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284話 生活習慣の変化!!

 次はルノールの部屋に向かう。理恵に連れられてガルボも後を来ていた。


「ライラ、頼む」


「はい……」


 そっと玄関のドアを開け、克己達はゆっくりと中に入って行く。再びドッキリのような動きをする克己達。建物の造りはガルボの部屋と同じで、全部の部屋がこのように作られているのだろうと克己は思っていた。


 流石に起きているだろうと五人は思うのだが、克己は入って右側にある扉を、ゆっく~りと、音を立てずに開けてみる。


 だが、ルノールの寝室と思われる部屋は布団以外何も無く、質素で年頃の少女が住んでいる部屋とは思えなかった。


 奥は大型リビングがあるらしく、克己はリビングの扉をゆっく~りと音を立てずに、慎重に開けると……色々な本が山積みになって置かれており、その中でルノールは本を読みながらノートに書き込んでいて、必死で何かの勉強をしているようだった。傍には人体模型等が置いてあり、流石に不気味さを醸し出していた。


「ふぅ……お茶でも――」


 ルノールは一息吐いて顔を上げる……その目に飛び込んできたのは克己の姿で、ルノールは言葉を失い固まる。見つかってしまった克己。仕方ないと思い、声をかける事にする。


「ただいま。ルノール……元気にしてたか?」


「う、嘘……か、克己……様? 本当に克己様……なのですか……?」


「随分、やつれてるが……食事は取っているのか?」


 克己は優しく微笑むと、机や積み上げた本などを倒してルノールは飛び付いてくるのだった。


 声を上げ泣き叫ぶルノール。克己は抱き締め頭を撫で優しくあやす。


「心配かけたな……ルノール」


「もう何処にも……私を置いていかないで!!」


 泣き叫び言うルノール。同じ事を思いながらも言葉に出せなかった理恵は、己を強く恥じ、顔を伏せる。


「悪かったな……。飯は食っているのか? 随分と窶れているじゃないか……」


「さ、参考書等……購入していたら、お金が……」


 恥ずかしそうに本の山を見つめるルノール。


「なんでそんなに本を買ってんだ?」


「この腕を治すためです……」


 そう言って克己の右腕を掴み、ルノールは見つめる。


「悪いな……で、方法は有ったのか?」


 その質問に暗い表情をすると、克己は頭を撫でる。


「ありがとうな……」


「申し訳……ありません……。で、ですが……試してみたい事があります……」


 少しだけ明るい顔して克己を見つめるルノール……だが……。


「気持ちだけで十分だよ……。ありがとうな」


 克己の言葉にルノールは茫然とした表情で克己を見つめる。


「な、なんで……ですか……治るかも知れないんですよ!!」


 克己の服を掴み、声を上げ叫ぶ。


「別に動かない訳じゃない……ただ、感覚が鈍いだけだ。痛みもないならそれで良いよ。その力は他の人に使ってくれないか……」


 困った顔して微笑みルノールを撫でる。


「め、命令ですか……」


「いや、お願いだ。ルノール……」


「ず、ずるい……。私は克己様のために勉強を……してきたんだ……」


「嬉しいよ。ありがとうな……」


「だったら命令してよ! 人のためにと命令を!」


 小さく息を吐き、ルノールを抱き締め克己は何も言わなかった。ルノールは卑怯だと小さく呟き抱き締め返した。


「分かりました……そのお願いを聞きますから……次は……治療させて下さい」


「わかったよ。ルノール……」


 その後、ルノールの話ではノエル達は既に出かけており、戻りは夜になるとの話だった。克己はライラ達を屋敷に戻し、食事の準備を始める。リビングでは理恵達が黙って座って待っている。


