22話 招集令状!!
国枝から連絡が有り、克己と話がしたいとのことで、克己は自分の店で待ち合わせる。
着替えて出かける準備をすると、五人も一緒に付いてくるので準備してから、克己の店へ行くと、既に国枝は到着しており、克己に向かって手を振っている。
「お待たせ、国枝君。それで、新しい総理はどうなの?」
席に座って国枝に聞く克己だが、国枝は飽きれた様な顔をして克己を見つめる。
「お前のお陰で解散総選挙をやる事になりそうだよ……」
「それは仕方が無いんじゃない? 汚職していたのは事実なんでしょ?」
「ついでに、お前さんを国会に招待したいとさ。簡単に言うと、独占禁止法って奴でお前さんを訴えたいと言ってきているんだよ。それでお前さんはどうする?」
口元を緩ませながら国枝は言う。
「嫌だと言って、どうにかなる問題?」
「多分、無理だろうな。国はお前の扉を取り上げたいって、腹だろうからな」
「なら、行くしかないでしょ。嫌だと言っても無理なら、それなりに相手をしてあげなきゃならん訳だし」
「そう言うと思って、既に招待状を持ってきたよ」
そう言って国枝は、内ポケットから召集令状を取り出して克己の前に差し出すようにして渡す。
「はぁー。面倒臭いなぁ……」
差し出された令状に目を通すと、まるでジャイアンがのび太に物を奪うかのような事が記載されており、克己は再び溜め息を吐いた。
国枝は話が終わると席を立って、手を振って自分の仕事へ戻って行く。
与党がだらしないのが問題であり、他国に対して弱腰外交しているのが原因なのに、人の責任にするとはとんでもない奴らである。
招集令状に記載されている日付けと時間を確認し、何を言われるのか分からないがスーツを新調しなければならないと思いながら克己はお会計を済ませる。
扉に関しては、国民やマスコミにバレている訳でもないので、本来であれば公にしない方が良いと思うのだが、どうやら与党は公にして国民やマスコミを味方にしたいらしい。
困った顔をしながら歩いていると、国枝との話に関して、シェリーがどういう事なのか聞いてくる。
「克己様、国枝様とのお話は、どういう意味なのでしょうか?」
「簡単に言うと、俺以外の人と日本国、それ以外の国が、この世界を我が物にしたいと言ってきているんだよ」
「それで、克己様はどうなさるのですか?」
「もちろん戦うよ。勝てる自信もあるし、負けるつもりは無い。それに、相手が言っている事はおかしいからね。好きにさせる理由が無い」
克己の言葉にホッと息を吐くシェリー。克己はパソコンで調べ物をすると言って、自分の部屋に入っていく。
総理辞任事件により、どうやらマスコミが扉について嗅ぎつけたらしく、色々な議員に質問していたり、連日の国会答弁にて扉の件に関して話題に上げたりしていたため、世間に扉の存在がバレてしまったのだが、国枝や自衛隊が扉の向こうへ行っている時点で、いつかはバレる物だと克己は思っていたようであった。
しかし、克己の家にマスコミが押しかけてくるのだが、クローゼットも異世界へ繋がっているため、マスコミや他の者が近寄ることができなくなっている。
しかも、異世界への扉に関して克己の土地にあり作ったのも克己のため、誰かが扉を調べることは克己が禁止しており、克己だけが異世界への原理原則をしっているという状況である。
ましてや克己は一般人と言うこともあり、本来であれば名前すら出していけないのに、邪民党の議員は名指しで言ってくるため、克己は外を自由に歩くことすらできなくなってしまったのだ。
これに関しては克己も生活があるため困ってしまい、邪民党に対して訴訟を起こしたのは言うまでも無い。
招集当日は、国枝が用意してくれた車に乗り込み、国会へ行く事となったのだが、家の前はマスコミが押し寄せており、揉みくちゃにされてしまいったが、かなり罵倒するような事を言われていた。
「あのテレビ局、絶対に許さん!」
車の中で克己はメモを取りながら国会へ向かうが、今日に限っては、五人にはパルコの街で待ってもらう事になった。
国会に到着すると別室へ案内され、克己は国会中継を観ながら自分が呼ばれるのを待っていると、部屋のドアがノックされたので、返事をする。
「克己、出番だぞ」
友人の好として、国枝が呼びに来た。
