21話 辞任……!!
家に戻ると、リビングでシェリーと雑談をした。
「なぁ、シェリー。王都では余り獣人がいなかったけど、何か理由があるの?」
「王都……ですか……。今の自分では考えられなくなっておりますが……。王都で獣人は異物扱いされており、迫害される傾向にあります」
「何故に?」
「やはりヒューマンとは考えにくいからではないでしょうか……今考えると馬鹿らしい考えです。私もここで暮らすようになり、考えを改めました」
シェリーはそう言って申し訳なさそうにしていたが、それが理解出来ただけでも偉いのではないかと克己が褒めてあげたら、泣いてしまった。
「私は自分が愚かでした……こんなにも獣人の方が優しく、気高い人達とは知らず……それを迫害して……」
「これからは大切に扱ってあげると良いんじゃないかな、今からでも遅くは無いよ、シェリー」
「はい……」
シェリーは涙を拭いて、克己に優しく微笑んだ。
話が終わり外に出て街を歩いていると、先程の話ではないが、結構獣人が増えていることに気がついた。
この街は意外とそう言うところは寛大であるから、差別をしたりしないのだろうと思いながら歩く。
良い傾向だと思いながら歩いていると、克己は色々な人に挨拶される。
やはりドラゴンバスターだとか、魔王と話し合いをつけてきたとかが、関係があるのだろうと克己は考えたが、そう考えると少し恥ずかしくなり、自衛隊のキャンプ地に向かう。
キャンプ地には意外と立派な建物が出来ており、流石自衛隊だと思わせた。
自衛隊が運営しているお店に行くと、色々な種類のお酒が発売されている。
アウチ!! これはやばいと思い、直ぐに問屋に電話して色々なお酒を仕入れることにした。
自衛隊ごときに後れをとってはイカン! そう思いながら自分の店に行くと、客で溢れかえっている。
唯一日本食が食べられるお店で、自衛隊の人がお客さんとして入っている状態だった。
食べ物の種類も豊富だからこの世界では満足度はNo.1である。
自衛隊が装備している武器は克己が考案した物が実装されていた。
やはり鉛玉より威力があるのだろうと思いながら見ていると、戦車等もビームキャノンが配備されている。
「克己様、この街は大分豊かになりましたね。アルスの移動魔法で戻って来れる事も判りましたので……新しい街とか行ってみませんか? もしくは……日本を案内してくれると……」
ノエルが言ってきた。
克己は少し考えてから頷き、ペルシアも連れて皆で日本に行くことにし、色々な食べ物や飲み物を味わう事にした。
「これは新商品として売り出していくにゃ!」
そう言ってペルシアは色々な物をメモしたり、克己に買って貰ったカメラで写真を撮ったりしていた。
ペルシアはかなり頭が良く、読み書きは当たり前で現在ではパソコンを普通に使って運営に役立ててくれている。
しかもフォトショップで写真を加工して、日本では当たり前だがメニューに写真を載せるという事もやっており、物凄い成長を見せいていた。
だが買い物をするとなると、女性が多いため洋服屋や雑貨屋でかなり時間をとられる事が多かった。
克己達が日本を満喫していたら国枝から着信があり、克己は電話に出る。
「もしもし、国枝君? どうしたの?」
『ちょっと面倒臭い事になりそうで、できる事なら戻って来てもらいたいんだが……大丈夫か?』
「分かったけど……まさか国際問題にでもなったの?」
『ご明察』
「わかった、直ぐ戻るよ」
そう言って克己は電話を切り、アルスの移動魔法で家まで飛んでもらう。
克己は自分のお店に行くと何かと話題が多い内閣総理大臣の鳩屋氏が居て、重苦しい雰囲気を作っていた。
克己はできる事なら、コイツには近よりたくなかった。
だが、ペルシアが新しいメニューを作ると言って厨房へ戻ると、国枝に発見されてしまう。
克己は渋々近より席の前に行く。
「えっと……、こちら日本の最高責任者って言えば良いのかな? 認めたくないけど……。鳩屋さん、皆も挨拶して」
克己はこの総理が嫌いで、さっさと辞任してほしかったが、中々しぶとい奴で辞任してもおかしくない事ばかりやっている政党なのに粘りやがる。
克己は嫌々皆に挨拶をさせ、席に着いた。
「ここに総理が居るって事は、余程大変な事態が起きたって事なんでしょうね」
克己が言うと、国枝が疲れた表情で頷いた。
「まずは食事をしながら話でもしましょう。俺、総理なんて初めて会いましたから緊張してしまいますよ」
