170話 救出への道!!
セデル達は長い道のりを歩かされていた。
「大丈夫……絶対に私達は助かる……涼介様が助けてくれる……」
セデルはそう呟き休むことなく歩かされている。
その頃、涼介は城の奪還を進めていた。
「望、なるべく兵士は殺すな。制圧だけを考えろ……ここで兵士を殺してもレベルは上がらない」
「かしこまりました」
涼介の命令に頷き望は駈けていく。
狭い通路の中、アルトスク兵は集団攻撃が出来ずに望の独壇場状態で戦いは進んでいく。暫くすると自衛隊が経済産業省の人達を保護しに城の中へ突入する。なるべく殺さない様にと涼介の指示が入るが、難しい話で悪戦苦闘するのであった。
涼介達は城の制圧に半日ほどかかり、自衛隊員に数人の怪我人をだした。
「馬を走らせ続け一週間程か……まず無理な話だからな……歩きで考えたら大体一ヶ月だろうか……。だが、体力が持つかどうかは別の話だな」
涼介は顎に手を添えて考える。
「涼介様、これから如何がなされますか?」
「どうするかな……。二人で行って勝てるだろうが、人質を取られてるのは痛いな……」
「では……セデル様が相手の城に到着するまで我慢致しますか?」
「いや、たぶん……体力が持たないだろうな」
「では……」
「克己が来るまで待っていよう。多分来るはずだ……それまで捕虜の様子を見ておいてくれ。絶対に逃すなよ」
「かしこまりました……」
涼介は城の中をくまなく歩き、囚われている兵を解放し、アルトスク兵を牢屋にぶち込んで一日の終わりを迎えた。
翌朝になり、自衛隊は街の復興作業に移り始める。いくら城の持ち主がいないからと言って、放置する訳にはいかなかった。
昼頃になり、克己達を乗せたチヌークが数機程やってくる。
「来たか……」
涼介は着陸するチヌークを見ながら呟き、着陸地点へと向かう。
「よう、出迎えご苦労さん」
克己は笑いながら降りてくる
「遅い!!」
「仕方ないだろ? 交通機関がこれしか無いんだから。時間がなさそうだから簡潔に話を済ませようぜ……」
「あぁ……そうだな」
涼介は克己に説明すると、克己は少し考える。
「その考えは間違いがないだろう。多分、人質に取られるだろうな。だが、近づく方法が少ないな……」
椅子の背凭れに寄り掛かりながら天井を見つめる。
「そうなんだよな~……先回りができれば問題ないんだが……」
涼介も背凭れに寄り掛かりながら天井を見ていた。
「先回りか……先回り……空を飛んでいくか?」
「は? 移動魔法で行くことはできないだろ? 行った事が無い所なんだから」
「そうさ、行ったことない場所だ。俺達が乗ってきたものがあるだろ? かなり上空から先回りすればバレないし、準備ができるだろ?」
「確かに先回りできるが……どのように攻撃するんだよ?」
「指揮系統を殺っちまえば良い話じゃないか? ほら、良くある話だろ? 指揮系統をズタズタにされたらって」
克己の言葉に数回頷く涼介。
「スナイパーで攻撃するということか……。悪くはない考えだな……だが、そんな攻撃が可能な奴がいるのか?」
「通常のスナイパーで大体1kmと言われている。だけどな、俺達は1kmなんて裸眼で楽に見えるだろ? 調べたら、集中すれば3km先まで見えることがわかってる。これはある程度のレベルに達するとなるようだな。皆同じ結果がでたよ」
「ふ〜ん……じゃあ、俺達が狙撃するということか?」
涼介はあり得ないという表情をしながら確認する。
「それが確実だろ?」
何を馬鹿な事を聞いているのだ? という表情で克己は答える
「難しいだろ! 普通に考えると! 風の計算とかあるんだぞ」
涼介はテーブルを叩きながら言うと、克己はニヤリ笑い、袋に手を突っ込んだ。
「ジャジャン!! 極細レーザーガン! 推定射程距離は大体5kmでございます!」
「ちょ、ちょっと待て! 世界中の科学者を敵に回すつもりか! 回折はどう説明をするんだよ!」
