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19話 国枝君!!

 翌日、状況を説明するのが面倒だが仕方ないと思いつつお城へと向かい、王に状況を説明して約束を取り付けて来た事を話した。


 王は偉そうに玉座に座り、克己達は王を見上げていた。


 克己の説明が終わり、克己は溜め息を吐きぼやく。


「なんかさぁ……、やっぱり扱いが違うよね……だってさ、魔王は椅子とか用意してくれたし、飲み物まで出てきたよね。俺達の事を『お客さん』と言って、丁重にお持て成しをしてくれたし……」


 克己がオーバーリアクションしながら言うと、王様は負けられないと思ったのかメイドを急いで呼び、椅子やテーブルを用意させ食べ物などを並べさせた。


 メイドは克己を睨みながら作業し、これでどうだ! みたいな感じでやっつけ作業全開で、準備し、全ての作業を無理矢理やらせた感が満載で用意された。


「一応、誓約書と契約書を二部作り、それを魔王に書かせてきた。あとは陛下のサインを両方に書いてもらい、これを魔王城へ届けることで完了だよ」


 克己はまるで仕事のように話をしていた……いや、仕事をしていた。


「魔物討伐については問題なくやって構わないそうだ。魔王側も人間を見つけたら殺るって話になっている。王都から出なければ襲われる心配は無いよ。これからはお城側も兵を出陣させて魔王城へ攻め込むことはできない契約になっているから注意してね。勇者に関しては別に攻めてきても構わないらしい……こんな感じでだけど、それで良いよね?」


