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158話 ある二人の人里探し!!

 魔王が言うように克己は近隣の街までコアを売りに行かせる。そして、売り払ったコアは自分の物にしても良いと通達も出し、新人達は喜びながら近隣の街へと出かけて行った。そして、自分たちは必ず戻って来ると言い残して……。


 各方面に散って行った奴隷少女の一人、ルー。


 彼女は皆と一緒に行動せず、一人で街に向かおうとする。人付き合いが苦手で、人と喋るのを避けるために一人で行動していた。すると、サラミと言う名の奴隷少女に声をかけられる。


「ルー、一緒に行こうよ! 一人より二人の方が絶対に良いよ! 私、多少だけ回復魔法を使えるし……」


 サラミは研修期間にルーと知り合っており、ルーはサラミの顔を覚えていた。少し考え、ルーは頷く。


「じゃあ、一緒に頑張ろう!」


 サラミは手を差し出し握手を求める。だが、ルーは知らん顔して先に進み始め、サラミは頬を膨らませながら後ろから追いかけていく。二人は無言で歩き、体力の消耗を避けながら先に進む。だが、サラミがその沈黙を破った。


「ルー、あなたはどのくらいコアを持っているの?」


 ルーは立ち止まると、袋の中からコアを取り出しサラミに見せる。


「思ったよりも少ないわね。まぁ、そういう私も変わらないくらいなんだけど……」


 サラミは笑いながら言う。ルーはコアを袋に仕舞い、残念そうな顔をしてサラミを見つめ先に進み始めた。


 サラミも追いかけるように付いていくと、狼タイプの魔物が現れ、二人は慌てて武器を取り出す。


 狼タイプの魔物は、警戒しながらゆっくりと左右に動き、二人の様子を窺う。その間にルーは銃を構え、照準を絞り込む。


「相手が飛びかかって来てくれる方が楽なんだけどね……」


 小さい声でサラミが言うと、ルーも同意して頷いた。狼タイプの魔物は一定の距離を保ち、二人の様子を窺う。そして、暫くすると襲い掛かってくることは無く姿を隠した。


「逃げた? それとも……」


 サラミは急に出てくるかもしれない魔物に警戒する。魔物がいなくなって時間が少しだけ経つ。だが、魔物が現れる気配はな、二人はホッとしながら顔を見合わせ先へと進んだ。


 先に進むにつれ、道は険しくなっていく。ここ数年、誰もこの道を進んだ様子は無いように感じられる。


「日が傾いてきたし、今日はここら辺で休憩できる場所を探して休まない?」


 サラミの言葉にルーは頷き、休めそうな場所を探し森の中へと入って行く。すると、大きい岩があり、二人はその場所で休憩をすることにした。


 二人は薪を拾いに少しだけ森深くへと歩いて行く。少しすると、両手いっぱいに薪を拾い集め休憩場所へと戻って行く。


 火を焚き、袋の中からレトルト食品を取り出し調理を始める。簡単に出来上がった夕食を食べ、二人は空腹を満たした。


「ご主人様の住んでいる世界は凄いわね……」


 食べ終わり、一息ついたサラミが言う。ルーは頷きゴミ処理を行う。


「明日は街か村があると良いわね」


 サラミが満天の星を見つめながら言う。ルーは何も答えずに一緒に空を見上げていた。


 二人は緊張と疲れにより強い睡魔に襲われ、逆らう事も出来ずに眠りについた……。


 暫くの間、火はパチパチと音を奏でていたが、徐々にその力は弱まり消えていく。


 そして草むらの影から狼タイプの魔物が現れ、眠っている二人の傍を警戒しながら近寄っていく。


 魔物は二人の体を鼻で嗅ぎながら安全を確認する、ルーは寝返りをうち、体を動かすと毛皮のようなものに触れ徐々に意識を覚醒させていく。


 半眼で見えた物、それはサラミの体を嗅いでいる魔物の姿。ルーは一瞬何が起きているのか分からず思考を回転させ、慌てて体を起こす。


 魔物もそれに気が付き二人から距離を起き威嚇の唸り声を上げる。


「ッ!」


 ルーは袋からビームサーベルの柄を取り出し身構える。だが、サラミは気が付いておらず、まだ眠っていた。


 魔物は雄叫びを上げ仲間を呼ぶと、草むらの影から数匹の魔物が現れた。


「ッ!」


 ルーは袋からビームライフルを取り出し左手に装備し、右手にはサーベルを持って構える。


 魔物は一斉の襲いかかり、ルーは躱しながらサーベルを振り回す。この騒動の中、サラミは目を覚まさず眠っていた。


 息を切らせながら攻撃を躱すルー。ライフルを撃ちサーベルで魔物を斬り捨て、最後の一匹を仕留め上げる。


「ハァハァ……」


 息を整えながら魔物が傍にいないかを確認し、地面にへたり込む。少ししてルーは立ち上がり、サラミが無事なのを確認して、倒した魔物のコアを取り出し食べられるブイを切り取り袋に仕舞う。そして、自分のレベルが上がっていることに微笑み、再び火を焚き眠りについた。


 翌朝、ルーはサラミに起こされる。


「ルー、起きてよ、ルー!」


 ルーは目を擦りながら目を覚ましサラミの顔を確認する。


「もぉ! ルーってば、ネボスケなんだから……」


 まさかの言葉にルーは目を丸くする。昨晩、魔物が襲って来ても起きやしなかった奴にネボスケと言われるとは……と。ルーはガックリと肩を落とし四つん這い状態で項垂れる。


「何してるのよ、早く食事をして街か村へ向かいましょ」


 ルーは項垂れながら頷き食事の準備を始める。昨晩倒した魔物の肉を使い、朝食を作った。


「水の量が随分と無くなったわね……。何処かで補充する必要があるね」


 サラミは水筒を振って量を確認する。チャプチャプと音がするが、余り量がある音ではなかった。ルーは袋の中から水が入った樽を取り出し、サラミの水を補充する。


「ルーってば……用意が良いわね……」


 サラミは感心した声を出し、ルーは素っ気ない顔をした。


 そして二人は再び歩き出し、街か村がある事を期待しながら先へと進んだ。

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