258話 異世界での冒険者!!
二人が目を覚ます……目の前には自分の愛剣が真っ二つに折れて転がっていた。初めはそれが何か理解できずに誰の物かと考える二人。暫くすると、それが自分の武器と認識するのであった。
「こ、これは……どういう事なのだ……」
「俺っちの武器が折れてる……」
「起きたか……二人共。それをやったのは……あの男だ」
リーダーらしき男が言うと、男達二人は克己と武器を交互に見る。
克己は現在の状況をアルスやレミー達に説明し、二人が起きた事に気が付いていない。
「取り敢えず、暫くはここを拠点にしよう。こいつらの力はある程度理解が出来た。石本や石橋さん、木村さんの三人と、いつもの二人にここを任せよう」
方針が決まった所でガルボが後ろの三人に気が付き怯えた目をする。
「どうした? ガルボ……」
克己が問い掛けると、ガルボは怯えながら男達に指を差し、皆は指先に示したものを見る。
「あ、気が付いた……」
小さい声でルノールが呟く。
「お、俺達をどうするつもりだ!」
男の一人が吠え、皆は首を傾げる。
「どうと言われても……どうされたい?」
質問を質問で返す克己。
「わ、我々が聞いているのだ! どうするつもりだ!」
「取り敢えず……名前を聞いていいか?」
空気も読まず名前を確認する克己。だが、三人は口を噤む。
「答えたくなきゃ答えなくても構わないけど……答えないのなら、邪魔だから殺すか……。処分が簡単だし」
ただの脅しだと三人は思うのだが、克己の言葉は神の言葉と同じのアルスにそんな冗談が通じるはずが無い。アルスは袋に手を突っ込み、何か殺せそうな物を手にする。
「どれから殺せば宜しいですか?」
袋の中から切れ味の良さそうなナタを取り出し、刃溢れしていないかをチェックする。
「そうだな……うーん……あ~あれだ、あのチャラそうな奴……アイツにしよう」
「分かりました!!」
笑顔で近寄る美少女……男達は顔を強張らせる。
「じょ。冗談……だよな?」
「命令は絶対です。最近……鬱憤が溜まってるんですよ……。ストレス発散の捌け口になって下さいね!」
そう言って笑顔で振りかぶり、勢い良くナタを振り落とそうとすると……。
「い、言う! 言うから!」
寸前の所でアルスはナタを止める。そして、冷たい目をして舌打ちをする。仕方なしに首元からナタを退け、一歩後ろへ下がる。
「チッ……」
男達は体を震わせる。そして、声を震わせながら名前を答えた。
「じょ、ジョシュア=デル……だ」
「アルス、チャラ男奴以外を殺っちまえ」
名前を答えた事により、標的を変更させる。アルスは克己を見て嬉しそうに頷き、隣に移動するのであった。
「じ、冗談だろ?」
「さっきの奴も同じことを言ってましたね……それが人生最後の言葉で良いですよね? 無駄な動きをしてズレたりすると、ただ、無駄に痛いだけですから動かないようにお願いします。それでは……私のために死んじゃってください!! 死ね!」
ナタを振りかぶり、一思いに殺してやるつもりで横一文字にナタを払おうとする。だが、男達は次々に名前を言うので、数ミリのところでナタは「ピタ」と動きを止め、再びアルスは舌打ちをするのであった。
「成る程、お前の名はキョル=ソンって名前なのか……そっちのデカ物はサン=マントルね……。さっさと名前を言えば怖い思いをする必要は無いのに……馬鹿なの?」
克己は首を傾げながら言うと、三人は苦笑いをする。
「質問するぞ、キョル……何でお前ら冒険者が崇められているんだ?」
「お、お前……この世界で何が起きているのか知らないのか……?」
「知っていたら質問をしない。無駄口を叩かなくて良いからさっさと答えろ」
「昔は魔物なんていない世界だったんだ……。だ、だが、ある時……魔界の扉が開き……あいつ等が出てきたんだ……」
その話に克己達は眉をひそめる。
「ライクハルト王国を筆頭に抵抗をするのだが……各王国は街や城を守るので精一杯……だから一般市民が……冒険者が立ち上がり、魔王打倒に立ち上がったんだ……」
