1話 異世界!!
クローゼットの中にある部屋は薄暗く、辺りを見渡しても明かりがあるわけではないため目を細めたところで何かが見えるわけでもない。
一度、自分の部屋へ戻り懐中電灯と包丁を手にして、懐中電灯を灯してクローゼットの中を照らし、警戒しながら中へ入って行く。
部屋は平屋で中は埃だらけで、ここ数年誰も使っていないらしく、克己が歩いた足跡だけが床に残っていた。
室内はまるで江戸時代平屋のような作りで、窓は木戸で塞がっているため明かりが入ってくる事は無く、克己はゆっくりと木戸を開けて外の様子を窺う。
隙間から見えるのはアスファルトの道路ではなく、土でできた道。そして馬のような生き物に荷台を付けて馬車のようにして荷物を運んでいた。
「ここは……江戸時代なのか? だけど、服装が異なるし……丁髷も無い……」
そう呟きながらも木戸を閉める事はせずに辺りを見渡す。今度は人のような生き物に、獣のような耳を生やした人達が雑談をしながら歩いており、克己は慌てて木戸を閉め、床に座り込んだ。
「け……獣耳!!」
先ほど見た光景が夢であって欲しいと思いながらも再び木戸をゆっくりと開け、隙間から外の光景を確かめる。だが先ほどの見たのは間違いではなく、獣耳をした人が歩いており、克己は頬を引き攣らせて再び木戸を閉めるのだった。
心臓の鼓動を鎮めるために深く息を吐き、状況を整理する。
どう見てもコスプレとは思えない。
外の様子を確認する必要があると思い懐中電灯で周囲を照らしていくと、木の扉を発見し、辺りを警戒しながら扉の方へ近付いて行き、扉に耳を付けるのだった。 辺り辺り
扉の向こう側から聞こえてくるのは自分の知っている言語であり、扉の向こう側は何かのイベントでも行っているのだろうと克己は思い、ゆっくりと扉を開ける。
暗い場所から急に明るいところへ出て、眩しさに眉間に皺を寄せて右手で日陰を作るように手を当てる。
そこは江戸時代でもなければアメリカの西部劇場でもない場所で、道を行き来している者たちは腰に剣のような物を鞘に収めた状態で歩いており、唖然とした顔で克己はその光景に目を奪われる。
そして、この場所が地球とは異なる世界なのだと認識するのには、それほど時間が掛かる事は無かった。ここから自分の家に戻れると判断してクローゼットを潜ると、自分の部屋に戻ることができたのであった。
克己は取り敢えず自分の部屋に戻り、この後はどうするかを考えながら、もう一度行くことを決めた……が、武器がないと心もとないので、近くのおもちゃ屋でエアーガンを購入し、ホームセンターで改造するための工具を購入した。
家に帰り、ネットを見ながらエアーガンを改造して、殺傷能力が高い武器へと作り替えた。
正直、現代で改造銃は違法なのだがバレなければ良いと思いながらもう一度、廃屋に入り街を歩くことにした。
言葉が通じるかは分からないが歩いているだけなら問題ないだろうと思い、歩いていると、喋っている内容が分かるので、言葉は通じるようだった。
克己はこれ幸いと思いながら、聞き耳をたてながら歩いていると、看板に書いてある文字が読めないことに気がついた。
書いてある絵で判断するしかないな……と、思いながら歩いていくと、武器屋らしき看板が見えたので中に入ってみた。
やはり思っていたように武器屋だったらしく、剣や斧などが飾ってあり金額を見る。すると、見たこともない通貨だった。
試しに武器屋のオヤジに記憶喪失を装いながら通貨を聞いてみたら通貨は半銅貨・銅貨・半銀貨・銀貨・半金貨・金貨・半白金貨・白金貨・大白金貨となっているようだった。
「オメー、そんなことも忘れちまったのかよ……」
オヤジは残念そうな目で親切に通貨を教えてくれた。どうやら今日は客がいなくて暇らしい。
「いや~、名前は覚えているんですけどね、それ以外は全く忘れてしまったようで……」
克己は記憶喪失ならと思いながら、そうやって都合を合わせることにした。
「ついてねーな、通貨はそれくらいなもんさ、ほかに知りたいことはあるのか?」
オヤジは思ったより優しく接してくれる。
「ここで商売をするにはどうしたら良いのですか? まずは資金がないと生活もできませんからね……記憶が戻るまでどうにかしないといけませんから……」
ここでのお金が全くないので手に入れる方法も聞いておかなければと克己は思い、オヤジに色々な説明を聞いていた。
