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279話 危険な山登り!!

 燃料補給等して8時間ほどでオーストリアに到着した克己……溜め息を吐いて山を見つめる。


「あの山にドラゴンが居るんですね?」


『そうです……。ザルツブルグを襲った後、あの山に潜伏して様子を窺っているものと思われます』


 現地指揮官と思われる自衛隊員。克己はその言葉を訂正する。


「違うね、お腹いっぱいになったから休憩をしているんだろう……やれやれ……何時になったら楽にさせてくれるのかねぇ……」


 残念そうに言うと、防寒着を来て雪山へ向かう準備を始める。


「先発した隊を引き上げさせてくれる? 邪魔になって仕方ない」


 克己の言葉にムッとする自衛隊員。


『本部に連絡してみます……』


「宜しく……。じゃあ、行ってくるから……」


 そう言って克己はドラゴンがいる山へと車を走らせるのだった。車で行けるところまで向かい、そこから歩いて向かう。


 深い溜め息を吐き、克己は山道を登り始める。


「まだ新しい足跡があるな……。先発隊か? まだ撤退をしていないのかよ……」


 続く足跡をなぞるように進んで行く。雪道のため歩くスピードは遅く、夜が更けていく……。


「これ以上進むのは危険か……」


 暗くなった空を見つめ、克己はテントを準備してその日は休む事にした。


 翌日になると、外は猛吹雪になっていた。


「マジかよ……。山の天気は分からな……流石に……」


 そう呟き克己はもう一泊する。残してきた皆は怒り狂っているだろうと思いながら食事を作るのであった。


 次の日、天気は晴れており再び山登りを始める。


「スノーモービルなんか買っておけば良かったよ……」


 そう思いながらも先発した自衛隊を探しつつ先へと進んで行く。


 二日程山を登っていくと、自衛隊のキャンプが見えてくる。


「何で撤退をしないんだよ……」


 そう呟き自衛隊に合流する。


「隊長は誰ですか? 何で撤退をしないんですか?」


 呼び掛ける克己に気が付いた女性隊員、振り向くと驚きの声を上げた。


「な、成田克己!! な、なんでこんな所に!」


「あ、君は……俺が越させられた原因……。君のお陰で俺はこんな寒い思いをしてここに来る羽目になっちまったんだぞ!」


「ど、どういう事ですか……」


「どうもこうもあるもんか! 君がテレビに映ったのを理恵が見て、訴えかけるような目で俺を見たからここに来たんだ。自分達で引き起こした事件だ……本当なら君達が責任を……」


