294話 ドラゴン再び!!
火力発電を使用することから、日本はCO2問題でも槍玉に挙げられる。
全ては克己の知識からできた副産物で賄っていたツケが回ってきただけだが、誰もが異世界の扉が再び開くことを望んでいた。
また、内閣不信任案は可決されたことにより、内閣は総辞職して、一ヶ月後に国のトップは新しくなったのだが、打開策が打ち出すことができずにいる。
そして、裁判の結果が出るのは異常に早く、裁判員も異世界の扉が再び開かなければならないと思っているらしく、判決が言い渡され、100対0で克己側の勝利となり、日本は滞納していた分並びに、利息も支払わなければいけない事となった。
その頃、克己は異世界Dの街にある屋敷にいた。
何をするでもなく、克己はノエルたちに甘えたり、理恵に甘えたりして生活を送っている。
全員の薬指には、克己が作った灰色の核石で作られた指輪で、魔力が増幅される機能が備わっている。
また、指輪だけだと心もとないため、灰色の核石を使って、各個人に似合いそうなアクセサリーも作ってあり、全員は肌見放さず、装備している。
たまにチェリーに顔を出すと、雫が頑張って仕事を行っており、たまに甘えて来るが、そこは理恵が許すことなく突き放すな
克己としては、義妹になるのだから、簡単に許そうとしてしまうが、ルノールが理恵にチクリを入れるため、雫は不貞腐れながらも克己が宛がった奴隷と共に、チェリー切り盛りするのであった。
克己ショックはいつまで日本経済にダメージを与えるのかと、国民や、マスメディアが国に対して大バッシングを行っていた。
昔のように経済を回そうと政府は試みるのだが、国民は一度うけた恩恵を忘れることができずに、どうにかして異世界に縋りつこうとするのだが、縋り付きたくとも肝心の克己が国会召集応じてくれない。
以前は、国枝という切り札があり、何かあれば国枝が克己と連絡を取っていたが、その国枝は退職しているのと、消息が分からないので連絡が取ることができないため、打つ手が無い。
肝心の的場は、克己が電話に出てくれないため話ができず、家に向かっても「話すことはない」の、一言で相手にしてもらえない。
そんな大変な状態を側で見ていた的場の部下、海老名は一肌脱ぐつもりで克己に電話を掛ける。
克己は知らない番号から電話が掛かってきたので電話に出てしまい、海老名が捲し立てるように克己へ言ってくる。
『貴方は国の状況を、理解しているんですか!』
「理解していますが、それがどうしたんですか? 俺が悪いわけじゃないですよね? 全ての発端は貴女ではないのですか?」
『貴方が独占しているから!』
「してませんし、今回は俺の意志で閉めたわけではありませんよ。異世界側から断りを入れてきたんです」
『貴方が仲介すれば済む話でしょ!』
「キャンキャンと五月蝿いよ、あんたが俺たちに喧嘩を売ったんだろ! 異世界側の人権を差別して、追い返したり、人質に取ったりしたのが原因だ。俺たちは別に悪いことをしているつもりもないし、一般企業と取り引きしているから独占している事もない。経済が冷え込んだのは、全てあんたの責任だと言う事を自覚するべきだな。それと、あんたの声を二度と聞きたくはないので、電話やメールをしてこないでくれ。迷惑だ!」
克己は一方的に言い放ち、電話を切る。海老名は再び電話を掛けるのだが、克己はそれ以降、電話に出ることがなかった。
そのことを的場に報告したところ、的場は頭を抱えながら溜め息を吐く。
「火に油を注いでどうする!」
珍しく的場が怒りに満ちた声で海老名に言うと、海老名は目を開いて驚いた顔をする。
「ど、どういう意味……」
「お前が脅迫した結果が、この様な状況を生み出したんだろうが!」
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
「何でお前は異世界の検問を追い返したんだ!」
的場が海老名を睨むかのように見つめる。海老名はたじろぎながら、次の言葉を探している。
