表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
182/361

174話 腐れ縁!!

「涼介、部屋にいるか?」


 克己は部屋の扉をノックする。だが、返事が返ってこないし


 克己は勝手に扉を開き中へと入ると、涼介はベッドで横になり天井を見つめていた。


「居るじゃんか……返事くらいしろよ」


 克己はそう言って椅子に座って黙って涼介を見ている。


 涼介は何も喋らないでベッドで横になり天井を見ていた。


 沈黙の時間が長く続き、涼介は首を少し動かして横目で克己を見る。


「もう……体は大丈夫……なのか?」


「勿論さ。俺の仲間は優秀でね。俺のピンチには必ず駆けつけてくれる素敵な奴らなんだよ」


「あっそ……」


 そう言って再び天井を見つめる。


「悪いね……涼介」


「何で謝るんだよ……元々の原因は俺だろ?」


「いやいや……うちの奴らが酷い事を言っただろ? 多分……」


「そんな話かよ……気にしてないよ」


「あっそ……なら良いけどさ……お前が無事で良かったよ」


「ぬかせ……」


「いやいや……涼介君……俺は本気で思ってるよ」


「ハイハイ……」


 克己は微笑みながら涼介を見る。涼介は少し照れくさそうにして反対側に体を向けた。


「じゃあ、話をしようか」


「何の話だよ」


「武器や暗視スコープなどの」


「もういいよ。お前の事だ……それなりの理由があって作ったんだろ?」


「まぁ……ね……王国へ行こうかと思ってね。いい加減、無駄な血を流すのは止めてもらいたい。そう言う理由だ。最悪は王の暗殺も考えてる」


 涼介は黙って聞いていた。


「あとさ、こっちの世界に関してはお前に管理を任せたいって思ってる……。嫌か?」


「嫌に決まってるだろ。俺には武器を作る技術も無ければ知識もない。お前とは違うんだよ……俺は冒険しているのが性に合っているんだよ」


「そんなことは無い! そりゃ違う! お前は……」


「そう言って俺がお前を二度も殺しかけたのには変わらないだろ」


 涼介は体を起こして克己は言う。


「たまたまだ! 前回も今回もたまたまだ! たまたま狙われたのがお前で助けたのが俺……それだけだ!!」


「そう言う問題じゃないって!」


「俺はそう言う問題だって思ってるんだ! お前は学生の頃から一緒に居てくれた! 嫌な思いをしながらでも一緒に居てくれた! だから今度は俺がお前を助ける番だ! お前のピンチにはいつでも駆けつけてやる。だから俺のピンチにはお前が駆けつけろ!」


