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214話 お姉ちゃんの役割!!

 克己は偵察用のヘリを飛ばし、上空から様子を窺う。以前、拉致してきた娼婦はハミルが病院に連れて行き、精神病棟に入院させられていた。


「この距離だと……一日もあれば王都に到着できるな……」


 上空からの映像を見て克己は呟く。


「ですが……王宮は街の中を通らなければ行けないみたいですね……」


 画面を見ながらリーズは呟く。


「うん、横から行くこともできないし、後ろから攻めることもできない。絶対的な守備に自信があるんだろうね」


 克己の言葉に、近くで聞いていた女の子は唾を飲み込む。


「レミー、この間の話だと街中に兵士は少ないって事だけど……」


「そうです。私が確認した時はそんなに数は居ませんでした。出兵させたのが原因かと思いますが……」


「成る程……。それではもう少しだけ前進しよう。数時間で到着できるまで移動し、攻め込むタイミングを伺おう」


 克己の言葉に皆は頷く。そして克己達は前進して夜を迎える。だが、克己は休むことはせず、先に進んでいく。皆は、夜になったのだから休むのではないのかと疑問に思いながら後を付いていく。


 徐々に空が青くなり始め克己は歩くのをやめさせる、ラジコンヘリを再び飛ばして偵察をした。


「想像通りだな……あと二キロ程で到着するぞ……」


 ヘリからの映像をもとに克己は呟く。アルスは喋っても無視されるだけなので黙ってその様子を眺めているだけであった。


 夜になると跳ね上げ橋は上げられ城の中に入ることが出来ないようになっており、克己は舌打ちをする。王都の出入り口には兵士が数人立っており、不審者がいないか周りを警戒していた。


「問題は橋だな……あれを上げられたら中に入ることはできない。さて……どうするかな……」


 腕を組んで考えていると、アルスが提案する。


「先に鎖を切ってしまえば如何でしょうか……。ここの場所で引っ張られているようですし」


 克己は黙って画面を見つめる。


「あ、あの……。か、克己様?」


「お前は喋りかけるな。邪魔だから帰っていい。目障りだから消えてくれ」


 克己はアルスの顔を見ず、画面だけを見つめながら言うとアルスはよろめき足を縺れさせて転ぶ。ガルボは慌ててアルスに駆け寄り心配をするが、その声は届いていなかった。


「ハミル、レミー……」


「何でしょうか、克己様」


「厳しすぎる?」


 二人しか聞こえないような声で言うと、レミー心配そうな声で返事をした。


「アルスは……克己様の言うことなら、どんな命令でも聞きますからね……。相当応えてると……」


「二人がアルスをフォローしてあげて。何で怒られているか、どうしたら良いのか……お姉ちゃんなら分かるだろ?」


 克己の言葉に二人は苦笑いをして顔を見合わせる。


「お、お姉ちゃんですか……」


「違うか? 妹の不始末は、お姉ちゃん達が助けてあげるもんだろ?」


 二人は困った顔して再び顔を見合わせる。


「場合によっては理恵の所へ連れて行け、事情を説明してこの戦いが終わるまではここに戻さないように言ってくれないか。今回ばかりは許す事ができない」


「アルスがガルボに対して謝れば解決をするんですか?」


「いや、謝罪と反省だな……。ただ謝るだけだったら誰だってできる。何でそうやって謝らないといけないのか、理解しない限りは一緒に行動はしたくない」


 難しい事だとハミルは思いながらアルスの傍へ向かう。アルスはガルボと二人で座っており、ガルボは心配そうにアルスを見つめていた。


「ガルボ、少しだけ席を外してくれる?」


「う、うん……。アルス、克己様は気が立ってるんだよ、決戦が近いから……」


 ガルボは数度、アルスの肩を撫でてルノールの側に座り、心配そうな目をしながらアルスを見ていた。


「アルス、移動するわよ……」


 ハミルは移動魔法を唱え、チェリーの前へとやってくる。


「こ、ここは……」


 アルスは店の看板を見てたじろぐ。


「中に入るよ……」


 ハミルは無理やり店の中へ連れて行き、キリコが出迎える。


「いらっしゃいま……あ、ハミル様とアルス様ではないですか!」


 キリコの言葉に理恵が反応する。


「どうしたの二人共……あ、トリアさん、暫くお店をお願いしますね。二人は二階へ来て下さい」


 理恵の言葉に二人は二階へ向かうが、アルスの足取りは重い。


「アルス、しっかりしなさい! 奥様なら、なんとかしてくれる! だから……」


「む、無理だよ……。私は殴られたんだよ……。そして、今度は一度も目を合わせてくれない……。もう、無理なんだよ……」


 泣きそうな声でアルスが言う。ハミルは無理やり手を引っ張り二階へと連れて行った。二階では、理恵が真剣な表情で座っており、アルスは無理やり椅子に座らされた。


「お話を聞きましょう……」


 理恵は真剣な表情で言う。アルスはポロポロと涙を流し始めるのだが、アルスは何で怒られているのかよく分かっていなかった事をハミルは知る。


(あぁ……、何で私がここに居るのかやっと理解が出来た……。この子が理解してないから……私が説明をする必要があるんだ)


 克己がハミルに託した理由を理解し、アルスの背中を擦りながら理恵に説明をしてアルスは初めて自分の罪を理解する。


「そう言うことですか……。成る程……。ハミルさん、克己さんの傍に戻ってくれますか? ノエルさんがいない今、どちらかが傍にいないのは危険すぎます。アルスさんは私からお話をしますので……お願いします」


 理恵は頭を下げ、ハミルは頷き克己の傍に戻っていく。


 それを確認して理恵は深い溜め息を吐いたのだった。


 克己の傍に戻ってきたハミル。アルスを理恵に預けた事を説明すると、申し訳なさそうな顔をしてハミルに謝る。


「嫌な役を押し付けてごめん……」


「私はお姉ちゃんですから……」


「ごめん……」


 再び克己はハミルに謝り、ハミルは克己の隣に座った。


「お姉ちゃんが出来の悪い妹の分まで頑張ります」


 そう言って克己の肩に寄り掛かり、克己は小さい声で再びお礼を言った。

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