15話 洞窟制覇!!
克己達は先へと進み、ついに地下10階へと辿りつく。
途中で宝箱が有り、開けたりして中を確認する。中には皮の盾や金貨数枚が入っていたりと、色々な物を手に入れていたりしていた。
皮の盾はレミーが装備し、金貨に関しては申し訳ないが克己が回収する。
そろそろ休憩の時間になり、ノエル達はご飯を食べて不寝番の順番を決めていた……その時、奥から物凄い地響きがしてくるのであった。
「か、克己様、さっきの地響きはなんでしょう?」
ノエルが不安そうな声で克己に聞いてきたが、足を踏まれた件を根に持つ克己が分かるはずもないので「知らん」と、簡単に答えて終わらせる。
「シェリー姫や、レミー達は何か分かったりする?」
ノエルは聴くだけ聴いてみたが、結局誰一人として分からずじまいだった。
「もしかしたら、ただの地震かも知れないし、それともドラゴンなんかみたいな、巨大モンスターの叫び声が響いてきたのかも知れない。それが何か分からないけれど、先へ進む時や不寝番するときは注意してくれ」
克己がそう言うと、皆は頷く。
「そういえば……アルスは土魔法が使えるんだよな? どんな土魔法が使えるんだ?」
克己は話を変えるため、アルスに土魔法についてレクチャーして貰うことにした。
「土魔法にも色々あるみたいですけど、私が使えるのは防御系の薄い壁を作り出す魔法です」
アルスが言うと、克己は何かを閃いた。
「もしかしたら……不寝番しなくて良くなるかもしれないぞ!」
克己は閃いた事を皆に説明し、皆は驚きながら頷いて納得する。そして、克己の案に乗っかる事にした。
克己が閃いた作戦とはこういう事だった。
道の行き止まりまで進み、そこに壁を作れば空間ができる。魔物はやってこないため不寝番をしないでゆっくりと眠れるとのことだった。
克己達は直ぐ行動に移し、行き止まりまで進む。皆が寝そべれる程のスペースを確保して薄い壁をアルスに張らせる。
ダミーの壁ができて魔物も分からないだろうということで、全員がゆっくり休むことができた。
だが、皆は先ほどの地響きが気になるのか、克己達は中々寝付けなくモヤモヤした気分になる。克己は気を紛らわせるため、全員のレベルを確認することにした。
「皆のレベルは今、どのくらいなんだ?」
克己が言うと、ノエルが「私はレベル8になました」と答え、レミーは7、アルスは6でシェリーは10と答えた。
「皆結構上がったな!」
克己が言うと、克己様はあのまま17なのかとノエルに聞かれ、素直に答えることにする。
「現在、レベルは25だよ」
そう答えると、全員が目を丸して驚く。
また職業欄も克己はガンマンだけではなくドラゴンバスターと剣士の三つがついていた。
多分、黒龍をやっつけたのがレベルアップの決め手となったのだろうと思い、皆に話すと、ノエルとアルスは羨ましがるのであった。
この様にゆっくり話すことは今までなく、丁度良い機会だからゆっくり自己紹介でもやってもらおうと克己は思い、自己紹介をするよう言う。だが、いきなりは緊張するだろうと思い、まずは自分の事を話すことにした。
「言い出しっぺは俺からだな、一番始めに話をしよう。皆も知っているように異世界からやってきた商人? みたいなものだ、特技ってことではないが武器の開発なんかもできるぜ」
克己は言葉を選びながら自分を紹介し、次はノエルが話し始める。しかし、克己は楽しい自己紹介になると思っていたのだが、予想は外れてしまい上がっていたテンションがガタ落ちすることになるのだった。
ノエルは復活した魔王を倒すため、村の勇者として旅に出たが、途中で山賊に襲われ奴隷として売られてしまい、今に至ったらしい……。
アルスやレミー、ハミルに関しては冒険者を目指して修行をしていたが、家のお金がなくなり、仕方なく親に売られたそうだ。
シェリーに関しては聞くまでもない、優雅な生活を送っていたが、姉の不祥事で克己の元へと送り込まれたと言い切った。その後、姉に対して恨み節を吐いていた。楽しくなると思っていた自己紹介……蓋を開けてみると、悲しい紹介になっていたのだった。
「じ、じゃあ、そろそろ寝ようか……」
