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180話 愛してます!!

 夜になり、夕食の準備を克己が行いだすと、アルスが恐る恐る近付く。


「お、お手伝いを……」


 ビクビクしながらアルスが俯きながら言う。克己は横目でチラリとアルスをみる。


「なら、その野菜を切ってくれるか?」


 克己の言葉にアルスは顔を上げ嬉しそうに頷き、隣で野菜を切り始める。


「だいぶ切るのが上手くなったな。頑張ってるな」


「い、いえ、まだ全然ですよ……。もっと、私に色々教えて下さい!」


「そうか……」


 克己は小さく微笑んで少し困った顔をする。


「ど、どうなされたのですか?」


「別に? お前は可愛い奴だなって思っただけだよ」


「か、可愛い……」


 アルスの頭から煙でも出るのではないかと思うくらい顔を真っ赤にして、口をパクパクさせる。


 克己は気にせず作業を進めて、次の工程に移っていく。


「か、克己様……ご質問があります……」


「何だ?」


「あ、アルスの事を……どう思っているのでしょうか……」


「複雑な感情で好きだよ」


「ふ、複雑?」


「そう、複雑」


「ど、どういった……ことでしょうか……」


「時間があるとき辞書で調べたらどうだ? 色んな事を知りたいんだろ?」


「そ、それは克己様から習いたいという意味です!!」


「複雑は複雑だよ。物事の事情や関係が入り混じっている事だよ。それ以上の説明は難しい」


「あ、愛して……」


「愛してるよ。アルスの事……」


 克己は真剣な表情でアルスの顔を見る。アルスは泣きそうな顔して体を震わせながら克己を見つめる。


「わ、私も……愛しております……」


 アルスは一滴の涙を零し克己に言う。


「ありがとう。おいで……アルス」


 アルスは頷きユックリと克己に近づき体に抱き着く。


「私は克己様を愛しております……。だから……捨てないで下さい……お願い……します……」


 アルスは克己の胸で泣きながら言う。克己はアルスの頭を優しくなでる。


「アルス……お願いがある」


「捨てないというのなら……何でも聞きます……」


「捨てないよ。でも、言う事を聞かないのなら……傍にはおいてあげない」


 アルスはガバッと顔を上げ克己を見つめる。克己は少し困った顔をしてアルスの眼を見つめる。


「い、言う事を聞くなら……今回みたいに置いて行ったりしませんか……」


「しない。元々アルスが言う事を聞かないから置いて行ったんだろ? 俺だってお前が傍に居ないと調子が狂う」


「ちょ、調子が……狂う……のですか?」


「そうさ……皆がいないと調子が狂う。それは一人欠けている今だって調子が狂う。お前が居なかった時期は大変だったんだぞ」


「そ、それは失礼をば……」


「ほら……これからは逆らう事をしないというなら……目を瞑って」


 その言葉にアルスは目を瞑って克己に身を任せ、克己はアルスにキスをする。アルスは積極的に克己の唇を求め離れようとはしなかった。


 隠微な音が響き、アルスは目をトロンとさせ唇を離す。


「本当に愛しております……捨てないで下さい」


「言う事を聞け。約束を守れ……」


「も、もう一度……誓いの……」


 アルスは目を瞑り再び克己の唇を求め、暫くの間、克己はアルスに身を任せる事にしたのだった。


 克己は椅子に座り、アルスは克己に跨がりながら長いキスをしている間、涼介はレミーに車の運転を教えており、ルノールは復習を繰り返していた。


 ハミルとリーズは近場を偵察に行き、食材を手にいれたりして、奮闘していた。


 アルスは満足したのか唇を離し、克己を抱きしめ嬉しそうな顔をする。


「克己様は浮気者ですからね……直ぐほかの女に色目を使うんです……奥様や私などがいるのに……」


 克己は何も答えず黙っていた。


「ですが……そんな克己様を私は愛しております……」


 克己はアルスの頭を撫で、アルスはくすぐったそうな顔をして微笑む。


「さて、飯の支度をするか……そろそろクレームがつく頃になる」


 克己が言うと、アルスは頬にキスをして克己の体から離れ、少し寂しそうに返事をした。


