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210話 涙のペルシア!!

 ハミルとアルスは、克己が購入した奴隷達を連れてくる。だが、涼介にメールした通りジキルだけはパドログの街に残す。


 前線キャンプ地は、克己が購入した人で溢れかえっており、仲の良かった子達は抱き合いながら再開を喜んでいた。


「こんなに沢山……どこに住ませりゃ良いんだよ……」


 克己は椅子に座りながら呟き、少女達を茫然と眺めている。売り言葉に買い言葉……ムカついたので言った言葉の結果がこれであった。


「奥様にも怒られそうですね……まさか三百人近くの人を訓練させられるとは思ってもみないでしょうし……」


「それは大丈夫なんだけど……住む場所をどうにかしないと……どこかにワンルームマンションを購入するしかなさそうだな……。アルス、あとどの位移動ができる?」


 克己の言葉にアルスは困った顔して頬を掻く。


「申し訳ありません、ハミルも私も……そろそろ限界で……」


「そりゃそうだよな……悪い、無理をさせて」


 克己は申し訳なさそうな顔して謝る。


「い、いえ……魔力が少ない私達が悪いんです……克己様は悪くありません!!」


「ありがとう。アルス」


 克己は隣に座っているアルスの頭を撫でる。


 暫くしてハミルがアクビをしながら傍に近寄ってきて、座る場所を探していた。


「ふぁ~ぁ……少し眠ったら大分体が楽になったわ……」


 首をコキコキと、鳴らしながら克己のそばに座る。アルスはそれを聞いて少し困った顔をするが、克己は目を光らせハミルに言う。


「ハミル、ペルシアのいる場所に連れて行ってくれないか!!」


「え? あ、はい……分かりました」


 やはりとアルスは思い、悲しい顔して項垂れる。それを見たハミルは首を傾げ克己と一緒にペルシアが居る場所へ移動するのであった。


 その頃ペルシアは社長室でカップラーメンを食べていた。


「カップラーメン……開発した人はノーベル賞ものにゃ!! 凄い食べ物を開発したと思うにゃ! ……ズズズッ……」


 麺を啜りながら雑誌を手に取り、ページをめくる。行儀が悪い行為だと知っているが、誰も見てはいないので気にする必要はない。


「この漫画、いい加減に終わらないのかにゃ? 『海賊王に俺はなる!!』って書いてあるけど……始めの頃は普通の体をしていたのに最近はオッパイしか描いてないにゃ。無駄にオッパイが大きくって奇形種にゃ」


 文句を言いながらページを捲って時間を潰していると、目の前に克己とハミルが現れる。


「おわっ!! び、吃驚したにゃ!! あ、焦らせないでほしいにゃ……」


 ペルシアは胸を押さえながら息を切らし、克己達を見る。


「また栄養の偏っている食べ物を……」


 克己はジト目でラーメンを見つめ、ペルシアは慌ててカップラーメンの容器を隠す。


「ひ、久しぶりに食べてるにゃ! ま、毎日じゃないにゃ!」


「なら良いけど……。元気にしてるか?」


「してるにゃ。最近の出来事で言うと、空村が引退するのがショックなだけにゃ」


 ペルシアの言葉に克己は少し驚く。


「空村……引退するの?」


「するにゃ……女の子に負けたと言って引退を宣言したにゃ。今シーズンで終わりにゃ……結局優勝することができなかったにゃ……女の子に負けたと言う意味が分からないにゃ……」


 ペルシアはガックリして俯く。


「そ、そうか……それなら……横浜に出資する必要は無くなったな……」


 克己はソファーに座り、ハミルに座るよう言う。ハミルは少し緊張して克己の隣に座り、克己はハミルを抱き寄せるとハミルは恥ずかしそうに身を預けた。


「そうにゃ……私はあのフリーキックに惚れて出資することにしたにゃ。だから引退をするなら出資する必要は無くなったと言う事にゃ。だけど……ご主人様はそれで良いのかにゃ?」


「どういうことだ?」


「日本サッカー界を助ける事はしなくて良いのかって事にゃ……」


 ペルシアの言葉に少し考える克己。ハミルは抱き寄せられ、頭は克己の肩に預けており幸せそうな顔をしていた。


「もし、ご主人様が出資して良いという話にだったら違うチームにするにゃ」


「え?」


「潰れそうなチームを買収して、私達のチームにするにゃ。豊富な資金を使って、成り上がるにゃ! どうかにゃ?」


 克己は考える。


「代表選手を私達のクラブから出すにゃ!」


「なら……クラブチームを作ったら如何ですか?」


 ペルシアは目線をハミルに向ける。


「どういう事にゃ?」


「資金が豊富というなら、邪魔される事なく自分達でクラブチームを設立すればよいじゃないですか? 成り上がって行くのは克己様らしいかと……」


 ハミルは克己の肩に身を預けたまま言う。克己は何も答えず黙ってペルシアを見つめる。


「く、クラブチームを……作るにゃ? それがどんなに大変な事か分かって言っているのかにゃ?」


「なんとなくは……ですが、克己様にできないことは無い! と、私達は思っております……。ペルシア様はそう思ってはおられないのですか?」


「ど、奴隷風情が……し、知ったような口を利くんじゃないにゃ! ご主人様が決める事に私は逆らわないにゃ! ご主人様がプロサッカーリーグ……Jに参加するというなら、私は何でもするにゃ!!」


「なら宜しく、ペルシア。必要な事は任せる。俺の記憶が確かなら、一年以上のスクールなどをやらないといけないって話だった気がするが……」


「どうせ地域リーグからの参加にゃ。それは問題ないにゃ。今から総出でチーム名とロゴ、近くの学校や、辞めたプロサッカー選手に声をかけるにゃ」


 ペルシアは立ち上がり、仕事の準備を始める。


「あ、ペルシア……一つお願いがあるんだけど……」


「何にゃ? 今から忙しく成るにゃ……まずは……スタジアムやクラブハウスなんかも検討しないと……」


 ペルシアはブツブツ言いながら書類を手に取り、頭の中で道順を作り始める。


「今週中に三百人以上が住めるマンションを作ってくれる? 魔王を使っても構わないから……」


「はぁ? な、何言ってるにゃ? そ、そんな人数……どこから集めてくるにゃ? こ、今週中って言ったにゃ? き、聞き間違えかにゃ?」


「実は……」


 克己は異世界に300人程奴隷がいる事を説明する。そして、数日中にはその人数が日本へ来ることを話すと、ペルシアは持っていた書類を落とし一言呟くのだった。


「もっと前に説明してほしいにゃ……」


 ペルシアはクラブの話も進めながら、今週中に300人住む部屋をどうにかしないといけないと言う事で、涙を流しながら優先順位を作り直し、書類を拾うのだった。

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