「うむ、あっぱれである」


 そう言って王様はサインをして、メイドがそれを克己に渡す。


 あとは克己が魔王城へ契約書等を持っていけば問題ない形になる。


 王様はそれで満足したのか下がろうとした。


「おい、ちょっと待てや……糞爺!」


 克己は王様を引き止める。


「陛下、こんな面倒な事をやらせておいて、報酬の一つもないなんておかしくないですか?」


「いや、しかし渡すものなど余り無いが……」


「そういう問題ではないでしょう、誠意が見えないって言っているんですよ。こっちは随分大変な交渉をしてきたのに、何もないなんて……これは白紙撤回ものですね」


 そう言って克己は破り捨てるつもりで契約書を手にしたら、王様が男爵の爵位をくれた。


 初めからそうすれば良いものを……と、克己は思いながら城から出てすぐにアルスにお願いをして魔法を唱えてもらい、克己達は魔王城の前に到着する。


 魔王はまるで古くからの友人が来たかのような扱いをしてくれて、簡単に誓約書等を受け取ってくれた。


「では克己さん、王都の外に出た人間は普通に襲わせてもらいます……パルコの街も同じですよね?」


「それでいいよ」


 克己は魔王に話をつけ、再びアルスの魔法でパルコの街へと戻ってくる。


 アルスは連続の移動魔法で疲れておりフラついていたので、家へ帰るように指示し、シェリーが付き添いながら帰って行く。


 街の外では自衛隊がキャンプを張っており、克己はそこへ向かった。


 現在の自衛隊キャンプ場には政府のお偉いさんが居る。


 克己の友人である官僚もそこにいた。


 克己はキャンプ場の中に入ると、自衛隊の人達が銃を構えて近寄ってくる。


「ちょ、な、何ですか! 貴方達は……俺はゲートの持ち主ですよ! そんなものを向けないで下さいよ!」


「民間人が入って良いところでは無い!」


「な、なに言っているんですか! 俺はホラ! 許可書を持っていますよ!」


 克己はVIP待遇の許可書を見せると、自衛隊の態度は一変した。


「も、申し訳ありません!」


「まぁ、仕方がないですよね……。異世界ですから……」


 克己は許可書を首にかけると、ノエル達も袋から許可書を取り出し、首にかける。


「ほ、本日はどのようなご用件でしょうか!」


 自衛隊の人はそう言うと、克己は直ぐに階級を確認する。


「あぁ、国枝君に会いに来たんだよ。案内してくれない?」


「く、国枝……さん?」


「政府の人が居る場所に案内してくれればいいよ、一尉」


 克己が言うと、一尉と言われた自衛官は振り向いて案内人を呼んだ。


「おい、森田三曹、こちらへ来い」


 森田と呼ばれた女性自衛官は上官命令なので急いで一尉の元へとやってきた。


「一尉、お呼びでしょうか!」


 森田と呼ばれた女性自衛官は敬礼をしてピシッとして立つと、ちらっと克己の顔を見る。


 克己はこの子、可愛いな……と、一瞬思ったが、ノエルが背中をつねる。


「いて!」


 克己はノエルを睨んだがノエルは知らん顔をして、すっとぼけた顔をする。


 ノエルは気が付いてはいないが、こういった行為が克己の心に若干溝ができた瞬間であった。


「三曹、この方達をAキャンプ地へ連れて行ってくれないか」


「はい!」


 森田三曹は再び敬礼をして、克己達の方に体を向ける。


「どうぞ、こちらになります」


 森田は克己の前を歩き、政府が居ると思われる場所まで案内してくれた。


「ありがとう」


 克己はお礼を言うと、森田三曹は何か聞きたそうな顔をしていた。


「どうかしました?」


 克己が不思議そうに聞く。


「あ、あのぉ……どういった方ですか?」


「へ?」


「え? あ、いや、だって、ここは政府高官がいる場所ですよ? そんな人達がいる場所に一般人が来るなんて……」


「あぁ、そう言う事ね……」


「簡単な話だよ、ここのゲートの持ち主だからだよ、俺がここの世界に皆を連れて来たんだ」


 森田三曹はそう言われると思考停止し、慌てて頭を下げ、急いで逃げていった。


「変な子……」


 克己はそう呟いて天幕を上げて中に入る。


「国枝君……居ますか?」


 克己が名前を呼ぶと、奥の方で椅子に座っていた青年が振り向く。


「おぉ、克己か! どうした?」


「やぁ、国枝君。話があってね」


「ん? なんだ?」


「ここではなんだから、俺の店に行こうよ」


「奢ってくれるのか?」


 国枝と呼ばれた青年は笑いながら克己の方に近づき、克己は天幕を上げてテントから出ると。


「国枝君、車を用意してよ」


「え?」


「帰るとき一人で帰るんだから魔物と出会うのは嫌でしょ?」


「成る程ね……分かったよ」


 国枝は通りかかった自衛官を呼び止め、車を手配した。


 国枝はノエル達を見て挨拶をする。


「やあ、お嬢さん方。久しぶりだね。元気にしていたかい?」


 そう、ノエル達を自衛隊の訓練を受けられたのは国枝の手引きがあっての事だった。


「あの節はありがとうございます」


 三人は頭を下げ、お礼を言う。


「お待たせ致しました!」


 品川と呼ばれる胸の大きい女性自衛官が車を持ってきてくれた。


「行きの運転はお前がしろよ、克己」


「はいはい、人使いが荒いね。相変わらず……」


「お前に言われたくないよ」


 そんな話をしながら車に乗り込み、街へと向かった。