 突如現れて管をまかれる女性隊員……。彼女が理恵の親友、松田香織であった。


「り、理恵……ですか……理恵は怒ってないんですか……」


「天使が怒るものか! 理恵が怒るのは俺だけだ」


 言われている意味は理解できなかったが、理恵が怒っていないと知った松田はホッとした顔をする。


「さぁ、君達は邪魔だから早く下山してくれないか? そう言った指示が出ているだろ」


 少しムッとした表情で克己が言うのだが、松田は首を傾げる。


「撤退の指示は出てませんよ? 先程前進の指示が入ったばかりですが……」


「な、何を……馬鹿な事を言っているんだ! 早く撤退しろ! わかったね! 隊長さんにもそう伝えるんだ」


 そう言い残し、克己は目的を果たすため再び山を登り始める。松田は呆気にとられながら克己の後ろ姿を見送るのであった……。


 雪のため思うように進めず苛立つ克己。目を凝らしてドラゴンを探し前へ進む。そして……目的の獲物を発見するのであった。


「この距離なら……気が付かず殺る事が出来る……」


 袋からビームスナイパーライフルを取り出し標準を合わせようとする……。だが、ドラゴンは顔を上げ何かに気が付く。


「な、なんだ……何に気がついたんだ?」


 構えたライフルを下げ、周りを見渡す。すると、数機の戦闘ヘリが近づいてくるのが分かった。


「ど、どこの軍だよ! 自衛隊に任せたんじゃないのかよ!」


 克己は声を上げヘリを見つめる。ヘリはドラゴンに気が付きマシンガンで攻撃を始める。


「そ、そんな武器じゃダメージなんて与えらんないのは分かってるだろ! 今すぐ下がれよ!」


 克己は怒鳴るのだが、ヘリのプロペラ音で掻き消されてしまう。ドラゴンの周りに魔方陣が現れ戦闘ヘリの攻撃はすべて無効にされてしまう……今までと変わりなくヘリはドラゴンの攻撃により無残にヘリは落とされるのであった。


「言わんこっちゃない!! 命を無駄にするなんて……」


 克己が悔しそうにしていると、ドラゴンの傍で爆発が起きる。何が攻撃をしたのかと目を向けてみると、克己が戻れと命令した自衛隊がバズーカで攻撃をしていた。


「ば、馬鹿!! 何をやっているんだ!! 早く逃げろ! お前達が敵う相手じゃないんだ!!」


 克己は叫び撤退を促すが、自衛隊は攻撃を止めようとしない。その中には松田の姿もあり克己の表情は険しくなる。


 ドラゴンは次の標的を自衛隊に変え、襲い掛かろうとする。


 克己は慌ててビームスナイパーライフルで攻撃をするのだが、魔方陣により弾かれてしまうのだが、衝撃波によりドラゴンは体をよろけ克己の方へ顔を向ける。


『グォォォ!!』


 火炎球を克己に向けて吐き出し攻撃する。


 克己は慌てて火炎球を躱し、再びライフルを撃ち放つとドラゴンは空に飛んでビームを躱す。直接ダメージは無いのだが、衝撃を嫌がっていた。


 自衛隊も攻撃を再び始める。


 火力が弱く、ドラゴンには全く攻撃が効いていないのだが、それでも攻撃を止めることは無く続ける。克己は逃げるよう叫ぶ……だが、攻撃は止めることなく続けられ、ドラゴンの標的は再び自衛隊へと向けられた。


 竦むようなうねり声を上げるドラゴン……口から火炎球を吐き出し自衛隊に攻撃をする。


 隊員達は慌てて逃げようとするが、武器をセットしていた隊員は火炎球の餌食になってしまう。


 雪のため思うように身動きができない克己。ドラゴンの気を引くためビームライフルを数発撃ち放ち、ドラゴンは再び魔方陣を展開させ攻撃を防ぐ。この隙に自衛隊は後退を始めるのだが、再び火炎球の餌食になる。隊員は残り数人となり、全滅したらここに来た意味が無くなると克己は思い袋から手榴弾を取り出し投げつける。


「早く下がれよ! 死にたいのか!!」


 袋から試作品の銃を取り出してドラゴンに向けて撃ち放つ。再び魔方陣を展開させドラゴンは攻撃を防ごうとするのだが、それを貫きドラゴンの羽根を貫通する。


 羽根にダメージを受けた事により、空を飛んでいたドラゴンは墜落してしまう。その間に克己は自衛隊の側へ駆け寄り撤退を指示する。


「ここは危険だし、あんた達が叶う相手じゃない! 早く逃げるんだ!!」


「で、ですが!!」


「このままだと君も死んじゃうぞ! 理恵が哀しませたいのか! 友達なんだろ!」


 松田の肩を掴み克己は怒鳴る。


「め、命令が……」


「名誉の戦死なんて時代遅れだ! 状況を確認して戦略的撤退をするのも作戦の一つだ! いいから言う事を聞けよ!!」


 克己が言い終えると、後方から耳を劈くようなうねり声が聞こえる。ドラゴンが怒り狂っているのだった。


 克己は袋からビームサーベルを取り出しドラゴンが墜落した方へ歩き始める。


 松田は茫然としてその後ろ姿を見つめるのだった。

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