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253話 木霊する叫び!!

 翌日、克己は理恵が学校へ行くのを見送り、リビングでゆったりと座っていた。


 ノエル達も同じ様に座っており、何をするでも無くダラダラと時間だけが流れていく。


「克己様、コアを探しに行かなくて良いのですか?」


 痺れを切らしたガルボが質問すると、全員に緊張が走る。


「行かなきゃ行けないのは解ってるんだけど……行く気が起きない」


 その言葉を聞いて、ガルボはホッとした気持ちで深く椅子に座り込み、ライラがお茶を全員に配る。


「お茶を飲んだら出かけよう……」


「何処に……ですか?」


 先程ヤル気がない様なことを言っていたはずなのに……と、ハミルは思い質問した。


「理恵の通ってる大学……。勉強している理恵を見てみたい」


 そして克己は大学に顔を出す。周りを見渡すと、キャンパスライフを楽しんでいる学生で溢れていた。


「確か……理恵は文学部だったよな……」


 ぞろぞろと歩く克己達……その光景は異様なものであった。


 何部屋か教室を覗き、理恵を発見する。真面目に講義を受けているのを見て、克己は少し安心する。隣には里理が座っており、話を聞いておらず子供をあやしていた。


「本当に話を聞いていないんだな……。ある意味ドン引きだぞ……」


 克己は呟き、邪魔をしないようその場から離れ、校内を歩いて見渡す。


「意外とゴミが多いなぁ……清掃が行き届いていないじゃないか……」


 克己は事務室へ向かい、中へ入ると何故だか白い目で見られる。


『どの教授に御用ですか?』


 黙って立っていたら近くにいた女性に言われ、克己は顔を引き攣らせた。


「り、理事長……なんだけど……」


『はぁ?』


「この学校の理事長……なんだけど……」


『理事長? 理事長はいないわよ? この学校で、理事長を見た事のある人なんて誰もいないわ』


「だから……俺がその理事長なの! この学校の運営責任者は俺!」


 克己が声を上げて言うと、全員は驚いた目で克己を見る。


「初めまして、理事長の成田克己です。遅くなりましたがご挨拶させて頂きます」


 頭を下げ、挨拶をする。そして周りを見渡し理事長室を発見し、克己はその中へ入っていく。すると、見知らぬ男が座っていた。


「あんた……誰? どっかで見た事ある(つら)だな……」


「あん? そう言うお前こそ誰だ! ここを何処だと思ってる!」


「理事長室でしょ? で、あんたは誰?」


「解っていてここに入ってきたのか……私は総長だ!!」


「総長? 理事長より下じゃん……。なんでこんなに偉そうなの?」


「な、なんだと!! 貴様! どこの学部の生徒だ!」


「は? 何言ってんのお前……因みに名前はなんて……」


「克己様、少しよろしいですか……」


「なんだ? アルス……」


「あの方……奥様を食事に誘った方ですよ……。ほら……克己様が死んだ扱いされた時……」


 アルスは克己に耳打ちをする。


「あ!! 思い出した!! あの時の間男!! て、てんめぇ……この野郎ぉ……よくもぬけぬけと……面見(つら)せれたな……この野郎!!」


 克己は表情を変え男に近寄る。


「な、なんだ!! 貴様!」


「てぇめぇ……チェリーの店長に粉かけてたろ!! この野郎!!」


「ちぇ、チェリー? あぁ……あの美人店長か……貴様も狙っているのか? だが、あの女は俺が頂く!!」


「お前ら……捕まえろ、絶対に逃がすんじゃない……ぶっ殺す!!」


 アルス達は頷き、目にも止まらぬ速さで男を捕まえる。


「な、何をするんだ!!」


「総長……名前はなんていう……」


「や、安岡だが……そ、それより拘束を解け!! 離せ愚か者! こ、こんな事をして学校にいられると思うなよ!!」


「まず初めに一つ目……教えてやろう……。この学校の理事はこの俺だ。成田克己が理事だよ。いうなれば、貴様の雇い主だ!!」


「な、なんだと!!」


「二つ目……チェリーの店長は成田理恵……俺の嫁だ……しかもオーナーは俺……貴様は俺の女に手を出そうとしてるんだよ! 馬鹿野郎!!」


 安岡は言葉が出なかった。まさか目の前にいる人間が理事長で、さらには目にかけていた女の旦那が理事長の嫁……しかも、店のオーナーでもあった事に……。


「なんで貴様はこの部屋にいるんだ? 馬鹿野郎……」


「そ、それは……あは、あははは……」


「笑い事じゃない……何の権利があって貴様はこの部屋にいると聞いている……」


「そ、それは……」


「取り敢えずこの場から出ていけ!! お前ら、この場から追い出せ!!」


「ちょ、ちょっと……ま、待ってくれ!!」


 ヒョイっと安岡の体を持ち上げる六人。一人でも楽に持てるのだが、克己の怒り度合いが分かるよう、六人で運んで部屋の外に追い出した。ここで暴力を振るったり、何かしたりしてはいけないような気がしたからだ。


 克己は理事長の椅子に座り、一呼吸置く。そして、引き出しなどを確認し、PCのメール内容を確認し始める。


「データはバックアップを取っておかなきゃな……先ほど録音した内容も確認するか……」


 いくら怒りに身を任せたとはいえ、証拠は押さえる克己。理恵にちょっかいを出して、自分のものにしようとした言葉を確認する。


「いくら優しくお人好しな理恵でも、あんなクソな奴に付いてはいかないと思うが……」


 そう呟きながらPCを弄っていくと、再び安岡が室内に入ってくる。その手には金属バットを持っており、目が焦点を合っていないように感じられる。異様な雰囲気にアルス達はたじろぐ……。


「成る程。このPCを弄ってほしくない理由があるんだな?」


 克己は目を細め安岡を見つめるのだが、問いかけられた質問に安岡は答えない。


「取り押さえろ……。情報を全て抜き取る」


 アルス達は異様な雰囲気に躊躇し動くことができなかったが、ノエルは直ぐに行動に移し、手に持っているバットを奪い取り安岡を制圧するのだった。


 PCのデータを除くと、出てくる学校の金銭使い込み……。そして、出会い系などにも手を出しているようで、色々なデータが抽出される。


「……安岡さん、あんた……懲戒免職ね」


 克己は警察に電話を掛け、安岡は警察に引き渡される。学内は騒然とし、TV局がやってくる始末……。しかも、安岡は単位の代わりに金と体を要求していた事も判明するのであった。克己は事態の収拾にペルシアを呼ぶ。


「コアについては後回しだ……。先ずはこの学校をクリーンな場所に生まれ変わらせる。ペルシア、よろしく頼むな……」


 克己の命令にペルシアの叫び声が学校中に木霊したことは言うまでもなかった。

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