克己は明かりを消す。すると、ノエルとアルスが左右に陣取り、克己は挟まれる形で寝ることになってしまった。
「これじゃあ寝にくい……蛇の生殺し状態だよ……」
そんな事を思いながら眠りにつく。
翌日、克己の携帯アラームが鳴り響き、克己は目を覚ましてアラームを止めて時間を確認する。時間は午前7:00で、起床時間だったので、克己は体を起こしライトを点けてみると、四人に囲まれるように寝ていた。
一応、四人を起こし、直ぐに出発できる準備をして、アルスが壁を崩して先へ進む。
あれから地鳴りは起きず、全員はそのことを忘れていた。
12階まで進んでいくと扉があり、克己は誰がこんなものを作るのだろうかと疑問に思う。
扉の前で考えていると、また地響きと叫び声のような声がして、克己達は昨日の事を思い出し、体を震え上がらせた。
「こ、ここを開けたら多分ボスらしきやつがいるんだぜ? きっと」
「ぼ、ボスですか……それは魔王とかそんな類のものですかね?」
アルスはボスの意味を理解しておらず、克己に質問する。
「魔王直下の手下とかだよ、きっと」
克己が言うと、皆は気を引き締め、扉を開ける……が、直ぐに克己は扉を閉めた。
「な、なんだよ! あれ! なんで一つ目の巨人がいるんだよ!」
克己がそう言うと、アルスが目を輝かせて言う。
「でも、後ろに宝箱がありましたね、あれが財宝ではないでしょうか!」
流石アルス、目の付け所が違う! 克己達はビビって閉めたが、強心臓のアルスは部屋の中をちゃんと確認していた。
「こうなったらこれでやるしかないか……」
袋からビームバズーカを取り出し、弾の確認をしてもう一度扉を開け、今度こそ中に入る。そして直ぐにバズーカを撃ち放ち、一つ目の巨人に向かってビームが向かっていく!
一つ目の巨人は、顔面をビームで吹き飛ばされあっという間に屍になった。
アルスは屍になった一つ目巨人を見向きもしないで、宝箱のある方へ直行する。
この女、なかなか根性がすわってやがる……と、克己は思いながらアルスを見ていた。
やがてまた地響きがし、この洞窟ではないことが分かり、皆は一体何だろうかと思考していたが、答えは出なかった。
アルスが宝箱を開けると大白金貨が数十枚入っていて、克己達は大喜びする。克己は大金持ちになった!
「このお金が有れば王宮で爵位が買えますわ!」
シェリーはそう言うが、克己は卿の爵位を持っているので必要は無いと思い、一つ目の巨人からバカでかいコアを取り出し、袋へとしまった。
一息吐き、周囲を見渡す。が、特に何もないことを確認。克己は首を横に振り残念そうな顔をしてハミルに脱出の魔法を唱えるように指示をする。
ハミルは指示通り魔法を唱え、皆の体は光に包まれ洞窟から脱出した。
外は夕焼けに染まっており、街の方を見ると煙が上がっている。
「な、なんだ? あの煙は……?」
克己達はその煙を見て不安になると、急いで街へ帰ることにした。
数時間後、克己達が街へ到着する。辺りはボロボロでかなり建物が滅茶苦茶な状態になっていた。
克己は自分の家がどうなっているのか気になり、帰れなくなったらどうしよう思いながら家へと向かう。
家の方に向かうと克己の家の近所は思ったより被害が少なく克己は少し安心するが、自分の家を確認しない限りはホッとできることはないと思い、急いで向かう。
克己は家が無事でホッとするが、店が半壊状態だったことには気が付いていなかった。
家に到着するとペルシアが出迎える。
家の中も被害は全くなかったが、従業員たちはかなり怯えており、顔を青くしていた。
「ペルシア! 無事だったか! 良かったよ。だが……この街の状態は一体何だ! 何が起きたと言うんだ」
克己は出迎えてくれたペルシアに抱きつかれ、ペルシアは泣きながら説明を始める。
「数日前に突然、魔物の群れや、ドラゴンが襲来して街を破壊していったにゃ! 何故だかご主人様の家には目もくれず、お店などを破壊していきまくり、従業員とかと一緒にご主人様の家に避難していたにゃ!」
「なんてこった……俺の店もやられてしまったのか?」
ペルシアにそう問いかけるとペルシアは泣きながら頷いた。