「そうか、お金もないのか……」
オヤジは困った顔をしながら言うと、直ぐにギルドがあることを教えてくれた。
「この先に行くと看板あるからわかると思うぞ!」
オヤジはそう言って、克己を可哀想な目で見ていた。
「ちなみにギルドというのは……?」
克己は多分役所みたいなところだろうと思いながら聞いてみたら、オヤジは似たように答えてくれた。
克己はお礼を言って武器屋を後にしてギルドへと向かってみることし、街を眺めながら歩き始める。
この街はかなり大きい街ですごく広い。
何か乗り物があれば楽だなぁ……と、思いながら歩いていく。
克己は人の出入りが激しい建物を発見し、そこがギルドだと思い克己は入ることにしてみた。
中は意外と広く討伐依頼書みたいな張り紙が張ってあったが、克己は読めないため受付で話をしてギルドに登録することにした。
「いらっしゃいませ、ご要件は?」
受付に行くと、ポニーテールが似合う綺麗なお姉さんが話しかけてくれた。
克己は自分が記憶喪失だってことを話したら、山賊か何かに襲われたのかもと、お姉さんが言ってきた。
克己はそれに話を合わせる形でギルドについて色々聞いてみた。
まずは家を持つにはどうすればいいのか?
そう、あの廃屋が売られてしまうと、元の世界に戻れなくなってしまうため住居について確認が必要だった。
また、商売についての話をして、お金の稼ぎ方なども聞き、生活に困る事の無いようにしないといけないと思い、話をしていたら意外と簡単だった。
お金を簡単に稼ぐなら討伐依頼書に書いてある魔物のコアを回収してくれば良いらしい……が、ゴブリンなど弱い奴はそんなに高い金額で買い取ってもらえないことを教えてくれた。
高い奴はかなり強い奴で、一苦労する奴だったりするとの事……。
商売するには商売できる場所をギルドで買うか、何日か借りる事ができるらしいが、それには資金が必要になるらしい。
お姉さんは事細かく教えてくれて、克己はそれをタブレットPCで記載しながらメモを取っていた。
お姉さんはタブレットPCが物凄く気になるのか、「それはなんですか?」と、しつこく聞いてきたので、メモ帳とごまかしてみたら、怪しい目をしながら「ふ~ん」と言いながら話を続けさせてもらった。
家については空いている家だったら好きに使って良いらしいが、そのときは室名札が必要になるらしい、家の登録は隣にある商業ギルドでしないといけないとの事だった。
「ではここはどういうギルドなんですか?」
克己が質問すると、ここの建物は戦闘用ギルドハウスらしく、商業ギルドについてはそちらで聞いてくれと言われたが、記憶喪失の話をしたらお姉さんは笑顔で言う。
「ついてらっしゃい。担当を紹介してあげるし、説明とかもしてあげるわ。記憶喪失なら仕方ないし……可哀想だからね」
そう言って受付をほかの人に任せて、受付のお姉さんは克己を商業ギルドに連れて行ってくれた。
お姉さんの名前はリンダと言う名前らしく、克己は後の事はリンダに任せることにした。
克己はリンダについていき、商業ギルドで話をして家の登録を行ったが、そんな場所に家なんて無いと言われた。
しかし、現実にはあるので取り敢えず登録してもらって、室名札を作ってもらった。
その金額は克己が記憶喪失だからという事でリンダが出してくれた。
リンダは「これは貸しだからね、お金ができたら返してね♥」そう言って、銅貨5枚払い室名札を克己に渡した。
しかし、リンダも家がないと商業ギルドで言われているため、そんな場所に家があるなんて……と言う。
「よし! 心配だから見に行きましょう!」
リンダはそう言って家を見に来る事になり、本当に家までついてきた。
「ほ、本当に家がある! この街に生まれてから20年住んでいるけど……こんな家、見たこともないわ!」
そう言ってリンダは驚きながら中には入り、見ていたが克己はクローゼットだけは開けないでくれと言って、リンダはクローゼットの扉だけはいじらなかった。
室名札を玄関の入り口に貼り付けて、これでこの家は克己の持ち家となった。
リンダは不思議がりながらギルドへ帰ろうとするので、慌てて引き止め、克己の文字だけを教えてもらった。
これで最悪は自分の名前だけは理解できるし、克己の文字だけは読み書きができる!