 それから暫くすると、涼介達が戻ってきて椅子に腰かける。そのタイミングでアルスは料理を並べ、涼介に謝罪の言葉を述べた。


「涼介さん……今まで申し訳ありませんでした」


「克己は許してくれたのか?」


「それは……分かりませんが、私が必要だと言ってくれたので……」


「そうか……。お前達は克己の支えだからな。しっかり支えてやってくれよ」


 涼介は無邪気な顔して微笑み、空を見上げて明日の天気を考えていた。


 翌日、克己達はアルトクスへと再び走り始める。今度は全員が運転をすることができ、それにより交代して運転をおこなう事が可能となり休みなく、夜通し走り続けるのであった。


 それから二日が過ぎ、数キロ先に街が見えてきた。克己達はホッとした顔をして街へと向かっていく。


 暫くして街の傍に到着し、克己達は車から降りることする。


「克己様、何故……車で中に入らないのです?」


 ルノールが首を傾げながら質問をする。その仕草は幼さが見え隠れして可愛く、克己は頭を撫でる。ルノールは何故撫でられたかは理解していないが、満足げな顔して喜んでいた。


「街はアルトクスが守護している筈なんだ……だから車で入る事はしない。まずは一旦偵察をしてから中へ入りたいと思う」


「偵察……ですか?」


「そう。偵察」


「誰が行けば宜しいですか?」


 再びルノールは首を傾げるが、その行動はあざとく、撫でてもらいたいというのが見え見えの行動だった。克己は袋からラジコンヘリを取り出し準備を始める。ルノールは撫でてもらえなかったことで頬を膨らませ、涼介を睨む。


「俺を睨んでも意味ないだろ……」


 涼介は疲れた顔して呟き、ハミル達は笑う。


 克己はカメラを搭載させたヘリを飛ばしPC画面から街の様子を窺うと、やはりアルトクス兵の数は多く、警戒をしている様子だった。


「こりゃ随分と……」


 涼介が顎に手を添えて画面をのぞき込む。


「克己、これって……あの兵器じゃないか?」


「どれどれ……」


 涼介の指差す場所をズームアップにして確認する。


「そうだな……前回の奴にそっくりだ……」


 克己が言うと、ハミルは眉を顰める。


「ですが……誰がこんなものを開発したのでしょうか……。アルトクスを滅ぼしたところで、この恐怖が無くなるとは思えないのですが……」


「確かにその通りだ……いつかはこうなるんだろうけど、一方的な力は必要ない……」


 克己はそう言って他の場所を確認していく。


「俺の目的は滅ぼす事ではないからね……この兵器を破壊するために向かっているんだ」


「破壊……ですか?」


 リーズが聞き返す。


「戦争の道具にする必要は無いって事さ。いつかは使われるかもしれない。だけど、侵略で使わせないだけ……」


「偽善だな」


「そうだな……だけど、俺はそれを破壊する。あいつらは自衛隊にまで攻撃を仕掛ける恐れがあるからな」


「確かに……再び国会に呼ばれることを考えたら……」


「近々自衛隊でもこういった武器が発表される。前に俺が教えた技術が運用されることになるんだ」


 そのセリフに涼介は言葉を探す。


「気にするな……。いつかは辿り着く道だ。それが遅いか早いかの違い……俺はもっと違うのを作ればよいだけの話だ」


「作れるのか?」


 涼介が克己に確認すると、克己はニタッと笑い涼介を見る。


「俺を誰だと思っている……俺様だぞ」


 その言葉にアルスは頬を赤くし、目を輝かせながら克己を見つめる。


「随分前から面白い物が見つかってね……それを研究しているんだよ」


「ったく……どこにそんな暇があるんだよ……」


「昔取った杵柄ってね……」


 克己の言葉に涼介は呆れながら空を見上げる。


「さて……そろそろラジコンを……おや?」


「どうした?」


「いや……奴隷……? 何だろ……首輪みたない物を付けている奴が多いなって……」


「ふ~ん……」


 涼介はそれ以上聞かず、克己はヘリを回収し、全員で歩いて街へと向かうのであった。

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