「自衛隊だけで検問した結果、あの化け物が世に放たれたのを、お前だって知っているだろ! その結果、成田克己が退治してくれて、日本は面子を保つ事ができた! 違うか!」
一方的に的場が海老名に言う。海老名はできる限り反論を試みた。
「な、成田克己が武器提供をすれば……」
「研究材料の提供だってしてくれていた!」
バシンッ! と、的場が机を叩いて海老名を恫喝するかのように言うと、海老名はその場から動けなくなり、それ以上言葉を発することができずにいた。
「これ以上、仕事の邪魔をするな! 自分の席に戻って、仕事をしろ!」
的場の言葉に海老名は小さく返事をして、自分の席に戻ってPCの画面を見つめることしかできずにいた。
それから一ヶ月が過ぎ、再び日本は窮地に陥る事件が発生する。
長野県にある山で、巨大なトカゲの様な生き物が現れたのである。自衛隊は直ぐに対応するべく動くのだが、持っている武器は防衛省の権限で使用することがず、総理の許可が必要となっているため、住人の避難が先となり、ある一定の場所には近寄ることができずにいた。
克己はテレビで報道されている映像を観て「地竜だな」と、一言だけ呟き、ソファーに腰掛けながらどうやって対処するのか様子を窺っていた。
「理恵、あのまま野放しにしても良いと思うか?」
心配そうな顔をしながらテレビを観ている理恵に克己が問い掛ける。
「じ、自衛隊が対処できると思いますか……」
強張った顔をしながら克己に問い掛けるが、克己は首を左右に振る。ただの地竜であれば、何とかなったかも知れないが、どう見ても新種の地竜で、地球のマナを触媒にしているため、通常兵器が通用するとは考えられない。
「倒せるのはこの世界で一人しか居ないけど、そいつはヘソを曲げてるぞ。このままだと、理恵の知り合いは再び死地へ送られるだろうね」
冷静な口調で克己が言うが、克己に再び死地へ行ってくれとは言えない。
理恵は言葉を発する事ができず、俯いてしまうことしかできなかった。
「理恵、お願いして良いよ。お願いだから、討伐に行ってくれと……。ライラ、皆を呼んでくれるか?」
ライラは「かしこまりました……」と、少しだけ悲しい声で言うと、全員にLINEを送る。
「克己さんは……行っては駄目です!」
理恵は声を絞り出す様に言う。
「じゃあ、自衛隊員の友達は見殺しにするの? 理恵がそれをできるとは思えない。それに、非戦闘員……国民にも被害が及んじゃうよ。それでも理恵は我慢できるの?」
克己が問い掛けると理恵は克己の右腕にしがみつく付いて離そうとはしない。
しばらくして、リビングに全員が揃い、装備の確認を行う。
「行かないで下さい……」
消え入りそうな声で理恵が呟く。
「なら、皆を見殺しにする?」
克己が言うと、理恵はしがみついていた手を離してしまう。
「ウッシ、今回の獲物は地竜だ。相手は地球のマナを媒介しているため、普段の地竜よりも強いと思われる」
テレビに映されている奴に克己は指を差しながら言うと、全員は「はい!」と、声を揃えて返事をした。
克己は携帯を取り出して的場に電話を掛けると、的場は驚いた声を上げるのだが、克己が倒せるのは自分だけだと説明すると、的場は言葉を失い、克己にお願いする。
「俺の家に、迎えに来てくれます? こちらの人数は俺を合わせて7人。俺たちが到着し次第、自衛隊は必ず全員撤収させてください。彼らがいたら邪魔にしかなりませんので。一人でも残っているようであれば、俺たちはその場から撤収をします」
そう言って克己は携帯を切り、深く息を吸い込んでから6人を見る。
「危ないと思ったら直ぐに撤収。ルノールは回復専門だから、何かあった場合のため前線基地で待機と、怪我人の対応をすること。今回は古代竜ではないので、ルノールの魔法が生命線だ。その他の者は、悪いが俺と一緒に死地へ向かうぞ!」
今回は全員で行くと宣言すると、改めて全員は返事をして外へ向かう。
「必ず戻ってくる。理恵はコーヒーを入れて待っているんだ!」
克己はそう言って皆が待っている場所へと向かい、理恵は祈ることしかできない自分を呪うかのようにテレビを見つめていた。




