2話 改装、営業開始!!
「ご主人様! キッチンから水が出るにゃ! どんな魔法だにゃ!」
克己は早速ペルシアから質問攻めを受けていた。
「お湯も出るにゃ! 何だ、このキッチンは凄すぎだにゃ!」
ペルシアはそう叫びながら水を出したり、お湯を出したりして興奮している。
「ペルシア、そんなことより仕事しなさい。それと、この世界の暦はどうなっているんだ?」
克己はペルシアに質問したら地球と殆ど変わらなかった。
「じゃあ、給料は毎月25日くらいでいいか?」
克己はペルシアに給料日の話をするが、ペルシアは任せると言ってテーブルを一生懸命作成していた。
克己は丸ノコなど使用し、木材をカットして椅子などを組み立てていた。
しかし、暫くしたら面倒臭くなって、克己はネット通販で椅子を大量注文することにし、ネット通販サイトで検索を開始しながらどんな椅子が良いか選んでいた。
考えてみればテーブルだってネットで買えば済む話じゃん! と、思いながらペルシアに話したところ、ペルシアは理解していなかったが、自分が作らなくて良いということで喜んでいた。
「ペルシア、メニューを考えないといけないから、俺が言う言葉を紙に書いてくれないか?」
そう言うとペルシアは「了解にゃ!」と言って、木材の端材を利用し、彫り込もうとしていた。
「ペルシアこれを使って、この紙に書いてくれよ」
克己が何気なくボールペンとメモ帳を渡すとペルシアはとんでもなく驚いた。
「な、何にゃ、この棒は! 文字が書けるにゃ! それに上質な紙まで持っているご主人様は物凄い金持ちですかにゃ?」
ペルシアがそう言うと、克己は説明するのがかなり面倒になっていたが、今後のためだと思い、一生懸命説明する。
「ご主人様の世界ではこんなのが銅貨1枚程度で買えるっていうのかにゃ! すごい国だにゃ!」
「ペルシア、今度一緒に買いに行ってみようか、注文を取るときとか覚えるのが大変でしょ? それにその紙があれば間違えなくても済むし」
克己はペルシアに説明すると、ペルシアは直ぐに買いに行きたいと言ってきたので、後でちゃんと訳してくれる約束をして仕方なく100円均一の店に連れて行った。
翌日、ネット通販から克己の家に大量のテーブルと椅子が届き、克己とペルシアは二人で並べて店の準備をしていた。
キッチンはガス屋に勤めている友達、涼介に頼んでカウンターキッチンにしてもらい色々協力してくれた。
涼介は克己の友人の一人で、口が堅く信頼ができる友人だった。
「おい、克己! ガスの件と、これで貸しは二つだからな!」
涼介が嬉しそうにそう言ってきた。
「涼介、実はこの世界では奴隷制度があるんだよ。俺がこの世界で金持ちになったら、お前に奴隷を買ってやるっていう事でチャラにはできないか?」
「マジかよ……、奴隷制度なんてあるのかよ……。おいおい、マジかよ……一度俺を連れていけよ! って、いうか今すぐにだよ! そしたら考えてやらんこともない」
涼介は鼻を鳴らしながら詰め寄ってきた。
「俺は構わないが……。ペルシア、奴隷商館まで俺達を案内してくれないか?」
そう言うとペルシアは目を細めて言う。
「奴隷なんか必要ないにゃ! 店の店員は商業ギルドで賄うにゃ、それに奴隷は貴族が持つ者にゃ! ご主人様がいくら魔法使いだからって高くて買えないにゃ」
ペルシアは密林で購入したテーブルや椅子を並べながらそう言って、克己達を冷たくあしらうように言ってきた。
「違うよ、ペルシア。コイツが一度見てみたいと言うんだよ……」
克己が拝みながら頼むと、ペルシアは「仕方ないにゃぁ……」と、言いながら奴隷商館へ連れて行ってくれた。
「涼介の服装はまるでホビット風だから入れてもらえるかわからないにゃ」
ペルシアが入り口でそう言いながら中に入ると、中には色々な種族の人がおり、足には鎖で繋がれ、本当に奴隷ばかりであった。
そして格好も凄かった……。
皆、薄着で寒くないのかと思うくらい肌を露出している格好をしていた。
