207話 先の話になるのですが!!
朝になり、克己は股間部分に違和感を抱いて目を覚ます。
「ん……んん? な、何だ? ……気持ち良いぞ……?」
股間のあたりがモゾモゾしており、克己は布団を捲り上げる。そこには、ルノールが美味しそうに克己のそれを口に含み、転がしていた。
「あ、かふみひゃま……。きもひいいですふか?」
「な、何やってんだよ!」
「チロチロ……何って……ナニを、ナニしてるんですよ? 気持ち良いですか?」
「ちょ、ちょっと! ま、ま……い、イっちゃう!」
「口で受け止めますから……ハムッ……チュバチュバ……」
ルノールは悪戯っ子のような目をして激しく頭を上下に動かし、克己は耐える事ができずにルノールの口の中を白濁の液で汚し、ルノールは美味しそうにそれを飲み込んだ。
「朝から疲れさせるなよ……」
克己はテントから出ると、ルノールは嬉しそうに腕にしがみ付く。
「今度は私の初めてを捧げますからね!! 楽しみにして下さいね」
ルノールの言葉に克己は呆れるだけだった。
暫くして克己は朝食を作り始める。ルノールはその手伝いを始めると、アルスがルノールを睨みながらやって来た。
「おはようございます、克己様……。ルノール、克己様の睡眠を邪魔してないでしょうね……」
睨みながら言うアルス。ルノールは勝ち誇った眼でアルスを見つめる。
「今朝は克己様のミルクを飲ませてもらったの……美味しかったよ? アルス。アンタは飲んだことある?」
アルスは目を大きく見開き、克己を見る。
「朝早くからルノールに襲われた。それだけだよ。最後まではしてない」
克己が言うと、アルスはワナワナ震え、直ぐにでもルノールに殴り掛かりそうな雰囲気を醸し出していた。
「アルス。朝食を作るのを手伝ってくれないか。皆の食事を作るのに時間が掛かる」
アルスはピタッと動きを止め、ゆっくりと克己を見る。
「か、かしこまりました……」
怒りを我慢して克己と共に朝食を作る手伝いを始めアルス。
ルノールとアルスの二人で朝食を運ぶが、ルノールは勝ち誇った顔をしており、アルスは怒りに満ちた顔をしていた。
「ハミル、あの二人……何かあったの?」
食事を受け取り、レミーがハミルに質問する。
「え〜〜。どうせルノールが悪戯でもしたんでしょ〜」
呆れた声を出し、ハミルは食事を口にした。
その頃克己はと言うと、ラジコンヘリを飛ばして上空から偵察を試みていた。
ヘリはかなり高いところまで飛んでおり、克己は真剣な目でPCを見つめている。
「あの……建物っぽいのが……そうなのか?」
カメラをズームモードにして確認すると、城の形が薄っすらとカメラに捉えることが出来たのだった。
「やっと見つけた……。待っていやがれよ! この野郎……!」
克己はPC画面にデコピンをして呟き、アルスは不機嫌な顔して隣に座っていた。
「アルス、バスは何台残ってる?」
「知りません!」
アルスは不貞腐れた声で言う。
克己は横目でアルスを見て直ぐPCに目を戻し、立ち上がる。
「ハミル、バスの数を教えてくれ」
食事をしている最中に呼ばれ、驚くハミル。
「ば、バスの数ですか? それならアルスが管理してますが……」
ハミルの言葉を聞いて、克己は座っているアルスを無理やり立たせ、袋を取り上げる。
「わ、私の袋!」
アルスは克己から取り返そうと飛びつくが、克己は手で払い除ける。
「仕事しないのなら傍にいるな。ここは戦場だぞ!」
そう言い放ち、袋の中からバスを取り出す。
「食事が終わって一時間後に出発するぞ!」
克己は運転席に座り、目を閉じて腕を組む。
アルスは運転席の後ろに座る。だが、その顔は落ち込んでおり死んだ魚の目をしていた。
一時間が経ち、徐々にバスに乗り込む新人の女の子達。克己はエンジンをかけ、全員が乗り込むのを待つ。
暫くして全員が乗り込んだ事を確認し、バスを発進させる。皆は黙って外眺め、それぞれが物思いにふけていた。
昼になり、克己は車を一旦停める。
「昼休憩を取る事にする。各自準備を始めるように!!」
克己の言葉に全員は車から降りていき、食事の準備を始める。克己は再びラジコンヘリを飛ばして偵察を行っていた。
「ねぇ、ヴィヴィ。この戦いが終わったらあなたは何をするの?」
ヴィヴィと呼ばれた少女は少し考える。
「休みと言っても、お金が無いからね……。なにする事もできないよ。それに、住む家だって決まっている訳じゃないでしょ? 皆」
ヴィヴィの言葉に皆は振り向いた。
「そ、そう言えば……私達、どこで暮らすの! 先輩たちは知っている……のかな……」
質問をしてテロルはアルス達の姿を探す。だが、全員克己の傍におり、話しかけられる雰囲気ではなった。
「お金もない、住む場所もないでは……私達はどうやっても生活はできないよ? テロル、あなたはどうするの?」
