165話 首謀者は!!
レミーは意識を覚醒させる。
「いつつ……。い、一体何が……」
自分の身に起きた事を想像しようとするが、その前に現実を直視する。
「な、し? 縛られてる!!」
椅子に座らせられ、そして体は鎖で何重にも括り付けられるように縛られており、手足も同じ様に縛られて身動きを取らせないような状態だった。
レミーは直ぐに克己の姿を探す。すると、奥の方から水の音がすることに気がついた。
少し離れた場所に克己の姿があり、何度も頭を水につけられ、その度にもがいていた。
「か、克己様!!」
レミーは叫び、男達がレミーの側に寄ってくる。
「お、お前達! こんな事をやってただで済むと思っているのか!」
レミー威圧するように叫ぶが、男達はニタニタ笑って近寄って来る。
「こ、言葉が通じてない?」
男達が何かを喋るがレミーは何を言っているのか理解できず、狼狽える。
「ゲホゲホ……。ぶっ殺すぞ……。そいつに触れたら殺す……」
克己が睨みながら男たちに言う。だが直ぐに克己は頭を掴まれ水に押し付けられる。
男達は笑い、克己の体に蹴りなどを入れいたぶる。
「や、止めて! お願いだから止めて!」
レミーが叫ぶと男達は克己の頭を持ち上げ水から解放する。克己はゲホゲホ言って、苦しそうにしており、レミーは泣きながら叫ぶ。
「お願い! 克己様を離して! やるなら私をやって!」
必死でレミーはお願いする。
すると、奥から人が数人程やって来る。
克己は睨みつけるようにやって来た人を見る。
「ふん……今まで随分と調子に乗ってくれたものだ……」
言い終わると男は克己の顔面を蹴っ飛ばす。
「グゥ……」
口の中を切ったのか唇から血が垂れ、克己は唾を吐く。
「まさかアンタが裏で手を廻しているなんてね……。そりゃ……自衛隊や公安が居ない訳だ……」
再び男は克己の顔面を蹴り、克己は床に倒れる。
「俺を殺しても異世界が手に入ると思うなよ……」
克己は睨みつけるが、取り巻きの男達に何度も暴行を受ける。
「ふん、生意気なガキだ……」
男はそう言って、克己の顔面を踏み付ける。
「止めて! もう止めて!」
レミーは泣きながら叫ぶ。
「その女を黙らせろ!」
男が言うと、取り巻きたちがジリジリと厭らしい目でレミーに近寄る。
「さて、そろそろ……お遊びに付き合うのは止めようか……」
踏み付けられている克己が言うと、レミーは泣くのを止める。
「かしこまりました。克己様……」
レミーが小さく呟き、取り巻き達が囲む。
「解放しろ!」
克己の言葉にレミーが笑う。男は何のことか分からず克己の顔面を何度も踏み付ける。
「この状態で何を言っているんだ! 強がるのもいい加減に……」
「汚い足を退けろ、ゲスが……!」
克己が言うとレミーは鎖を紐のように弾きちぎる。
「私は泣きながら止めてと言ったわ。何度も何度も……止めなかった貴方達が悪いんだからね……」
レミーは立ち上がり、男達を睨みつける。男達はたじろぎ、後退り始めるが、レミーは目にも止まらぬ速さで男達に地面を舐めさせていた。
克己を踏みつけている男は恐怖し、懐から拳銃を取り出す。
「う、動くな! こ、こいつがどうなっても良いのか!」
克己の頭に拳銃を押し付ける。
「問題ない。やれ……」
「かしこまりました……」
克己の言葉にレミーは返事をし、ゆっくりと近寄る。
「く、来るな!」
「引き金を引けよ……内閣総理大臣秘書の加藤さん」
そう、克己を捕まえ殺そうとしていた人物とは、現職総理大臣……喜多村総理の秘書であった。
「が、ガキが調子に乗るなよ!」
加藤はさらに強く押し付ける。その手は震えており、相当の恐怖を感じているようだった。
「く、来るな! 近寄るんじゃない!」
