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249話 村の安全!!

「こりゃ……随分と酷い状況だな……リーズ、直ぐに食事の準備をして村人に配ってくれ。食べ物はお粥類にしてくれ。そして、数日分の食糧を配給して……。ガルボ、水の状態を調べてくれ。水が無かったらコアで水を作ってくれ」


 克己は直ぐに指示を出し、リーズたちは慌てて行動に移す。村の状況はかなり酷く、木々の下で子供たちが横になって葉っぱを口に含んでいた。


「ノエルとルノールは怪我人が居たら治療を、アルスとハミルは俺と一緒に村の状況を深く確認、レミーは周辺警護を頼む」


 全員は返事をして直ぐに行動に移し、克己達三人と村長は田圃等の状況を確認するのであった。


「こりゃ……今年は不作だったんですね……」


「はい……。ですが、年貢の量は増え……採れたものは全て上納しなければならない……ダイシ軍は我々を殺す気かと……」


 村長は悔しそうに言い、アルスはそっと村長の背中を擦る。


「状況は分かりました。我々はあなた方に援助を約束します。その代わり……」


「そ、その代わり?」


「ダイシ軍の配下から抜けて下さい」


「そ、そんな……!!」


「あなた方は私達がお守り致します。これもお約束いたします」


 その言葉に村長は考える。本当にダイシ軍から抜けても良いのかと……


「それに、農業に関して我々も協力させていただきましょう」


「きょ、協……力?」


「はい、人がやってかなり疲れる作業を、我々がもっと楽にできるように道具を準備します。見たところ、鍬等はかなりボロボロ……そして、それは木で作られている。これは反乱を起こさせないためでしょう……我々が鉄製の物を準備し、村人が生活できる様になるまで援助させていただきます。そして、村の防衛も我々が保障いたしましょう」


「ほ、ほしょう?」


「はい。我々が、この村を蘇らせます。これは強制ではありません。嫌なら断ってもらっても構いません。ですが、我々が村を救うと言っているんですよ……? 村長さんが望んでいたように……」


「ほ、本当に村は蘇るんでしょうか……」


「ダイシ軍から抜けて我々の傘下に治まれば……ね?」


「ど、どのぐらいの年貢を‥‥望んでいるのでしょうか…………」


 唾を飲みこみながら村長は質問する。克己達が乗ってきた移動する乗り物……そのような力があれば、確かに村は復活することは間違いないと頭の中では理解はしている。だが、その先の話は別であった……。


「年貢なんていりません。自分達が生活できるように値段は好きに決めて販売して下さい。我々は年貢が欲しくて村を救おうとしている訳ではありません。自立してほしいから援助するんです。誰かに守って欲しくてではなく、自分達の足でしっかり歩けようになってほしいのです」


「じ、自分たちの……足で?」


「そうです。誰かに守ってもらおうとして、ダイシ軍の配下になられて……こういう生活を送る様になったのなら、そういった生活から抜け出せるようになって戦える生活をしましょう……。だって、ダイシ軍の配下になって良い事なんかあったんですか?」


 その言葉に村長は唾を飲み込む……自分たちの足で歩いて行く……なんて素晴らしい言葉なのだと……。


「それに都合がよすぎる」


「え?」


「村長さん、普通に考えてブンキョウの街はデヨシヒが治めていた場所。そこにやってきて助けてくれと言う。人間だからか助けてあげても……といった感情はありますよ。俺達にも……だけどね、助けてもらってそれでお終いでは自分勝手だって言うんだよ。それなりの見返りは期待するのが……人間という奴でしょ? その見返りが自立しろと言ってんの……これ以上考える必要は無いと思うけど?」


 悪戯な顔をする克己。村長は膝をついて克己にお願いをするよう頭を下げた。


「わ、我々にご助力を……」


「分かりました……一緒に頑張りましょう……」


 それを見ていたハミルとアルスは嬉しそうに微笑み村長を立たせて土を払うのであった。


 村の中央まで戻ってきた克己達、村長は村人に自立することを宣言し、村はダイシ軍の配下から抜ける事になった。


 克己は直ぐに日本へ戻り、農業用トラクターを購入する。ガラトーダに持っていき、分解してコアユニット式の農業用トラクターを生産する。それを異世界Cに持っていき、魔法で村へと運んだのだった。


 見た事のない乗り物に驚く農家の者達。克己はトラクターに乗り込んで運転を始める……それを見て村人は驚きの声を上げたのだった。


 畑はあっという間に耕され、村人はさらに驚いた。


『こ、腰が痛くならねーのか!!』


『た、たんまげたー……あっという間に耕されちまったよ……』


 また田植機、耕運機なども数台提供し、村人の顔は笑顔に包まれたのであった。


 暫くの間、克己達はこの村に留まり、ダイシ軍の様子を窺う事にする。


「マンションの屋上からこの村は見えないのか?」


 アルスは克己に質問され、直ぐにレミーを見る。アルス達には役割分担が決まっているようで、こういった事はレミーの仕事だと言わんばかりに皆はレミーを見つめるのであった。


「見えてはいましたが……まずは街の安全が第一です……。それに、ここはダイシ軍の領土だった場所です。我々には関係ないと思ったんです」


「フム……。成る程……ほかにも村は見えたりしたか?」


「はい、何個かあるのは確認されておりますし、敵の拠点らしき場所も見えております」


「では、相手もこっち側のマンションを見ている可能性はあるって事か……」


 克己達が食事をしながら話していると、迷彩服を着た克己の奴隷が走ってやって来た。


「伝令!! 鎧を着た男達がこちらに向かっているのを確認いたしました!!」


 その言葉にガタッと皆は立ち上がり、袋の中から重火器を取り出して準備を始める。


「正直戦争は面倒くさいな……こっちに攻め込んでこないよう話を付けに行く必要があるな」


 克己は食事を続け、レミーは暗視ゴーグルを装備して敵がいる場所へ向かう。それに続く様にハミルやガルボ、リーズも移動を開始した。


「ノエル、お茶を取ってくれる? それと、戻ってきたら皆にケーキでも差し出してあげて」


「かしこまりました……克己様? ご飯粒が……」


 ノエルは克己の顔についているご飯粒を取り、自分の口に入れる。そして幸せそうな顔をしてルシールに頭を叩かれた。


 戦闘は数時間で完了し、克己が手配してくれたケーキを食べ、お茶を楽しんだ。


 翌日になり、克己は次の部隊を寄こす。


 村に派遣された女の子たちは60人の大所帯となり、子供たちは克己の奴隷たちに甘えるように遊んでもらっていた。


「これでこの村は問題ないだろう。次は水源の確保に移ろう……と言っても、ガラトーダのコアにも限度がある。ここは涼介と取り引きをしてコアを譲ってもらった方が良いかもな」


「克己様、ここは大分安定してきたので次の場所でコアを探してみたら如何でしょう?」


「その理由は?」


「お金は無限ではありません。ここの世界で稼げるのであれば問題はありませんが、そう言った状態ではないのが現状……もう一つ色んな場所に手を出すのは大変かと思いますが、ここは一つ……」


「まぁ、ノエルがそういうんなら……そうするか……。確かにコアは必要だからな」


「出過ぎた真似をしてしまい申し訳ありません……」


「何言っているんだよ。ありがとうノエル……追いで……」


 ノエルは恥ずかしそうに克己の傍により、頭を撫でられ抱き寄せられた。


「ありがとう……ノエル」


「克己様……」


 ノエルの幸せな時間は続く……。

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