「でも、ペルシア達が無事で良かったよ、安心した。何かあったらペルシアのお父さんに怒られてしまうからね」
克己はそう言ったら、ペルシアは更に泣き出してしまった。
なんとペルシアの父親はこの魔物の軍勢にやられてしまったらしく、命を落としてしまったらしい。
「ごめんよ……ペルシア、そんなこと知らなかったんだ……」
「仕方ないにゃ。でも、悔いしいにゃん! ここ最近魔物が増えているようだにゃん! あの噂は本当だったのかにゃ」
「あの噂とは?」
克己が気になり聞き返した
「最近、魔王が復活したって話にゃ!」
ペルシアが叫ぶように言って、ノエルはビクっとした。
「魔王が復活? どういうことだ? まぁ、まずは……ペルシア、すぐに大工を呼んで店をリニューアルしてくれ、俺は機材を手配するから。皆のやる気を取り戻すにはまずは活気を取り戻さなければならないからな!」
そう言うとペルシアは直ぐに大工を手配した。
克己は家に戻り、リサイクルショップへ電話して機材がまだあるかを確認する。無い物は新しく買い付け直ぐに届くようにお願いした。
また、宝石商の田中に電話し、一つ目モンスターから手に入った巨大なコアを売りさばき、驚愕な大金を手に入れてネット通販サイトでコップや皿等、色々な物を手配した。
数日後にはリサイクルショップのから荷物が届いたり、ネット通販サイトから荷物が届いたりして皆で機材を運び入れ上下水道の修理や電気工事など行い、店は大幅リニューアルして蘇る。
克己のお店が復活すると、克己は街の人に無償で食事を提供することにした。
人々は克己の行動に感謝してお礼を言う。
街はこんなに被害があったのに、この国は王様は何もしてくれなかった。シェリーにはそれが納得できずにいた。
「克己様、何故、無償で食事を提供するのですか?」
アルスが不思議に思ったらしく聞いてきた。
「あぁ、それは……俺の住んでいる国では当たり前の行動なんだよ、人が困っていたら手を差し伸べるんだ。俺の住んでいるところは地震や火山、津波などの自然被害が多く、皆が協力して復興に向かって手を差し伸べるという優しさや絆で結ばれている国なんだ……そりゃ、中には悪い奴もいるけど、俺達日本人は規律を守り、人を尊重することを大切にするんだと習ってきた。だからこれは、俺にとって当たり前の行動なんだよ。アルスもこうやって、人が困っていたら手を差し伸べてあげる人になってあげてくれよ」
アルスは感動したようで、克己を崇めるように見ていた。
「克己様、今のお話で分からないことがあります、地震と火山は分かるのですが……『ツナミ』とは何でしょうか……」
レミーが顎に手を添えて、考え込みながら質問をしてきた。
「津波は海が襲ってくるんだよ」
「海が? どうやってですか?」
「海から大波が襲い掛かってくるんだ、レミーはそういうのを知らないのかい?」
「多分、全員知りませんよ……」
「ほほぅ、あとでどんなものかを見せてあげるよ」
克己が言うと、レミーはお礼を言って克己が先ほど言ったように困っている人が居ないか周りを見渡し、給仕の作業を始める。
「さて、原因を調査しないと……」
克己が呟くと、ペルシアが言う。
「ご主人様、これは魔王の仕業にゃ!」
ペルシアの言葉を聞き、ノエルは再び体をビクつかせる。
「なら、落とし前をつけてもらわないとな……弁償してもらわないと……それにペルシアの父親の敵を討たないといけないな」
克己が言うと、ノエルを含めた全員が驚いた顔をしていた。
「ちょ、ちょっとご主人様! 危ないにゃん! 勇者が現れるのを待つにゃん!!」
克己は武器の調整を行い、改めてペルシアには魔王に賠償してもらうと言う。
「危険だから止めるにゃ!」
ペルシアが、必死になって止めるが、それでも納得ができなかった克己は、自分が戻ってこなければ店はペルシアに譲渡すると言って旅立つことにした。
「皆、悪いけど付き合ってくれない?」
克己はノエル達にそう言う。
「私達は奴隷なので、克己様の命令に従います」
ノエル達は真剣な目で付いて来てくれると言ってくれたのだった。




