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265話 その子達の幸せ!!

 赤ちゃんの温もりを味わった後、克己は石橋のところへ行く。辿り着くと、まだ魔力の少ない少女達に無理な要求をしている石橋。


「奴隷扱いだね……。これは……」


 離れた場所で様子を見ながら呟き、どうするかを考えてから近寄る。


「どうだい? 調子は……」


「あ、会長! この人達が言う事を聞いてくれないんですよ! 奴隷の癖に……」


「成る程ね……。言う事を聞いてくれないのか……困ったねぇ」


 腕を組みながら困った顔をし、少女達を見る。


「ほら! 早く魔法を唱えて土を耕してよ!」


『で、ですが……そんなに魔力が……』


「逆らうな! こっちはあなた達に生活を与えてあげてるんでしょ!!」


 石橋が少女に怒鳴り、少女達は怯えた顔をする。克己は難しい顔して少女たちを見つめる。


「君たちはレベルいくつ?」


『皆……1です……』


 克己の事を誰だか理解はしていないが、石橋が何も文句を言わないところを見て、少女達は石橋と同じくらい偉い人なのだと認識する。


「成る程……。石橋さん、彼女達に食事を与えたの?」


「え? まだ……ですけど……夕飯の時間までは早いかと……」


「成る程、これは理恵の失敗だね……分かった。そして、なんで服装は初期状態なの?」


「そりゃ……給料日まではまだ一か月もありますし……」


「どこに住ませるの?」


「どこかのホテルでも借りようかと……」


「どこかって……場所すら決めてないの? 部屋が空いてなかったらどうするつもり?」


「えっと……」


 石橋は言葉に詰まる。克己は横目で石橋を見て回答を待つ。


「て、適当にバラバラに……」


「君が入社した時は適当な扱いを受けたの?」


 この時初めて自分が怒られていることに気が付く。


「い、いえ……」


「初期費用に関して、会社から何もされてなかった? おかしいな……説明会の後は食事も与えたし、寝る場所も提供していたはずだけど……。で、彼女たちは食事をしていないで服すら無い状態……そして、寝る場所も決まってない。責任者として質問するけど、彼女達が病気になったらどうするの?」


「じ、自己管理が……」


「自己管理……ね」


「で、ですが、彼女たちは奴隷ですよ……それに仕事を与えているんですから……」


「だから? 奴隷ってだけで……君は差別するの? ふ~ん……じゃあ、石橋さん……俺に雇われているなら奴隷みたいなものだよね?」


「ちょ、ど、どうしてそうなるんです!」


「俺は彼女たちを奴隷とは思ってない。あの7人は俺を守るのが仕事だけど、それを守るのが俺の役目だと思ってる。それに、生活を安定させて、彼女達を幸せにする義務があると考えている……石橋さんはどう考えてるの? 彼女達は道具なの?」


「す、すいません……」


「なんで謝るの? そう思っているの?」


「そ、そういう訳では……」


 石橋は言葉が出ず黙り込む。


「君達は家に戻り、金髪の女性に服と食事、寝床を用意してもらって来て」


「ちょ、ちょっと!」


「彼女等はレベル1だ、魔力が少ないんだよ……そんな子達が高度な魔法が使えるはずないだろ? 先ずは生活ができる体力と安心を提供するべきだ。君は焦っているんだよ……結果を出さなきゃって」


「そ、そんな事……」


「冷静に考えなよ……君には同僚がいるでしょ? 若いかもしれないけど、何かしら助けてくれるはずだよ。さぁ君達は新しい生活を始めるんだ……無理をしないで甘えてくれ」


 優しく言うと、少女達は頭を下げ言われた通りに家へと向かった。


「焦らないでいいから……ゆっくりと歩いて行こう」


 克己の言葉に石橋は、ポロポロ涙を流すのだった。


 少女達は、言われた通りに家へと戻る。すると、中には金髪の美人女性が椅子に座って貧乏揺すりをしていた。


「あ、あのぉ……」


 金髪の女性に話しかけると、ゆっくりと振り向き睨みつけてくる。


「誰? あんた達……」


 威圧的な態度を取る女性に対し、少女達は怯える。


「そ、外で……男の人に命令されて……」


「男? 命令? で、何と命令されたの……」


「ふ、服と……食事……寝る場所を提供して頂けると……」


 少女達を品定めするように見る金髪の女性……。


「分かったわ、付いて来なさい……美味しい食事と素敵な服を用意してあげるから」


 そう言って金髪の女性は、少女達を連れて行く。


 克己と石橋は畑予定地にいた。


「わ、私は……外されるんですか……」


 俯き、泣きながら質問をする石橋。克己は腕を組んで考える。


「このまま頑張ってみようか……。まだ始まったばかりだし、あの子達に優しくしていないからね」


 克己の言葉に泣き崩れる石橋……克己はそっと頭を撫でるのであった。


「俺がもうちょっとマシな指示をしていりゃ……君は悩むことは無かったんだ。ごめんな……」


 翌日になり、少女達は再び石橋の前に連れて来られる。また無理を言われるのではないかと思い、体を震わせていた。


「今日はレベルを少し上げに行きましょうか! こっちにも魔物がいるようだし、あなた達の安全も考えないといけない……どうかな?」


 石橋は少女達に明るく振る舞う。少女たちはポカ~ンとして口を開けていた。


「畑はもうちょっと後にして、先ずは体力と魔力……そして、自分を守れる力を手に入れましょ!!」


 石橋は明るく言う。そして、皆は石橋と共にレベル上げをするためにガラトーダへと向かったのだった。

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