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138話 黒服襲来!!

 アルスは驚く。理恵が喫茶店をやっていることに……。


「奥様……美味しいです……奥様は天才です!!」


 アルスは嬉しそうにコーヒーを飲んでいた。


「お前、髪の毛がボロボロじゃないか……後で切りに行って来いよ」


「克己様が付いて来てくれるのなら……行きます」


「甘えん坊になったんじゃないか? アルスちゃん」


 里理が揶揄いながら言うと、アルスは頬を赤くする。


「だって……こうして一緒に居られるですから……一つくらいは我が儘を言いたいです……」


「分かったよ、ノエル……お前もだいぶ伸びたから切に行くぞ……というか、全員だな……お前達、随分伸ばしたものだな……」


「アルスが無事に帰ってくるまで伸ばしっぱなしにしようって、皆で話を合わせましたからね」


「願掛けってやつか……」


 克己はコーヒーを飲み干し、全員分のお代を払う。


「じゃあ、行くぞ……。我が儘なお姫様」


 克己が言うと、全員は返事をして立ち上がる。


「ハミル、いつもの場所へ……ん?」


 克己が言いかけると、チェリーの入り口が開く。そこには黒服の男達が立っていた……。


 アルス達は直ぐ袋に手を突っ込み、臨戦態勢に入り男達を睨みつける。


「ノエル……」


「分かってる……チビ助……」


 二人は小さく微笑み袋の中から取り出そうとする。


「まだだ……まだ待ってろ……」


「克己……様?」


「お客さん……ここは喫茶店ですよ? どのようなご用件ですか?」


 克己は睨みつけながら言う。


「成田さんですね……ご一緒に来てください……」


「嫌だと言ったら?」


「無理にでも付いて来てもらいます」


「誰の差し金だ?」


「それは言えません……」


「じゃあ、出直してきなよ……」


 克己が言い終えると、ハミルは魔法を唱え、黒服たちを何処かへと飛ばしたのだった。


「じゃあ、髪を切りに行こう……」


 克己達は店から出ていくと、理恵は少し心配そうな顔をして見送ったのだった。


「ハミル、いつの間にあんな魔法を覚えたの?」


 アルスが楽しそうに質問する。まるで自分が未来にでも来てしまったような気分だった。


「移動魔法を応用しただけよ。アルスだって出来るわ」


「本当? 後で教えてよ!」


「えぇ……勿論よ。だけどアルス……」


「何?」


「ノエルにただいまって言った?」


「まだ言ってない……」


「アルスを一番心配していたのはノエルよ……。ちゃんと一言言ってあげなよ?」


「う、うん……分かった……」


 アルスはノエルをチラリと見る。ノエルは克己と楽しそうに話をしており、一言言うタイミングではないと思い。後ろをついていった。


 お店に到着し、店員はドン引きする。一度に複数人もの客が入ったからだ。いや、それはたまに有ることだが、並外れた美人たちが一同に入ってくるなんて早々にないことだからだった。


 店員は動揺したが、直ぐに営業モードに切り替え挨拶をする。


 皆は好き勝手な髪型を言って、再び店員を困らせるのであった。


 先にリーズとガルボ、レミー、ルノールの四人が椅子に座らされ髪をカットされていく。アルスはノエルの隣に座り、少し緊張しながら話しかけた。


「の、ノエル?」


「どうしたの? チビ助」


「し、心配かけて……ごめん。ただいま……」


「おかえりなさい、アルス……。本当に心配したよ……」


「う、うん……ごめん……」


「あなたの代わりは私達じゃあ出来ないんだから……。それに、奥様を守れるのは貴女しかいないのよ? だから、これからは遠くに行ってはダメだからね……」


「うん……ありがとうございます。ノエルさん」


「私はあなたが嫌いじゃないよ……。そりゃ……意見が食い違うこともある……。その時は何糞って思うけど……でも、アルスの考えだって分かるし……」


「うん……グスッ……。私も嫌いじゃないよ……。皆が好きだよ……ずっと一緒にいたんだもん……姉妹みたいなもんだって……」


 アルスは言葉に詰まる。すると、ノエルがハンカチをアルスに渡し、アルスはそれで涙を拭く。ノエルは上を向いて涙を堪えていると急に目の前に何かが乗っかり、慌ててそれを掴む。