加藤は大量の汗を流し叫ぶ。だが、レミーはゆっくり二人の側に近寄る。
「克己様、ソロソロお戯れはお止めになって頂けませんか? 大切なお顔が傷だらけになっておりますよ?」
「ん、分かった……。俺もいい加減この態勢に疲れを感じていた所だ……ふん!」
克己は軽く力を込め、鎖を弾きちぎり素早く加藤が持っていた拳銃を掴み取り握り潰す。拳銃はグシャっと音を立て粉々に砕け散る。
「ば、化け物……!!」
「どう言われても結構だ……折角開いた扉を閉じるのは申し訳なく感じるが……俺に楯突いた罪は思い。レミー縛り上げろ」
克己は加藤を縛り付け猿轡をする。レミーは頷き男たちの服を脱がせ縛り上げていく。
「さて、ここは何処だろうか……嫌な感じがするんだが……」
克己はレミーの手を握りながら出口を探す。
「随分と迷路になっているな……。作りからして建物と言うよりも……」
そしてついに外へ出ると、克己とレミーは顔を引きつらせた。
広がる景色は真っ暗な闇。チャプチャプ音を立ていた。
「や、やっぱり……う、海の……上か……ここは……」
その言葉にレミーは動揺する。
「ど、どうやって帰れと言うんですか……こんなところ泳げないですよ……」
「イヤイヤ、泳ぐのは無理でしょ……普通に考えても」
克己は少しだけ気が紛れ船の大きさを調べる。
「こりゃ……重量物船か?」
「なんですか? それは」
「大型建設機械など重量物を専門に運ぶ船だ。あの外人どもが使っている船なんだろうな……国旗はやっぱりな……」
克己は船の国旗を見て難しい顔をしてどうするかを考える。
「わ、私たちは戻れるのでしょうか」
「船を動かしている奴がいるから、そいつを捕まえて日本へ向かうよう命令すりゃ問題ないはずだが……」
「もしもいなかったら……」
「救援が来るまでここで待ちぼうけってやつさ。幸いな事に袋は無事だし……通訳君がある。居たらぶっ飛ばして言う事を聴かせよう」
「居なければ……ふ、二人で……ですよね?」
「そうだよ。あいつらはどっかの部屋に閉まっとくから」
「ふ、二人っきり////」
「顔を赤くさせて何を考えている?」
「ここには奥様もアルスもいません!!」
「だから?」
「ふ、二人で愛を育み……アイタ!!」
「馬鹿を言うな。まずは帰れる手段を探してからだ!!」
克己はレミーの頭にチョップをした。レミーは頬を膨らませ、上目使いで克己を見る。
「そんな可愛い顔をしてもダメだ! また理恵に怒られたいのか? 俺は嫌だぞ」
克己の言葉でレミーは昨日の事を思い出す。
「そ、そうですね……」
「連絡がついたら慰めてやるから、それまで我慢しろ」
レミーはパァっと顔を明るくさせる。
「はい! 是非!」
「先ずは操船がある場所を探そう。そこに操舵手がいるはずだ!」
そう言って克己は走り始めるが、山育ちのレミーには何のことかさっぱり分からず、取り敢えず克己のあとを追いかけるだけであった。
克己は頭の中で大まかな場所を想像し、操船がある場所をイメージする。そして操船のある部屋へ到着すると、外個人が慌てた顔で克己たちを見る。レミーは直ぐさま敵を戦闘不能状態にさせ、室内を制圧する。克己は通訳君を使用し日本へ帰るよう命令し、男達は怯えながら指示に従った。
「確か……船舶無線が有ったよな……」
克己はそう呟き計器類を確認し、無線を発見する。
そして無線のチャンネルを合わし、海上保安庁にどうにか連絡を取ると、直ぐにヘリがやってくる話となって大変な騒ぎになった。
「さて、彼らが来るまでは別室でゆっくりさせてもらおうか……」
克己はレミーを抱き寄せ別室へ移動し、救援が来るまでの間、レミーと愛を育んだのであった。