ヴィヴィは仕返しと言わんばかりに質問をすると、テロルはケシカに話しかける。
「ケシカ、克己様に聞いてみてよ! 質問ができた貴女なら聞くことができるよ! きっと……」
無茶苦茶な理由だと全員は思ったが、誰かが聞かなきゃならない事であり、全員が不安に思っている事であった。
「わ、分かったわよ……。き、聞いて来ればよいんでしょ!」
ケシカは恐る恐る克己達の傍に近寄る。
「レミー、数キロ地点になったら偵察に行ってきてくれるか? 王都の状態を確認するだけで良い……。上から見た感じだと、少し距離があるようだから、出来れば城だけを攻め落としたいんだよな」
克己が画面を見ながらレミーに言う。レミーも画面を覗き込み、状況を確認していた。
「そうですね……状況は確認しないといけませんね……誰が兵器を作っているのか……それを調べる必要はあるかと思いますが、どうやって確認いたしましょうか……」
「確認はしなくて良い……城は殲滅させるだけだから。だけど、問題は兵士以外の人だよな……レデオウィールに任せれば良いだけの話ならそれでも構わないんだけど……」
「それなら私が涼介さんに確認を致しましょうか?」
ハミルが提案する。克己は少し考えて、ハミルにお願いをすることにした。
「悪いが頼まれてくれるか?」
「もちろんです」
ハミルは魔法を唱え、涼介がいると思われるパドログへの街へと飛んで行った。
アルスは話を聞いている様子はなく、隣でボーっと克己の横顔を眺めているだけであった。克己はそれに気が付いていたが、特に何か触れることは無く、黙って次の一手を考えていた。
「あ、あのぅ……」
ケシカは勇気を出して克己に話しかける。
「何だ?」
レミーが克己の代わりに答えると、ケシカは体を飛び跳ねるように驚かせ、震えていた。
「ご、ご質問があるのですが……」
「質問? それは今、答えないといけないの?」
リーズが言うと、ケシカは答えに迷う。克己は黙ってケシカを見ていた。
「い、いえ……あ、あの……そ、その……」
「リーズ、話を聞いてみよう……指揮に関わる事だからね。どうしたんだい? ケシカ」
ケシカの頭の中では、「怒られたらどうしよう」それだけがリフレインされており、中々喋り出せずにいて、レミーとガルボは少し苛立っていた。
「言いたいことがあるなら早く言いなさい! 私達は敵をどうやって攻めるか考えている最中なんだから!!」
苛立つレミー、ケシカは言ったら怒られると思い、言うのは止めることにして戻ろうとするが、克己はそれを許さなかった。
「レミー、そう言ったら言えるものも言えなくなる。君はこの中で最年長なんだから……」
「も、申し訳ありません」
「分かってくれれば良いよ。で、ケシカ……話は何だい?」
「い、言っても怒りませんか……」
「別に? それだけ大事な事なんだと思っているから大丈夫だよ。逆に、くだらない話の方が助かるかな?」
克己は微笑みながら言うと、ケシカは覚悟を決める。
「あ、あの! 私達の住む場所は何処になりますでしょうか!!」
「済む場所??」
克己達はキョトンとした目でケシカを見る。ケシカは怒られると思い、目を瞑り体に力を入れていた。
「済む場所……住む場所ね……。アルス、彼女達は何処に住まわせれば良いかな?」
「分かりません……」
アルスは答える事は答えたが、棒読みで答え克己は少しだけイラッとする。
「マンションで宜しいのではないですか? 一括管理できますし」
ガルボが閃いたかのように、相槌を打って答える。
「マンションに住まわせるのか……それが一番良さそうだな。物の説明はガルボにでも任せるか……。ガルボ、頼んだぞ」
ガルボは自分で言った言葉を呪いながら返事をしてガックリしていた。
「あ、あと……もう一つだけ……」
ケシカはここまで来たら最後まで行ってしまおうと思い、お金の話をする。
「わ、私達が日本見学を行った場合、お、お、お金は……どうすれば良いのでしょうか!!」
「お金? あ~、そうだよね! お金が無きゃ、何もすることはできないよね! ごめん、忘れてた! 戦いが終わったら、お小遣いを皆に配るとするよ」
「お、お小遣いですか! ほ、本当に私達にお金を恵んでいただけるのですか!」
「もちろんだよ! お前達のおかげで俺達は助かっているんだから……それなりの報酬は渡すよ」
克己は優しく言って立ち上がり、皆を集めてお金と住む場所の説明を行った。
「と言う事で、お金と住む場所は安心してください。そして、最後に……。この戦いで、命を落とすことは許しません! 絶対に生きて帰って下さい。以上です」
克己が言い終えると拍手が沸き起こる。
皆は住む場所とお金が貰えるとあって、俄然やる気を出すのであった……。




