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103話 近隣外国!!

 克己が突っぱねた事により、中国や韓国が何かをするのでは? と、連日のニュースで賑わっていたが、その二か国は経済制裁をすることはなかった。


 だが、違う主張をしてきたのだった。


『我々も異世界へ行く権利がある! 日本は戦争で我々の領土を奪ったのだから!』


 韓国はそう主張をしてきた。


『あの土地は我々の物だ!』


 中国の主張である。もはや意味不明だった。


 サミットでも叫ぶ二か国。弱腰外交の日本は克己に泣きついてきた。


『成田さん、旅行だけでも許可をしてくれないか……』


「お断りします。断固! お断りさせていただきます」


 克己は神崎に言う。


『日本の立場を考えてくださいよ……』


「立場? 意味不明だよ、強気に出りゃ良いじゃん。顔色を窺う必要はあるのか? ないだろ?」


『相手はミサイルを準備すると言ってるんですよ!』


「じゃあ、アメリカさんにお願いしなよ。もしくは、憲法第9条があるから攻撃されないと言っている共産党にでも言ってくれ」


『そんなこと言えるはずないでしょ!』


「じゃあ、諦めなよ。奴等は口だけだよ、日本はお金を持っているから言っているだけであって、攻撃なんか出来っこない! だから聞き流しな。俺は忙しいの!」


『ちょ、ちょっとかつ……ブツ……』


 克己は電話を切り、一つ溜め息を吐いた。そして理恵と共に求人会社の入っているビルへと入っていく。


「き、緊張しますね……」


「アポイントを取っているから大丈夫だよ」


 エレベーターに乗り、エントランス前にある受話器を上げて担当を呼び出す。


『暫くお待ちください』


 電話が切られ、扉から男性が顔を出す。


「あ、お待ちしておりました、私は影山と言います」


 求人会社の男は名刺を差し出し、克己が受け取る。


「きょ、今日は宜しくお願いします!」


 理恵は肩に力が入った状態で挨拶すると、影山は中へと克己達を案内し、打ち合わせブースらしきところへとつれて行った。


「えっと、今日はアルバイトの募集ってことですよね?」


「は、はい!」


 影山の言葉に緊張をする理恵。


「場所は何処になりますか?」


「ば、場所は……」


 理恵は住所の書いてある紙を渡す。影山はタブレットをとり出し地図を確認する。


「あ~、ここですか……」


 影山は難しい顔して地図を眺める。


「そ、そんなに辺鄙な場所……ですか?」


 理恵は恐る恐る確認する。


「う~ん、内容にもよりますけどね……」


 理恵は少し泣きそうな顔して克己の方を見る。


「社員とバイトを雇いたい。店は小さいけど、働き口は他にもあると記載してくれる? 交通費支給、制服支給、福利厚生ありで」


「成る程……」


 影山はメモを取って行く。


「ですがね、場所が場所ですから……端っこでは誰も見てはくれないかと思いますよ」


「ほ、本当ですか! か、克己さん……少しばかりお金を出して大きい場所に載せてもらいましょうよ……」


「いやいや、別に端っこでも良いでしょ? 目に留まるなら誰だっていいじゃん? それにさ、多分……学生がやって来ると思うだよね。学校が近くにあったから」


「そ、そうなんですか……」


「それに住宅街。面接はくるよ、影山さん……俺を舐めちゃいけないよ」


「そ、そう言う訳では……」


 影山は目を泳がせながら答える。


「まぁ、良いけどね……で、時給は千円で、時間相談。あ、バイトの方ね……。社員は30万~と言う事で……。未経験大歓迎とでも書いといてよ」


 影山はメモを取り、返事をする。


「では来週の広告に載せますので……連絡先を教えてくれませんか?」


 克己は店の連絡先を教えて求人会社から出て行く。


「ち、こんな小さな場所で人が来ると思ってんのかよ……」


 影山は呟きながら新人にメモを渡して煙草を吸いに喫煙所へと歩いて行った。


「克己さん、本当に電話が掛かってきますかね?」


「さぁ? こればかりは運しだいだからね……理恵がどのくらい運が良いかによるよ」


「う~……克己さんの意地悪~」


 二人は楽しそうに話しながらお店へと帰って行った。


 お店では里理達が開店準備をしていた。


「お? カッチャン、理恵ちゃん、お帰り!! どうだい! お店っぽいだろ!!」


「いやいやお店だから……」


 克己は頬を掻きながら突っ込む。


「カッチャンが調理師を持っていて、理恵ちゃんが防火管理者……ペルシアが他の手続きをやってくれたおかげで明日から開店できるね!」


「先週、ペルシアがハローワークに行ってくれたから明日位から電話が掛かってくればいいな」


