表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
296/361

285話 仕事の行方!!

 ガルボはバイト先に連絡する。


「きゅ、急な話で……も、申し訳ありませんが……仕事を……辞めさせて頂きたいのですが……」


『困るよ! ガルボちゃん……そういうのは一か月前に言ってくれないと!! ダメだからね! 無断で辞めたりしたら……給料を払わないからね!!』


「ちょ、ちょっと待って下さい! きゅ、給料は……」


『常識の話をしているんだよ!! 入るときにも言ったでしょ』


「そ、そうなんですが……」


『ちゃんとした大人になりたいならそういった所は守んないと!! 明日、ちゃんと出勤してきてね! 君は店の看板娘なんだから!』


 強い口調で言われ、店の人は電話を切る。ガルボはスマホの画面を見つめ「どうしよう……」と、小さく呟くのであった。


 ガルボから少し離れた席で聞いていたルノール。自分も仕事を辞めないといけないと思いつつ、連絡をしようとするのだが、ガルボと同じことを言われる可能性があり、頭を悩ませる。


 そこに理恵が通りかかり二人に話しかけた。


「難しい顔してどうしたのですか? 二人して……。また喧嘩でもしたのですか? これ以上、喧嘩して克己さんに怒られても知りませんよ?」


「ち、違いますよ……克己様がお戻りになったので……仕事……辞めないといけないと……ですが、一か月前に言わないといけないから……」


 ルノールが困った声で答えると、理恵は首を傾げる。


「なら、克己さんに言えば良いじゃないですか。あれでも一応、経営者なんですから、その程度は理解してくれますし、辞めたくなければ辞めなくても良いって言ってくれるかもしれませんよ?」


「そ、そんな……無理ですよ……」


「なら、私が聞いてあげますよ。それなら構わないでしょ?」


「い、いいですよ……無理ですって……奥様……」


「大丈夫です! 私が大丈夫だって言うんですから、大丈夫です!」


 そう言って理恵は、克己がいる元へと行ってしまう。ルノールとガルボの二人は、馬鹿な人に相談をしてしまったと思いながら椅子に深く腰かけて、溜め息を吐くのであった。


「克己さ~ん! お話があるのですが……お時間は大丈夫ですか?」


「あ、理恵……丁度良かったよ。俺も理恵に話があるんだ……」


「え? 克己さんも話ですか?」


「里理ちゃんはどうしたの? こういう時って、だいたいは里理ちゃんが何とかしてくれると思っていたんだけど……」


「里理さん……ですか……。実は……ケーラさんと共に、イギリス留学をしてしまいまして……現在、日本にいないんです……」


「い、イギリス留学?」


「はい……。今はロンドンにいます……。子供を向こうで育てたいらしく……。克己さんが何時お戻りになるか分かりませんし、彼女の目的は克己さんとの間にできた子供ですから……」


「な、成る程……ロンドンへ留学ね。だから好き勝手にやられてしまっているのか……。そう言う事か……」


 克己は腕を組んで考える素振りをみせる。


「私も少しお話してよろしいですか?」


「え? あ、あぁ……どうしたんだ?」


 理恵は椅子に座り、克己に先ほどガルボとルノールの話をする。すると、克己は「そりゃそうだ」と呟き、二人が好きにしたら良いと言って理恵に微笑みかける。


 理恵はお礼を言って満足そうな顔して二人の元へと戻って行き、二人に先ほど話した内容を説明する。


「ほ、本当に良いのですか……奥様!」


 ガルボが驚きながら言う。


「克己さんが良いと言いました!! 私はしっかりと聞いたので大丈夫です! 仕事を辞めたくなければ辞めなくても良いとも言ってましたよ。お二人の好きにされたらいかがです?」


「そ、そうですか……や、辞めなくても……」


 そう呟きガルボはスマホの画面を見つめる。だが、ルノールは直ぐにバイト先へ電話をかけ始める。


「あ、店長ですか? ルノールです……。突然で申し訳ありませんが、今月いっぱいで仕事を辞めさせて頂きたいのですが……はい……突然の話で申し訳ありません。……はい、ありがとうございます……それでは……はい、今月はシフト通りに……」


 バイト先との話が終わり電話を切ると、ルノールは理恵にお礼を言う。


「ありがとうございます。奥様……。ルノールは再び克己様のお世話をさせて頂きたいと思います……未熟者ですが、宜しくお願いします」


 素直に頭を下げたルノールに理恵は驚くのだが、直ぐに微笑んで理恵も頭を下げた。


「こちらこそ、よろしくお願いします。私では役に立てませんが、ルノールさん達が居てくれたら、克己さんも安心して好きな事ができるかと思いますから……。ありがとう、ルノールさん」


