16話 魔王討伐へ!!
「ノエル、魔王がいるところは知っているのか?」
克己は一応ノエルに確認しておこうと思い、聞いてみた。
「魔王は各大陸にいるらしく、多分、今回の魔王はこの大陸の魔王だと思うのですが……」
なんか歯切れが悪いのは、ノエルが自称勇者なのに何もできなかったからだと思い、魔王城の方角だけ聞いて、それ以上は聞かなかった。
「よし分かった! 多分、そいつが今回の元凶だな! ぶちのめしてやる! 皆、これに乗るんだ!!」
そう言って出してきたのは駐車場に置いてある車だった。
皆が乗り込み、克己はシートベルトの取り付け方を説明する。シートベルトを装着する理由は交通事故を起こしたら危険と説明するが、皆は理解ができていない。克己は苦笑いをしてエンジンを掛け、そして直ぐに車を発進させる。
「見つけた魔物から片端からぶっ殺すぞ!」
克己はそう言ってアクセルを踏み込み、車を走らせていく。車に乗ったことのないアルスやハミル達は体験したことのないスピードを味わうのだった。
目を丸くするハミル達。アルスは窓に顔を付けて、外を眺め驚きの声を上げる。それは叫び声にも聞こえる。
暫く車を走らせると、克己はゴブリンの群れを発見する。
克己は車を滑らせるように止め、急いでシートベルトを外す。そして、勢いよく飛び出して銃を乱射しまくり、圧倒的な力でゴブリンの群れを駆逐する。
ノエル達は出遅れ、車の中で克己の圧倒的な強さを眺めていた。
克己は一人でコアを回収し、再び車に乗り込み走り出す。
「私達は護衛なのだから直ぐにいかないと……」
ノエルが言うと皆は頷く。
次に魔物が出たときは出遅れず、克己と共に駆逐してする。そして、急いでコアを回収して車に乗り込む。
それを何度も繰り返していた。
山道を走らせていると、山賊が突然目の前に現れる。
克己は急ブレーキを踏んで止まろうとしたが、車は急には止まれないもので数人轢殺して車はようやく止まる。
克己達は車から降り、ノエル達は剣を抜き山賊と対峙するが、克己は山賊なんかに目もくれず、車の傷を確認していた。
「誰か水魔法を使えるやつっている? ハミルは使えないの? この汚い血くらいは洗い流したいんだよね~」
克己が車しか見ていない事で、山賊が相手にされていない事に気が付き、怒り狂って襲い掛かる。克己を守れと言わんばかりにノエルとレミーの二人で蹴散らした。
特にノエルは山賊に襲われた経験があるため、これでもかと言わんばかりに殴りまくる。
最終的にはノエルのビームサーベルの餌食となり、山賊は消滅した。
そして、問題の水だが……ハミルは水魔法を覚えていなかった。
「すいません、まだ水の魔法は覚えていないんですよ……」
ハミルが悲しい顔して言うと、克己は諦めて皆を車に乗り込ませ、先へ進んでいく。暫く進んでいくと街のような場所が見えてきたが、煙が上がっており、ここの街も魔物にやられたようでボロボロになっていた。
だが、宿屋は壊れていなかったのでシェリーは宿屋に泊まらないかと提案をしてきた。しかし、克己は時間を確認すると、まだ昼前くらいだったので先へと進むことにした。
「ノエル、魔王城のある場所ってわかる?」
克己は運転しながら再びノエルに確認する。ノエルは魔王所の場所を知っているらしく、返事をする。
「じゃあ、ナビ……案内をしてくれない?」
ナビをお願いするとノエルは頷き車を走らせて行く。先へ進んでいくと、再び魔物を発見する。魔物を車の中からビームガンを発射させ始末する。ハミルがコアを拾いに行くと、他にも魔物がいたらしくハミルがビームサーベルで斬り刻んでいた。
ハミルはレベルがあがったらしくホクホクの笑顔で戻ってきた。
パルコの街では見かけない巨大ザルの魔物で、克己達には珍しい魔物だった。
