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271話 人生の転換期!!

「えっと……飯倉さんは高校中退……ね……家庭の事情ですか?」


「は、はい……。両親が……離婚してしまい、生活が苦しくなってしまったためです……」


「成る程……。嫌な事を聞いて悪かったね。中学まではサッカーをやっていたんだ? うちの会社もこの度、プロサッカークラブを経営する事になってね……と言っても、社会人クラブだけどね。地域リーグ3部の弱小チームさ……だけど、今年の天皇杯を優勝するだけの実力があると思っている……。おっと、話がそれたね……」


 克己は恥ずかしそうにして履歴書を見る。


「い、いえ……」


 飯倉は気まずそうな顔をしていた。


「狛犬さん……学校卒業してから何をしていたの?」


「し、就職活動を……」


「では、我が社のほかにも面接などを受けられているのかな?」


「い、いえ……今回初めての面接です」


「でも就職活動していたんでしょ?」


「……」


「まぁ……言いたくなければ言わなくても良いけどね」


 克己は狛犬の履歴書に目を通す。


「我が社がどんな会社か知っているかにゃ?」


 ペルシアが質問すると、二人は少しだけ体をビクッとさせた。


「い、異世界と関わりが……あると言うのは……知っています……」


 消えりそうな声で狛犬が言うと、飯倉も続く様に頷くが、ペルシアは直ぐに見破る。


「ホームページを見たにゃ? それも、最初の方だけ……」


 図星である。飯倉に限っては、面接を受ける数分前に調べただけである。


「まぁいいにゃ……で、いつから来れるんにゃ? 飯倉さんに限っては、バイトをしているみたいだし、直ぐに来るのは難しい話じゃないかにゃ?」


「ら、来月の一日から……それからだったら大丈夫です」


「半月後……ね……。どこで……ん? これって……ペルシア……これを見ろ」


 克己が指さすところ、それは克己の子会社がやっている倉庫管理業務だった。


「飯倉さん、君がしているバイトって、倉庫内の整理業務じゃない?」


「そ、そうですが……それが?」


「成る程、君は運がいい……俺が電話しといてあげる。うちの会社、寮に住んでもらう事になるけど、大丈夫かい?」


 話がトントン拍子に進んでいく……飯倉と狛犬は理解するのに時間が掛かっているようだったので、克己がハッキリという。


「君達は合格だよ。おめでとう。これから誓約書を書いてもらうけど、内容に納得がいかなければこの話は無かった事になる。あとは君たち次第だ……君達の先輩にあたる人たちも、この誓約書にサインをしている……。それを肝に銘じてくれ……。アルス、書類を彼女たちに渡してくれるか?」


 ドアの前に立っているアルスは返事をして書類を二人に渡す。


「ちょ、ちょっと待って下さい……質問が一つあります!」


 飯倉が慌てた声で克己に質問をする。


「ん? 何だい?」


「わ、私は中卒ですよ! な、なのに何で!」


「学歴なんか関係あるのか? 君に書類を渡した子は、小学校も幼稚園も行った事がない……というか、その子は異世界人だ。社長も異世界人……さらに面白い話をすると、君達が見た求人票……おかしいと思わないか? 普通であれば、色んな人が面接を受けに来る話だろ? 毎回ハローワークに出されているんだから……」


「な、何の事ですか……一体……」


「あの求人情報はね、魔法が掛けられているんだ……それも特殊な……困っている人にしか……君達みたいな境遇の人にしか見れない魔法がね……だから君達は運が良い……」


 克己は笑いながら言うが、飯倉達には馬鹿にしているようにしか見えない。


「嫌なら誓約書にサインをしなきゃ良いにゃ……それが契約書なんだから……」


 ラーメンの汁を全部飲み干し、満足そうな表情をしながらペルシアは言う。


「か、考える時間を……」


「あげないにゃ! というか、勘違いしてないかにゃ? 自分達が仕事を選ぶ立場なのかにゃ? 仕事がないから仕事を探しているんじゃないかにゃ? 考える時間は私達にあるにゃ……その結果がそれにゃ。答えは今すぐ出すにゃ」


 ペルシアが言い終えると、アルスはペンを渡す。二人は誓約書に目を通し始める。


「し、死んでもって!!」


「嫌ならサインをしなければ良いにゃ……大丈夫、そうならないようにご主人様がどうにかしてくれるにゃ」


「ご、ご主人様……」


 狛犬は戸惑った声を出してペルシアを見る。


「まぁ、入社したら理由は理解できるよ……。拒んだらそれで終わりさ。さぁ……そろそろ時間だ。俺達も忙しいんでね」


 克己は立ち上がると、アルスが二人から用紙を受け取ろうとする。


「さ、最後に質問させてください!!」


「いいよ。本当に最後だよ?」


「それに納得ができたら……サインします」


 狛犬は震えながら言うと、克己は小さく微笑む。


「言葉を選んで質問したほうが良いよ? 本当に最後の面接の質問だ……」


 克己の言葉に狛犬は小さく頷く。飯倉は固唾を飲んで見守る。


「にゅ、入社したら……人生は変わりますか……」


 震えた声で質問すると、克己はニヤッと笑う。


「変わるよ……人生どころの話じゃない……全てが変わるよ。それは断言できる」


 その言葉を聞いて、狛犬は直ぐにサインをしてアルスに手渡した。


「よろしくお願いします!!」


 それを見て飯倉もサインをしてアルスに渡す。


「よろしい……。ペルシア、あとの説明を宜しく……ちゃんと業務をこなせよ?」


 克己はそう言って部屋を出て行く……アルスは一礼をして部屋から出て行くと、ペルシアの叫び声が木霊するのだった……。

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