 レストランに到着し、中に入ると狐耳のウェイトレスが直ぐにやってきて、席へと案内してくれた。


「君、ペルシアを呼んできてくれないか」


 克己が言うと、ウェイトレスの女性はポカーンとした顔をしていた。


「どうしたんだ?」


「店長代理はお忙しい方なので……」


「良いから呼んで来い、店長が呼んでいると言えば来るだろ」


「貴方が店長ですか? 冗談は止めて下さいよ、店長代理は猫族の方ですよ? あなたはヒューマンじゃないですか! ヒューマンが猫族を雇うとは考えられません!」


「克己、ここは本当にお前の店なのかよ」


 国枝は笑いながら聞く。


「俺の店だよ、もういい。国枝君は好きなものを頼んでくれ。レミー、ペルシアを呼んで来てくれ」


 克己が言うと、レミーは返事をして呼びに行こうとする。ウェイトレスは仲間を呼んでレミーを引き留める。


「ノエル、ハミル、行け」


 克己はレミー一人では無理だと判断し、残りの二人にも呼びに行かせると、随分な騒ぎとなり、店は騒がしくなった。


 国枝はニヤニヤしながらその光景を見ており、克己は呆れていた。


 店内が騒がしいので、ペルシアが奥から出てくる。


「何やっているにゃ! お客様、お静かにしてくれないと追い出すにゃん」


「この俺を追い出すのか? いつからお前の店になったんだ? ペルシア」


「にゃ! ご、ご主人様!」


 ようやくペルシアは気が付き、克己にひたすら頭を下げる。


「前も同じような事があったよね、ペルシア……」


 ペルシアは体をビクッとさせ更に平謝りをする。


 まぁいいやと克己は言って、適当に料理を持ってくるように指示をする。ペルシアは大急ぎで裏へ行き、料理人に指示をしていた。


「で、こんなところで話とは何だ? 克己」


 国枝が言うと克己はようやく本題に入ることができ、魔王城での話をした。


「おいおい、この世界には魔王なんているのかい!」


「いるみたいなんだよね。一応、魔王にはパルコの街は襲わせない条約を結んでいるから攻められることはないよ」


「街の外に出たら?」


「そりゃ街の外は管轄外だからね、魔物は襲って来るよ。だから自衛隊も武器を装備しているんだろ?」


「そりゃそうだけど……」


「それでね、国枝君。魔王が一度、日本政府と話がしたいそうなんだよ」


「おいおい、いくらなんでも話が急すぎるぞ!」


「そこは国枝君達、官僚の仕事だろ? 護衛くらいならしてあげても良いけど、俺は高いよ?」


「いや、そこは自衛隊がいるから大丈夫だと思うが……万が一を考えると、一緒についてきてもらうのは助かるな。分かった、これは上に話をつけとくよ」


「了解。日時が決まったら教えてくれれば合わせるよ。あと国枝君、この世界にはレベルなんてものがあるらしいんだが知っているかい?」


「レベル? なんだ? それは?」


「目を瞑って頭の中でレベルと唱えると数字が出てくるだろ? やってみなよ」


「え? あぁ……俺は一と出たが」


「それが国枝君のレベルなんだよ、これは戦闘力に比例するからね。魔物討伐とかしないとレベルは上がらないよ。下手したらそこら辺のおっさんの方が素手では自衛隊より強い可能性があるから注意したほうがいいよ」


「わかった、これも上に言っておくよ」


「ここの飯は俺が奢ってやるから今日は好きなだけ呑み喰いしなよ」


 克己はそう言って立ち上がり、裏に行ってペルシアに話をして店をあとにする。


 翌日、克己は五人を連れてパルコの街を歩いていると、突然携帯がなりだした。


「あれ? こんな場所で電波が通っている……」


 克己は電話に出ると、電話を掛けてきたのは国枝君からで、昨日のお礼と今度、魔王城での話し合いについての電話だった。


「わかった、三日後に魔王城へ行くんだね。それまではこっちは自由にしているから……うん……よろしく」


「なんですか? それは」


 ノエルは携帯が気になったらしく聞いてきた。


「これは携帯電話というアイテム。離れた場所の人と話ができる優れたアイテムだよ」


 そう言って克己は五人に見せてあげる。


「そんなものがあるなんて……」


 シェリーは驚愕していた。


 電話が掛かってきたということは、どこかにアンテナを立てたということかな? と、克己は思いながらパルコの街を歩いていくと、街並みが随分変わって日本風の物が結構売られていた。


 早速自衛隊が商売を始めたらしく資金稼ぎを行っているのだろうと克己は思い、扉の向こうにある日本へ帰って行った。


 皆の服がユナクロのままだと可哀想なのでどっかのデパートに寄り、新しく服を新調したり他の服屋に入って良い服を買ったりしていた。


 五人は始めて見る日本の街並みやデパート、食べ物、本などに驚いており、素晴らしい世界だと言いながら歩いていた。


 約束の日まで時間があるため温泉にでも行こうと話になり、皆で厚木にある飯山温泉へ向かい、温泉でゆっくりしていた。


 翌日は電車に乗り、お台場にあるジョイポリスで乗り物やゲームなどやったりして遊び、時間を潰していると国枝君から電話が鳴る。内容はそろそろ戻ってきてくれとの事だった。


 本格的に魔王と交渉するつもりなのだろうと思い、何を交渉するのかが気になりアルスの魔法で扉の前まで戻り、扉の向こうへ行くため、車に乗り込み異世界の家へと向かうのであった。

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