23話 克己ショック!!
克己の言葉は直ぐに実行されてしまう。
自衛隊は実力行使することができるだけの力は有るが、異世界側から武力行使された訳では無いため、出ていけと言われると出ていかざる得ない組織であり、研究者たちも追い出されてしまうはめとなった。
この件に関してマスメディアは克己を自分勝手だと騒ぎ立てるのだが、克己は普通にインタビューに応えて自分の正当性を話てしまうと、コメンテーターが何も言えなくなってしまう。
しかも、異世界が有ることが分かった時に上がった株価が、追い出されて取り引きができなくなったことで大暴落してしまう。これが克己ショックと名付けられ、教科書に載るということは、未来の話である。
この一件で、各政党や議員が国枝に対する見方を変えたのは言うまでもない。
「全員を追い出すのはやり過ぎじゃないか?」
「解散したんでしょ? その時の人が俺と話をするんじゃないの?」
100円均一の店で、大量に食器などを詰め込みながら克己が言う。
「たしかに、この一件で邪民党は失墜したからな。株価が大暴落したから国民が黙ってない。次は自明党が政権を握るだろうが、お前と話をする奴かどうかは分からんぞ」
「俺はアチラの国益も考えなきゃならない立場だからね」
「しかしだな、彼女たちは密入国扱いになるかも知れないんだぞ?」
「連れて来なきゃ良いだけでしょ。国枝君も大変そうだね」
誰のおかげでこの様になっているのかと国枝は言いたかったが、全ては克己の手の平で動かされているので文句の一言も言えずに黙り込んでしまう。克己はレジで支払いをしてマジック袋の中へしまうため、手ぶらで店から出て行き、車に乗り込むと、国枝も助手席に乗り込んだ。
魔物がいる異世界だと言うことは、日本に住んでいる全国民が知っており、異世界の入り口から魔物が出てきたときのために、自衛隊が克己の家と、扉がある建物を警備しており、国民の安全を保証しているという名目で何時でも扉の向こうへ行くことができるように配置しているだけである。
武器に関しても、克己が作ったものは国際上地球で使用することができないため、全て扉の向こう側に置かれたままである。
各政党は、克己を味方にした方が選挙に勝てることを理解しているため、克己の携帯に知らない番号からバンバン電話が掛かってきていたが、克己はそれを全て無視しており、もう一台の携帯を契約して、そっちを業者さんとやり取りするために使っている。
選挙が終わり、しばらくして新しく総理大臣が決まり、新しい大臣も決まったのだが、異世界省というのが新たに新設されて、国枝もそこに所属したとの連絡が克己の携帯に入っていた。
「異世界省って、何をするところなの?」
克己の店やって来た国枝に質問してみる。
「お前と交渉する省だな。基本的に俺がお前と交渉がメインになると思うんだが、取り敢えず大臣を置いて積極的に交渉しましょうって、国が決めたことだ」
「国枝君は口が上手いからなぁ。相手にするのは面倒かも知れないね」
「この間、お前が言っていた部隊の件だが、燃料問題を解決させてくれるのなら、許可が降りそうなんだよね」
「部隊って……自衛隊が俺の部下になるって奴?」
「そう、それだ。面子に関しては部隊によるが、お前が言っていたように道具も好きにできるように手配はしてやるつもりだ」
「燃料……ね。その条件を呑んでも良いけど、契約書と誓約書はこちらで用意するけど、それでも良い? あと、向こうでは作れないから、こっちでパスポートの作成と、俺の奴隷とかのパスかな」
国枝は眉間に皺を寄せて携帯を取り出し、何処かへ電話を掛ける。パルコの街はアンテナが立っているため、電波が入るのである。
しばらくの間、国枝は誰かと話をしており、克己は状況を五人に説明すると、四人は納得した顔をしていたが、ノエルはWACが気に入らないのか、克己の肩を殴って来た。
これを切っ掛けに克己の心は、ノエルから離れたのだった。
「克己、許可が降りたけど、契約書と誓約書にサインがされてから、パスが発行されるそうだ」
電話を切った国枝が言うと、克己はマジック袋から契約書と誓約書を二部取り出して国枝に渡し、国枝は苦笑いをしながら書類を受け取って、席を立った。
お会計に関しては、毎度のことだが克己が支払った。
数日後、国枝が契約書と誓約書を持ってきて、克己は中身を確認して二部のうち一部を国枝に渡すと、国枝は前もって渡されていたデーターから、パスポートを作ってきており、克己に人数分のパスポートを手渡すと、克己はペルシアを呼び国枝から貰ったパスポートを渡す。
ノエルたちにもパスポートを渡し、使い方を説明する。これがあれば自由に日本へ行くことができるため、皆は喜んでいた。
その夜、克己はノエルに別れ話を持ち出し、ノエルはどうしてだとしつこく聞いてきたが、克己はノエルの焼きもちが重いのと、奴隷との関係性なのに暴力を振られる理不尽さを説明すると、ノエルは改善すると言ってきたのだが、克己の心は既にノエルから離れているため、克己は元のように戻れないことを説明し、ノエルとの関係は終わりを迎えたのであったが、奴隷と主人の関係は続く……。
翌日になり、以前のように自衛隊が克己の作った扉からやって来てパルコの街は再び自衛隊員で溢れかえるのだが、自衛隊ができることは契約書に記載されている事までしかできないため、制限ないの作業しかできない。
自衛隊ができることと言えば敷地内での訓練や、天然ガスの抽出作業くらいしか許されていないため、調査隊が編制されるのだが、自衛隊の武器は克己が使っている物を使用する事ができないため、通常の武器を使って調査するしかないが、それは仕方がないことである。
また魔物を討伐した際に手に入れられるコアに関しても、克己の手元へ行くことになっており、自衛隊や科学者が研究することも禁止されている。これらに関しては全て契約書に記載されているので、日本国としては従わざる得ない状態だった。
唯一日本が開業しても良いとされているのは病院だけであるが、この世界にはポーションが売られているため風邪などを引いた者くらいしか相手にできないため、病院で稼ぐことなどはほとんどできない。
それからしばらくして国枝から連絡があり、克己のために部隊を編成したとのことで、克己たちは自衛隊の施設に向かい入り口でパスを見せると、畏まった隊員が克己を別室へと案内する。
自衛隊と言っても、異世界に大量投入することができる訳では無いので、大体100人程度がこの異世界で生活をしている。
別室に案内されてソファーに腰掛けていると、皆は落ち着かないのかソワソワしており、待っている間に用意された飲み物にたいしては、皆は緊張しているのか口を付けることをしなかった。
克己たちは少しの間ソファーに座って待っていると、部屋の扉がノックされて、克己はソファーから立ち上がって返事をすると、数名の迷彩服を着た男女が入ってきて克己の前に並んで敬礼をするのだが、全員が緊張した表情をしており、全員の顔を見ていると、見たことのある人もいたが、何時まで敬礼をするのだろうか眺めていると、司令官と思われる人が「なおれ!」と、強い言葉で言って敬礼を止めてピシッと一糸乱れぬ動きで立つ。
それを見てシェリーが羨ましそうな目で司令官の人を見ていた。
「どうも、初めまして。既にご存知だと思いますが、俺が成田克己です。年齢は25歳で、一応この国では男爵をやっていますが、そんなに畏まる必要はありませんので、お気遣い無く。また、俺は自由人なので、色々な場所へ行きますから、死なないように気を付けて下さい」
死なないようにと言うと、部屋の空気が重くなったように感じたが、気にしてもしかあがないので自己紹介をしてもらうことにした。