そして、珍しい魔物のためコアもそれなりに大きかった。
「シェリー、さっき山賊を轢いた時にできた傷は回復魔法で治ったりしない?」
克己が聞いてみたら試してみることになり、車を止めて回復魔法を唱えたら傷が治った。
「スゲー! 車の傷も治しちまったよ!」
克己は驚きながら傷跡を確認し、ホクホクの笑顔で再び車を発進させた。
「んで、魔王城はどこら辺にあるの?」
助手席に座っているノエルに質問したら、かなり遠くに見える山の麓に魔王城があると教えてくれる。
「ですが克己様……私達は魔王に勝てるのでしょうか……。私達のレベルはかなり低いですよ……」
ノエルが不安げに聞いてきたので克己は答えた。
「楽勝でしょ。この武器があれば……。あとは、今度街へ戻ったらお前ら自衛隊へ体験入隊してもらうからな」
「じ、ジエイタイ……ですか? 何ですか? それは……」
レミーが不思議そうに聞いてきた。
「恐ろしい戦闘部隊がいる軍隊だ」
克己はそう言うと、全員が「おぉー!!」っと、驚きながら克己を見る。
「そ、それは王宮の兵士よりも屈強なのですか?」
シェリーが不満げに聞いてきたから克己はそうだと答える。
「多分王宮なんて80分もあったら簡単に陥落してしまうだろうな」
「そんな簡単に陥落なんてしません!」
シェリーは不満そうに言ったが、ただの街人であるはずの克己がこの強さなので、もしかしたらとノエルは思ってしまう。
「この世界はかなり資源の倉庫だからな、国に売ればかなり喜ばれるし……今度あいつに話してみるか……。いや、まずゲートになっているクローゼットを調べて、もっと大きくできるのであれば大きくして……パルコの街を俺が占領すれば……」
「レミーさん、克己様が何か仰っておりますが分かりますか?」
シェリーが年長者のレミーに問いかけたがレミーに分かるはずがない。「分からない」とだけ答えて、克己の独り言に耳を傾ける。
「克己様、もしかしてクローゼットから大きいものを入れたいのですか?」
ノエルが聞いてきたので克己はそうだと答える。
「克己様は何がやりたいのでしょうか?」
「別に? 面白ければなんでもいいと思っているけど?」
そう答えるとノエル達は背中に冷たいものが走った気がした。
話をしていると再び魔物が現れたので車を止め、皆で殲滅しに行く。
見かけると直ぐに始末をしに行くためコアがかなり集まり、新たに作った袋の中に入れることにした。
マジック袋は何個も量産したので使い切る事はないだろうと思いながら克己は車を走らせる。
ノエルのレベルが11まで上がり、レミーも10、アルスは9で、シェリーに至っては13までレベルが上がっていた。
ノエルは自分が少し強くなっていることが分かり、剣術の技術も上がっていることを理解したが、克己は30まで上がっていたのは知らなかった。
徐々に魔王城に近づくと、雰囲気もそれなりに怪しくなってきたので皆が怖がり始める。だが、魔物を見つけると、一斉に襲い掛かりレベルがガンガン上がっていく。
レミーはこれなら魔王に勝てるのではと思いながら車に乗り込み、克己は車を走らせた。
数日後、ようやく魔王城のエントランスまでたどり着いた時には、皆のレベルが30近くまで上がっていたが克己は40になっていた。
ドンドンドン! 克己は扉を強く叩く。
「魔王さんいるんでしょ。開けて下さい!」
克己はエントランスの扉を何度も叩くが、扉が開く様子はなかった。
開かない扉にイラッとした克己は、ビームガンで鍵を壊し、バン! と、扉を蹴り開け、慎重に歩きながら中に侵入する。城の中には色々な魔物がいて克己達に襲いかかってきた!
だが、克己のビームガンの餌食になるだけで克己達のレベル上げとコアを提供するだけになっていた。
そして、ついに克己達は魔王の部屋の前までたどり着いたのだった。




