尉は一瞬躊躇する。


「どうしたのですか? 品川さん……」


「い、いえ……わ、分かりました……」


 品川准尉は克己の元に行き、ノエルの伝言を残し判断を仰ぐと克己は一瞬だけだが物凄く冷たい目で品川准尉を見て、品川准尉の背中に冷たいものが走る。


「街には寄らずにそのまま行きましょう、夜通しで走るように言ってもらっても構いませんか?」


「あ……、は、はい……」


 品川准尉は宮川二尉に伝えると、無線で前方を走る森田三曹に伝えた。


 先ほどの目は一体何だったのかと品川准尉は思い、克己の顔を見るが、いつもと変わらずノホホンとした顔をしていた。


「しかし准尉、どうしようか……」


 急に宮川二尉に呼ばれ、品川准尉は途惑う。


「な、何が……ですか?」


「資源だよ、資源……佐藤一佐にも言われたろ? 早いとこ資源を見つけてくれって……」


「あ……そ、そうでしたね……。どうしましょうか……」


目視もくしでは限界だって伝えはしたんだが……俺達の名目は資源調査隊だろ? 人も無理やり増やしちゃったし……結果を出さないと不味いだろう……」


「そ、そうですね……どうしましょうか……」


 話を聞いていたノエルが話に割り込んでくる。


「あの……それなら克己様にご相談されたら如何でしょうか……?」


「克己さんに?」


「はい、克己様なら名案が浮かぶのではないかと……」


「成る程……、一理あるか……こんな武器を作っているくらいだしな。准尉、聞いてみてもらえるか?」


「わ、私が……ですか!」


「俺は今運転中だからな」


 品川准尉は渋々克己の元に行き先ほどの話を説明すると、克己は何か考えた顔をして「考えとく」と言い話を終わらせた。


 品川准尉はそれだけ? と言うような顔をして呆気にとられるが、克己は本当にそれだけしか言わずに話を終了させ、PCを仕舞い、ノートに何かを書き始めていた。


 暫く無言が続いていると、車が止まる。


「准尉、二士! 敵発見、駆除に向かうぞ!」


 宮川二尉はそういうと三人でトライアングルを組み、魔物が居る場所へと向かった。


 暫くすると宮川二尉達が戻ってきて車を走らせる。


 伊藤二士は疲れたのかうたた寝を始めると、そのまま眠りについてしまい品川准尉は溜め息を吐いて拳骨をする。


「痛~!!」


 伊藤二士は頭を押さえて品川准尉の方を見る


「緊張感が足りないわよ、もっと集中しなさい!」


 品川准尉はそう怒りながら伊藤二士に腕立て伏せを命じた。


 その頃、前を走る車の中ではアルスがそわそわしていた。


「アルスさん、どうしたんです? ソワソワして」


 気になった森田三曹が話しかける。


「い、いや……克己様は何しているのかと……」


「いつものようにPCで何かをやっているんじゃないの?」


 森田三曹が言うと、アルスはシュンとして俯いてしまった。


「私の事は気にならないのでしょうか……」


「は?」


「い、いえ、別に……」


「どうしたの? アルスさん……」


「アルス、お腹は空いてない? 克己様は夜通し進むと言っておられたらしいけど……食事くらいはしないと……」


 ハミルが話を変えるために言ってくる。


「も、森田さん、先ほどの奴で食事を聞いてもらっても宜しいですか?」


 アルスは森田三曹に確認すると、森田三曹は無線で宮川二尉に連絡したところ、もう少し先に行くと広い場所に出るのでそこで休憩をすることになった。


「克己さん……恋人はいるの?」


 森田三曹の急な質問にハミルとアルスは戸惑いをあらわす。


「な、な、な、何を急に仰るんですか……森田さんは……」


「いや、ノエルさんと別れたと聞いたから……次の恋人はいるのかなって……」


「私達は分かりませんよ……。ノエルの時は自分から言ってきましたが、どうなのでしょうかね?」


 アルスはハミルの方を見ると、ハミルは首を横に振る。


「ふ~ん、じゃあ……今は居ないのですね……」


「た、多分……」


 そのあと車内は沈黙に包まれ三人はお互いを警戒しているかのような空気が流れていた。


 外は真っ暗となり、ようやく指定された休憩場所にたどりついて車を止めたアルス達は、外に出ると体を伸ばしてストレッチを始める。


「狭い箱の中だから体がバキバキになりますね……」


