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181話 種類!!

 普通に街に入ると克己達は囲まれる。


『お前達!! どこからやって来た!!』


 兵士が槍を突き出しながら克己に言う。


「ら、ラスベル……からやってきました。……あ、あそこは内乱が起き、帝国が滅んじまって俺たちゃウンザリしているんだ……変な緑の服を着た奴らが俺達の町を荒らしている……そんな場所には住めねー」


 いかにも原住民ポイ喋り方をして両手を上げながら克己は言う。


『内乱だと?』


「へ、兵士さんは知らないのか……こ、皇太子様が皇帝陛下を暗殺して……。俺たちゃもうウンザリなんだよ!! 争いは……」


 その言葉を言うと、アルスは泣きまねをして兵士はオロオロする。


『そ、そうか……わ、分かった……行っていいぞ』


 面倒くさい奴だと思われた克己達は解放され、街を自由に見えて回る事が可能となった。


「よくやった、アルス」


 克己が言うと、アルスは嬉しそうな顔をして微笑む。それを見た涼介はやれやれと言った顔をして首を横に振り、周りを確認する。


「これからどうするんだ?」


「取り敢えず……宿屋で一泊しよう。ここだと周りの目があるからな」


 克己が言うと、全員は頷き宿屋へと向かった。


「先ほど偵察しているから気が楽だな」


 涼介は周りを見ながら店の中へと入って行く。克己が受け付けを済まし、ルノールは嬉しそうに案内された部屋の中へと走って行く。


「随分と大きい部屋を取ったな……」


 涼介が部屋の中へ入り、周りを見ながら言う。


「お前の部屋は取ってないぞ?」


「は?」


「何でお前の部屋を取る必要があるんだよ? 俺が」


「い、いや……だって……」


「ここは俺達の部屋だ。出ていけよ」


 克己はニヤニヤしながら言う。


「ま、マジかよ……」


「嘘だよ、お前の部屋は隣だ。同じ部屋にすることはできないのは、こいつらの裸を見せたくないからだよ」


 克己の言葉に涼介はホッとしながら部屋を出て行き、皆は笑っていた。


 その夜、食堂で克己が座っていると涼介が克己の前に座った。


「何ボサッとしてんだよ?」


「あぁ……時間が過ぎてくれるのを待ってる」


「なんでだ?」


「この場所に武器庫があることが分かったからそこを破壊する」


 袋から地図を取り出し涼介に見せながら説明をする。


「一人でか?」


「お前を抜かした全員で」


「何で俺は頭数に入れないんだよ」


「お前はここに居ないといけないからだよ」


「どういう意味だ?」


「居りゃ分かるさ」


「今教えろ」


「宿屋の人間が不審な行動をするからそれを見張る役目。ここの街に来てからずっと跡を付けられているからな」


「な、何だと!!」


「街に入る前に、リーズの木魔法で所々に監視を付けさせた」


「も、木魔法?」


「全員が覚えるわけではないらしいが、木々が教えてくれるという魔法らしい。意外とレア魔法だそうだ」


「ず、随分と……都合が良い魔法だな……」


「木魔法は精霊魔法の一種なんじゃないかな?」


「精霊……魔法?」


「奴隷を購入しまくって分かった事なんだが、ガラトーダのヒューマンにはいくつかの種類があるようなんだ」


「種類?」


「そう、種類。一つはノエルのような魔法剣士タイプ。もう一つはアルスのような勇者タイプ……」


「ちょ、ちょっと待てよ……ノエルが勇者なんだろ?」


「そうではなかったって事だよ。あれは村の人に祭り上げられた、名ばかりの勇者だ」


「な、名ばかり……」


「そう。まぁ……生物学的な話をしてもお前には理解できないだろうから簡単に言うと、血液型で種類が決まると言ったようなもんだな。移動魔法と攻撃魔法、多少の補助魔法を覚えるのが勇者の素質を持った人間……」