 だが、ガルボは顔を引き攣らせる。二人はその事に気が付かず、話をしながらどこかへと行ってしまう。


「私は……辞めたくないよ……」


 そう呟き、その場を後にするのだった。


 夜になり、再び克己達はマンションへと向かう。ライラに頼ってばかりでは申し訳ないので、普通に尋ねる事にした。


 まずはリーズの部屋を訪ねるが、まだ戻ってきてはいないようで他の部屋へと移動する。


「ハミルは家に帰っているだろうか……」


 克己はそう呟き電気メーターを見てみると、メーターの動きが速いため家にいることが分かる。そして、チャイムを鳴らしハミルが現れるのを待つ。


 少しするとインターホンにハミルが出る。テレビ付きではないので声で確認するしかなく、警戒している感じに聞き取れた。


『はい……どちら……様ですか?』


 克己が理恵に喋るよう指示すると、理恵は困惑した顔でインターホンに向かって話し始めた。


「は、ハミルさん、理恵です……少しお話がしたいのですが……」


『お、奥様!! 直ぐに玄関を開けますので少々お待ちください!!』


 ドタドタと音がして、慌てて玄関扉が開く。ハミルの忠誠心は変わらないものだと思い、克己は少しホッとする。ガルボの時見たく、理恵に悪態をついたらどうしようかと少し悩んでいたのだった。


「お待たせしてしまって申し訳ありません!! 克己様が居られず寂しい思いをされている筈なのに全く挨拶もせず……」


 そう言って理恵を招きいれようとするのだが、扉から見える人の靴。もう一人いる事に気が付く。


「奥……様?」


 見えた靴は男の靴だと直ぐに気が付くハミル。まさか理恵が克己という旦那がいるのに他の男を紹介しに来たのではと勘繰るハミル……。理恵が遂に克己を諦めてしまったのではないかと思い、少し険しい顔をする。だが……。


「俺だよ、ハミル……元気か?」


 そう言って克己が扉から頭を出す。ハミルは言葉が出ず、口に手を当て克己に指を差す。


「か、かつ……み……さ・ま……」


「ただいま。昨日帰って来たんだ……これからについて理恵と話をしてから皆と会おうかなって……。立ち話もなんだから……上がってもいいか?」


「は、はい……もちろんです……ですが……ほ、本当に克己様……ですか? お化けとかでは……」


「本当に俺だよ……心配を沢山かけたみたいだな……」


「か、克己様!!」


 ハミルは克己に飛びつく様に抱き着き、声を上げて泣き始める。ルノールとガルボ、二人と同じだと思いながら理恵はその光景を見ていた。


 リビングに案内された克己達……椅子に座り、ハミルがお茶を出してくれた。


「悪いな……。仕事で疲れているはずなのに」


「構いません!! そんな事よりも克己様が戻って来られたのですから……この生活ともお別れできます。もう二度と我々を置いて行かないで下さい……」


「悪かったよ。だが、仕事は別に辞めたくなければ辞めなくても構わないし、ここに住み続けても構わないぞ?」


「いえ、私の仕事は克己様をお守りする事です……土木作業が仕事ではありません!! 私のすべては克己様と共にあります」


「そう言ってくれるとありがたいが……」


「嬉しいです……再び私達の前に姿を現してくれるなんて……」


 目に涙を浮かべながらハミルは言う……。そして、ハンカチで自分の涙を拭く……。改めて椅子から降り片膝をついて頭を下げる。


「克己様……頼りない護衛ですが、これからもお傍で仕える事を……何卒、お許しくださいませ……」


「頭を上げろよ……。当たり前のこと言うなよ……お前達が傍に居てくれたら、俺は理恵を除いて何もいらないよ」


「ありがたき幸せです……」


「頼りにしてる……。ところで、残りの四人の状況を教えてくれないか?」


「まだ……お会いになられて無いのですね……あ、アルスとノエルは問題ないのですが……あとの二人は……その……」


「フム……直接会った方が良さげだな……」


「あ、会わない方が良いかも知れません……」


「どういうことだ?」


「あ、あの……そ、それが……」


 ハミルは目を泳がせながら何と答えて良いのか考える……。克己はハミルを椅子に座らせた。


「いいよ、ハミル……直接会って確認するから……」


 克己が言うと、ハミルは顔を引き攣らせる。それほどの物なのかと克己は思いながら席を立つ。ハミルも疲れているのに一緒について来てノエルの住んでいる部屋のインターホンを鳴らす。


『――はい……どちらですか? 勧誘ならお断りですよ』


 やはりハミル同様、ノエルも警戒した声をだし受け答えをしていた。


「ノエル、私よ……大事な話があるの……」


『私は無いわ……疲れているんだから、明日にしてくれない? 明日、早出なのよ』


「ノエルさん、夜分遅くに尋ねて申し訳ありません……ですが……」


『!! ハミル! ……奥様がいるなら早く行ってよ!! 申し訳ありません、奥様……直ぐに玄関を開けますのでお待ち下さい……』


 受話器を置いて、ハミル同様ドタドタと走って玄関ドアを開ける。


「申し訳ありません……奥様、明日も早いので……あ、あの……出来れば……手短にお願いできますか……」


「そりゃ、お前次第だよ……お前が手短に済ませたきゃ……それで終わる話だ」


 扉の反対側から声がしてノエルは目を見開く。


「ま、まさか!!」


 ノエルは勢いよく扉を開き、大きい音を立て克己の頭に扉が当たってしまう……。


「ぐあっ!! ……や、やるとは思ったが……」


 呆れた声を出し、手で頭を抑えながら克己は顔を出す。


「克己様!!」


 そう言ってのノエルは抱き着き泣き咽せる。


 克己はノエルの頭を撫でて優しくあやす。そして、落ち着いたところでアルスの部屋へと向かうのだが、既にアルスは寝ているようで、インターホンを鳴らしても起きてくる気配がなかった。そして、メインイベントの一つ……レミーの部屋へと向かうのだった……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