「克己……、さっきの話でいいぜ。あの店で稼いだら必ずもう一度俺をここに連れて来いよ! いいな!」
涼介はそう言ってダッシュで店まで戻り、大急ぎで大工仕事を始めた。
「克己、ウォーターサーバーなんかあったほうが良いんじゃね?」
キッチンを作っていた涼介が振り返り、唐突に言ってくる。
「だってここは飲食店だろ? 俺の仕事ってさ、横の繋がりが凄くあるんだよ。この間知り合いになった奴がリサイクル業をやってるから紹介してやるよ!」
涼介は奴隷を見てから目の色を変えて手伝うようになった。
そして翌日にはリサイクル業者を紹介してもらい、使わなくなった中古サーバーや冷蔵庫などを買い取った。
涼介はどんなツテがあるのか分からないが、色々な会社を紹介してもらい、野菜の卸業者やビール屋などを紹介してもらっていた。ある意味克己よりもやる気になっている。
涼介とは小さい頃からの友人で、克己は涼介にあまり隠し事したことなかったし、涼介も隠し事することがなかった。そんな関係のため、克己は涼介のことを熟知していたはずだったが、ここまで女に餓えていたとは思いもよらなかった。
初めてペルシアを紹介した時も、「猫耳最高!!」とか言って、口説いて失敗していた。だから、今回は必死なのだなと改めて思いつつ克己は涼介のことを見ていた。
「でも涼介、お前だけだぞ! ここを教えているのは。絶対に他の奴には言うなよ? 問題になるからな」
「判ってるって、俺とお前との仲だろ? それに俺もこっちで仕事しようか考えているんだ」
「ガス屋を辞められたら困るぞ!」
克己は焦りながらそう言うと、涼介は大丈夫と言いながらキッチンを完成させ、配管工事やお風呂のユニットバスを作ったりしていた。
克己は「なんでユニットバスが必要なんだよ」そう質問したら、そのうち分かると言って作り上げていった。
家を改装し、半月が過ぎる頃、ようやく店が完成した。
克己とペルシアは一緒に商業ギルドへ立ち寄り、三人ほど新たに雇い入れた。
そして、三人にペルシアがどんな仕事をするのか説明し、給料日の説明や制服を数着渡して、メニュー表を覚えてもらうことにした。
また、克己の技術を活かしてレジも改装し、タッチパネルで商品や、呼び出しボタン等を作った。
「流石克己だな、こんなのを作らせたらピカイチだよ」
「一応このくらいは簡単に作れるよ、そういう学校に通っていたんだからな」
「そうだな……じゃあ、あの約束は忘れるなよ!」
「分かってるって、ガスの方はしっかり頼むぜ?」
そんな会話を克己と涼介がおこない、涼介は何処でどうやって知り合ったのか分からないサンプル業者に依頼して(お金は全部克己が払っている)、店の前にはサンプルを設置。ウェイトレスは新しく入った三人が、リハーサルとしてペルシアが客の役をやったりしている。
皆で練習して、明日の本番に向かって突き進んでいった。
開店前から長蛇の列ができており、克己はこの状況を見て、これはかなり期待ができると思いながら開店した。
料理はあまり安くはないが、味で勝負をしたところ、予想以上にお客が入ってきたので、これでリピーターが増えればかなりの大儲けとなること間違いなしで、克己の想像以上に順調だった。
克己は客の感想などをペルシア達に聞いてもらったところ、最高に上出来らしい。
これならと思っていると、三人が大分へばってきたので、一人一人休憩させることにさせた。
その時に克己は気が付いた……自分の代わりの料理人とかも必要な事を……。
空いた時間にペルシアにお願いし、商業ギルドへと向かわせて、ウェイトレスの追加三人と、料理人の追加三人をお願いした。
ペルシアは直ぐに自転車をかっ飛ばして商業ギルドへ向かうと、克己が言った通りに手配して、申し訳ないが、今働いているメンバーには今日だけ我慢してもらうことになった。
夜になり、売り上げを計算すると、なんと! 金貨30枚となった。