レーザーは拡散してしまうのであり、これは科学で証明されている事であった。
「敵に回すも何も……常識的に考えてそんな事は理解している。だがね、普通の造りだったら……での話だろ?」
「ま、まさか……」
「それに涼介、常識的に物事を考えるな。通常に作られているこのレーザーガン……常識ではありえない武器なんだから。こんな物はどうやっても作れない。常識の中で考えたら」
「だ、だったらお前はどうやって作っているんだよ」
「このコアって何に使われているか知っているか?」
「そりゃ……エネルギーに使われているんだろ? 色んな」
「そうだよ。エネルギーに使われているんだ。それを利用して俺はコアエネルギーを緻密なレベルにまで圧縮して……と言ってもお前には理解が出来んだろうから……簡単に言うと、これが太陽の代わりになっているんだよ」
「さっぱり分からん」
「だろうね……。さて、こんな話に時間を費やすわけにはいかない。お前の愛する姫様を救い出さなければいけないからな」
「な、馬鹿な事を言うんじゃねーよ!! 俺はちは……」
「はいはい……騒いで無いでさっさと行くぞ。照準はこれで付けるんだ」
「レーザーサイト? これで数k先まで届くのか?」
「届くよ。これは俺が作ったレーザーサイトだからな」
「変態知識野郎め……」
「誉め言葉として受け取るよ。さぁ……行こう。最近調子に乗っているアルトスクに目に物を見せてやろうぜ」
克己が手を出すと、涼介はチラリと見てタッチを交わし、部屋から出て行く。
「葛城一尉、チヌークを数台出してくれますか。救出に向かいます」
「な! む、無理に決まっているでしょ! 私の判断では勝手に使用する事ができません!」
「あ? 良いから出せよ!!」
涼介が葛城一尉に掴みかかり、克己が取り押さえる。
「葛城一尉、俺が責任を持つから……。国会でも何でも出る。俺が勝手に使用したと言う事にしてください」
克己が言うと、葛城一尉は少し考え時間をくれとお願いしてきた。
「時間が無い。早い決断を頼みます」
克己の言葉に何も反応を示さないで葛城一尉は背を向けてチヌークへ戻って行く。
数時間が経ち、葛城一尉が戻ってくる。
「お待たせいたしました。上からの許可が下りましたので搭乗して下さい」
「え? きょ、許可が下りたんですか?」
「はい、状況を説明したところ、納得をしていただいたようで……あ、成田さんがいる事は伝えていません。許可が下りないような気がしたので……」
「賢明な判断だろうな。こいつは政府に嫌われているから」
涼介は横目で克己を見ながら言う。
「うるさいよ……。まぁいい。これで救援に向かう事が出来る」
克己はチヌークを見ながらそう言った。
時は闇に満ちており、セデル達は兵士に囲まれながら休みを取っていた。
「ひ、姫……大丈夫でございますか……」
「ありがとう、マルル。必ず涼介様が救いに来てくれる……それまでの辛抱です。頑張りましょう。皆にもそう言って下さい。父上……あまり無理をなさらずに……」
「ゴホッゴホッ……。うむ……」
王は病を患っており、そのおかげで、馬車で運ばれていたのだが、休む時は馬車から降ろされ一か所へ集められる。レデオウィールの関係者は大臣などを含め、総勢50名ほど捕まっている。
「私達はどのように扱われてしまうのでしょうか……前に聞いた話だとラスベル帝国で反乱が起きたとき、皇女は乱暴されたとか……。姫、姫の命は私が命に代えてもお守り致します……」
マルルはそう言ってセデルの手を握り真剣な目で見つめる。
「大丈夫だ、マルル。涼介様が絶対に助けてくれるはず……そのため、我々は無駄な血を流さずして降伏をしたのだ……今は耐えるとき……」
セデルは優しく微笑みマルルに説き、マルルは不安そうな目になり、セデルを見つめた。
「あの男が……本当に我々を救ってくれるのでしょうか……」
マルルは不安げに呟き俯いたのだった。