克己が場を和ませるためにわざとらしく言うが、ノエル達は凄い人なのだと勘違いして背筋を伸ばしてしっかりと座った。
ペルシアが気を利かせて注文を取りに来てくれる。
流石の気配りだと克己は思いながら注文をして、克己から話を切り出す事にした。
「んで、国枝君……大変な事って何が起きたの?」
克己が聴くと国枝君が喋ろうとしたが、総理がしゃしゃり出て喋りだした。
「実は各国がどうやってかは分からないが、この世界に気がつき、我々も使用する権利があるって言ってきたんだ」
「いやいや、そりゃ無いでしょう。だって、この土地は俺の土地ですし自衛隊の人は俺が国に調査を依頼しているだけですから」
「そうは言ったのだが……なんせアメリカや中国が……」
克己はイラッとしたのか、強い口調で話し始める。
「おいおい、おっさんちょっと待てよ。……総理! アメリカが言って来るのは分かりますよ、同盟国ですしね。これは何時もの事だと理解はできます。ですがね、譲ったりするのは間違いでしょ? アラブの石油等は個人財産になっていますよね? クローゼットがある場所は俺の土地で、俺の固有財産という話で国は調査等やっているんですよ? それを自分達も使用する権利を主張してくるのおかしいでしょ! 同じことを泥棒国家の中国や韓国にでも言ってくださいよ。人の敷地に勝手に入ってくるのは泥棒と同じですよ。勿論、日本人のあんた達も同類だよ、それをアメリカ大統領のオバラに伝えてください。譲渡するつもりもありませんし、招き入れるなんてもってのほかだ! これは俺の財産で、日本と取り引きしているだけの話ですから……。それに外交が弱腰だからいけないんでしょ? あんたがいい加減な事をやるから相手に付け込まれるんですよ! 分かってますか? 総理! ここがアメリカの土地なら話は違いますが、クローゼットのゲートがある場所……空間転移が出来る装置を持っているのは俺です! あそこの土地は俺のです! 高さ制限も国の基準をクリアしている! 問題はない筈だ、違反なんかしてないでしょ?」
そうまくし立てると総理大臣は頭を抱え始めた。
「何か異論はあるの? 国枝君」
「ないな……。だが、我々はアメリカにスキャンダルを握られているみたいで……」
「だから?」
「それが漏れるとヤバイらしんだよ」
「関係ないね、そんなの知ったことではないよ。この間結んだ誓約書と契約書、条約を見てもらえば分かるでしょ?」
克己はそう言って総理を睨む。
「ここは俺の土地、俺の許可がなければ輸入や移民は禁止ってなってる。それにマスメディアに入室も禁止してるじゃん」
「だけど……」
「だけども糞もない! これだけは譲れないよ、国枝君。そして総理、スキャンダルは自分たちが招いた種でしょ? それは自分で摘み取ってくださいよ。こっちは新しく冒険をしようかって話になっているんだから……。アメリカに石油や何かを格安で売るなら自衛隊員を数人、俺の配下としてください。勿論、WACは必須! また自衛隊の道具も勝手に使って良いと許可してくれるなら少しは考えますがね」
「まぁ、それは少し考えさせてくれよ……これは直ぐ回答が出来ないからな」
国枝はそう言って飯を食っていたが、総理は頭を抱え困っていた。
克己達は気にもせず飯を平らげる……が、支払いはやはり克己が持つ事になった。
そして家に戻り、ノエル達がWACって何と聞いてきたので女性自衛官と説明したらノエルに殴られた。
暴力行為は理不尽だと感じ、克己は別れを考え始める。
「まだ決まったわけでは無いでしょ? 多分無理な話だよ。向こうはこっちに人を移民させたいだけなんだし、簡単に言うとこっちの土地が欲しいのさ。そんな馬鹿げた話は無いでしょ? 自分の部屋に勝手に知らない人が入ってくるんだよ?」
五人はノートにその内容を書いて自分なりの解釈を始めている。
五人はそれぞれ話し合い、意見を述べあって部屋にもどっていく。
ノエルと部屋に戻り、克己は寝巻きに着替える。
「ではスキャンダルって何でしょうか?」
ノエルが聴いてきた。
「スキャンダルは名声や名誉を汚したりする事件や不正行為とかだよ。この場合は多分、女か金だな……政治につきものだからね」
「女と言うなら、私達はスキャンダル?」
ノエルは心配そうに聴いてきた。
「いや違うよ、政治とは関係ないもん。俺達は」
「なら良かった」
ノエルはホッとしながら布団に入り、上目使いで見てきたので夜はしっぽりとした。
翌朝、スキャンダルが公となり鳩屋首相は辞任し、新しい人が総理となる事がきまる……。




