161話 群れ!!
次々とスペスルクスの街に奴隷達が戻ってくる。
克己が言ったように、皆はコアをお金に換えて帰ってくる。その中には怪我をしている者もいた。ルノールは怪我をしている者を治療にあたっていた。
戻ってくる奴隷の中に、あの二人の姿もあった。
「あ、サラミにルー……無事だったんだね」
ノエルが二人に言う。
「の、ノエル様!!」
サラミが緊張した声を出す。ノエル達側近奴隷はサラミやルー達より位が高い扱いになっており、皆は尊敬と憧れを抱いていた。ルーは取り敢えず会釈をして、克己の姿を探す。しかし、克己の姿は無くルーは肩を落とした。
「どうだった? 冒険は……」
「は、はい! 不思議な事ばかりでした……」
サラミは緊張しながら答え、ルーは考える。そして、ドラゴンの群れを見た話をサラミに話させるのだった。
「なに? ドラゴンの群れ?」
ノエルは顎に手を添えて考える。
「群れ……どのくらいそのドラゴンは飛んで行ったというの……」
「だ、大体……数十匹はいたと思います……」
ノエルは携帯を取り出しどこかへ電話をかける。二人はノエルが使用しているアイテムが何なのか分からずそれを見つめる。
「あなた達、怪我はないの? あるならあっちで……あ、もしもし克己様ですか?」
ノエルは克己に電話をかけていた。
「ドラゴンの群れが……はい……サラミとルーが見たと……」
ノエルは電話を切り、二人に向き直す。
「二人とも、悪いけど付いて来てくれる? 怪我があったらまずは治療が必要だけど……。大丈夫……?」
ノエルが申し訳なさそうに言うと、サラミは両手を振って問題ない事をアピールした。ルーは克己に会えると思って目を輝かせながらノエルの後に付いていくのだった。
克己は離れた場所でお店を作っており、レミーたちに色々と指示をしながら材木を運んだりしていた。
「克己様、連れてまいりました」
克己は振り返り、三人の顔を目視する。
「悪い、もう少しだけ待っててくれる?」
克己が言うとルーは首を何度も首を縦に振る。
暫くして克己は作業を中断させる。皆はお茶を飲みながら椅子に座り、雑談を始めた。
克己は何かを考えている顔をして、二人に向き直る。
「お待たせ、それで……ドラゴンはどこに飛んで行ったか教えてくれる?」
サラミは克己に話しかけられるのは購入されたときだけだったのでかなり緊張し、ルーは目を輝かせながら克己の眼を見つめる。
「聞いてる? サラミちゃん」
克己が苦笑いをしながら質問すると、サラミは慌てて答える。
「あ、あ……す、すいません……そ、その……方角が……分かりません……」
サラミは緊張しながら答え、克己はルーの方を見る。
ルーは首を横に振り、克己は目を伏せた。
「克己様?」
サラミが克己の顔を覗き込む。それを見たルーはサラミの頭を叩く。
「痛! な、何するのよ! ルー!」
ルーは首を横に振り目配せをすると、ノエル達がサラミを睨んでいた。
「サラミ、克己様が考察しているところを邪魔するな……」
ノエルが突き刺すような目で見ながら言う。
サラミは背筋を伸ばしてノエルに頭を下げる。
「も、申し訳ありません!! ノエル様!」
克己はそれに気が付き苦笑いをした。
「ノエル、そんな声を出すんじゃない。しかし……ドラゴンの群れか……様子を見るしかない……のか?」
克己は空を見上げ呟く。
ノエルの指示により二人は席を外すよう言われ、街をぶらついていた。
「ルー、貴女はこの後はどうするの?」
ルーは首を傾げながら歩き進む。取り敢えず二人は疲れを癒やすためにあてがわれている家へと向かい、今日は休むことにしたのだった。
克己達は仕事を再開させる。だが、ドラゴンの話を聞いて克己はやる気を失っており、頭を働かせることができなかった。
「あーダメだ……。レミー、一緒にそこらを探索しないか?」
休憩していたレミーに話しかける。
「え? わ、私……ですか?」
「嫌なら……ガル……」
「行きます! 行きますから待って下さい!!」
レミーは立ち上がり慌てて克己の腕に抱き着く。それを見ていたノエル達はレミーに殺意を抱くのだった。
「じゃあ、武器を装備して少しだけ探索に行こう」
克己が言うと、リーズが手を上げる。
「お供させてください!!」
克己はチラリとリーズを見て耳裏を掻く。
「じゃあ……皆で行こうか?」
克己の一言でレミーは絶望に満ちた顔をして、皆はリーズを褒め称える。
「10分後に出発。準備を急ぐように」
克己が言うと皆は急いで準備を始める。レミーは探索に出ている回数が多いため荷物は常に袋に入れていた。
「克己様……二人きりじゃないのですか……?」
「それは明日にしよう。今日は皆で出掛ければ文句は言わないでしょ?」
「あ、明日は二人で……?」
「二人で。人が多いと逆に邪魔になる」
「あ、アルスやハミルなどは……」
「今回は連れて行かない。この間、近くに洞窟を数個発見したんだ。洞窟の魔王に確認したが、そんな洞窟は作っていないそうだ。洞窟の探索経験が多いのはレミー、君が多い。だから一緒に行きたい」
「い、一緒に……」
レミーは頬を赤くして克己の眼を見る。
「レミー頼りにしてる。お前は二番目に仲間になった子だからね……」
「か、克己様……」
レミーは嬉しそうに微笑み克己の腕に抱き着く。
克己は胸の感触を楽しみながら皆が来るのを待っていた。
暫くして全員がそろい、街の外へ出る。そして洞窟がある場所へ移動するとレミーが怪訝な顔をする。
「克己様……明日は二人で行くのは止めましょう……せめてアルスやハミルのどちらかは……」
「その理由は?」
「ここは私一人では厳しく感じます……感……と言って良いのでしょうか……最低でもどちらかは必要に感じます」
克己は少し考える。
「分かった。ルノールとアルスを連れて行こう」
「はい……今度二人でお買い物に……」
「そうだな、渋谷辺りでレミーの服でも探索してみるか」
克己が笑いながら言うと、レミーは嬉しそうな顔をして微笑んだ。
「さて……レミーがここまで言うんだから、気を引き締めて行こう!」
克己が言うと、全員は強く返事した。