 アルスが言うと、森田三曹は苦笑いして言う。


「私は運転もしているから、かなり疲れたよ……」


 そんな会話をしていると克己が急いで二人に言う。


「二人共急いで武器を装備しろ」


「「え?」」


「来るぞ、急げ!!」


 何が来るのか分からずに二人は顔を見合わせると、克己が二人に飛び掛かる。


「か、克己様……な、何を!! ……え?」


 その瞬間、何かが飛来して無人の小型四輪駆動車を掴んで持って行かれてしまう。


 克己は急いで起き上がり空を見つめると何かが数匹、克己達を狙っているようだった。


「二尉、閃光弾を!!」


「了解!!」


 宮川二尉は急いで空に向かって閃光弾を打ち上げると魔物らしき生き物が三匹、克己達を狙っている。


「な、何だって言うのよ……えーー!! ま、魔物!!」


 森田三曹は驚き声を上げる。


「あいつら暗くなるまでずっと追いかけて来てやがった……諦めるかと思ったのに!!」


 克己は空に浮かぶ魔物を睨みながら言うと、ビームランチャーを持ち標準を合わせようとするが、うろうろして中々狙いが定められない。


「ハミル! 魔法を」


「承知いたしました! ファイアーボール!!」


 火の玉が空に向かって飛んでいくが魔物はヒラリと躱し、もう一匹の魔物がハミル目掛けて突撃してくる。


 一匹の魔物しか見ていなかったハミルは他の魔物に対して反応が遅れてしまい、魔物の鋭い爪がハミルを襲う!


 克己は急いでハミルに飛びつき、ハミルに覆いかぶさるように押し倒した。


「グゥ!!」


「あ、ありがとうございます……克己様……え? うそ……」


 ハミルが体を起こすと克己の背中には何かに抉られたような傷があり、そこから血が溢れてきている……。


 ハミルは叫び声をあげて動揺し、周囲を見渡すが全員上に気を取られてハミルや克己の方を見ていない。


「い、いや!! う、うそ!! ど、どうしよ……」


 ハミルは手で傷口を塞ぐ様に抑えるが血が止まらず、ハミルの手が真っ赤に染まる。


「と、止まって!! お願いだから!!」


「ど、退け、ハミル……」


「か、克己様!! だ、大丈夫ですか」


「大丈夫なもんか……物凄く痛い!! ノエル! おい、ノエル!!」


 克己はノエルを呼び、その後直ぐに袋から薬草を取り出し食べ始める。


「むしゃむしゃ……不味い……糞不味い……ハミル、取り敢えず、空のあいつらをどうにかしろ、お前の仕事は何だ?」


 ハミルは起き上がり何度か克己の方を見るが直ぐに持ち場へと戻り、代わりにノエルがやってくると、傷口を見たノエルは小さく悲鳴を上げてしまう。


「急いで止血してくれ、あの魔物は許さん!!」


「傷が酷くて少し跡が残ってしまうかもしれません……」


「良いから早く止血をしてくれ! 薬草を食べたから傷は塞がり始めてる! 傷跡も残らないと思うから、早く!!」


 ノエルは返事をして直ぐに回復魔法を唱えると傷口がみるみると塞がっていく。ノエルはホッとして克己にしがみつく。


「ノエル、そういうのは後にしてくれ! 今はあいつらを仕留めるのが先だ!! 俺に傷を与える奴だぞ!! おかしいだろ!!」


 克己はノエルを引っぺがして立ち上がると、袋からビームスナイパーライフル取り出して森田三曹に投げ渡す。


「こ、これは……? か、克己さん! その血は!!」


「いいからアンタはそう言った物のプロだろ!! 俺が敵を引き付けるからアンタはそれで狙えよ、ノエル、森田ちゃんの警護をしろ」


 克己はそう言って駆け出しビームマシンガンを乱射しながら走り出すと、魔物は克己の方に集中する。


 森田三曹は寝そべりライフルのスコープを覗いて標準を合わせる……。


 マシンガンを乱射している克己に次々と魔物が襲い掛かるが、克己は紙一重で躱していき、宮川二尉達もそれに続くように銃を乱射する。


「准尉! ランチャーを!!」


 品川准尉はもう一台の車からランチャーを取り出し、構えて撃ち放つと一匹の魔物の図体に命中し、墜落していく。


 克己はそれを見逃さずビームサーベルを取り出し止めの一撃を首に差し、次に目を向けると森田三曹が放ったビームが魔物の体を貫き落下してくる。克己はもう一回走り、落下してくる魔物にマシンガンを浴びせながらビームサーベル首を切り落とした。


