26話 宝の山!!
自衛隊の仕事は天然資源を取り出して、国の資源不足解消するために調査などをしているのだが、魔物の対応に困惑している。政府の指示を仰ぐと、なるべく専守防衛に務めるように指示されているので、攻撃をされないかぎり反撃ができない。
その話を宮川二尉から聞いた克己は、溜め息を吐きながら携帯電話を取り出し、何処かへ電話を掛けると宮川二尉の目の前で話する。
「国枝君、どうなってるの?」
克己は現在の状況を説明して、国枝に回答を求めると、国の方針は変えないとのことで、専守防衛を貫くようにとの話になっているらしく、克己は怒気を含んだ声で国枝に危険を説明するが、今の総理大臣が保身に走っているため、どうにも出来ないと言われ、克己は異世界省に行きこのままだと死者が増えるだけだと力説するのだが、総理専守防衛を貫くようにとの、堂々巡りを繰り返すため、契約書を袋の中から取り出して、契約内容を読み上げる。
「大臣、契約書には武力行使を行えない場合、自衛隊は撤退すると明記されているのを忘れてませんか!」
契約書に記載されているところを大臣に観せながら言うのだが、大臣は「総理の指示だから……」と、自分の保身だけしか考えていない様子だった。
「なら、契約に基づき、自衛隊を今すぐに異世界から撤退させて下さい!」
これが世に言う第二次克己ショックである。これが教科書に乗るのは未来の話だが、克己は自衛隊員にこれ以上の被害が出ないようにするために行った措置であり、なるべく自衛隊員に死者を出さないために、契約書に記載してあったのである。
再び自衛隊は異世界から日本へと戻るようにと幕僚長から指示を受け、その日のうちに全員が扉の外へと出ていったのだが、再びマスメディアが騒ぎ始めるが、今回は克己の意見が正しいため、現政府は窮地に追い込まれる。
改めて異世界省呼ばれ、どうにか自衛隊を異世界へ連れていき天然資源の採掘調査をさせて欲しいと克己に言うが、克己は自衛隊の武力行使を許可しないのであれば、異世界の扉を開くことはできないと言い、異世界大臣は頭を抱える。
そんなことをしている間に、克己は涼介から紹介されていた、宝石商の田中さんと会っており、先日拾った天然ダイヤモンドの原石を観せると、田中さんは声を殺して驚いた顔をする。
「これは凄いですね……」
「はい、思ったよりも大きな物だったので、正直かなり驚きました。それで……これはどれくらいの価値がありますかね?」
大きさから推定するには難しいとのことで、宝石商の田中さんが持ち帰ってオークションに出品してみるとの事だった。
連絡があるまでは暇なので、取り敢えず自分の店を視察しに行くため、自分の店に電話を掛ける。
すると従業員らしき人が電話に出たので、ペルシアに変わるよう伝えると、従業員らしき人は随分と言葉遣いが悪く、物凄い上目線で話してくる。
どうにかペルシアに変わってもらうと、ペルシアは誰と話ていたのか確認していなかったらしく、だいぶ大柄な態度で電話に出る。
『私と話があるって言っているお前は誰にゃ?』
「その店のオーナーで、男爵の成田克己だが、お前こそ何様だ? ペルシア」
『にゃ、にゃ! どうしたんにゃ! オーナー』
「明日、店を視察するから、おかしな所が有ったら、減給ね」
そう言うと、ペルシアはペコペコ頭を下げながら電話を切り、慌てて従業員を集めて大掃除を行わせる。
「明日はオーナーが来るにゃ! 減給されたくなかったら綺麗にしてするにゃ! オーナーは恐ろしい方にゃ! 失礼の無いよう対応するにゃ!」
全員に発破をかけるペルシア。
翌日、克己がお店へ来店すると、先ずはペルシアが出迎える。
「お、オーナー! いらっしゃいませにゃ!」
どうやら本日は貸し切り状態にしているらしく、ペルシア以外の従業員が並んで立っており、それぞれが緊張しているらしく、顔が強張っているように見えた。
「ペルシア、今日の客は俺だけ?」
克己は確認のために聞いてみた。