「そう言えば、ガルボ……あんたに会うの久し振りね。あんた……バイトは何をしていたの?」


「え?」


 年下のルノール……年が一個上のガルボに対し、上から物を言う。確かにどんなバイトをしていたのか興味は有ると理恵は思いながら目線だけガルボにうつす。


「バイトは何してたのよ? 私は本屋でしていたけど……あんたは何をしていたの? 随分と体が横に広がっているように見えるけど?」


「ま、マッキュ……マッキュナルド……」


「あっそ……。だけど、そのお腹で動けるの? 克己様のお世話が出来るの? 奥様に鍛えてもらったら?」


「わ、私も……お肉が付いちゃいましたから……あは、アハハハ……」


 恥ずかしそうに理恵は言う。


「それでも奥様はお綺麗ですが、デブのガルボは見苦しいです。恥を知りなさい! 恥を……私はあんたとは一緒にされたくない! デブ!」


 久し振りに会って言われる言葉は容赦無く、二人の生活が何を中心としていたのかを物語っていた。ルノールは克己の腕を治療するため……ガルボは己の生活を充実させるためであった。室内を見れば一目瞭然。遊び倒していたガルボの部屋は、バイト仲間と遊んでいたあとが、ありありしており、必死に腕を治すために勉強漬けだったルノールの部屋は、参考書や医学関係の本で埋め尽くされていたのだった。何も言えず涙を浮かべるガルボ……。難しい医学の本を読み始めるルノール。同じ奴隷なのにこうも違うのかと、理恵は思うのだった……。


「あ、アルスさんたちはどんな仕事をされているのですか?」


 理恵が質問する。ルノールは難しい顔して口を開いた。


「私はコミュニケーションを取っていませんでしたから……詳しく事は知りません。ですが、リーズはヤバイです……本人に会って話を聞いたほうが良いかと……」


「あ、アルスさんは?」


「最後に言葉を交わしたとき、ファミレスと聞いております……ノエルは看護士、ハミルは工事現場……レミー……は、言いたくありません」


「い、言いたく……無い?」


「会えば判ります……裏切り者に」


「う、裏切り者……」


 その言葉にガルボは体を震わせた。何か怯えるかの如く……。ライは肩を落とし何も喋ることは無かった。


「お待たせ致しました〜!!」


 ライラが食事を運んでテーブルに並べていく。ルノールは唾を飲み込み克己が戻って来るのを待っているのだが、ガルボは食べ始めてしまい、ルノールは睨みつけた。


「ルノールさん、先に頂きましょう。克己さんは洗い物が終わってから来るはずですし……」


「お言葉感謝致します……。ですが、久し振りにお会い出来、食事を作って頂けるのであれば、最初の一口は克己様が見ている目の前で頂きたいです……。どこかのブタ女達と違い、私はご主人様のために忠誠を誓っておりますから」


 この言葉にガルボはカチンときて、持っていた箸をルノールに投げつける……が、ルノールそれをいとも簡単に避ける。


「ルノール! 調子に乗らないでよね! 私の気も知らないくせに! 私だってアンタみたいに回復魔法を使えるのなら……」


 何も言わず目線だけをガルボに向けるルノール。


「なんとか言ってみなさいよ! ペチャパイ!」


 ガルボは椅子を倒して立ち上がり、前のめりになって叫ぶ。


「私はガルボだなんて、一言も言ってないけど? 何を興奮してるのよ? 身に覚えでもあるの? この……ブタ女!」


「また言ったな……!」


「幾らでも言ってやる! 何を食べてるか分からないけど……ブクブク太りやがって! 醜いったらありゃしない! ブタ女!!」


 ルノールが言い終えるとガルボは魔法を唱え、床を突き破って石の棘がルノールを襲う。テーブルに置いてあった食事は引っくり返り、中身が飛び散る。ルノールはバックステップで棘攻撃を躱す。ガルボは追撃しようと再び魔法を唱えようとする……が。


「おい……二人は俺を怒らせたいのか……」


 声が聞こえ、二人が入り口に目をやる。すると、克己がナワナワ震え、激しいオーラのようなものが二人に見えた。


「か、克己様! こ、これには訳が……」


「突然ブタ女が魔法で攻撃してきたんです!!」


「ま、まだ言うか!」


 ガルボはルノールを睨みつけた。


「どっちがなんてどうでも良いんだよ……。テメェら……俺の家を壊すんじゃねーよ!」


 二人は体をビクッとさせ再び克己を見るのだが、そこには克己は居らず、ガルボの後ろに克己は立っていた。


「家の中で喧嘩をするのは止めなさい!!」


 そう言ってガルボの頭を叩き、直ぐにルノールの頭も叩いた。


「克己さん!! なんで直ぐ暴力を振るうのですか!!」


「家を壊したからに決まってるだろ!! 悪い事したら叱るのも教育だ!! 言う事を聞かないのなら殴ってでも言う事を聞かせる!!」


 強い口調で理恵に言うと、理恵はたじろいだ。


「そこに座れ、二人とも!!」


 結局二人は食事をとることは許されず、二時間も説教されて床の補修をするのだった。

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