「残り一匹!!」


 残りの魔物は自分しかいないことに気が付き、逃げてしまった。


「なんなんだ? こいつは……」


 克己はスマホのカメラ機能で死骸を写真に収め、コアを探すとドラゴンよりも小さいが、中々の大きさのコアが出て来た。


「かなり大きいな……それだけの奴って事か……。レミー、被害状況の確認をするように二尉に言ってくれ、アルス、コイツは食べられると思うか?」


 レミーは宮川のところへと走り、懐中電灯付きヘルメットを被ったアルスは小走りで克己の方へとやってくるが、克己の服がボロボロなのと、ズボンが真っ赤に染まっていることに驚き、克己の体に異常がないか確認を始めてしまう。


「アルス、そこは股間だよ……触んないでくれる?」


 アルスは顔を真っ赤にして狼狽える。


「も、申し訳ありません……お、お怪我の方は……」


「背中に跡が残ってるか確認してくれる?」


 アルスは返事をして背中を確認するが特に後らしきものは無く、アルスはホッとして背中を撫でて克己に報告する。


「アルスの手が温かくて気持ち良いな……」


 ボッと、音がしそうなくらいアルスの顔は赤くなり、アウアウ言って克己の背中をずっと擦っている。


「そろそろ本題に戻ってくれる? コイツは食べられると思うか? 俺としては鶏肉っぽい気がするんだけど……」


 アルスは正気に戻り、死骸にライトを当てて匂いを嗅ぐが血の匂いしかせず、分からなかった。


「魔物の肉は食べれるんだろ?」


「はい、空を飛ぶ奴とかは大抵食べる事ができますから多分大丈夫だと……」


「そうか、なら大丈夫だろ? 火を通せばイケるだろ?」


「た、多分……高熱に当たれば大丈夫かと思いますが……」


 克己はビームサーベルで焼いた部分を匂ってみると、芳しい香りがして食欲をそそった。


 アルスは唾を思いっきり飲み込み、クンクンと鼻を鳴らしながら匂っている。


「アルス、皆を呼んできてくれ! 俺はここにキャンプセットを準備するから」


 アルスはキャンプセットの意味は理解できなかったが直ぐに返事をして皆を呼びに行き、克己は鼻歌を歌いながらコンロや椅子、テーブルなどを用意して肉を切り取り焼き始める。


「え~っと、確かこっちの袋に調味料が……」


 克己は調味料を取り出して肉にぶっ掛けて味見をしてみると、物凄くジューシーで美味しい鶏肉だった。


「こりゃ、良いね!! 確か魔物は二匹仕留めたから……今夜は焼き肉パーティーだな!!」


 皆がワラワラ集まりだし、宮川二尉が状況を克己に報告しようとすると、克己は肉を渡して宮川二尉に食べさせる。


「う、美味い!! これは最高級の鶏肉みたいですね!!」


 宮川二尉がそういうと、森田三曹が涎をたらしそうに見ており、克己は森田三曹にも肉をお裾分けしてあげると、喜んで食べ始める。


 皆はどんどん肉を焼いて食べ始め、先ほどまでの危険な状況が嘘のように楽しんでいた。


 皆のお腹が膨れて満足していると、宮川二尉が先ほど言いかけた状況を克己に報告する。


「被害としては克己さんの服と小型四輪駆動車だけ、あとは……二士が動転して擦り傷を作ったくらいですかね? 先ほどノエルさんが擦り傷を治療してくれて二士の方は問題ありませんが……」


「残る問題は乗り物ですよね?」


「そうなりますね……無理やり乗り込むことはできますが……」


「それしかないでしょ? 取り敢えず二士の罰は王都に到着してからでお願いできます? 汗臭くなったら二士が可哀想でしょ? 女の子なんだし」


 克己が言うと、伊藤二士は苦笑いをして遠くを見つめる。


 しかしそれを許してくれないのが品川准尉である。


 遠くを見つめる伊藤二士に対して拳骨を振り落とし、伊藤二士は頭を抱えてしゃがみ込む。


「ぐぉぉぉ……」


「何が『ぐぉぉぉ』ですか! 動揺し過ぎです! もっと冷静に行動しなさい、あなた一人のおかげで全員が全滅することだってあると習ったでしょ!!」


 確かにその通りである。自衛隊はゴミどころか小さい部品すら落としてはいけない決まりになっている。その理由は簡単。敵に自分の位置がばれる可能性があると言うのと、国民の血税で賄われているものだからである。この二点をかなりきつく教え込まれるのだ。