そう思いながらリンダに書いてもらったら、アルファベットに似たような文字で書いていた。
克己は色々な看板や文字を見たら、大体はアルファベットに似た文字だった。始めは動揺のあまり、理解ができなかったが、今ではある程度の理解はできるようになっていた。
しかし、克己は自信がないため、後で誰かに教えてもらうことにした。
この世界には奴隷制度があるらしく、奴隷に対してちょっぴり気になっている克己であるが、お金がないため買えないので、この先どうするかを考えながら、奴隷商館らしきところへと行き、奴隷が幾らするのか確認することにした。
「男なら美人奴隷は夢でしょう!」
克己はゲスなセリフを吐きつつ商館の中に入り、直ぐに出てきた。
「なんだよ、あの金額! 安くても金貨30枚って!」
そんな事を愚痴りながら克己は廃屋の家に戻り、今後について考えることにした。
「まずはお金だよな~。すぐに稼げる方法は討伐依頼をこなして……それでもこの銃で倒せるのかが問題だよな~」
そんな事を言いながら克己は街の外に出てゴブリンを探してみた。
意外とゴブリンは沢山いて驚いたが、脳天に当てれば一撃で仕留められるだろうと思いつつ、果物ナイフを腰に装着して、取り敢えず一撃必中をするために茂みに隠れて、改造エアーガンでゴブリンを撃ってみたら脳天に当たり、上手に仕留めることができた。
克己は小躍りしながらゴブリンに近寄り、バイトで培った料理の技術で体を捌いて見たら、心臓のところに宝石のような物があった。
克己はゴブリンの死骸をサンプルとして、木に括り付けると、この改造銃でどこまでゴブリンの体を貫通するかを検証していた。
克己はこの武器だと弱すぎることを理解したが、飛び道具としては最適で、BB弾さえどうにかすればもっと貫通力が上がるのではないかと思い、改造銃にレーザスコープを装着させてゴブリン退治を行った。
20匹程倒したところでギルドへと戻り、リンダに宝石らしき物を渡したら結構驚いていた。
「武器もないのにどうやって倒したの!」
リンダは丸腰に見える克己に対して疑問だった。
克己は罠を仕掛けてやっつけたと言い訳して銅貨10枚を貰い、この間借りたお金を直ぐに返した。
「別にこんなに早く返さなくったっていいのに♥」
リンダはそう言いながら嬉しそうな顔して、お金を受け取ったが、克己はお金の切れ目が縁の切れ目と思いながらリンダを見ていた。
克己はこの街の料理がどの位のレベルなのかと思い、銅貨一枚を支払って、食事をしてみることにしたが正直、美味しくない。
こんなのなら自分が作った方が美味しい物が作れると思いながら商業ギルドへ行き、店は幾らで借りられるのかと質問したところ、一ヶ月約で半銀貨一枚になることのことだった。
克己はお金のシステムがよく理解していなかったので、再度商業ギルドでお金の仕組みを確認したところ、半銅貨10枚で銅貨1枚になるらしい。
克己は半銅貨1枚10円と考えれば良いのかと思いながら話を聞いていた。
また露店なら立地条件は悪いが、銅貨3枚で借りることが出来るとのこと。
克己はその話を聞いた瞬間、場所と広さを確認して直ぐに場所を借りることにした。
現地を確認すると一応雨よけもついていて約17畳! そんなに悪い場所でもないなと克己は思いながら、家に帰り、車でホームセンターへ直行してリヤカーの部品を購入し、リヤカーを自作して、家でカレーを作り、ご飯を炊き、カセットコンロとガスを数個持って現地で銅貨1枚程の金額で販売してみることにした。
克己が作ったカレーの匂いが露店を包み込む。
その匂いは食欲を誘い、皆が物珍しく食いつく。
「こんな食べ物を食ったことがない!」
街の皆は口を揃えて言ってくる。
カレー一杯が銅貨3枚なため、最初は皆、不思議そうにしていたが、サンプルで小さい器に入れて数人の人の口に含ませると、客の心に火が付いた。