「まさにアルスだな……」


「いや、これは小春ちゃんにも言える事だな……」


「こ、小春も?」


「そう、小春ちゃんも回復魔法は苦手だったはずで、移動魔法が使え……そして攻撃魔法も使える」


「そ、そう言えば……」


「望ちゃんはノエルタイプと言える。回復魔法と攻撃魔法……移動と補助魔法は全くの皆無」


 克己の言葉に涼介は頷く。


「そしてハミルのような魔法使いタイプ」


「これは千春もそれに当て嵌まると言う事だな」


「うん。そう言う事……」


「攻撃魔法をまったく覚えないで回復魔法オンリーのルノールタイプ。これはかなりのレアだ」


「結構いそうだと思うんだけどな」


「ところがどっこい、何百人も奴隷を購入しているが……ルノールタイプは二人しか見つかっていない。そのうちの一人がルノールなんだ」


「なんだかソーシャルゲームのレアカード並みの引きだな」


「面白い例えだな……。そしてレミーのような剣士、戦士タイプ」


「これは俺達にも当てはまる奴だな」


「そう思うだろ?」


「違うのか?」


「日本人のサンプルが少ないから何とも言えないが、理恵はちょっと特殊タイプなんだよ」


「どういうことだ?」


「魔王タイプ……って言えばよいのかな?」


「ま、マジかよ……」


「俺達は一般兵みたいなもんだ」


 克己の言葉に涼介は身震いする。


「帰ったらお前が殺されるかもしれないって言う事だな……」


「大丈夫、手紙を渡すように指示してあるから」


 要領のよい奴……。涼介は半目で克己を見る。


「と言う訳で、ヒューマンは数種類に分類されているんだ」


「成る程ね。それで……獣人は?」


「それは研究中。種類が多すぎるんだよ……。それにサンプル……人が少ない。パルコの街くらいかな? 大きい街で沢山獣人がいるのは」


「理由は……差別か……」


 何処の世界も変わらないものだと涼介は思いながら後頭部のあたりをボリボリ掻く。


「風呂に入ったのか?」


「風呂って言ってもな……シャンプーやリンス、石鹸なんか持ってきてないから」


「ったく……俺はお前の母親じゃあいんだぜ?」


 克己は悪態をつきながら袋からシャンプーなどを涼介に渡す。


「それはお前にやるよ。職業、自称冒険家ではなく本物の冒険さん」


「うるせー。だが、ありがたく貰っとくよ。で、部屋に侵入して来たらどうすれば良い?」


「任せるよ」


「あっそ……。……あのさ、克己……相談があるんだけど……」


「なに?」


「本当に……政府とのやり取りは……好きにして構わないのか?」


「別に構わないよ。車の中でも話したろ?」


「だけどさ……」


「レデオウィールに関して俺は何も手出しをしないし口は出さない。これはお前との口約束した話だ。それ以外に関しては俺がやるって話をしただろ?」


「そうだけどさ……入り口を通るのは……」


「そう言う事か……。それが気になっているんなら、その入り口は俺の方で何とかしてやるよ。その代わり、お前は俺に莫大な借金を抱えることになるが……」


「な、何でそうなるんだよ!」


「決まってるだろ……。親しき仲にもなんたらって奴だよ」


「親しきって……」


「俺が甘やかしたらお前の事だから『言えば克己がやってくれる」て考えをする。それは危険な思考だよ。それが無きゃやるけれど……難しい話だろ?」


 涼介は納得ができない顔をして克己を見る。


「幾らだよ……」


「その前に一つ……約束をしてくれ」


「な、何だよ……」


「外国人を連れ込むことは禁止!! 入れるのは政府が指定する業者の日本人のみ……だ」


「相変わらずこだわるね~……」


「正直、最近の日本人でもいい気分はしない」


「秩序の乱れって奴か?」


「俺みたいな若造が言う話じゃないがね」


 克己はそう言って席を立とうとする。


「お、おい……金額……」


「後で見積もりを作って渡すよ」


 そう言って克己は部屋へ歩いて行く。涼介は今後のレデオウィールをどうするかを考えていると、ルノールが食堂へやって来た。


 ルノールは涼介をチラ見し、気にした素振りもなく克己が座っていた席に座った。


「こんばんは。涼介さん」


「お、おう……こんばんは」


 ルノールは一言挨拶したら、袋から本を取り出し読み始める。その本にはカバーがされており、何を読んでいるのかさっぱり分からない。そして、なんで涼介の前に座って読んでいるのかすら……分からなかった。


「お、おい……克己は部屋に戻ったぞ」


「すれ違いましたから知っていますよ」


「そ、そうか……」


 重い空気が二人の間に流れる。


「あー……、俺は部屋に戻ろうかな……」


「先程……」


 涼介が立ち上がろうとすると、ルノールが話し始める。涼介は動くのを止めた。


「先程留守番を言い渡されました……」


「な、なんで……」


「何かあったらと考えているからでは無いでしょうか……」


 ルノールは本から目を離さずに言う。涼介は目を泳がせ再び座る。


「わ、悪い……」


「涼介さんが……何か仰有ったのですか? そうでなければ……何故謝るのですか?」


「あ……い、いや……」


「何もしてないなら……謝らないでよ! 謝るんじゃない!!」


 ルノールは本を叩き付け涼介を睨む。


「す、すまん……」


「だから謝らないでよ!」


 涼介は目を泳がせながらテーブルを見ていた。


「何なんですか……。何で克己様の傍に貴方なんかが居るんですか……」


 ルノールは立ち上がり、涼介に向かって怒りを露わにして言う。


「あ……い、あ……」


 何度も言われたこの言葉を涼介は思い出す。


『何でいつも成田君の傍にいるのよ』


『な、何が言いたいんだよ……』


『成田君には及川君の存在が似合わないって言ってるの!』


 涼介の記憶が一瞬フラッシュバックする。だが、ルノール声で再び現実に戻される。


「だ、だけど……許してくれたのは涼介さんが言ってくれたから……です。……ありがとうございます……」


「え?」


「これが出来たら……お許し……下さるそうです……」


 涼介は言葉に詰まる。


「私は貴方が嫌いです……ですが、口添えして頂き感謝します……」


 言葉では感謝の言葉を述べているが、目はそう訴えておらず、涼介は困った顔をするしかなかったのだった。

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