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129話 絶対に負けられない戦い・・・その2

 遂に戦いの火ぶたが切って落とされる……。


 涼介はマレットでパックを叩く……克己は目にも留まらぬ速さで弾き返し、涼介のゴールに向かってパックは滑って行く。小春は精一杯手を伸ばしマレットでパックを弾きゆっくりとしたスピードで里理の前にパックがやって来る!


「くらえ!! スマッシュだ!!」


 里理は腕を振りぬきパックを思いっきり叩くと涼介のゴールへとパックが吸い込まれていく。ガラガラっと音がした後にコートの上についている得点表示板……克己の方に1得点と点灯する。


 セデルとロミールは「おおぉ!!」と、驚きの声を上げて試合を見ていた。騎士団たちは仲間同士で試合について相談を開始する。


「やりました!! 流石、里理さんです!! この調子で頑張って下さい!!」


「任せて!! これは一度やってみたかったんだ!」


 里理も初めてやったらしく興奮している。


 両チームパックを叩き合いながら得点を重ねていき、白熱した戦いを繰り広げる。


「中々やるな!! 克己!!」


「しぶとい野郎だ……涼介!!」


 お互い必死な顔して戦いを繰り広げる。しかし、残り数秒で涼介達は逆転に成功し、勝利を収めるのであった。


 二人は息を切らせながら握手を交わし、お互いの健闘をたたえ合った。


「北川の足が普通に使えたら負けていたかもしれないな……」


「タラ・レバの話だよ……涼介達が強かった。ただそれだけだよ……ね? 里理ちゃん」


「そうだね、次やったら負けないからね!!」


 里理は小春と握手して笑っていた。


 そして前座が終了し、本番が開催される……。


 睨み合うセデルとロミール。


「我が騎士団の力を見せ付けてやる!」


 ロミールが言うと、セデルは……。


「再び泣かせてあげますわ!」


 二人はマレットを手に取り、戦闘態勢に入る。


 克己が100円玉を投入し、ロミール側からパックが出てくる。ロミールは直ぐにパックを取り出し、勢いよくパックを叩いた!


 パックは強いスピードで相手ゴールへと吸い込まれる。油断していたセデルは慌ててパックを取り出しパックを取り出し仕返しと言わんばかりにパックを叩く。しかし、これを騎士団のカリノスが防ぎカウンターで弾き返す。レデルウィール騎士団マルルが防ごうとするが1歩間に合わず、ゴールが決まってしまう。