最終的にカレーは完売して、トータル金額は銀貨10枚になった。
「これはいい稼ぎになる! 明日はもっと作って改造して、ルーも買ってこなければ! また、他にも値段をあげて……」
などと、色々考えながら廃屋へと帰って行くが、考えてみたら一人ではできることが決まっているし、リヤカーが意外と重い! そう思いながらギルドへ行ってリンダに相談してみたところ、商業ギルドで討伐仕事をできない人が仕事を探しているとの話を聞いて、克己は商業ギルドへと向かった。
商業ギルドでは色々な人がいて、ギルドの人に説明したら人を紹介してくれたが、よく見たら耳が猫耳だった。
克己はこんな人もいるのか……。そう思いはしたが、口にはしなかった。
契約料金は一ヶ月半銀貨5枚とのことだった。
お金はそんなに無いが、一応その子と契約して、明日から露店の方へ来るようにと指示をし、本日は別れる事にした。
猫耳の彼女はペルシアという名前らしい。
ペルシアの年齢は18歳で意外と若く、こんなに可愛いのに何で仕事がないのか疑問に思いながら、克己は廃屋へと戻り、ホームセンターへと車を走らせ、電動アシスト自転車を購入し、次にカレーに使用するお肉を大量に購入して、カレーのルーや、お米なども沢山購入し、家でカレーを沢山作った。
また、色々な食材も仕入れて、現地で何でも作れるように購入しまくった。
翌日、電動アシスト自転車でリヤカーを引っ張り、現地でペルシアと一緒に準備した。
ペルシアは食べた事がないので、試食させたらかなり美味しそうに食べていた……が、猫族なだけに猫舌なのでかなり冷ました状態で食べていた。
「私は辛いのは大丈夫ですが、苦手な人もいるのではにゃいのですか?」
ペルシアにそう言われて克己はシチューを作り、食べさせたらペルシアはこちらの方が好みだと言って美味しそうに食べていた。
「ペルシア、食べるのはいいが早く準備してくんないかな?」
そう克己が言うとペルシアは見たことない道具に説明を求めてきた。
まずは、じゃがいも剥きのピーラーという道具の使い方を説明したりしたが、克己は途中で説明が面倒臭くなってペルシアは売り子として頑張ってもらうことにした。
開店したら物凄い勢いで売れていき、半日で売り切れになってしまった。
「ご主人様は凄いですにゃ! 半日で売り切れにゃ!」
ペルシアはそう言うが、克己は今日のことを少し考えながらペルシアに言う。
「そんなことないよ。ペルシア、そんな事より道具の使い方を説明するからこっちに来てくれ」
克己がそう言うと、ペルシアは汚れた服装で近くに来た。
「……道具の前にまずはペルシアの服だな……。その格好では汚れまくって給料どころではなくなるぞ」
克己はペルシアにそう言ったがペルシアは「服あんまり持ってないにゃぁ」と答えたため、少しだけ道具の説明をして、ペルシアを廃屋へと連れて行った。
克己は自転車に乗り、ペルシアは自転車に装着されたリヤカーに乗っているため、あっという間に廃屋に到着して、ペルシアに自分の家を紹介した。
「私、12年間この街に住んでいるけど、こんな家あったけかにゃ?」
ペルシアは疑問に思いながら廃屋に入ってクローゼットから伸びてきているホース等、色々な物に驚いていた。
「なんにゃ! この家は不思議ハウスにゃ!」
克己はあまり弄られたりすると困るので、すぐに洗い物をお願いした。
ペルシアが洗い物をしているうちに克己は自分の家に戻り、直ぐにお金の計算をしてみたら、半銀貨50枚になっていた。
取り敢えずペルシアに今月分を先に渡して、これで借金はチャラになることにホッとし、克己は掃除したら帰るように指示し、ペルシアはトボトボと帰って行く。
克己は自分の家に戻ると、直ぐにホームセンターへと車を走らせて、エプロン等々購入し、ペルシアの着る物を数着買ったのだが、下着に関してはどうしようもないため、取り敢えず上着だけ購入した。