 克己がそう言うと、里理は肩を落とす。


「ハローワークに行ったのが金曜の夕方だっただなんて……連絡が来るのが明日からだよ……」


 里理は残念そうに言う。


「ペルシアだって仕事の合間にやってくれてるんだから仕方ないだろ?」


 克己は椅子に座り里理に言う。理恵は緊張しているのかソワソワしていた。


「ほ、ほ、本当に明日から開店するんですかね……大丈夫なんですかね……」


「バイトが来るまではリーズとガルボがウェイトレス、ノエルが理恵と里理ちゃんに料理をレクチャー、レミーとケーラがその間に厨房で仕事、ハミルと俺はチラシをポスティング。結構大変だから頑張ろうな」


 奴隷たちは返事をする。


「ノエル、しっかり教えてやってくれ」


「か、かしこまりました……」


「緊張するなよ、大丈夫だから。普通にコーヒーなどの作り方を教えて行けばいいよ」


「は、はい……」


「それが落ち着いたら、ノエルは店の前に出てチラシを配ってくれる? 店の制服を着たままで」


「き、着たまま……ですか?」


「そうだよ、店の宣伝になる。お前は綺麗だからな」


「き、綺麗……!!」


「客が群がるぞ」


「が、頑張ります!!」


 ノエルは握りこぶしを作りながら言うと、皆は笑った。


 翌日になり、店は営業を開始しする。克己とハミルは手分けしてチラシをポスティングしに出かけ、ノエルは理恵と里理にコーヒーを差し出す。


「美味しいですね……」


 理恵が言うと、里理は頷く。


「ノエルにこんな特技があったとはね……」


「これくらいしかできませんけどね……。それを飲んだら練習をしましょうか。二人はレジの練習もしないといけませんから」


 二人は真剣な目で頷き、コーヒーを飲み干す。


 里理と理恵はノエルと一緒に数杯のコーヒーを作り、レミーたちに飲ませる。


「うん、悪くないですよ! 奥様」


「本当? 良かった……」


 理恵はホッと胸を撫で下ろし、椅子に座る。入り口の方を見てもお客は来なかった。


 暫く待っていても客が来る気配はないため、理恵は参考書を取り出し勉強を始める。里理は理恵に問題の解き方を教えていた。


 夕方になり、ようやく一組の客が入ってきた。


「いらっしゃいませ~」


 客は学生二人。それでも客だと理恵は思いながらカウンターの中で注文を待つ。ガルボは席に案内して注文を取ると、大きい声で理恵たちに言う。


「アイスティーが一つと、コーヒーのホットが一つ、ポテトが一つ入りま~す!!」


 遂に出番がやって来た。理恵はそう思いながらアイスティーを作り始める。作り方はノエルが横で指導してくれるのでそれに従うだけ。だけれど、自分で作っているという気持ちが強く顔はほころんでいた。


「コーヒー出来たよ。リーズ、運んでくれる?」


 里理が指示を出すと、リーズは緊張しながら持って行く。


「お、お待たせいたしました……」


 リーズは零さずに運べてホッとしながら後ろへ下がる。


「が、ガルボさん、アイスティーが出来ました……お願いします……」


「はい、承知いたしました」


 ガルボはリーズと違い、飄々と運んで行く。


 学生はくだらない話をしながら店の中を眺め、リーズとガルボを見定めるように見ている。


「ポテト揚がった、運んでくれる?」


 レミーはリーズとガルボにお願いすると、リーズがトレーに乗せてポテトを運んで行く。


「お待たせ致しました……」


 リーズはテーブルにポテトを置き後ろへ下がろうとすると、学生が話しかけてくる。


『君、幾つ?』


「わ、私ですか?」


 チラリと里理の顔を見ると、里理は頷く。


「じゅ、19歳ですが……」


『お姉さん若いね!! 何をしている人なの?』


「こ、ここで働いている人ですが……」


 リーズは里理を見ると、首を横に振っていたため、後ろへ下がろうとする。


『ここの人って女性しかいないの?』


「そ、そうですね……女性しかいませんね……す、すいません、仕事に戻らないと……」


 リーズはそう言って後ろへ下がる。


 学生たちはスマホで何かしていたが、それ以上の注文はなく店から出て行った。


「初のお客さんが学生さんか……それも1,000円ちょっと……。こりゃ赤字だな……」


 里理は項垂れながらレジの蓋を閉める。


 結局、その日は学生の二人しかお客は来ず、店を閉めたのであった。


 翌日、再び店を開ける。ウェイトレスにルノールも加わり、人件費だけで大赤字の一日が始まる。


「初めの内だからね、先ずは店の雰囲気に慣れる事だよ。今日は手伝う事が出来ないからよろしく頼むよ。なんか、外務省が煩くてね……ちょっくら顔を出さないといけないみたい」