「成る程、じゃあ……冒険者はお前たちの他にもいるんだな?」
「本当に何も知らないんだな……。大きな街や都市には冒険者を育てているところもあるくらいだ。冒険者はゴマンといる……」
「魔物……体の中に埋まっている宝石の様な物について教えろ。あれは何に使われているんだ?」
「それは……」
キョルが答えようとするその瞬間……外で大きな音がし、話は途中で終わってしまう。
「な、何だ!?」
レミーが窓を開けて外を見る。巨大なハンマーの様な物を持った猪男が冊を壊していた。
「克己様、猪の様な魔物……のようです。柵を破壊しておりますが……如何致しますか? 殺します? 寝かしつけます?」
「アルス、そいつ等を開放してそいつを確認させろ」
「かしこまりました……」
ナタでキョルのロープを切り、襟首を掴み、持ち上げ窓際に連れて行く。
「い、イテテ! ら、乱暴するな!」
「煩い、黙って答えろ。アレは一体何ものだ?」
強めに窓に押し付けられ、仕方無しにキョルは外を見る。
「あ、あれはアングレームじゃないか! こんな場所に出てくるやつじゃないぞ!」
克己はノエルをチラッと見る。ノエルは頷いて拳銃を取り出し外へと向かう。
「どの位の強さなんだ? アイツは」
「そ、そんな話じゃない! こ、ここから逃げるんだ!」
サンが叫び這いずる様に逃げようとする。だが、リーズが足で踏みつけ逃げないように押さえつける。
「克己様の話を聞いていたか? アイツはどの位強いんだ?」
グイッと窓に押し付けるようにしてアルスが言う。その眼は完全に優しさというものは無い。
「ま、魔法使いがいなければ勝てない程だ……こ、殺されるぞ!」
魔法使いと言う単語を聞き、全員の動きが止まる。
「魔法……使い? 魔法使いとは……手から火を出したり空気を凍らせて攻撃したりする……あれか?」
アルスが質問を続けると、キョルはもがき、逃げるように体を動かしながら叫ぶように言う。
「それ以外に魔法使いがいると言うのか! は、早く逃げるぞ! これを解いてくれ!!」
扉に手を掛け、ノエルは溜め息を吐く。何と情けない男なのだと……。ノエルは指示を仰ぐようにチラッと克己を見ると、克己は頷いた。
ノエルは一人で扉から出て、ベレッタを構える。そして、数発ほど体に弾丸を撃ち込み、様子を窺う。だが、アングレームは動きを止めることなく、ノエルに襲い掛かろうとする。
「拳銃で体を撃っても動きは止めないのか……。頭はどうなの?」
まるで実験をしているような口調でノエルは呟き、眉間に弾丸をブチ込む。すると、アングレームは膝から崩れ地面に沈んだ。
傍に近寄り生きている可能性を示唆して、頭に数発ほど弾丸をブチ込み、止めをさしてかからビームサーベルの柄を持って突如襲い掛かっても良いよう、万全に備え、足で踏み付け確認を行う。
「死んだようね……。騒ぐほどの強さじゃないわね……。雑魚ね、雑魚」
足で死骸を引っくり返し、銃弾の弾着部を確認する。弾丸は当たっているのだが、1cm程の場所で止まっていた。
「体は結構硬いということね……筋肉が鎧になっているという事かしら……」
ノエルは体を踏みつけながら言う。窓から見ていたキョルは口をあんぐりしていた。
「な、何をやったんだ……あの女は……」
踏みつけながらノエルは克己が見ている窓を確認する。克己は口を動かすとノエルは頷き、袋の中から剣を取り出し胸に突き刺す。
「お、おい……ど、どういう事だ……し、死んでいるとはいえ……あのアングレームだぞ……女の力でそんなことができるって言うのか……」
ノエルは体を捌き宝石のような物を探す……その姿は残酷で冷酷だった。そして、10㎝程のコアが見つかり手に取る。
「で、あの宝石のような物は一体なんだ?」
「そ、それより……お、お前達は一体何者なんだよ……」
「俺達も冒険者さ……ちょっと世間知らずの田舎者……それだけの話だよ」
おどけながら克己は言う。キョルは茫然として克己を見ていた。




