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29話 能力不足!!

 自衛隊の意地と言うものが有るらしく、克己が何度も説明をしても宮川二尉たちは、もう一度練習場で対戦をしたいと言ってきた。


「現実的なレベルの差という話ではなく、能力的なレベルに差が有ると言っているですよ。目を閉じてレベルと心の中で唱えてみてください」


 説明に疲れた様子を見せながら克己が言うと、自衛隊員の皆は目を閉じて試してみる。皆がレベルを口にするのだが、その数字は1と答えるのであった。


「こちらの方は、レベルは全員が40くらいです。如実に実力の差が出てしまうのは、仕方が無いと思いませんか?」


 そう言われても納得ができない自衛隊の諸君たち。克己は深い溜め息を吐き仕方が無さそうな顔をして、皆には練習場へ行ってもらうと、克己は奴隷商館へ向かい魔法剣士のリーズと名乗る18歳の少女を購入し、家に戻りライラにお願いしてリーズに合う下着と服を見繕ってもらい、ライへお願いしてリーズを風呂に入れさせて出かける準備をさせる。

 リーズにレベルを確認すると、レベルは3と言われたので実力的には自衛隊員と変わらないはずだ。

 練習場に到着して克己は皆と合流して、シェリーに現在の状況を確認したところ、相変わらず自衛隊員たちは負け続けているらしく、リーズに腕前を確認させてくれと言って、自衛隊員とリーズが対戦すると、互角の戦いをしており、何とか自衛隊員たちが勝利を納めるとようやく安堵の表情を浮かべた。


「先ほど対戦してもらったのは、先ほど購入したばかりの奴隷です。年齢は18歳で職業は魔法剣士なんですが、レベルは3です。皆さんの実力としては、彼女と同等レベルと言うことになりますが、自衛隊の皆さんが彼女らよりも勝っているのは、銃の扱いに関してです。そこを強化して魔物を倒し、レベルを上げて行くことにします」


 そう言ってマジック袋から改造したライフルと、サーベルを取り出して宮川二尉に渡す。


「これは?」


 宮川二尉は不思議そうにしてライフルとサーベルの柄を見ている。


「自衛隊の方々が持っている武器だと心許ないので、廃棄予定だった武器を貰い、こちらの世界用に改造させてもらい、作りました。これを使って王都の方へ向かいます」


 サーベルの取り扱いを説明しながら、目的の場所について話す。すると、シェリーが克己に聞いてきた。


「先日、王宮からの使者がやって来てね、自衛隊に関して話を聞きたいと言ってきているんだよ」


 その様に説明すると、シェリーは納得ができてい無さそうな顔をして克己を見つめてくるが、克己はシェリーに招待状をみせるとシェリーは奪い取る様に招待状を手にして、内容を確認する。


「お父様は異世界の力に魅了されているのですか!」


 怒りを露わにするシェリーは招待状をビリビリに破り、ゴミ箱の中へ押し込む様にして捨てた。

 触らぬ神に祟りなしとはこう言った事なのだろと克己は思い、特に招待状に関して触れることはせず、ライラとライの二人に家のことは任せて、克己たちは自衛隊が用意してくれた車に乗り込んで移動を開始した。

 ようやく異世界を探索することになった宮川二尉たち。克己は森田三曹に街道を走るように指示すると、森田三曹は「了解ッス」と言って、車を発進させる。

 道なりに車を走らせていけばそのうち王都に到着するため、克己はマジック袋からタブレットを取り出して研究に没頭していると、森田三曹は何かを見付けたらしく車を止めて無線で後方にいる宮川二尉に報告しており、克己はその内容に耳を傾けて聞いていると、どうやらゴブリンの集団を発見したらしく、どうするのか指示を仰いでいた。


「武力行使の指示が出ているのだから、普通に戦えば良いと思うけど?」


 克己が言うと、森田三曹は克己の言葉を宮川二尉に伝え、無線から駆除するためにライフルを手にするよう、宮川二尉は全員に通達すると、森田三曹は「了解!」と答え、無線を切って車から降りると、自衛隊員たちはゴブリンの集団がいる場所へ足音を立てない様にゆっくりと接近していき、ビームライフルを発砲させて集中砲火を浴びせる。

 ビームライフルの威力は凄まじく、ゴブリンをあっという間に駆逐してノエルたちが車から降りて、宮川二尉たちにコアがある場所を説明して、車に戻っていく。


「意外となんとかなるもんなんッスね」


 戻ってきた森田三曹が言う。しかし、普段使っているライフルでも仕留められるかも知れないが、自衛隊は専守防衛がメインであり、命を奪うことまではしないはずだから、通常兵器だと威嚇だけして逃してしまうのだろう。


「殺傷能力重視した武器だから、相手を仕留めるのは楽でしょ。他の部隊に渡すのかはまだ検討中だから、上に報告をしないようにしてね」


「りょ、了解ッス!」


 森田三曹は返事をした後、直ぐに無線を使い宮川二尉たちと情報を共有した。

 それから森田三曹は再び車を運転し始めるが、外はかなり長閑でピクニック日和に思える。


「そう言えば成田さんは、独身なんですよね?」


 気分を変えるために森田三曹が質問してくると、ノエルは体をビクッとさせる。


「ノエルと交際していたけど、このあいだ別れたよ」


 横目で森田三曹を見た後、タブレットに視線を戻して作業をしながら答えると、ノエルは肩を落としていた。聞いてはいけないような話をしてしまった森田三曹。車内は異様な空気に包まれたのだが、森田は車内ミラーで克己を見てみるが、克己は全く気にしているようには見えず、少しだけホッとしたような顔をしていたが、ノエルは落ち込んでいるのであった。

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