 克己はそう言ってハミルと一緒に出掛けて行った。


「里理さん、今日もお客さんが来なかったらどうしよう……」


「気にすることはないよ。カッチャンも言っていたように初めの内はこんなもんさ。カッチャンはお店を開いている人だよ? 大丈夫だよ」


 里理はそう言うが、結局、夕方になるまで客は来なかった。


 カランカラン……。


 扉が開く音がして里理達は慌てて準備をする。


 昨日来た学生が、数人の友人を連れてやって来た。


「お? リピーターになったのか?」


 里理は呟きながら注文を待つ。


 注文を取りに、ルノールが学生たちの傍による。


『あれ? 新しい人だ……君、何歳?』


「あ? 注文は? ここは喫茶店だよ? 注文しないなら帰ってよ」


 里理は吹き出し慌てた。


『す、すいません……コーヒー四つで……』


 学生はビビりながら注文する。ルノールは幼そうな顔をしているが、超強気だった。


「コーヒー四つね……里理さ~ん、コーヒー四つだって~」


 里理は急いでコーヒーを作り、ガルボに運ばせルノールを呼びつける。


「ルノール! 何をしてるんだ! 客をビビらせてどうするんだよ!」


「注文しないのが悪いんじゃん! 私は仕事を忠実にこなしているだけよ! 文句があるなら克己様に言って」


「か、カッチャンに……」


 里理は困った顔をする。


「ルノールさん、ダメですよ。ルノールさんの言い分は分かりますが、丁寧に断らないと」


 里理が言っても言う事を聞かないようだったので理恵が注意をする。だが、ルノールは理恵を睨む……が、直ぐに頭を下げる。


「すいませんでした……奥様……」


「あとで克己さんに注意しますから……それでいいですね?」


 理恵がルノールに言うと、まさか本当に言うのかと顔を青くする。


「お、お許しを……」


「なら、次はちゃんとやって下さいね」


「わ、分かりました……」


 ルノールは項垂れながら持ち場へと戻って行く。それを見ていた里理は少し驚いた顔をする。


「理恵ちゃん……強くなったね……」


「そんな事は無いですよ……ドキドキしていますよ……」


 理恵は苦笑いしながら客の様子を窺っている。


 その日もその客だけしか来ず、全員はガッカリしながら店を閉めて帰って行った。


 一方その頃、克己は……。


「本当に弱腰外交なんだから……参っちまうよ」


 克己はそう言って外務省の中へと入って行く。


 受け付けに挨拶して呼ばれてきたことを告げると、会議室のような場所に案内される。


「そんな大げさな話じゃないだろうに……」


 克己はボヤキ、会議室の扉を開ける。


「騙された……」


 克己が開口一番に出た言葉だった。そこに座っていたのは××大使、△△大使であった。


 克己は不機嫌な顔して中へと入って椅子に座る。


「要件は?」


 克己は不機嫌な声で神崎に言う。


「彼らの話を聞いてくれないか……」


「断る。この間も言ったが、話す価値もない奴らと話をしたって意味はない」


「か、彼らはお金を持っているぞ!」


「金の問題じゃない、モラルの問題だ……」


 通訳が××大使と△△大使に克己の言葉を訳して話すと憤怒する。


『我々大××国はどの人類よりもモラルがある国だ!! 野蛮で犯罪大国の日本と同じにするな!』


『異世界は△△の領土!! 我々が支配していたところだ!』


「何を言っているんだ? 俺がお前ら程度の言葉を知らないと思っているのか? 馬鹿にするな! 犯罪達国は貴様の国だろ、テメー等は被害者ぶっているが加害者なんだよ! ○○○大国のくせに!! ウンコでも飲んでろ! それにそこの油くせーおっさん、どうして異世界がお前等嘘つき大国の領土なんだよ、笹でも食って寝言は寝ながら言えよ。というか国に帰れ、Get Out!!」


 立ち上がる大使達。


 ハミルが少しだけ克己の傍による。


「文句があるのか? テメー等は泥棒ばかりしてるじゃねーか、それと嘘ばかり……それを謝罪してから言ってくれよ。それ以外話は受け付けない、アバヨ……。神崎さん、アンタには失望したよ……。あんたが辞任しない限り異世界への道は閉じた事になる。残念だったな」