「我が儘な奴だな……」


「お互い様だろ。こんなところでイジケてないで飯でも食いに行こうぜ?」


「……金は無いから奢ってくれるなら行くよ」


「分かってるよ」


 克己は優しく微笑み立ち上がる。涼介は浮かない顔してベッドから降り、克己と共に部屋から出て行った。


「悪いな、気を使わせちまって」


 歩いている最中、涼介が克己に言う。


「全くだ。馬鹿が悩むと面倒で堪らん……何も考えずにいつも通りにして猿のように腰でも振っていりゃいいんだよ」


「バーカ」


 涼介は克己の頭を軽く叩きし厨房のある方へ歩いて行くとルノールを発見し、二人は立ち止まり様子を窺う。


「そういや……あいつは何であんなに口が悪いんだ?」


 涼介は克己に問いかける。だが、克己は首を傾げる。


「さぁ? なんでだろう……」


 克己は思いあたる節が無く涼介も腕を組み、首を傾げる。


「普通にしてたら全国でもトップクラスの美少女だろ? いや、お前のとこに居る奴は全員がトップクラスの美女や美少女ばかりだ……だけどあいつだけ品が感じられない」


 涼介の言葉に克己は少し嬉しそうにする。


「取り敢えずあいつの行動を追ってみるか」


 克己の言葉に涼介は頷きルノールを追いかける事にした。


 ルノールはキョロキョロして周りを窺いながら何かを見ている。


「あれは誰が居る部屋なんだ?」


 涼介はルノールが監視している部屋を見て克己に問いかける。


「俺が知るはずないだろ……この城に入るのは二度目なんだから……。お前がいる部屋だってメイドさんに聞いたんだ。『英雄の部屋』は何処かって」


「え?」


「メイドさん、興奮しながら案内してくれたよ。颯爽と現れ、自分達を窮地から救ってくれた英雄の自慢話を何度も聞かされながら」


 克己はルノールを見ながら言うと、涼介は顔を真っ赤にして両手で顔を隠す。


「止めて! 克己君止めて!! それ以上言わないで!!」


「さらには占領されていた城を救い出すまでの武勇伝まで……」


「止めてくれ!! それ以上言ったら俺が死んでしまう!! 俺のヒットポイントは0に近い! 止めてくれ!!」


 まるで乙女のように手で顔を隠ししゃがみ込む。


「お? あの扉の中を覗いてるぞ?」


 克己の言葉に涼介が思い出したかのように言う。


「あれって……お前がいた部屋じゃないのか?」


「似たような部屋ばかりだから分からん。恥ずかしい話、城の中で迷子になった」


 涼介は苦笑いする。


「学校のように室名札を付けるべきだよ」


 克己はブツブツ言いながらルノールの行動を見ていた。


 当のルノールはというと……。


「言い過ぎたかな……アルスが動かないや……」


 自分の言葉でアルスが傷ついているのか心配で部屋を覗いていた。


「中に入るべきか……入らざるべきか……迷う……。ガルボは復興の手伝いに行くとか言ってどっか言っちゃうし……」


 再び周りを見渡し、誰か助けてくれそうな人を探す。しかし誰も見つからず、ルノールは意を決し中に入る」


「あ、アルス……な、何か食べに行こうよ……昨日から何も食べてないでしょ? あなた」


「いい……食べない……」


「ダイエットでもしてるの? アルスはスタイルが良いんだから必要ないと思うんだけど……」


 ルノールの言葉にアルスは何も答えず椅子の上で体育座りをしていた。ルノールは器用な奴だと思いながら次の言葉を探す。


「な、ならさ……アルスが来ないなら……克己様と一緒に何か食べに行こうかと思うんだけど……」


 ピクリとアルスの体が反応する。


 それを扉の外で見ていた克己と涼介。


「アルスが落ち込んでいるのを気にかけているのか……」


 克己が呟く。


「克己……アルス達と食事に行って来いよ。俺は後で食事をしに行くから」


「拒否する。アルス達と食事は賛成だが、お前が来ない理由が俺には分からない」


「空気を読んでくれ……」


「嫌だね……おっと、アルスが動くようだぞ?」


 克己の言葉通りアルスは立ち上がり部屋から出て行こうとして克己達は慌てて隣の部屋に隠れる。


「空室で良かったな……」


 涼介が一息つきながら言うと、克己も頷いた。


「だが、ルノールはなんだかんだ言って周りに気を使っているんだな」


「言葉遣いは悪いけどな」


 涼介は首を掻きながら言う。


「克己、この後はどうするんだ?」


「取り敢えず飯だろ……腹が減ったよ。ここに来てから何も食ってない……隣にいるルノールを連れて飯を食いに行こうぜ」


「連れて行くのかよ……」


 涼介はガックリとしながら言い、克己はニヤニヤしながら立ち上がる。そして、ルノールが落ち込んでいる部屋へと入って行くと、ルノールは驚いた顔して克己達を見ていた。


「ルノール、腹が減った。飯を食べに行こう」


「い、いえ……私はお腹いっぱいです……。ふ、二人で食べに行ったら如何です……か……」


「ルノール、そんな切ない事を言うなよ。一緒に行くぞ」


「ご、ご命令とあらば……」


「じゃあ命令だ」


「はい……」


 ルノールは少し恥ずかしそうな顔して立ち上がり、克己達は部屋を出て行く。そして、歩きながらルノールに質問をした。


「ルノールは部屋で何をしていたんだ?」


 克己の質問に涼介は白々しいと思いながら聞いており、ルノールは返答に困る。


「あ、そ、その……べ、別に……何も……」


「ふ~ん……」


 克己はルノールの肩を抱き寄せる。ルノールは体をビクッとさせたが、直ぐに嬉しそうな表情をして克己の腰に腕を回した。


「ありがとう。ルノール……今回は随分心配をかけたね」


「い、いえ……傷付いたりしたら……治すのが私の役目ですから……ですが、暫くはこのまま……温もりを……」


 ルノールは恥ずかしそうにして言う。涼介はいたたまれない気分になり、この場から離れたくなる。だが、逃げる理由が見つからず黙って二人の横を歩くしかなかったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