 一人が部品を落としたとしよう、それが見つかるまで全員が探すと言う連帯責任になる。


 品川准尉は訓練中に誰かがパーツを落として数時間、匍匐前進して探させられた苦い経験をしているからより強く説教をするが、克己はニヤニヤしながら品川准尉の話を聞いていた。


「な、何が面白いんですか!」


「品川さん、あんたも足を縺れさせたことあったよね?」


「あ、あれは実戦中じゃなく、休憩中の話で……」


「おいおい、いつ戦場になるか分からない場所でそういうセリフを言うのか?」


「ま、街の中でしょ! 克己さん、言いがかりは止めてください!」


「言いがかり? ノエル、言ってやれよ。お前を買ってすぐに起きたことを」


 急に話を振られたノエルは一瞬躊躇したが、直ぐに返事し話し始める。自衛隊メンバーの顔が一瞬で凍り付き、動揺の色が見える。


「まぁ、現在はパルコの街と王都は魔物に襲撃されることはありませんが、他の街については襲撃されることがありますね」


 伊藤二士は体を震えさせて森田三曹にしがみ付くと、森田三曹はそれを引っぺがして克己の側へと向かう。


 アルス達は後片付けをして、荷物を纏めて車に向かう。克己もそれについて行くように歩こうとすると、袖を引っ張られた。


「ん? どうしたんです? 森田ちゃん」


「ふ、服を着替えたほうが……」


 克己は自分の服装を確認するとボロボロだったことを思い出して慌てて予備の服を取り出して着替え始める。


「パンツは……街にたどり着いてからだな……」


 周りを見ると三人は克己の体を凝視してみており、森田三曹に至っては筋肉の確認をしている……。


「恥ずかしいんですけど……」


 克己は照れながら小さく呟いた。


 全員は車に乗り込むとギュウギュウになり狭っ苦しい、森田三曹は苦笑いをさせながら車を走らせる。


 克己は助手席に座っているため被害はなく、窓に頬杖を突きながら外を見ている。


「あ、あの……克己さん?」


「ん? どうしたの? 眠くならないようにお話でもしてほしいの?」


「あはは……そうしてもらえると助かりますね」


「分かった、極力話を考えよう……」


「あ、あの……お城ってどんな場所ですか?」


「ん~、良くある西洋のお城みたいな作りだよ、これと言った特徴は感じられない」


「へ~、お城って言うだけで憧れますね……」


「森田ちゃんも女の子なんだね、やっぱり」


「ど、どういう事ッスか! 見た目からして女の子じゃないッスか!」


「そうだったね、可愛い女の子だったね」


「い、いや、か、可愛いとかは別に……ブツブツ……」


 克己は微笑みながら外を見ると、森田三曹は口を尖らせながら車を走らせる。


 再び森田三曹が口を開く。


「か、克己さんはノエルさんと別れたんですよね……? その後……だ、誰かとお付き合いされてるんですか?」


「何でそんな事を聞くの?」


「いや別に……フリーだったらいいな……何て……」


「ふ~ん」


「こ、ここは一夫一人制ですかね?」


「違うんじゃない? 良く知らないけど……」


「な、なら私にもチャンスが!!」


「森田ちゃん、お金目当てだったら勘弁してね?」


「そ、そんな事は……」


 正直、そこに惹かれる部分は大きかったので何も言えなくなった。


「考えとくよ、俺は森田ちゃんの事はあまり良く知らないからね」


「そ、そうっスよね……」


 まさかそう言った答えが返ってくるとは思いもせず、かなり動揺する森田三曹だった。


「森田ちゃんは何で自衛隊に入隊したの?」


「え? わ、私っスか……?」


「そ、私っス」


「そりゃ……色んな資格が取れるのと、お金ですかね……無駄銭を使わないで済みますし……」


「ふ~ん、国を守るためとか考えは?」


「そんな事は考えてませんでしたね……生活のため……ですね、私は……」


「成る程ね……」


「克己さんのその言葉って口癖ですか?」


「口癖?」


「はい、『成る程』って、よく言いますよね」


「知らんかった……」


「そ、そうなんですか……?」


 克己は自分の口癖を教えてもらい、自分が言っていることを思い出してみると、確かに言っていると思いショックを受ける。


「――お城の名前って何て言うんですか?」


「へ?」


「お城の名前ッスよ」


「確か……オルベスク……だったけ?」


「オルベスク城ですか~……どんな場所でしょうかね……」


「普通のお城だよ……」


 しかし克己の声は届いていないようで、森田三曹の想像は膨らむばかりだった。

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森田ちゃんはかなり乙女ちゃんかな?
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