 克己は部屋から出て行く。神崎は何のことだかさっぱり分からず△△大使と、××大使に頭を下げていた。


「必ず説得して見せるから勘弁して下さい……」


 神崎がそう言って謝っていると、秘書の携帯に着信が入る。


 秘書は顔を青くして神崎に耳打ちをすると、神崎は驚いた顔をした。日本から異世界への道が塞がれたという話だったからだ。克己が言った道が閉じるとは、物理的の話だったのだ。


「ど、どういう事だ!! な、成田を、あいつを呼び出せ!!」


「そ、それが着信を拒否されています!」


「大使だっているんだぞ」


 神崎はヒステリックな声を出しながら秘書に詰め寄る。だが、秘書はどうする事も出来なかった。△×の大使は何が起きているか分かってはいない。成田克己と言う男が敵だと言うこと理解し何処かへと電話をしていた。


 克己とハミルは電車に乗るため、地下鉄に向かう。


「克己様、複数人付けてきますが……」


「ここで魔法は控えるんだ。不審者なら、栗林さん達も気が付いているはずだが……」


「自衛隊とは別っぽいですね……」


「取り敢えず放置しておこう……。相手の出方を窺う」


「承知いたしました」


 克己とハミルは電車に乗ると不審者らしき者達も電車に乗り込む。


「ウルフ1、目標に不審者有り……指示をくれ」


 公安が克己達の跡を付けている者達を発見する。


『指示があるまでそのまま待機……不審者の数を報告されたし』


「了解……」


 公安の男は不審者の人数を確認し始める。


「目視できる数は4人、いずれもアジア系の男だ。写真を転送する」


 公安の男が携帯で写真を送ると、情報部はチェックを始める。


『パスポートと照合したところ、×国と判明。本日、成田氏は××大使と会っているので注意されたし』


「注意って……具体的な指示を頼む」


『……確保の指示が入りました。声掛を願います』


「了解。ウルフ1、声掛に動く」


 公安の男は動きだし、不審人物に声をかける。


「ミスター、少し話をして良いですか?」


 公安の男が声を掛けると、不審者は銃を抜き発砲する。公安の男はお腹に数発の弾丸を受けて倒れこんだ。


『ウルフ1、ウルフ1! 応答を願います! ウルフ1!』


 車内は突然の発砲で騒然とする。


 それを見ていた克己達。


「おいおい、マジかよ……いきなり発砲するか? ふつう……」


 突然の出来事に克己は驚く。


「克己様、あの出血は危険です!」


「ハミル、この車内にいる奴等を全員眠らせろ!」


「承知いたしました」


 ハミルは魔法を唱え車内にいる人間は眠りに落ちる。克己は公安の男に近付き状態を調べるが、時は既に遅く事切れていた。


「ダメだ……。死んでいる……」


 克己は顔を歪ませ公安の男が付けていたイヤホン型無線を取り外し、自分の耳に装着させる。


『ウルフ1、応答を願います』


 無線から聴こえる情報部と思われる声。


「こちら成田、このイヤホンの持ち主は既に死んでるよ。仲間の要請を頼む」


『な! ま、まさか……。あなたは一体……』


「監視対象者の成田克己だよ。不審者がいきなり発砲してこの人は死んだ。だから回収する人と、警察に連絡してくれないか」


 電車は駅に停車する。扉が開かれ、人が入ろうとするが、克己とハミルを除く皆は眠っており、しかも克己の腕には血を流して倒れている人もいる。


 ホームにいる人は騒然として騒ぎ始め、車掌や鉄道警備隊等が慌ててやって来て、駅は一次封鎖された。


 克己達は駅の控え室に連れていかれ、警察の事情聴取を受けており、容疑者扱いをされていたが無線の相手が説明をしてくれて解放された。


「とんだ迷惑を被ったもんだ……。だが、あの人は残念だったな……」


 克己は眉をひそめ、残念そうに言う。


「まさか声を掛けただけで殺すだなんて……。ここは日本ですよね……。克己様」


「他国のやつがそんなこと気にするはずはないよ。特に△×は日本を舐めていやがる。これも全ては弱腰外交が招いた種だ。数年前に政権が邪民党だったことが全ての始まりかもしれないな。それにマスコミだ……」


「克己様、申し訳ありませんが、お話が難しすぎます……」


「あ、すまない……。そろそろ到着するようだな……」


 克己とハミルは結局タクシーで帰る事となり、暫くは電車移動を止めることにした。


「これも全て神崎のやつが面倒なことをしてくれたから……」


 克己は窓の外を眺めながら呟いた。

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