「お姉ちゃんも我慢する必要は無いんだぜ?」


 克己はそう言って少し席を外す。


「アルス……。無事に帰ってきて良かったよ……うぅ……」


 ノエルは声を殺しながら克己のハンカチを濡らすのだった。


 少し離れたところに座っていたハミルは嬉しそうに二人を見ていたのだった。


 克己は店の外に出る。すると、再び黒服を来た別の男達が克己を取り囲む。


「女に守られている情けない男……」


 黒服の一人が呟く。


「勘違いするなよ? 俺は彼女等のように優しくないぜ」


「取り押さえろ!」


 黒服の一人が言うと、一斉に取り押さえにかかる。克己は一人ひとりに蹴りを入れていき、伸ばしていく……。


「さて……残りはお前だけのようだが?」


 黒服の男は後退る。


「雇い主は誰だ? 答えなよ……」


 克己は徐々に男へ近寄ると、男は走って逃げようとするが、振り向いた瞬間に顔面を殴られノックアウトされる。


「私のご主人様に何をする! 愚か者!」


「お疲れさん。アルス……」


「気が付くのが遅くなり申し訳ありません……」


「いや、十分だよ……」


「しかし……コイツらは一体……」


「政治家の何かだろ? さて、戻るか……」


 克己が言うと、アルスは嬉しそうに克己の隣に立ち、克己の手を握り歩き出す。克己は振り払ったり、離そうとしたりはせず、アルスの小さな手を握り返した。


「やれやれ……次はどのように行動を起こすのかな……」


 克己はそう呟き、店内に戻ったのであった。


 しかし、危険は克己だけにやって来るのでは無かった。


「な、何なんですか! あなた達は!」


 理津子は路地裏で黒服の男達に囲まれる。


「成田克己の身内……だな? 調べはついている……」


 黒服の男が理津子に手を伸ばす。


「あぁ、関係者さ……。お前らは違うけどな……」


 黒服の後ろから声が聞こえ、次々と男達は叩きのめされていく。


「お、及川さん!」


「お早う、理津子さん……チラリと見えたから……間一髪だったかな?」


 涼介が周りを見渡しながら言うと、理津子は涼介に飛び付いて泣き出した。


「全く……何が起きてるんだ? 一体……」


 泣きじゃくる理津子を抱え涼介は呟いた。


「雫さん! こっちです!」


「カルル、雫さんを連れていって! 僕が食い止めるから!」


「キール、任せるわよ!」


 カルルは雫の手を引っ張り逃げていく。


 キールは黒服の男達を一人ひとり叩きのめしていく。


「な、何が起きてるのよ!」


 雫は叫び、カルルに手を引っ張られ走って逃げていく。


 その頃、克己達は……。


 克己は店内で腕を組、切られていくリーズ達の髪を見ていた。


「もうちょい明るめにしてもらいます? この子はそれが似合うと思うんですよね……」


 克己は立ち上り、店員に注文をつける。店員は煩い奴だと心で思いながら、苦笑いをしてリーズの髪の色を抜く。


「その子はもう少し髪をスイてくれます? 全体的に重く見えちゃうから……」


 ガルボの髪を全体的に軽くするように指示して店員は鬱陶しさを感じていた。


 ルノールや、レミーに対しても同じように注文をつけ、アルス達は立ち上り四人の髪型を確認して目を輝かせていた。


「髪型一つでこんなにも変わるんだね……ノエル」


 ハミルがノエルに言うと、ノエルは自分の長い金髪の髪を手でもち、眺める。


 克己はノエルに近付き、ノエルは緊張する。


「お前の髪が一番綺麗だからな……どの様にするかが難しい……」


「き、綺麗だなんて……。あ、アルスの方が綺麗ですよ……」


「謙遜するな、お前の髪が一番綺麗だよ。皆には悪いが……」


「お、奥様……よりもですか?」


 ノエルの質問にアルスは何を言っているのだと思いながら聞いていた……。


「そうだな、理恵よりも綺麗だと思うよ。ノエルの髪は。理恵も言っていたしね」


 克己が言うと、ノエルは顔を真っ赤にして頭から湯気を出し椅子に凭れ込む。


「逆上せてしまったようですね……」


 アルスはそう呟き、袋の中からビニール袋を取り出すと、ハミルが氷の魔法を唱え、ビニール袋の中は氷で一杯になった。


 そして、ノエルの頭に乗せると、勢いよく氷は溶けていくかのように見えるのであった。


 皆が笑いあっていると、克己の携帯に着信が入る。


「非通知? 誰だ? 一体……」


 克己は首を傾げ、電話に出る。


『成田克己だな……』


 相手はボイスチャンジャーを使っているようで声が機械じみていた。


 克己は電話を直ぐに切る。


「ノエル、直ぐに里理ちゃんに連絡して逆探知するように!」


「え? あ、はい!」


 再び克己の携帯に着信が入ったので、少し間を開けてから電話に出た。


「すまんすまん、電波が悪くてね……」


『……成田克己だな……』


 克己はやり直しかよと思いながら話を続ける。


「誰だい……? あんた……」


『お前の身内を預かった……』


「俺の身内? 誰の事を言ってるんだ?」


『……森田……宏太……、早霧……千恵……』


 名前を聞いた瞬間、克己は髪の毛が逆立つような感覚に襲われる。


「お前は誰だ……。何が目的だ!」


 克己が叫ぶと電話が切れ、ノエルは里理に確認の電話をする……が、首を横に振った。


「替われ……。里理ちゃん、発信先も確認できないか?」


『今やってる……。どうしたの? カッチャン……』


「宏太くん達が拐われたっぽい……。理恵に家族の安否を確認させて! 他の人は大丈夫だと思うんだけど……」


『わ、分かった。理恵ちゃん……』


 電話もとで大騒ぎになっているようで、混乱している理恵の声が聞こえる……。


「克己様、飛びます! 奥様の傍に……。ハミル、皆を頼むよ!」


「分かった! ノエルも一緒に」


 ハミルが言うと、アルスは魔法を唱えチェリーに戻ってくる。


「か、克己さん! 宏太と連絡が取れません!」


 克己は舌打ちをしてテーブルを叩く。


「カッチャン! 相手は携帯から掛けたようだ! 宏太くんの携帯GPSも調べた!」


 里理が大声で言うと、克己は里理のPCを覗きこんだ。


「場所は……宏太のマンション? 携帯は持っていないのか?」


 克己は暫く覗き込むと、マークがマンションから動き出す。


「まだ遠くには行ってない!」


 克己はPCを掴み店の外へ出る。そして袋から車を取り出しノエル達も乗り込む。


「ベルトはしっかり付けろよ!」


 克己は叫び、アクセルを踏み込むと、タイヤはギュルギュルと滑らしてから猛発進をした。

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関係者は家族・親戚縁者及び知人を含む末端まで完全殺処分」 国なら「国家の関係者の完全抹殺」が最善処理、あくまで「処理」ね、唯のゴミだから。
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