130話 最終対決!!
静かで玉を突く音が響く部屋……ビリヤード場である。
外は大雨が降っており、最終決戦という場所に相応しい雰囲気になっている。
「ルールはさっきも説明したようにこのナインボール……数字の9が書かれている球を先にポケットに落とした方が勝ちだ。しかし、最後の一個になるまでは直接攻撃して球を落としてはダメだ……必ずワンクッション……えっと他の球に当ててからぶつかる様にして落とす。他の球は1~8まで順番に落としていく……いいね?」
「「分かりました……」」
克己は隣のテーブルでタブレット使ってルールを読みながら、里理と理恵に説明していく。ノエル達も他のテーブルを借りており、そこで遊ぶつもりなのだが、やり方が分からないため克己を囲んで話を聞いていた。
「成る程、最後に9番を落とすか、途中でクッションにさせて落とすかだね……白い球をいかに外さず、自分のやりやすいように、相手のやりにくいように持っていくかがカギだね」
里理は頷きながら呟く。
「ではやってみよう……ちなみにビリヤードは静かに、冷静沈着、集中力のゲームだそうだ……騒がないように気を付けてくれよ」
克己が言うと、皆は頷きテーブルに散らばって行く。
各騎士団たちは自分達の主が行う試合を見守っていた。
涼介は審判をやる事になり、ダルそうに見守っている。
「じゃあ、先ずはブレイクバンキングからだな……えっと、球をショットして一番自分の手前に来た方が先行……ブレイクショットが出来る。じゃあやってみてくれ。細かいルールは基本的に無しとするから」
涼介が言うと、隣では克己がノエルと勝負しているらしく、ノエルのブレイクショットが決まり球が弾かれる音がする。
弾が弾かれる音が響き、ロミール達は一瞬そちらを見る。
「ノエル、上手いな……」
「克己様……この勝負、私が勝たせて頂きますよ……」
ノエルは格好良くタップにチョークを塗る。それを見たロミールは自分もやりたくなり、チョークを持ってノエルの真似をしてやってみる。
「殿下、出来るお人に見えますよ!」
騎士団のカルッペスが言うと、ロミールはすまし顔で言う。
「そうか? 私は普通の事をやっているだけだが……」
「流石、殿下……!! 気品に満ちております……」
カルッペスが言うとロミールは嬉しそうに微笑む。
ブレイクバンキングはセデルが勝ち、ブレイクショットを譲る形となった。ロミールは悔しそうな目をしてセデルを睨む。
セデルは勝ち誇った顔してブレイクショットをして、球は弾かれ散らばり、何個か球はポケットに吸い込まれていく。
「セデルの番だな」
涼介が言うと、ロミールは舌打ちをする。自分だって早くやりたいのに……と、思いながら見ていた。
しかしセデルのセカンドショットはプッシュアウトしてしまい、ファールになってしまう。
「皇女さんの番だよ。球を好きな場所に置いて打って良いよ」
涼介が言うと、セデルは卑怯だと批判する。
「ルールだからね。セデルが球を当てないのが悪い」
セデルは納得がいかない顔してロミールのショットを見守る。
「フム、ここに置いて打っても構わないのか?」
「あぁ、構わないよ」
セデルは卑怯者と思いながらロミールのショットを見守る。
ロミールがショットすると、当たった球はポケットに落ちて行く。しかし、白い球は次の場所からかなり離れており、ロミールは難しい顔をした。
「早くやってくれませんか?」
「うるさい! 私の番だろうが!」
セデルは挑発するようにロミールに言うと、ロミールは考えなしに球を打ち、他の球に当たってしまう。
「ファールだな。セデル、その球を好きな場所に動かして良いぞ」
涼介が言うと、セデルは嬉しそうに球を手に取り、球をセットする。そして、セデルはショットすると一緒に手球も落ちてしまった。
「落ちてしまった球はそのままで、今度は皇女さんが自由に球を置いていいよ」
ロミールは勝ち誇った顔して球を置いてショットする。今度はしっかりと落として手球は残る。もう一度ショットして次の球に当てるのだが、球は落ちずに他の場所へと転がって行く。
セデルの番となり、セデルが球をショットするが、ポケットに入って行かず一進一退の攻防を繰り広げていた。
里理と理恵は……。
「里理さん、上手いですね!」
「理恵ちゃんこそ、上手いよ」
二人は楽しそうにビリヤードを楽しんでいた。
克己とノエルは……。
「克己様の番です……」
「分かっている……。この流れだと……あそこにクッションさせれば……」
ブツブツ克己は言いながらキューを構えショットするが、思い通りにはいかず球は外れてしまった。
ノエルはニヤリとして、克己は再びブツブツ言いながらイメージトレーニングをしていた。
離れた場所で見ていた里理は、克己は球技が苦手なのだと思いながら見ていた。
「中々やりますね……皇女さん……」
セデルは真剣な目でロミールに言う。
「ロミール……私の名だ」
「ロミールさん……私はセデル……」
二人は熱い握手を交わし、睨み合っている。騎士団たちは、勝負をすることで、麗しい友情が芽生えたのかと思いながら見ていたが、二人は力強く握り合っており、負けられないという思いが強かった。
再び二人はキューを握り、球を打ちあう。
そして数時間後に二人の対決は最後を迎えるのであった……。




