160話 二人の終わらない冒険!!
二人は森の中を歩く。騎士達が教えてくれた街を目指し……。
「まだたどり着かないのぉ……もう疲れたよぉ……」
サラミはブツブツと文句を言いながら歩く。
ルーが歩くのを止めて指を差すと、サラミはその指差す方向に目をやる。
「お、おー!! ま、街だ! 街が見える!!」
二人は遂に街を発見し、早足で街へと向かった。
数時間歩き、ようやく街に到着した二人。
「ルー! や、やったね! 二人で街に来ることができたよ!!」
ルーは頷き、サラミとハイタッチを交わした。
「早くこれを換金してお金を手に入れよう! このお金は私達の物にして良いって克己様が仰っていたし、街をうろついて何か面白そうな物が無いか探そう! そして、克己様にお土産を買って帰ろうよ」
ルーは頷き、二人はギルドへと向かっていく。すると、二人が歩いていると後ろから声を掛けられた。
「サラミじゃない? 貴女達、何時この街へやって来たの?」
サラミとルーは振り返り、呼んだ相手を見てみる。それは仲間の奴隷……レミオとジュルコだった。
「れ、レミオ……貴女達もこの街に来ていたの……」
「うん、四日前にこの街へ到着したわ。あなた達は?」
「い、今さっき……」
「ふ~ん……相変わらずサラミってば……鈍臭いのね」
レミオは鼻で笑いながら言うと、ルーは頷く。
「ちょ、ちょっとルー! 貴女はどっちの味方なのよ!!」
「ルーもこの子の子守が大変だったでしょ? 大した魔法が使えるわけじゃないし、戦い方も下手……足手まといだったでしょ? ノエル様やレミー様達が一生懸命教えても鈍臭いこの子は……」
レミオが言いかけると、ルーはレミオを殴り飛ばした。
「れ、レミオ!!」
ジュルコは驚きレミオに駆け寄る。
「な、何をするの!!」
ルーはレミオに唾を吐きかけ、サラミの手を引っ張りその場から退散する。後ろではレミオ達が待てと叫ぶがそんなのお構いなしに立ち去った。
「ハァハァ……、る、ルーってば急に殴り飛ばすんだもん……でも……ありがとう」
ルーは知らん顔して息を整える。
「ありがとう、ルー……」
サラミは小さくお礼を言って再び二人はギルドを探し始める。暫く街を歩くとギルドの看板を発見する。
「あったよ! ルー!!」
二人はギルドに駆け込みカウンターへ向かう。
『いらっしゃい……』
店員は元気なく挨拶をする。
「な、なんか元気が無いね……」
サラミが言うと、ルーは頷く。
「ど、どうしたんですか?」
『どうもこうもないよ……ここ最近魔物が増えていてね……。昔はイングロト城があったし、フォルトア村もあった……しかし、あの戦争でイングロトは滅び、フォルトア村は協力したとして根絶やしにされた……。そのため、ここらは治安が悪くなったんだよ』
「い、イングロト……?」
『ここから二日ほど歩いた場所にある城だよ。と言っても……現在は廃城だけどね』
サラミは顔を青くさせる。
「だ、だけど……お、王は逃げ延びたって……」
『何を言っているんだ? 王は逃げ延びれなかったんだ。途中で掴まり、ジントニア王国に連れて行かれそこでギロチンにされちまったんだよ。騎士団と協力したフォルトア村の奴らと共にな……』
サラミは言葉が出なかった。自分達が見たものは一体何だったのかと……そして、ロロノの娘はどうなったのかと……。
店員が更に大きな溜め息を吐き、ルーは不思議そうな顔をする。
『そのジントニアもこの間滅ぼされちまったし……今この街を防衛しているのは街の者や冒険者だけさ……どうなっちまうのかねぇ~……』
ルーは旅に出る前に克己が言った事を思い出し、ようやく納得をする。
克己は言った。
『現在ここら辺は無法地帯となっている。それは、支配していた奴らが滅び、誰もここらを守る事をしていないからだ。だから俺達でここら辺を守り、この街を旅人や商人たちで埋め尽くすように頑張ろう! そのためにはお前達の力が必要だ。大変かもしれないけど……頑張ってくれ』
ルーは思い出し、頬を染める。この後、克己がルーの頭を撫でて言う。
『お前はどこ関わった雰囲気を持っているな。なんとなくアルスに似ている。無理は絶対にするなよ。そして必ず生きるんだ! この街に戻って来なくても良い。これからはお前の足で生きて歩んでいくと良い……頑張れよ』
克己はそう言って再び優しい顔してルーの頭を撫で、ルーは真剣な目をして旅立ったのだった。
それを思い出し、ルーは再び克己の元へ帰る事を胸に秘め、手に入れたコアを店員に渡す。
『お! かなりのコアを持ってきたんだな……ここ最近、この街に沢山コアを持ってくる少女が急増していて驚いているんだが……君が一番多いな』
店員はコアを一つ一つ確認しながらルーに言う。
サラミはそれを見て慌てて自分のコアも出し、ルーのコアと混ざってしまった。
「あ! ……ご、ごめん……ごめん……ルー」
ルーは首を横に振り、サラミの頭を撫でる。
店員は混ざってしまったコアを一緒くたにして換金を始めてしまう。二人は知り合いのようだからと勝手に判断してしまったからだ。文句があるのならばサラミに言ってくれというスタンスで店員はお金を用意した。
「ご、ごめん……ルー……」
サラミは落ち込み俯く。ルーは全く気にした素振りは見せずにお金を割ってサラミに渡した。
「る、ルー……」
ルーはサラミの頬を撫で、優しく微笑みギルドを後にする。サラミも慌ててルーの後を追いギルドから出て行った。
「る、ルー! ちょ、ちょっと待ってよ!」
サラミの言葉にルーは立ち止まり振り返る。
「い、良いの……? だって、コアの量だってあなたの方が上だったじゃない……」
ルーは頷き、微笑む。
「る、ルー!!」
サラミはルーに抱き着き涙を流す。ルーは少し困った顔してサラミの頭を撫で、サラミをあやす。サラミが落ち着くまでルーは頭を撫でていた。自分が同じ立場だったらそうして貰いたいと思いながら。
サラミは落ち着き、再び二人は歩き出す。目指すは宿屋だ。
「いい加減お風呂に入りたいよね」
サラミの言葉にルーが頷く。
「頭が痒いし……多分私達、臭いはずだし……」
ルーは頷き、自分の体を嗅いでみる。そこまで臭くはないと思いながらも克己に臭いと言われたくはないと考える。
そして二人は宿屋へ到着し、チェックインして部屋へと向かい直ぐにお風呂へ直行すると、ルーの部屋だけお風呂が故障していた。
項垂れるルー。気を取り直してサラミの部屋へと向かい、お風呂を貸してほしい事を伝えると、快く貸してくれた。
お風呂から上がり、頭を下げ自分の部屋へ戻り、ようやくゆっくりと寝ることができホッとするのであった。
翌朝になり、サラミと共に街を探索する。レミオ達に会わないように祈りながらお土産を購入し、自分達の街……スペスルクスへ帰る事にした。
「サラミ、帰りも冒険の続きだよ? 今度は真っ直ぐ街へ……私達の愛しいご主人様が待つ、あの街へ戻ろう」
「うん! 戻ろう!」
二人の冒険はまだまだ終わりを見せなかった。




