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18話 話し合い!!

 城内へ向かう前に王都で聞き込みをする。数日前に魔物の群れが現れ襲われたとの事だった。


 状況を聞いたシェリーを除く克己達は、面倒な話は嫌だと思いつつも城内に入り、王様と話す事となった。


「おぉ、克己卿、これは久しぶりだな……」


 克己はこういうときだけ卿の称号を使うのかと思う。


「はぁ、陛下もお元気そうで……しぶとく生きていたんですね、残念ですよ……」


「ひ、酷い言われようだが……。こいつは敬意というものを知らんのか? ……この城の惨状を見てもらえば分かると思う、お主に頼みたいことがある」


「いやぁ~魔王退治とかは嫌っスよ。この間行ってきたばかりですから」


「なんと、もう退治をしたのか!」


「いや、してないですよ。するはずないでしょ! 俺は勇者じゃないし。パルコの街を襲ってきたんで、仕返しに行ってきただけです。パルコの街を二度と襲わないという契約書と、誓約書を書かせるのは大変でしたよ」


 克己は笑いながら王様に話をしていたが、王様はとち狂ったように怒り出した!


「お主、それでもこの国の人間か! 普通は魔王退治をしてくるものだろう!」


 持っていた杖を倒し、立ち上がって怒鳴りつける。


「いやいや、話し合いで解決できるなら話し合いで解決しますよ。争いは面倒ですからね。それに怒られる筋合いはないと思いますし、陛下の兵士が弱いのが全てなんじゃないんですか? 俺は異世界からやってきているから、こっちの国の都合なんて知りもしません」


 克己は日本政府と話をして、異世界人に銃火器の販売とかはしない約束を取り付けているので強気に出ていた。


「なんと我が軍の兵が弱いとな! それに克己は異世界人とな!」


 王は少しだけ戸惑いを見せる。


「だって普通に兵士が強かったらこんな風にはならないでしょ? 兵士が弱すぎるからこうなるだけで……」


 克己が強気に言うと、王様は間違ってはいないため何も言えなくなってしまった。


「もしかして討伐がお願いだったら断らせてもらいますよ、こっちも色々忙しいんで……」


「い、いやいや……しかし……」


「だったら誰かに討伐依頼をお願いすれば良いじゃないですか、俺以外の誰かに! できないなら話し合いを行い攻めないでね! て、条約を結べば良いだけのことでしょう?」


「それが行える者がいないのだ!」


「俺はただの民間人だから、どっかにいる勇者にお願いすれば良いじゃないですか、そのくらいは自分でやってくださいよ~」


 ノエルは体をビクっとさせて俯いた。


 どう考えても自分では魔王には勝てないと理解しているし、今は勇者ではなく奴隷だからだ。


 そして、克己は卿の位を持っているが、ただの民間人。レストラン経営が仕事であり、魔王討伐が仕事ではないのだ。


「シェリー、お前からも何か言ってくれないか……」


 王様は生贄に出した娘に懇願し始めたがシェリーは普通に断った。


「お父様、私は貢ぎ物として克己様の下で働いております。主人である克己様に逆らうことはできませんわ。お姉様が暇なら、お姉様に行かせたら良いのではないでしょうか? また、この国にはヘルメス騎士団があるではないですか……彼らにお願いすれば魔王討伐なんて直ぐにやってくれますわ! だって克己様の倒したドラゴンは弱いって、お父様は仰っていたではないですか」