「何をやっているのよ! マルル!」


「も、申し訳ありません! 姫様!」


 激しい戦いが繰り広げられるなか、涼介が克己に質問する。


「これでレデルウィールが勝ったら罰ゲームはラスベルがやるんだよな?」


「そうだな。今のところ良い勝負だが……」


「ラスベルが勝ったらどうするんだ?」


 涼介が質問すると、克己は固まる。


「まさか……考えて無かったとは言わないよな?」


「……考えてなかった……。どうしようっか……カラオケバトルは無理だし……」


「ビリヤードはどうだ?」


「ビリヤード? やったことないぞ……。ルールも知らないし」


「ルールは俺が説明してやるよ、代表者が1対1で戦い、決着をつける……で良いよな?」


「なら、場所の確保が必要だな」


 克己はそう言ってスマホで近場のビリヤード場を探す。


 エアホッケー対決は点の取り合いが続いている。


「カリノス! しっかり防ぎなさい!」


「も、申し訳ありません! 殿下!」


 パックが壁に当たり自分の想像を超える動きをしてマレットが追い付かない。パックはゴールへと吸い込まれロミールは再びパックを取り出しマレットで叩く。


「来た! 今度こそ上手くやりなさい! 失敗したら許さないわよ」


 セデルの言葉にマルルは動揺し動きが鈍くなる。勢いよく向かってくるパックを必死にマレットで弾き返そうとするが、間に合わずゴールへと吸い込まれる。


「何をやってるの! しっかりしなさいよ!」


「もももも、申し訳ありません!」


 マルルはマレットから手を離し、しゃがんで謝る。その隙にパックはゴールへと吸い込まれタイムアップを迎えた。


 呆然とするセデル。得点の結果を見てロミールは飛び跳ねて喜ぶ。


「我らの勝利だ!! 所詮、我らに勝とうなんぞ、ありえない話なのだ!! ワーハッハッハッハー!!」


 物凄い勝ち誇った顔しているロミール。しかし、水を差すように克己が言う。


「これで一勝一敗か……次の対決で決着が付くね」


 克己が言うと、セデルとロミールは同時に克己を見る。


「「え? どういうこと?」」


「だって、ボーリングはレデオウィールが勝利して、エアホッケーではラスベルの勝利……今のところ痛み分けだろ? 次で負けた方が罰ゲームだよ」


 セデルとロミールは再び顔を見合い、セデルは立ち上がる。


「次で決着をつけてあげます!! 見てなさい!!」


 元気を取り戻し、セデルはロミールに言い放った。


「じゃあ、次に移動しようか」


 ロミールは何かを言いかけて止める。仕方ないという顔して克己の後に付いて行く。


 ノエル達は、店の景品をある程度採り尽くし、店の定員は泣きそうな顔をしていた。


「さて、最終対決を行う前に、先ずは腹ごしらえをしようではないかと思う」


 克己が言うと、ロミールが嬉しそうな顔して克己の胸倉を掴んだ。


「に、日本食を食べさせてくれ!!」


「は? な、なんだよ……急に……」


 克己は少し狼狽える。


「私は日本食が食べたいんだ!!」


「だったら俺の店に行けば良かったじゃん……何で行かなかったのさ?」


「そ、そんなの知らない……日本食と書かれた店が有ったが偽物だった……」


 克己は仕方なそうな顔して分かったと返事をして、ロミールは胸倉から手を放し飛び跳ねながら喜び、騎士団は口を開けながら見ていた。


 日本食と言う事で克己が向かったのはお寿司屋さん。


 理恵は初めて回らない寿司を体験する事になり、足を震わせる。


「ま、回らない寿司……わ、私なんかが回らないお寿司屋さんに入っても良いのでしょうか……」


 理恵は里理の袖を掴んで言う。


「別に良いんじゃない? 理恵ちゃんは会長夫人だよ? たまには贅沢をしたってかまわないんだ」


「かかか、会長夫人!! ど、どういう事ですか!!」


「カッチャンは会社の会長だよ? その奥さんの理恵ちゃんは会長夫人」


「そ、そうでした……」


 二人は笑いながらお店に入って行き、店員に案内され椅子に座る。


「ご主人、この人たち日本が初めてだから適当に握ってくれますか?」


 克己が言うと、主人は元気よく返事して寿司を握り始める。


 メニューを見るロミールは何が書かれているか分からず首を傾げる。セデルはひらがなが読めるようで漢字とカタカナを飛ばした文字だけ読んでいた。


「セデル、ひらがなだけでも読めるのは随分進歩したものだな」


「そうですよね! 物凄い努力しましたよ!!」


 セデルは涼介に嬉しそうに言う。涼介の隣には千春が座っており、メニューを見ながら店の人に注文をしていた。


「さび抜きでお願いできますか? この子達にはワサビはキツイと思いますので……」


『かしこまりました』


 店員は返事をしてカウンターの中へと戻って行く。


「千春、そう言うのも分かるのか?」


「はい、たまにお店でも聞かれることがありますから……」


「偉いぞ、千春」


 涼介は千春の頭を撫でると、セデルは面白くない顔して千春を睨んでいた。


 暫くして寿司が運ばれる。


「こ、これはどうやって食べるのだ?」


 ロミールは寿司を眺めながら言う。


 里理がロミールに食べ方を説明すると、ぎこちなく箸を握り、寿司を掴もうと頑張る。


「別にお寿司は素手で掴んでも構わないよ。こうやって醤油にネタを少しつけて、口を大きく広げ食べるんだ……モグモグ……」


 ロミールは里理の食べ方をみて、「オオォ!!」と言って挑戦する。


「殿下、豪快な食べっぷりですね」


 カリノスはそう言うと、離れて見ていたセデルは野蛮人だと思いながらく上品に口を小さく開き食べる。カリノスも口を小さく開けて噛み切りながら食べると里理に注意される。


「それは礼儀作法に反する食べ方だよ。お寿司の礼儀作法は口を大きく開けて、ネタは噛み切らずに一気に口に入れる……モグモグモグ……これがお寿司という物の食べ方。分かったかい? だけど流石殿下、食べ方を知らなくても礼儀を知って言いますね」


「そうであろう? 私もそうではないかと思っていたのだ……日本食は私に合うのではないかな?」


 ロミールはチラリとセデルを見て勝ち誇ったように笑う。セデルは体をナワナワと震わせて口を開けて寿司を放り込む。


「克己さん、先ほど里理さんが言ったのは本当ですか?」


「多分そうなんじゃないかな? 俺は気にしないで食べるけど……正直醤油を付けて食べるのは好きじゃない。味が殺されてしまうような気がするから」


「それってマナー違反になったりするのではないでしょうか?」


 理恵が真剣な目で言う。


「理恵、その感覚は間違ってる。調味料が必要な奴は……フランス料理やイタリアンなどは先に調味料が付いている。それはその方が美味しいからという理由でもあるんだ。だけどね、それ以外に関しては付けた方が美味しいというのは強要になってしまう。味については人それぞれの感覚の違いもあるからそれが正しいと言う物は無い。だからその人が食べている食べ方が正解なんだよ」


「そ、そうなんですか……」


「だけど、理恵の言い分も理解はできるよ」


 克己がフォローのように言うと、理恵は苦笑いしてお寿司を食べたのであった。

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