また、更に売り上げを上げるためにカレーのルーや、シチューのルーなどを購入して、ほかにも色々な物を購入し、克己は最終的には原付きも購入して、リヤカーを引くのを更にラクにする方法を考えていた。
翌日、現地に行くとペルシアが準備をしていた。
「悪いペルシア、遅くなっちゃったね」
「問題ないにゃ! これも仕事にゃ! 今月分のお金も頂いているし……。お金を頂いている分、私はある意味ご主人様の物みたいなものにゃ!」
そんな話をしていると、ペルシアがいきなり父親を紹介してきた。
「私のパパにゃ! 今回、前払いだから不安になったらしいにゃ!」
ペルシアはそう言ってオッサンの猫男を紹介してきた。
「はじめまして、今回はうちの娘を雇って頂き、ありがとうございますにゃ!」
克己は簡単に挨拶して、別にペルシアを首にもしないし、もっとペルシアには頑張ってもらうことを説明し安心して帰って行った。
「ペルシア、先払いだと首扱いになったりするのか?」
克己は質問すると、ペルシアはそういう事もあると言って、準備を進めていた。
「あ、そうだ、ペルシア! その服が汚れると困るから、これを着て今日は作業をするんだ」
そう言って克己はペルシアにエプロンを渡し、洋服も渡したら泣きながら喜んでいた。
ペルシアは直ぐに猫の絵が描かれたエプロンを着て仕事を開始し、お店を開店させた。
また半日で売り切れになったら困るので、克己は直ぐに廃屋へと帰り、また材料を買いにお店に車を走らせる、異世界のお店に戻るとペルシアが物凄く頑張っていた!
「悪いペルシア、直ぐに作るから一度店を閉めてもいいぞ」
克己が言うとペルシアは嬉しそうに一時閉店して、二人ですぐに次のカレーや、シチューやご飯を作って開店することにした。
「ペルシア、あと一人くらい雇ったほうが良いかな?」
克己が質問するとペルシアは「任せるにゃ」と言って、一生懸命売り子として頑張っている。
買い足した材料を見ても2時間くらいで完売だろうと克己は思いながら二人で販売していく。
克己の予想以上に売れ行きが良く、一時間半で完売してしまった。
ペルシアと一緒に廃屋へと戻り、食器等の片付けをしてもらう。
その頃克己は、ホームセンターに行って、また沢山の材料を買ったりしていたが、ペルシアのために自転車を買ってやることにした。
調理をしているときに、ペルシアにどの位時間が掛かってここまで来ているのかと聞いたら、一時間ほど歩いて通っているとのことだった。
なので、克己は自転車を買ってやることにしたのだ。
廃屋でもカレーが作れないかと考えていたところ、隣の家が引っ越しをすると言うことで、挨拶をしにやってきた。
これはチャンスと思い、克己はペルシアと二人で商業ギルドに足を運び、隣の家で商売をできるようにすればと考えた。
「ご主人様、ラッキーにゃ! 室名札が貰えたにゃ! これで、今のところでやらなくても済むにゃ!」
ペルシアは喜びながら言うと、克己はペルシアに今の店舗に移転の張り紙を書いてもらい、店が移転したことをお客さんに知らせた。
ペルシアは戻ってくるなり廃屋の掃除をして、その後、隣の家をまるで料理屋みたいに改装を始めた。
「ご主人様、ここはご主人様の家のように水が……」
克己が水汲み場を見ていると、そこにはあったのは井戸であった。
「これは……ホースを伸ばして家から持ってくるかな? それとも下水道設備を新設して……。暫くはペルシア、家で洗いながらやっていこうか? ついでにかなり利益が出ているからお皿も買わないと……やることがいっぱいだな。暫く営業は締めて設備を整えようか?」
「設備を整えるのかにゃ? どうやってやるのかにゃ?」
ペルシアは疑問に思いながら服を着替え終えて、克己の前にやってきたらかなりボロい服装をしていた。
「ペルシア、この間の服はどうした?」
克己は疑問に思いながら聞いてみたら作業用に使っているらしい。