「しかしヘルメス騎士団は……」


 王は肩を落としながら言うと、シェリーまさかと思い質問する。


「ま、まさか今回の魔物の襲来で全滅したのですか?」


「いや、全滅まではしていないのだが……相当ダメージを受けておってな……」


「使えねー騎士団だな……おぃ……」


 シェリーの口調が変わった。


「陛下、諦めて下さい。俺達では何も出来ませんよ。勇者でも育て勝手に討伐でも行かせて下さい」


 そう克己は言い捨てると、ノエルは再び体をビクつかせる。


 王様はこのままだと収拾がつかないため、パルコの街へ兵を出兵させることにするぞと脅してきた。


「構いませんよ、どうぞご勝手に。返り討ちにあっても知りませんよ、パルコの街は今や自衛隊がいますからね、逆に無駄に兵士を殺すだけだと思いますよ」


 克己は自衛隊に喧嘩売るバカがいることが面白かった。


「じ、ジエイタイとは何だ?」


「お父様、自衛隊は屈強な兵士の集団です。一子乱れぬ動きをして作戦を遂行させる恐ろしき軍隊です……」


 シェリーはそう説明をしたが、克己は軍隊ではないと慌てて訂正する。


 シェリーは克己に自衛隊とは何なのかと質問をしていたが、克己は説明が面倒になり、帰ったら教えると言って話を続けさせることにした。


「ではどうすれば良いのだ……」


「それを考えるのが陛下の仕事では?」


 克己は早く帰りたいので全て王にぶん投げるつもりだった。


 しかし、次の言葉で思いは実らないことを理解する。


「なら貴様が民間人なら、この依頼を出すから攻め込まないように契約を成立させてみろ!」


 起死回生の言葉が王様の口から飛び出た。


 だが、克己は民間人だからこの話を受けても構わないが、どうするかは克己の勝手である。


「……仕方ないですね、この王宮を攻めないようにさせれば良いんですよね? 分かりました、その依頼を受けましょう。破談になってもこっちの責任にはならないようにこちらの契約書に記載してもらっていいですか?」


 克己はいつの間に作ったのか分からない契約書を取り出した。


「仕方あるまい……」


 王はそう言って契約書に自分の名前を記載し、克己達はお城を後にした。


「克己様、やはりあの時に魔王をやっとくべきだったのでは?」


 ノエルが言う。


「さっきも言ったように俺は民間人だからな……それは勇者の仕事であり俺には関係ないよ。それに……もしかしたら自衛隊が勝手に討伐するかも知れないし……」


「確かにあの武器があれば魔王討伐なんて余裕でしょうね」


 シェリーが言ってきた。


「体術も凄いですからね」


 レミーが付け足して言ってきた。


「ま、依頼を受けたからにはやってみるしかないよ、報酬の話をするのを忘れていたけど後でも大丈夫だよな?」


「大丈夫だと思いますよ、話し合いを付けられる人なんてこのお城にはいないのですから」


 シェリーが不貞腐れており、皆が車に乗り込み帰ろうとする。その瞬間、今まで黙っていたアルスが唐突に言う。


「パルコや魔王城なら一瞬でいけますよ?」


「はあ?」


「移動魔法を覚えたんで」


 いきなりぶっ飛んだ事を言ってきた。


「お前、今更何を言っているんだよ……早く言えよ……そんな大事なことを!」


 克己は怒りながらアルスに言った。


 叩かれると思ったアルスは、頭を隠しながら言う。


「仕方ないじゃないですか! お城なんて一回も来たことないんですから……。城の着地地点なんか登録されていませんよ!」


「……それじゃあしょうがない」


 登録されていないと言われたら引くしかなかった。


 克己は怒るのを諦め、アルスに魔王城まで移動するよう命令する。


 アルスは魔法を唱えると、光に包まれ魔王城の前に到着した。克己はアルスの移動魔法が凄いと思いながらも魔王城のエントランスをノックする。


「魔王さん話があるんですけど」


 克己がノックして言うとエントランスの扉が開き、魔物がヘコヘコしながら現れて道案内をしてくれる。


「鍵が直っていましたね」


 ノエルは気にしなくて良いところを気にしていた。


 克己達は魔物に案内され、何もせずに魔王の部屋までたどり着いてしまう。


「なんか完全にお客さん扱いだよな……」


 克己がそう言うと、魔物が「お客様ですから……」と言って、魔王の部屋の扉を開けた。


「あ、克己さん。お久しぶりです、今回はどうしたんですか?」


 魔王がフランクに言う。魔物が椅子を用意して座るように促さる。克己達は王宮でも受けた事のない、物凄く丁寧な扱いを受けた。


「こんなのお城でも扱いされないぞ」


 克己はボヤきながら椅子に座り今回の件を話した。


 魔王は考えながらも黙って話を聞いてくれる。何て親切な魔王なのだと克己は内心思う。


 魔王は暫く腕を組んで考えると、克己さんが言うなら仕方ないと言い、承諾してくれた。


 またボコボコにされるのが嫌なのだろうと思いつつ、克己は何故か用意されている誓約書と契約書を二部ずつだし、魔王にサインをさせる。


 そして暫く雑談し、パルコの現状を話したら魔王は驚き、日本政府とも話がしたいと言ってきた。


 やはり攻められるのが嫌なのだろうと思いつつ、近いうちに代表者を連れてくることを約束し、アルスにお願いをして魔王城からお城へ移動させた。


 移動魔法はかなり魔力を消費するようで、アルスはかなり疲れた顔をしている。


 克己は王に会うのは明日でも構わないでしょ? と言って、今日は宿屋に泊まり久しぶりにノエルとしっぽりしたのであった。

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