番外編 アルスの冒険禄②
洞窟の入り口に立つ四人。三人は唾を飲み込み、洞窟の中を覗く。
「こ、この中で洞窟に入ったことがある奴……いるか?」
カポックが聞くのだが、二人は首を横に振る。
「私は……数回ありますよ」
三人が入ったことが無いという手前、自分は何度も入っているとは言えず数回と言って数は誤魔化した。
「あ、アルスくらいでもあるのなら……俺達でも大丈夫だろう」
どんな基準だと思いながらギルファートの言葉を聞いていたアルス。カポックは松明を持って中へと入って行った。
松明の明かりは不安定で、アルスは懐中電灯を出そうか悩む。だが、こんな場所でそんな物を出したら面倒になる事は間違いないため、我慢することにしたのだった。
暫く歩くと、目の前から骸骨騎士が現れ、三人は戦闘態勢に入る。
アルスは安物の剣を取り出して構えたフリをして様子を三人の様子を窺う事にした。実力を判断したいため……。
カポックは剣を振りかざし骸骨剣士に攻撃を仕掛ける。だが、骸骨剣士は剣で受け止め攻撃を防いだ。その隙を狙ってギルファートが剣で薙ぎ払い、骸骨剣士の体を斬り裂いた……と思ったのだが、所詮は骸骨……斬り裂いたのは服だけであり、骸骨剣士はギルファートの顔面を殴り、ギルファートは地面に沈む。
「ぎ、ギルファート!!」
ソルシアが声を上げてギルファートに近寄る。ドラゴンを倒したことがあるのではないのかと、アルスは思いつつ安物の剣で垂直に斬り倒した。
鞘に剣を納め、ギルファートに声をかける。
「皆さん大丈夫ですか? ギルファートさんが隙を作ってくれたおかげで、相手を倒す事が出来ました……ありがとうございます」
ギルファートの名誉を潰さないために言うと、ギルファートは笑いながら立ち上がった。
「よ、よく分かったな、アルス……お、お前、中々素質があるんじゃないのか?」
「ドラゴンバスターにそう言ってもらえると嬉しいですね」
苦笑いしながらアルスが言うと、ソルシアはアルスの自信を付けさせるためとギルファートが気を使ったのだと勘違いし、尊敬の眼差しでギルファートを見ていた。
そして四人は気を取り直して先に進む。
何度か魔物が現れ、苦戦しながら三人は魔物を倒す。アルスは苦戦をするフリをして魔物を倒し、コアを回収する。
先に進むにつれ魔物が強くなってきており、三人はかなり体力を削がれたいた。
「そろそろ休憩をしましょう。無理して先に進む必要はありません。ゆっくりと着実に進んだ方が良いでしょう」
アルスの提案に三人は頷いた。
「そ、そうだな……休憩を取ろう」
アルスの言葉を自分の言葉のようにカポックが言う。そして四人は座り、三人はグッタリとしていた。仕方なさそうにアルスは食事の準備を開始する。
三人は体を起こしてアルスの方を見る。先程手に入れたコアを使って火を焚いており、何を作っているのか気になっていた。
「私の大切な人が作ってくれるのですが……」
そう言って恥ずかしそうに作っていく。そして、食事が出来上がり三人に渡す。
「野菜炒めと言うものです。お口に合うか解りませんが……」
三人にとっては珍しい料理……香辛料の匂いが食欲に刺激する。
カポックがフォークで食べ始める。ピリッとするが、美味しい……フォークで食べる勢いが増し、二人は感想を求めてくる。
「う、上手い! これなら店が開けるレベルだ! アルス、君にこんな特技があるなんて……」
カポックの言葉に二人も食べ始める。初めて食する料理に声を上げて喜んだ。だが、克己の作ったほうが美味しいと思いながらアルスは自分の料理を食べるのであった……。
「さて、腹ごしらえも終えた事だし、そろそろ先へ進むか……」
カポックの言葉に二人は頷く。三人が進むのなら、アルスも行くしかないため準備を始める。
「まだ地下三階だ……先は長く、強敵が出るだろう。気を引き締めて進んでいこう」
カポックの言葉に二人は頷き前に進んでいく。宝箱や魔物と遭遇を繰り返しつつ先へと進むのだが、人間は睡魔に勝てるはずは無い。再び休憩を取って睡眠を図ることにするのだった。
「明かりは消さないために交代で休みを取ろう」
カポックの言葉にギルファートが質問する。
「誰が始めに寝ずの番をするんだ?」
三人は顔を見合わせ、お互いの状況を探る。醜い争いが面倒になったアルスが口を開く。
「私がやりますよ……。何時間で交代しますか?」
「大体3時間で交代しよう」
順番が決まり、それぞれは少し離れて眠りに就く。アルスは小さく溜め息を吐いて火の番をするのだった。
時間が経ちアルスは腕時計を確認する。時間は3時間半が過ぎていた。この位過ぎて入れば問題ないだろうと思い、交代するためカポックを起こす。
「カポックさん、時間ですよ……交代をお願いします」
「……ぐぅ〜ぐぅ〜……」
「カポックさん、起きてください」
「ん、んぁ? も、もう時間か? 早くないか?」
「既に3時間以上過ぎてますよ……」
「そ、そうか……。分かった……」
そう言われ、アルスは少し離れた場所で横になり眠りに就く……だが、相手は不慣れな冒険者達……アルスが目を覚ますと事件が起きるのであった……。




