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167話 可愛い狂暴!!

 2階にはノエル達が椅子に座って話をしていた。空村は一瞬だけ目を奪われる。それもそのはず、全員美人で可愛い子ばかり。どこのモデルなのかと思ってしまうくらいの連中が室内にいたからである。


「おい、お前達……お客さんが来たんだからだらしない格好で座っているなよ」


「バーカ、バーカ! 怒られてやんの!」


 ルノールが舌を出しながら言う。少し前の話である。部屋が汚いと克己に怒られていたルノールは、ノエルとリーズにバカにされていたのであった。その仕返しと言わんばかりにルノールは二人に舌を出して仕返しのように言ったのである。……が。


「アタッ!」


 ルノールは克己にデコピンをされ頭を押さえる。


「客が来てると言っているだろ……」


 ルノールはデコピンされた場所を擦り、少し涙目で克己を見る。


「いつもノエル達ばかりを贔屓する……」


 ルノールは不満を口にし、唇を尖らせ自分の指定席へ戻っていく。


 克己は小さく溜め息を吐き、適当な場所に腰を下ろす。空村に関してはノエルが椅子を出し座らせ、ノエルはちゃっかり克己の傍に座った。


「空村さん、コイツに用があるんでしょ?」


 克己が言うと、ギロリと空村は睨む。その目に全員が敵意を剥き出しにした。


「なんだ? コイツ……自分からお願いしに来たくせに睨むのか?」


 ノエルが言う。


「お客様だからって調子に乗られたら迷惑なんですけど」


 リーズが言う。


「怪我してるのは左足首……ただの捻挫だね」


 ルノールが余所見をしながら言う。ルノールは治癒術士……相手を見ればどこが怪我をしているのか、治るのか治らないのかを瞬時に見極める事が出来る。ノエルも少しだけだがその能力は備わっている。だが、ルノール程完璧では無かった。


「怪我を治してほしくやって来たのか……」


 克己が呟くと、空村は立ち上がる。


「金なら出す! 頼む、治してくれ!」


 ルノールは克己を見る。だが克己は知らん顔してスマホを弄る。


「ルノール、お前が決めろ。こいつは俺の話を聞こうともしない。お前の口から聴きたいらしい」


 スマホを弄りながら克己が言うと、ルノールは頷く。


「分かりました。えっと……おじさん……」


「お、おじ……さん?」


 空村はその世界では有名な選手。日本中を熱狂させたその左足は殆どの国民が知っているのである。だが、異世界人であるルノールには知るはずも無く、ただの我が儘なオッサンにしか見えないのであった。


「私は治すつもりはありません。まず、態度が気に入らない。なんで貴方はそんなに偉そうなんですか? 貴方は偉い人なんですか? 克己様や奥様よりも偉いんですか? 次に、貴方はサッカーとか言うのを職業にしてるんですよね。と言うことは、貴方の他にも同じ事をしている人がいるんですよね? その人たちは同じ条件で戦うんじゃないんですか? その人達は誰かに治して貰えるんですか? 手術とかで治すんですよね! でも貴方は手術すると切り取ったりするから時間がかかり、能力も落ちる……それが嫌だから私の能力を当てにしてるんでしょ! 違うの!」


「だったら何だって言うんだよ! 究極を目指すのが俺達の仕事だ! 何の文句があるんだよ」


「同じ条件で戦いなさいよ! 競いなさいよ! それで究極を求めろ! バーカ!」


「な、何だと!」


 空村は立ち上がりルノールを睨みつける。


「何よ! 私とやる気! 良いわよ、かかって来なさいよ! ぶっ殺してやる!」


 ルノールは立ち上がり駆け出そうとしたが、レミーに腕を掴まれ止められる。


「ルノール、落ち着きなさいよ……。殺したら克己様に面倒がかかることになる。半殺し程度にしなさいよ」


 レミーが言うと、ルノールは空村を睨む。


「そうする」


「ば、バカにしてんかよ!」


「空村さん、彼女に負けたからって誰にも言いふらさないで上げますよ。ルノール、やったら治せよ」


 克己はスマホを弄りながら言う。


 空村の我慢は限界を超え、ルノールに殴りかかろうとして襲いかかる。ルノールは簡単に見切り顔面にクロスカウンターを入れる。カウンターを食らった空村はダウンし。ルノールは追撃をする。お腹に数発の蹴り入れ空村は血反吐を吐く。


「あ! 汚い! 誰が掃除をすると思ってるのよ!」


 ルノールの言葉に全員は「お前だよ」と思いながら見ている。普段ならここらで止めるアルスは、克己が全く気にしていないので様子を見ている。


「アンタが掃除をしなさいよね! 汚いもの吐き出しやがって!」


 克己はスマホを弄りながら思う。どうしてこの子は自分の前以外では暴力的なのだろうかと……。


 ルノールはトドメの一撃として利き足である左足の骨を蹴り折ると、空村は叫び声を上げ蹲った。


「煩いのよ! 黙んないともう片方の足も折るからね!」


 ルノールは右足の膝に足を乗せ体重を少しかける。


「や、止めてくれ!」


「言葉遣いがなってないのよ! この足も折るからね!」


 そう言ってルノールは選手の命である膝を踏み折り空村は言葉にならない声で泣き叫び、痛みに耐えられず気絶する。


「ルノール、そこまでだ。治してやれ」


「かしこまりました。克己様……」


 ルノールは振り返り嬉しそうに微笑むと、空村の顔に唾を吐き一言言う。


「感謝しろよ、克己様が居なかったら殺してるぞ……きっと」


 そして顔面を踏み付け、仕方なさそうな顔して魔法を唱えた。


「ルノール、アンタが掃除しなさいよ」


 ノエルが言うと、全員が頷きルノールは項垂れ掃除を始めた。


 ハミルは空村をクラブハウス前連れてきて、エントランス側で捨てる。そして家に帰り、暫くして空村は目を覚ました。


「こ、ここは……」


 起きて周りを見渡すとクラブハウス前……砕かれへし折られた足は元に戻っており、捻挫も治っていた。夢でも見ていたのかとガラスに映る自分の顔を見た空村は、現実に起きたことだと理解し項垂れた。

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