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193話 潜入!!

 半月が経ち、克己はアルトクスへ移動の準備を始める。準備の最中、理恵が様子を窺いにやって来た。


「アルトクス……でしたっけ? どこら辺にあるのですか?」


 いつ戻ってくるのか確認するため、理恵は克己に質問をする……。


「場所が正確に分からないんだよ……。分かっていることは方角だけ。ロミールも分からないそうだ」


「じゃ、じゃあ……いつ戻ってくるのか……」


「正確には言えない。いつ帰ってこれるのか……」


 克己は真剣な顔で理恵を見る。


「待っててくれるか……」


「必ず私の元に返って来てくれるなら……」


「分かった……」


 克己は理恵を抱き寄せ唇にキスをする。


 アルス達は残りの新人達を集め、アルトクスへ向かう準備を進める。


「おやつは1,000ペソまでだからね! 言葉の練習をしっかりやって、通じないってことは無いようにしなさい! 練習相手だったら私達がなってあげるから!」


 リーズの言葉に全員が元気良く返事をする。その数、50人程……。


 半月の間、アルス達はバスの運転を練習させられており、訓練は全て理恵が見てくれたのだった。


「奥様直々に訓練をしてくれたんだから感謝なさい! 私達は奥様に習った事がない! 光栄に思いなさい」


 レミーの言葉に全員が返事をする。


 そして、ガルボの号令で全員はバスに乗り、克己と涼介が来るのを待つ。


 克己はアルスとハミルが乗っているバスに、涼介はガルボが乗っているバスに乗り込む。


「じゃあ、目的地はアルトクス……早く終わらせて理恵が待っている家に帰りたい」


 克己は真剣な顔してアルスに言う。アルスは少しだけ困った顔して頷き、車を発進させた。


 バスは高級リムジンバス。リクライニング、トイレ等が設置されている素敵なバス。


 運転はアルスなどがしながらアルトクスがあると思われる方へ向かい、数日が過ぎる。


 克己は理恵の事が心配になりながらもバスに揺られ先へと進む。二日ほど車を走り続けると、街が見えてくる……。克己達はその街に立ち寄ることにして、一旦バスから降りる。


「涼介、あの街でもアルトクス兵がいるはずだ……。どうする?」


「決まってるだろ……状況次第では殲滅する」


「なら、夜にでも攻め入ったほうが良さそうだな」


「そうだな。だが、街の状態は確認しないとな」


「どうせ殺っちまうなら……気にする必要は無いと思うけど?」


 涼介は少し考える。


「なるべくなら殺しは少なくしたい」


「あんな状況を見て、まだそういう事を言うのか……」


 あんな状況……村で起きていた、アルトクス兵による女性の陵辱事件。克己が言うのはそれの事である。


「だから……状況次第だと言っているんだ」


「甘い奴だな……」


 克己はそう言ってレミーとガルボに偵察をお願いする。二人は装備を切り換えて素早く街へと向かう。


「一応地形の確認もしとくか……」


 克己はラジコンヘリを取り出し、空から状況確認を始めた。


「克己、二人はアルトクス兵にナンパされたりとかしないのか?」


「……」


 それについては全く考えておらず、横目で涼介を見る。


「忘れてた……でも、まぁ……レミーなら上手くやってくれるだろう」


 少しだけ顔を引き攣らせながら克己が言う。


 その頃レミー達は……。


「レミー、声を掛けられたらどうするの?」


「声を掛けられるって……状況は?」


「うーん……街に来た目的を聞かれたら……とか……かな?」


「冒険者で良くない? この世界にだって、冒険者はいるんだから」


 腰に掛けた剣を、ポンと叩く。


「だけど、女性冒険者ってそんなにいないでしょ?」


「ガルボは心配症なんだから……」


 レミーは笑いながら街の中へと入っていく……。


 街に到着すると、至る所にアルトクス兵がおりガルボは唾を飲み込む。


「そんなに緊張しないの、大丈夫よ……」


 レミーは呟き、ギルドが無いか確認をする。


 ガルボは怯え、レミーの後ろに隠れながら周りを見渡す。レミーは堂々としており、スタスタ歩いていく。


『おい! お前ら、ここ等で見ない顔だな……何処から来た!』


「私達は冒険者です。流れ、流れ着き今日、この街に辿り着いたんです」


 レミーが堂々と兵士に言う。だが、兵士の疑いは晴れない。


『女冒険者……? 常識で考えたら殆どあり得ないだろ……』


「普通に働くよりも稼ぎが良いですからね。いつかは、何処かのお城などで支えられたら良いかなと思っております」


 よく口からデマカセが言えるものだと思いながらガルボは聞いており、レミーそれっぽい事を並べて喋る。


 兵士は疑いながらもレミー達を解放し、何処かへ向かう。


「ギルドで依頼を受けるフリをして、克己様のもとへ戻ろう」


 レミーが言うと、ガルボが頷く。


 二人は暫く街の中を彷徨いギルドを探して仕事の依頼を受ける。


「ガルボ、この依頼をこなしてから宿屋に泊まろう」


「え? 戻る……」


 レミーが目配せをする。ガルボはそれに気が付き話を合わせる。


「今日は宿屋に泊まってからでも良いじゃん」


「ダメダメ、少しでも稼いで新しい武器を買うんでしょ!」


「ブー! 仕方ないなぁ~」


 ガルボは頬を膨らませる振りしてレミーと共に街の外に出て行く。


 暫く歩き、二人は草陰に隠れる。すると、アルトクス兵が周りを見渡しながらやってくる。


『クソ! 見失ったか……上玉の二人だったのに……』


 二人は息を潜め、兵士に仲間がいないかを確認する。兵士は一人しかおらず、二人は草陰から出る。


『お、お前達!!』


「なんで私達を付けてきたのか……理由を教えてもらいましょうか」


 レミーは腰に装備した剣を抜き、兵士に向け、ガルボは逃げられないよう、後ろに回り込む。


『騎士団長様に捧げるためだ!』


 兵士は持っていた槍を勢いよくレミーに向かって突き出す。レミーは剣で弾き、ガルボが魔法を唱える。


 地面が盛り上がり、ゴーレムが出現する。振り向いた兵士はゴーレムに驚き、慌てて槍を突き刺す……が、相手は土人形……ダメージを受けるはずも無く、兵士に向かってパンチを繰り出す。


 ゴーレムの攻撃を避け切れず攻撃をモロに受けてしまい、兵士は泡を吹いて倒れた。


「ガルボ! 凄い魔法じゃない!」


「エヘヘ……。アルスは使えないって言ってた魔法だよ」


 ガルボは魔法を解除し、ゴーレムは崩れて土と化した。


 レミーは泡吹いている兵士を見て、ゆっくりと剣を胸に突き刺す。兵士は体をビクン! と跳ねらせ息絶えた。


「騎士団長に捧げる? 私達は既に克己様のものだ! 愚か者が!」


 そう言ってレミーは剣を抜き取り、付着した血を払ってから鞘に収めた。

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