「そうですにゃ! 今日はオーナーだけにゃ」
「ふーん。じゃあ、注文するけど……」
客は克己の他に、ノエル、アルス、レミー、ハミル、シェリー、ライラ、ライの七人が席に座り、それぞれが好きな物を頼むと、克己は席を立ちトイレへ向かい中を確認して、ペルシアを呼びトイレが汚いことを説明すると、ペルシアがペコペコと頭を下げる。その光景が珍しいのか、従業員の人たちはざわめきに包まれた。
その後、厨房へ向かい汚れている箇所指摘し、ペルシアは一生懸命メモを取っていると、作り方が雑過ぎて今度は克己の怒号が厨房の中を飛び交う。
終始ペルシアは頭を下げており、克己の視察が終わる頃には、ペルシアは燃え尽きているかのようになっていた。
「ペルシア、これをお前にくれてやる。パソコンが使えるんだから、これくらいは使い方が分かるよな? 今度は抜き打ちで来るから、同じようだったら減給ね。今日はサービスしてやる」
克己はそう言って携帯をペルシアに渡し、久し振りに全員でゆっくりとお腹がいっぱいになるまで食事を楽しんだ。
翌日は再び探知機を使って街の外を歩いていると、探知機が鳴り響き、皆でスコップを使い掘っていくと宝石が埋まっていて、ホクホクの笑顔で宝石をマジック袋の中へ入れると、大白金貨ではないことに皆は不満そうな顔をしていたが、克己は「これでも十分だよ」と、克己が言うので笑顔に変わるのだが、どうして十分なのかが分かっていなかった。
パルコの街へ戻ると、携帯に国枝から不在着信が沢山入っており、面倒臭そうにかけ直してみると、耳元で国枝が騒ぐように色々言ってくるので、自分の店で話をすることにして、仕方がなく自分の店へ行くと、相変わらず大盛況であり、言われたことを守っているのだろうと思いながら、ウエイトレスが克己に気が付いて緊張した表情で席に案内した。
克己がコーヒーを注文するのだが、他の五人はデザートを注文しており、笑顔で運ばれてくるのを待っていた。やはりデザートのレパートリーを追加した方が良いだろうと思いながらコーヒーが運ばれてくるのだが、かなり緊張しているらしく、克己は落ち着いて仕事をするように言い、頭を下げて逃げるようにウエイトレスは厨房へ行ってしまう。
コーヒーを飲みながらシェリーと話ていると、国枝がやって来て、シェリーは克己の隣に腰掛けると、先ほどまでシェリーが座っていた席に国枝が腰掛ける。
ウエイトレスは克己の知り合いと気が付いた瞬間、慌ててお冷とおしぼりを持っていく。
「あ、俺もコーヒーで」
ウエイトレスにそう言ってから、克己を見る。
「意外と早かったね。国枝君」
「早かったねっじゃねーよ! どうするつもりだよ!」
「ニュースを観ている暇がないので分からないが、総理は辞任でもした?」
「してねーよ!」
呆れながら国枝は言う。
「契約書にサインしたんだから、自衛隊の武力行使を許可すれば良いじゃん。それが認められたら来ても構わないよ」
自衛隊が撤退してから既に一ヶ月が過ぎており、マスコミは現在の政府に強い不信感を抱いているよう報道をしているらしいが、克己には関係のない話だ。
「悪いんだが、総理と直接話をしてもらえないか?」
「まぁ、国枝君が困っているなら、仕方が無いね。それで、どこで会えば良いの?」
「それは上が決めるだろうが、本当に大丈夫か?」
「別に俺が悪いわけじゃないんだから、問題無いでしょ。それよりもこれを観てくれよ」
克己はマジック袋から、今日手に入れた宝石の原石を取り出し、国枝の前に置く。
「ん? これって、まさか……」
国枝の反応を見て、克己は口元を緩めるのだが、シェリーには何が凄いのか分かっていないようで、コアのようなものに首を傾げる。
「これが、こちらの世界に沢山埋まっている様なんだよね」
「マジかよ……」
そう言って国枝は克己がテーブルの上に置いた、宝石の原石を手にして呟いた。
この世界は宝の山だという事を現しており、国枝は顔を引き攣らせながらコーヒー飲むのだった。