克己は頭を抱えながら言う。
「ペルシア~、普通は逆だろ?」
「ご主人様、あんな服を着ていたら、どんな貴族と間違われるのか、わかったものではないにゃ!」
「あれで貴族と間違われるのか?」
「あ、あれで、って……とても生地が良すぎるんにゃ、上質な生地を使用しているにゃ! とても私のお金では買うことなんてできないにゃ」
そうなのかと思いながら克己は一緒にクローゼットの中に入れるか試すことにした。
「ペルシア、悪いが目隠しさせてくれ」
「へ、変なことしなければ良いにゃ」
ペルシアはドキドキしながら目隠しさせられ、克己に連れられてクローゼットの中に引っ張ってみたらなんと! 中には入れたのだった。
外に出て目隠しを外したペルシアは、何もされていないことに多少のショックを覚えたようだが、周りの風景が一変しているため、物凄く驚いていた。
「なんにゃー! ここは何処にゃー!」
克己はペルシアが冷静になるまでほったらかし、ペルシアが着られそうな服を選んで説明した。
「落ち着いてくれペルシア、いいかい? ここは俺が住んでいる世界、ペルシアからすると異世界になるのかな? だから不思議な世界だと思ってくれればいいよ、内緒だよ!」
「わ、わかったにゃ! ご主人様は魔法使いだったにゃ!」
克己はこれ以上説明するのが面倒くさくなって、そう言う事でも良いよと言って、ペルシアに帽子を被せて洋服が安いユナクロへと車を走らせた。
「何ニャー! これは何にゃ~凄いにゃ!」
ペルシアが叫びながら車に乗っている。
克己はペルシアに面倒臭いので魔法だと言って誤魔化した。
「ご主人様はすごいにゃー! すごい乗り物を召喚したにゃ!!」
ユナクロで服を見たらまた騒ぎ出した。
「ペルシア、お願いだから静かにしてくれ……。そして服や下着を選んで、このあと食器を買いに行き、食材や問屋と契約しなければならないから……家の改築もしないといけないよな」
克己はそう呟きながら、ペルシアの買い物を見ていたらかなり洋服を買い揃えていたが、サイズもバラバラだった。
「ペルシア、服は試着できるから……」
「ご主人様、新しいお店は一人で捌ききれないにゃ、だから何人か雇ってもらいながらやりくりするしかないにゃ。それに私にも休みが欲しいにゃ! ご主人様、どっか連れて行って欲しいにゃ! だから給料は多少、安くても構わないにゃ」
興奮しているペルシアに、何言っても無駄な気をした克己は言う。
「ペルシア、取り敢えずそれは今度、話し合おう」
「わかったにゃ……」
そう言って克己達は100均一のお店でお皿を大量に購入し、ホームセンターに行って、下水道設備の道具を買い揃えて、電気のために延長コードや、電気リール等を購入して設備を充実させることに集中したが、ペルシアが珍しい物ばかりだから、なかなか言う事を聞いてくれない。
最後に本屋へ寄り、色々な料理本を購入してようやく家に帰った。
ペルシアも服を家に持って帰って、明日からは綺麗な服装でやってくるとの事……ちなみに店舗の張り紙は新たに貼り直して改装中に変更し、翌日はペルシアがリビング等を破壊したりして1階を広くしていた。
「ご主人様、一応、お持ち帰りができるようにしといた方が良いかもしれないですにゃ」
克己はそれを聞いていそうだなと思いながら、明日買ってくると言って、水道工事を開始していた。
こういう時は工学部の知識が役に立つし、廃屋にインターネットを引いて色々調べながら作っていく。
問題はガスだ!
これをどうにかしないといけないので友達のガス屋に相談したが笑われた。しかし、現実を見せると内緒にしてくれる代わりに合コンを開く約束をして、新規にガスを引くことができた。
「金ができたら奴隷を買って、『あいつ』に忠誠を誓わせればいいや」
克己はそう思いながら、税金の仕組みをペルシアに確認したら税金はないとの事だった。