「少し緊張するな……」
そう言って克己は立ち上がり、国枝の方へ歩いていく。
「なぁ、大丈夫か?」
「うん、問題無いよ。だけど、随分と騒ぎになっているね」
「総理が辞任したくらいだからな。与党からすると、財源の確保など色々と画策しているようだぞ」
歩きながら国枝が言う。
「俺には関係がないでしょ。いざとなったら全てを禁止するまでだよ」
「お前って奴は……。まぁ、頑張って来いよ」
「サンキュー。取り敢えず言いたい放題言ってくるよ」
笑いながら言うと、国枝は口元を緩めながら戦場の入り口を開けてくれたので、克己は堂々と聴聞席に座ると、室内はざわめき立つ。
邪民党議員の氏元清海が質問台で喋り始める。
「貴方が異世界の入り口を占拠している成田克己さんで宜しいですか!」
睨み付けながら氏元は聞いてきたので、克己は聴聞台へ行く。
「私が成田克己ですが、別に占拠している訳ではありませんよ? 自分の土地に異世界の入り口が現れただけで、何で占拠呼ばわりされるのか解りません」
「国で管理をすると言っているんです! 日本国民なら、国益を考えるために、国へ譲渡するべきだとは思わないのですか!」
「質問の意味が理解できません。判るように説明して下さい」
「豊富な資源がある土地を貴方個人が独占していると言っているんです! これは独占禁止法で定められているでしょ!」
「氏元議員が仰有っている独占禁止法って、自分の都合に合わせた法律ですか? 独占しているつもりがあるのなら、今居る自衛隊や。調査隊などを呼ぶことなど有りませんよ」
「しかしですね! 私的独占している訳では無いですか!」
「そもそも、独占禁止法って理解してます? 氏元議員が仰有っている私的独占は、独占禁止法第3条前段で禁止されている行為です。私的独占には、「排除型私的独占」と「支配型私的独占」とがあります。前者は、事業者が単独又は他の事業者と共同して、不当な低価格販売などの手段を用いて、競争相手を市場から排除したり、新規参入者を妨害して市場を独占しようとする行為です。後者は、事業者が単独又は他の事業者と共同して、株式取得などにより、他の事業者の事業活動に制約を与えて、市場を支配しようとする行為ですよ。私が購入した家に異次元の入り口を作り、異世界へ行けるようになったのが、どうして法に引っ掛かるのか分かりません。もう少し勉強してから呼んで下さい。私は自分の研究で手に居入れた、知的財産を誰かに教えるつもりはありませんし、貴方方は他国に対して良い顔をしたいがためにあの土地を手に入れたいのでしょうが、あの土地はあちらの住人の物であり、我々のとちではありません! そんな事よりも、私の個人情報を外部に漏らしている貴方方が個人情報保護法に触れているので、メディアも異世界に関して報道するのを止めていただきたい。迷惑極まりない。そんなことだから、他国のエージェントに自分たちの内部情報を掴まれてしまい。総理が辞任しなきゃいけないほど脅されるんじゃないんですか?」
とどめを刺す勢いで捲し立てると、氏元は何も言えなくなってしまう。それ以上の言葉をこちらが用意しているとは、思っていなかったと思えた。
更に克己は言う。
「私は日本国民であり、しっかりと税金も納めてます。更に言うならば、私は会社などに勤めておりません。いわゆる無職の人です。ですが、異世界では男爵の爵位を貰っており、異世界の王国で認められていますから、相手側との話し合いの仲介することならばできるでしょう。しかし、日本国の国益を考えるのであれば、今の日本国に相手との仲介はしない方が、異世界側にとって有益となるため、申し訳ありませんが、この時点をもって全ての日本国民は異世界から退去してもらいます。しっかりと話ができる人が居ない限り、異世界への侵入をさせません!」
克己は断言すると、与野党から罵詈雑言が飛び交うが、克己が異世界の爵位を持ってしまっているため、二重国籍扱いになっており、取り引きするにも克己の一声で全てが駄目になる可能性もある。
「因みに、王国の王女が私の従者となっていますので悪しからず」
止めの一言で、この場にいた全員が先ほどまでの罵詈雑言を言うのを止め、ざわめきに変わり克己に対して誰も何も言えず、国会が終わったのである。




